「ストレイト・ストーリー」D・リンチの作家性封印。名優最期の正当派ロードムービー

前回はこってりハイカロリーだったので、
シンプルに真っ直ぐな作品を欲し、
リマスターされた美しい映像をスクリーンで観て来ました。

初見です。
 
緒形拳が、この作品推していたの思い出します。
どんな作品かは知ってました。
ま、予習は必要としないだろう、
あ、実話ベースだったのか、、(エンドロールで知る)
 
 
 《 開演 》
 
 
そうめんのシンプルと言うより、生姜焼き定食。
親しみ易い定番で、ハズレ無し。
ちゃんとしっかり美味しい。満足度高し。
派手さは無いが、確かなキャスティングで、感動の実話を映画化。
 
デビッド・リンチは自身の作家性を封印して基本に忠実に撮る。
こういうは、
エピソードの匙加減や切り順が難しい。
相当出来の良い脚本だと思うのだが、ノミネートもされないのか。
 
あらすじを追わず、要素ごとに語りたい。 
 1.デビッド・リンチ封印の丁度良い演出
 2.脚本の出来栄えが全て 
 3.ファーンズワースの演技と顔
 4.教科書的、撮影や編集の細かい工夫 
 5.疑似キャンプ体験と、星空に若干不満
 6.音楽とハリー・ディーン・スタントン(ちょっとネタバレ)

 
1.デビッド・リンチ封印の丁度良い演出
 デビッド・リンチの作品だと期待しないで観た方がおトクです。
 どちらかと言えば、
 監督の公私に渡るパートナーだったメアリー・スィーニーが、

  NYタイムス掲載の実話に感動し、
  製作、脚本、編集に奮戦。
 ”リンチの片腕”の作品と言った方が適切なくらい。

脚本ではロードムービーの筋を活かし、リチャード・ファーンズワース(Richard Farnsworth)が演じる主人公の表情のわずかな変化で観客が好きになり、気にかける設計にしました。エピソード的な出会いを連ね、静かなtransition(トランジション)――アメリカ中西部の晩夏から初秋の風景を抒情的に挟み、穏やかに前進する流れです。

デヴィッドは脚本を基に、たとえば例の女性が鹿を轢いてしまう場面で木の少ない見通しのよい道を選びました。何もない荒野の道で毎週鹿を撥ねてしまうという不条理が可笑しさを帯び、デヴィッドらしさが強く刻まれました。

 そこに、リンチ組が存分に応えた。
 企画意図を完璧に遂行し、
 シュールなのに実話な1エピソードだけ、敢えてのデビッド・リンチ印を残す。

 ゆっくり流れる時の移り変わりを大切にする為(後述)、順撮り。
 亡くなる前年のファーンズワースを選べたことで、全てのピースが揃った。
 
 派手さも、特別な事も無いが、
 優しい味付けの生姜焼き定食の出来上がり。
 1999年当時だって、主流の作劇ではない。
 「アルマゲドン」「ファントム・メナス」「マトリックス」が興収上位を占める年。
 映像技術の進化は著しい。
 むしろ、派手な特徴のラーメンの方が流行った。
 ハリウッドの大作はまだまだ元気で、良質な娯楽作を輩出していた時代。
 
 ドライブもの得意なリンチ監督で、
 「ロスト・ハイウェイ」「マルホランド・ドライブ」の嵌張ずっぽしとは言え。
 企画意図に忠実に、奇を衒わず丁寧に、敢えてスタンダードな作劇。
 
 
  
2.脚本の出来栄えが全て
 こういうのは、脚本が難しい。

『ストレイト・ストーリー』はゆっくり、そしてシンプル。その意味で、デヴィッドはこれは自作で最も抽象的な映画だと言っていました。2時間弱の映画で大きな出来事が多くないなか、観客の関心を持続させるのが課題でした。

 エピソードの順序は余りイジらないハズ。
 その土地と季節柄を大事にしてるのだし。
 
 最初のプレゼンが眠いけど、出発以降のエピソードはそれぞれ興味深い。
 そこからは引き込まれる。全体のトーンは同じでも、微妙にテイストが違う。
 美味い。
 市井の人々を描いて、皆人生を感じさせる味わい。
 
 おお、取り上げてくれる人が居た。本作は回想シーン挟まない。
 (ネタバレは自己責任でお願い)

