松田優作版「嵐が丘」和で麗しき田中裕子&吉田喜重の様式美(´-ω-`)ウーン80年代映画衰退期


世間の評によると、評価は微妙とのこと。
 
完成度は低くても、35mmフィルムの映像に見どころ有らば、
これも貴重かと思い、早稲田松竹へ。
カンヌにも呼ばれ、
美術や衣装、撮影に気合の入った、日本の様式美。
一見の価値は有る。はず。
 
 
吉田喜重監督については、作風や経歴を最低限の確認。
うーん、
小難しく褒める人は居るけれど、評価はさほど高くないかなぁ。(後述)
80’後期の日本映画衰退期のアート系作品と、本作の位置づけを承知。
 
俳優陣は有名どころばかり、
にも関わらず、
本作の存在は、吉田監督同様に、全く知ることなく、
鑑賞後に、
どこの時期の松田優作なのか、確認してしまった。(後述)
 
「嵐が丘」は、
あらすじは大体知っているものの、未読。

原作読み切るのは大変なので、迷子には成らないだろうと其の儘。
 
 
 《 開演 》
 
 
なるほど、
長所、短所がはっきり。監督は確信犯的だろうな。
 
娯楽作を撮る気は、あまり無さそうで、
それ故、
劣化版、黒澤明と酷評されたりしている。 
むべなるかな。
 
最大の見どころは、その映像で、
 鎌倉初期の設定で、富士山麓に荒野と屋敷。
 和の化粧と衣装に、最も映える田中裕子が、最も美しいころ、
 拘りまくりの様式美が、35mmフィルムに収まる。
 
観客は、それに2時間付き合う価値を見出すかどうか次第。
短所には目をつぶっても、好し、と評価するかどうか。
 
私は強く奨めること出来ませんが、
全盛期の田中裕子に、一見の価値有りかと。この女性の色香は、
黒澤明では観ること叶わない。

 
ただし、
本作は、観る側に選択と集中が求められます。
短所はスルー、長所を鑑賞。 
 
 
それでは、順に、以下詳細。
 
 0.予備知識
 0.1.「嵐が丘」と本作
 0.2.吉田喜重フィルモグラフィーと80’セゾン
 0.3.松田優作の後期
 
 1.長所
 1.1.女優は美しく
 1.2.鎌倉初期と、様式美の映像
 1.3.セリフは雰囲気だけで構わない
  
 2.短所
 2.1.全てがブツ切り
 2.2.ヒースクリフ幼年期、青年期、成人後の描き分け
 2.3.淡泊で、乗り気でないシーン
 2.3.1.アクション、松田優作の見せ場
 2.3.2.里の描写。記号かつ聞き取り難い
 
 
ネタバレ気にしません。
というより、
物語を見失って当然の作劇なので、
ストーリーライン既知の上で、観た方が優ります。
展開に、見どころは在りませんから。
逆に、物語追わずに眺めていて、支障無いとも言えます。
 
ま、委細承知の上で、
スルーすべきは、目くじり立てず脱力必須。
 
 
 
0.予備知識
 知識として、知っておいて良いこと。
 わたくしの思いつく範囲で、語ります。
  
 
 0.1.「嵐が丘」と本作
  kindleUnlimitedでも読めますが、長い。
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   翻訳くささ無く名訳↑と思われますが、
   本作鑑賞の為に、上下巻読破は無理ゲーかと。
   小説に興味惹かれた時に味わいたい。
    
  ま、あらすじ知る程度で充分としましょ。 
  以下間違っていたら、ごめんなさい。
 
  本来は、ヒースクリフの幼年期、青年期、成人後の順に、
  パート分かれるはずです。
  ・幼年期
    嵐が丘に引き取られる野生児。あどけなさ残る。
    差別されつつ、キャサリンと馴染む。

  ・青年期
    キャサリンに恋心抱くも、理不尽な扱いを受ける。
    恨みを募らせつつ、金色夜叉的展開。
    キャサリンは金持ちリントン家に嫁ぐ。
    ヒースクリフは失踪。

  ・成人後
    ヤりたい放題の復讐。策略の限りを尽くす。
    人を呪わば、自らも滅ぼす。
    世代交代するも、
    ヒースクリフはキャサリンへの思いを残し、成仏できず彷徨う。
   
  ずっと愛憎まみれ、とは言え、
  基本は、青年期までが前フリで、復讐がメイン。
  古今東西、作劇には、
  メロドラマと復讐譚の配合が異なり、作り手の特色が出ます。
  
  では、本作。
  舞台を鎌倉初期の富士山麓に移し、
  原作に対する匙加減が、作劇の興味惹かれる点。
 
  全てを燃やし尽くす激情に、荒涼たる風景。
  それが原作、嵐が丘のモチーフですね。

   これぞ、英文学という佇まい。
   コーヒーでなく、紅茶を飲むべし。
  日本に翻案するなら、
  舞台のヨークシャーは、奥州平泉のもっと辺境の地とか。
  また、ロケ地の阿蘇そのままでも、構わない。
 
  
   
