溝口健二特集の引きがら、若き山田五十鈴先生の雄姿も拝む。
\水曜の夜は映画/
◎本日は一般・シニア料金=1100円★このあと19:15~『祇園の姉妹』
松竹大谷図書館さま所蔵の貴重な35㎜フィルムをお借りしての上映となります。若干19歳の山田五十鈴が溝口健二の期待に応える名演をみせる女性映画の名篇。https://t.co/JjQSnJVCg2 pic.twitter.com/PI2nCnJYp8
— 神保町シアターのひと (@jinbocho123) September 2, 2026
10代にして天才だったと噂には聞くものの、実際を観たことは無かった。
リアル「国宝」かと連想させる、文化勲章の大女優。
女優一代 山田五十鈴
娘との確執
令和の時代と違い、
昭和は赤裸々で、芸道と人格を割り切って、むしろ潔く。
”魂を売る”と啖呵切るなら、こうでなくっちゃ。
(「国宝」は、
”悪魔に魂を”なのに、女性関係で失脚じゃあ。脚本に疑問で、
クズをクズに描かない主人公補正には、感心しません)
現代の価値観で、昔を無理やり取り繕うのは見苦しい。
そんなのカネ払ってまで観たくない。
という無念も成仏させてくれると期待もして、
限り有る機会を逃さず、連続で鑑賞。
《 開演 》
※ネタバレしてしまいます。
劇中の他の役者さんと比べても、現代と比べても、
別格の19才ですね。
運命付けられたような役者の道に、あまり恵まれない家庭。
恋愛も結婚も当然の如く破綻し、”芸の肥やし”と為す。
吉沢亮だと、”頑張って”と応援しつつ観てしまいます。
が、
後の文化勲章は、そんな余地すら観客に与えません。
逆に、
戦前の他の女優さんでは、情に流れた芝居になりそう。
乾いたピカレスクを、この年齢で演れる女優は唯一無二。
この冷ややかな味わいは、令和でも日本で類を見ない。
峰不二子的ファム・ファタールの色気より、
堂々たる悪党っぷりが際立つ。
なんという山田五十鈴。
当て書きと思われる主人公の造詣で、
脚本家泣かせの溝口健二は、
現場で、どんどんとセリフを変更させた。
ドライでシャープな悪の華は、そうして成ったと想像される。
ぜんぜん主人公を美化せず、痛快。
むしろ、愚かでクズな男たちの魅せ処もたっぷり。
小津安二郎をして、
「祇園の姉妹」は自分には撮れない
と言わしめた。
湿度も温度も高くなってしまうだろう。
映像は、相変わらずの精巧な設計。
祇園の町並みや屋内も、
フレーム構造を使いながら、
奥行きを存分に駆使してみせる。
主人公の造詣と相まって、作劇全体がシャープ。
市川崑なら、
こういう怜悧もアリかも、、 とよぎるけれど、
もうちょと情が出てしまうかな。
うーん、
本作のクールな佇まいは、
監督の意匠というより、山田五十鈴の本領で、
巨匠のリアリズムが、それに共鳴した。
カラい人生とカラい人生のマリアージュ。と観てました。
スタッフも演者も大変だけど、キレッキレだねぇ。
リアリズムな作劇に唸りながら、
終盤の展開は、
ピカレスクものの定石通り、
悪漢の破滅だろうと、
タカを括ってしまった。
ああ、
道徳の教科書に載せたいエンディング。
妹の結果は因果応報。
それは当然として、
凡庸な物語、改変されたイソップ童話のような物語なら、
姉は報われ、その優しさに触れて、終劇と成る処。
が、
情にほだされた姉もまた裏切られる。
人間の見極めが、とかく大事。
世の中それほど、甘くない。
最後のセリフで、山田五十鈴は境遇を嘆く。
事情は理解するものの、突き放した感情が残る。
あんたの場合、自業自得だよ
他責のまま、最後まで見事な悪党。
観たこと無いトゥルーエンディング。
人生訓としても、完璧。
もっと普通の家庭に生まれたかったという、
天才女優本人の生い立ちの嘆きとも、伝わるけれど、
持って生まれた才覚のまま、逞しく生きてゆくんだろうなぁ。
幸せには成れなくても、
存分に行きてね。
運命は性格。
人の聡明は、
その人が何を以て賢いと思っているか、によって決まる。
らしいので、
怪我の少ない人生は諦めよう。
恨み買ったとて、本能のまま、
ありったけ、凡に非ざる才能を発揮してね。
そう、声を掛けたくなってしまう。
双葉より芳し、と言うより、
既に完成されている若き大女優を観ること叶う。
貴重な作品をスクリーンで鑑賞出来て、満足至極。
もしかしたら、巨匠は通常運転で、
”搾取される女性の悲哀”に着地したかったのかもしれない。
それを、
被害者ズラかよと、思わせる凄みが有るんだよなぁ。
これで終わるかって、手を染めて行きそう。
祇園の裏路地は、そんな治安じゃないと、本作にクレームも来たらしい。
2026.09.04 15:30現在
-2σタッチからのリバンド。
20MAまで戻すかもしれないけれど、勢いは感じない。
来週のことは来週考えよう。