 セリフは役者の説得力で、説明には聞こえないし、
 過去に場面を戻すような時間の逆流は起こさない。
 
 中田監督はワザと下手のお手本をやっているけど、
 最近も、語りと再現シーンの効果が整理出来てない演出も見かける。
 本作は、
  乗り物の故障で停滞を起こし、
  それ以外は、ゆっくりジワジワ、ヨボヨボと時間が進む。
  役者があれだけの演技で応えてくれているし、
  最初からの設計をそのまま、才能の格の違いも魅せる。
 中身が美しいから、書家は敢えて楷書で書いた。
  
 

3.ファーンズワースの演技と顔

 カメラは寄って、顔の演技で伝える。ただし過剰に表情は作らない。
 感情を顕にセリフを吐くとか、安いことはしないが、
 かといって、スカし過ぎず。
 
 見た目も性格もマヌルネコのよう。
 愛らしさと儚さを併せ持つ、時を越えた幻。

  親切にして良いものか? 考えてしまう。
  怪しい人かもしれないし、
  絶滅しかねない道行きかもしれない。
 通報したりする人が居ても不思議はないのに、
 劇中のアメリカの田舎の人は善意で対応する。
 そうしてあげてよと、気持ちを誘導する佇まい。
   
 そして、
 風景を存分に描きたくなる、折角の素材なのに、
 堪えてズームイン。人物の内面に迫る。
 アートな画作りをやりすぎない。
 丁度良さに徹しているが、それも名優に出逢ってこそ。
 
 
 
4.教科書的、撮影や編集の細かい工夫
 正統派の演出だからこそ、尚のこと工夫は細かい。

 真っ直ぐな幹線道路に収穫期の田園風景だから当然とは言え。
 構図は教科書みたい。
 
 飽きさせない工夫が必要な作劇だから、
 繋ぎ(Transition)は最重要。

 
 主観はノロノロ運転の草刈り機。
 当然とは言え、フレームイン、フレームアウトはとても効果的。

 
 
 風景は脇役に徹して、繋ぎのカットで活躍。
 焚き火は、観客にソロキャンプの風情を伝える。
5.疑似キャンプ体験と、星空に若干不満

 星空の撮影は難しい。
 
 劇中、満点の夜空が造り物っぽくて、そこだけ残念。
 繋ぎで効果的に使われるだけに。
 
 終盤の焚き火に照らされる顔は一番の出来かな。
 ライティングのことは分からんけど。
 多くは語らず。ここまでの旅路を反芻する。
 
 
 
そんな昼と夜を繰り返した後、
ようやく、物語は遂に河を渡り、
目的地ワイオミングに。

館山くらいから房総の中を、国道410,409,408と北上し、
利根川水系を越えて、筑波嶺のふもと辺りへの旅を想像して観てた。

6.音楽とハリー・ディーン・スタントン(ちょっとネタバレ)

 旅の終わりは、、 
 あ、ハリー・ディーン・スタントンだったの。
 全く似ていない兄弟の役。
 
 やっぱり、そういうことかな。

 温暖で豊かな自然は恵みを与え、
 のどかで穏やかで雄大な音楽に調和してます。
 
 どうしても、ときどき、
 北米中南部の風景も比較して、連想してしまう。

  こちらは家族を優しくは描かず、厳しく荒涼たる風景が広がる。
  ライ・クーダーのスライド・ギターは孤独だ。
 
  当初、旅を断念して戻るのも共通で、
  男が、遥々と(元)家族に会いにゆく。
  人生の心残りが、違うのだけど、
 本作は、丁度良いアメリカ映画の仕上がり。
 
 
 ラストのちょい役で、
 それと分かる役者を使う意図は他にないだろう。
 でも監督はここで作家性を出さず、それは次に取っておく。

 星空が、ゆったり包み込むような鑑賞後感を残す。
 優しい味付け。
 
 
  
主演男優のノミネートだけでしたが、
撮影、脚本も含め、勝っても良かったのに。

カントリー調の別れの歌は、レオン・ラッセルによく調和。
 
 
 
2026.02.13 13:00現在
 ここで上昇は一服。しかしここで耐えそう。
 総理は首尾よく立ち回って、来週は6万円目指すと想定してる。

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