 0.2.吉田喜重フィルモグラフィーと80’セゾン
  Wikipedia確認。
  60年代は、大島渚、篠田正浩と松竹ヌーヴェルヴァーグの旗手と活躍。
   奇しくも皆、美人の女優さんを娶る。
   しかし、他の監督に比べ、
   岡田茉莉子の夫と言われる事多めと思われ。
 
   70年代は、松竹と揉め独立。
    ATGで映画制作の後、TVのドキュメンタリ製作をメインに。
   80年代は、西武セゾングループ出資でアート映画を残す。
   その後、映画第一線から身を引き、執筆活動。
 
  で、88年アート映画が本作。
  70’ATGの(寺山修司鈴木清順長谷川和彦など)、
  ぶっ飛んだ表現の時代は終わり、
  「スターウォーズ」以降のハリウッド娯楽作復活期。

  日本映画衰退期の80年代のさらに後期。
  角川映画は台頭後、やや弱含み、
  徳間が東宝と組んで、「敦煌」を当てる。

  そんな時代、娯楽作とは一線を画すアートなセゾン系が本作。

  
  本作、破綻無く完成度高くという意識は働くものの、
  吉田監督は、興味薄いジャンルは疎かと、見受けられます。
  なら、もっと割り切ってくれたら。。
 
 
 0.3.松田優作の後期
  こちらも、Wikipedia確認。
  73年 ジーパン刑事
  79年 蘇る金狼
   精悍で、ハードボイルドな雰囲気。

  79年 探偵物語
   コミカルな役も、ハードボイルドな雰囲気変わらず。

  83年 家族ゲーム
森田芳光監督の元、芸風を広げる。

  88年 本作
  89年 ブラックレイン
   国内外で高評価も、惜しまれつつ遺作となる。

    
  アート系にも、役どころを広げた後の本作ですが、
  振り返れば、最晩年の作品だったのですね。
  本作の評価まちまちですが、
  個人的には、もっと存分に松田優作活かせたはずと、残念でした。(後述)
  野性味より、デクの坊寄りに映っています。
  メインは、田中裕子でした。
 
 
 
1.長所
 それでは、見どころを。  
 
   
 1.1.女優は美しく
  奥方の大女優、岡田茉莉子と比較すれば分かり易い。

  目鼻立ちは、大柄でパッチリと。
  戦前の装束でも、日本人離れした顔立ち。
  
  田中裕子は純日本人顔で、美人でも、目鼻立ちは地味め。
  それが。平安末期から鎌倉初期の時代背景に、
  最も映えます。
  現代よりも、髪を結う江戸よりも、近代よりも、

   充分、美人さんですが。
  眉薄く、黒髪ロングの流し目が映えます。
  一番美しく撮ったと、私は認定しました。
 
  キャサリン亡き後は、石田えりにバトンタッチ。
  比べるとボリューミーで、それもまた良し。

  やはり、女優さんを撮る時は気合入れて、存分に美しく。
  

 1.2.鎌倉初期と、様式美の映像
  劇中、時代背景は明確に説明されません。
  南北朝、室町では、なさそう。
   衣装から、まだ平安の雰囲気を残していて、
   松田優作が成り上がると、”将軍”と口にしているので、
   源平合戦で武功を挙げ、地位を得たのだと、勝手に解釈。
 
  細かいこと気にする必要は無いのですが、
  美術衣装の全般、一切隙が無く。見事さを愛でます。
 
  エジソン以前は自然光を意識させるものですが、
  光と影の表現は見事です。
  35ミリフィルムに、そのこだわりを映します。
 
  役者には、歌舞伎に近い、型通りの立ち振舞を要求しているようです。
  上手な演技は望まない。
  映像として、美しく映っていれば、それで良し。
 
 
 1.3.セリフは雰囲気だけで構わない
  聞き取り難い箇所も多く、
  声を荒らげることで、喜怒哀楽を表すのみ、
  説明でなくとも、セリフは記号的な意味しか持ちません。
 
  しかしながら、
  言葉遣いは極力、時代を感じさせるように設計されていて、
  観客を誘導すること、優先しない。
  
   いいっすよ。何言ってるか分からなくても。

  音楽は武満徹、東洋音響のやり過ぎず、かつ充分な劇伴。

  ストーリーはどうせ、ブツ切りですから、
  その雰囲気だけ、存分に味わいましょう。
 
 

2.短所
 こだわり尽くした映像と、雰囲気を大事にする音響を堪能すれば、
 後は、観客が割り切るべきです。
 力を抜くべき箇所は以下。
  
 
 2.1.全てがブツ切り
  最初に気づくのが、画面転換です。
  途中、
  繋ぎの捨てカット挿入されると、
   今さら、そんなことしても、焼け石に水だから
  と声掛けたくなります。
  
  お話も、展開を説明しているだけで、
  繋がっているとは言い難い。
  
  シーン毎に映像を鑑賞し、
  ああ、紙芝居のように次の画を楽しめばよいのか。
  
  感情に導線引く気も無い様子。
  役者は突然、感情を顕にするだけで、演技はさせない。
  むしろ、人形浄瑠璃のような世界を目指しているのかなぁ。

  とにかく、様式美。
  
  感情表現も奇妙で、あり得ない。
   ハダカになってから、抵抗を示したり、
   墓を暴いてから、ぎょっとする表情など、
  その順番は逆。とツッコまざるを得ない。
  おそらく、
  観客の感情を揺さぶるよな真似は俗だと、考えてかもしれない。
  
  復讐譚なら、
  虐げられた後、一気に爆発してカタルシス。

  そんな、ありふれたドラマをヤル気は無いようです。
  田中裕子の亡骸に、執着の描写が有るのみ。
  それすら、主人公の哀惜に、感情移入させません。演技させません。

  低評価の理由に出来るのですが、
  ワザとだと思って、諦めましょう。
  私も慣れるまで、鑑賞中に時間が掛かりました。
 
 
 2.2.ヒースクリフ幼年期、青年期、成人後の描き分け

  人物の描き分けですが。
  幼年期を松田優作そのままは、流石に無茶で擁護できません。
  別の役者使った方が観客には親切です。
  ま、監督はそんなこと頓着しません。
  メイクで、加齢のグラデーション付けるなど、工夫もしません。
  
  嵐が丘で、それは無いだろうと、
  呆れましたけれど、そういう人なのでしょう。
  私も割り切ります。

  更に、
  二代目キャサリンが髙部知子で、
  田中裕子にソックリと説明セリフ複数あるのですが、
  全然似てません。
  それだったら、メイクで変化付けて、一人二役演らせたらと、
  やはり、異を唱えざるを得ません。
  
  吉田喜重は、そんなこと興味無い、頓着しない。
  ただ、場面ごとの映像美を追求するのみ。人物は二の次。
  文句は野暮ですね。
 
 
 2.3.淡泊で、乗り気でないシーン
  その中でも、スタッフと役者は奮戦してるのに、
  監督はヤル気なさそうなシーン。
  それらを省略する、工夫の余地は有ったでしょう。
  作品の完成度を上げることは出来ましたよ。
  
  折角、
  日本の様式美が評価されカンヌまで行ったのだから、
  70年代のような破綻は避ける、そんな時代の作劇だからこそ、
  より戦略的な選択と集中を行いたい。

  映画衰退期の80年代は、
  上手に捨てるという企画力には至らないか。
   ヤル気は無いけど、チャントしなきゃ。
  監督はそう思ったかも知れません。

  否、
   ヤリたくなけれ止めたらいい。
   戦いを略していいのに。
  そう声掛けたく成ってしまう。
  そういう聡さは、未発達な時代ですね。
  世はバブルそのもの。
 
 
 2.3.1.アクション、松田優作の見せ場

  殺陣担当のスタッフ陣と松田優作は頑張っているのです。
  監督は、見せ場と思ってないのか、淡泊です。
   
  クライマックスに向け、ストーリーも不自然で、
  むしろワザと、ダイナミズムを失わせる様な演出。
  男女の組んず解ぐれずでは、ヤル気満々だったのに。 
 
  松田優作なのに、勿体無い。
  本来は、最後の盛り上がりでは、
   二代目リントンと対峙し、決闘に負け、
   致命傷を負いながらも、幼馴染の亡骸に執念燃やす。
   のたうつ大蛇の如く、逃げてゆく。
  
  見せ場たっぷり出来たのですが、
  引きの画ばかり多く、躍動しません。
  活劇には興味無いようです。
  
  この後は「ブラック・レイン」一本のみと思うと、
  奮戦する主役が不憫。
  これは非難します。
 
 
 2.3.2.里の描写。記号かつ聞き取り難い
  お里のセット。美術は仕事してると思いますよ。
  が、
  監督は、生活や風俗、特に庶民のそれに興味が無い。

  反松竹の宣言かもしれない。復讐してんのか?

  毎度、石を投げられるシーンは,繰り返し。お座なり。
  村人は、何言ってるか判らないし、
  いや、
   説明セリフでいい。里のシーンは全カットでどうでしょう。
   その分、田中裕子と松田優作のエロス増やしましょ。
  
 石田えりも、息子出産から産後の肥立ち悪く、で充分でした。
 本作の展開は、ヤッておいて無理筋。妊娠でいいよ。
 原作通り、世代交代を描くべきで、
 息子が父を、おろち討伐で充分ドラマが成立したのだけれど。

 
 もっと、構成工夫すれば、
 苦手を省き、得意に集中出来ましたよ。
 吉田喜重が全権でしょうから、芸術家の戦略性は低い。
 と、私は断定します。
 構想何十年に、発想の脆弱は感じます。 
 
 
バブルの時代は、無駄に散漫とも。
作品の出来にマイナスの作用。
それを見届けるのも、また乙と、気を取り直します。
目くじり立てず、この時代の創造、美術芸術を愛でましょう。
そう観れば、楽しめます。
 
 
 
当時も、意味は全く理解せず。楽しげに聞こえた。
シェイクスピアでなく、ブロンテと知らなかった。

90’sの女性の執着と、明石家さんまイリュージョン。
 
 
 
2020.05.05 現在
 相場はおやすみ。
 20MAでスクイーズしそう。

 

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