「幕末ヒポクラテスたち」腸チフスに医者の監修は無いの? 大森一樹の集大成? やっつけ仕事はダメな邦画の典型!


企画の経緯が興味深い。
京都府立医科大学創立150周年記念映画「幕末ヒポクラテスたち」

本作は大森監督が「映画人生の集大成」として構想し、
脚本は旧知の西岡琢也氏が担当。
大森監督の不治の病による逝去により、
本企画は立ち消えの危機に直面した。
しかしながら、
本映画の創案から製作総指揮・医療監修を務めた本学 浮村理副学長は、
故大森監督の遺族や大学OB/OGから「是非、映画を完成させてほしい」との思いを託され、夜久均学長らとともに、
寄付・クラウドファンディングで資金を集めて本企画が再生。
数々の大森作品に関わった緒方明さんが監督

去年、同じく池袋Humaxで鑑賞の、
富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」と同様に、
タイアップ丸出し、多少は不自然な作劇でも構わない。

 
うーん。
本作に対する世間の評は、それなりに酷評。
それでも、
”遺族や大学OB/OG”の思いを共有してみたい。
クオリティには目をつぶるつもりで、朝イチの回を予約。
 
予備知識は充分。
時代が重なる「雪の花 ―ともに在りて―」去年鑑賞。

 
  
 《 開演》
 
 
なるほど、酷評通り、
おカネを払って観るレベルではないですね。残念ながら。
※ネタバレします。

 東映太秦のスタッフは頑張っていると思うのですが、
 柄本明の登場シーンだけ唯一、緊張感有り、
 他は、
 映像、音楽とも、特に見どころを感じません。
 (最近、クオリティ高い映像を観過ぎか) 
 
 内容は、
 原作のドラマ要素を削り、強引にタイアップに寄せる。
 面白がる要素を見つけられず、申し訳ない。
  
 
そして問題は、つまらない事でなく。

 医療関係者が関与する企画なら、
 せめて、
 感染症については、真面目に向き合って欲しかった。
 中途半端な人情コメディに終始するだけで、大変残念です。
 折角のクラファンが、カネドブではないか。
それが、正直な感想です。
 
クラファン利用するようなインディな映画には、
クオリティ低くても、志は感じたい。大変残念です。
 
 
地獄への道は、善意のレンガで敷き詰められている。と言われます。 
 「ユーフォ」に続き、

  多数決の悪用。
   専制政治の正当化、意思決定者の責任逃れに、
   民主主義の正義をうわべだけ利用。
 
本作も同様に、
 作り手は善意で、”健全ないい話” だと思っていて、
 実は悪い。
その類いだと私は、断定します。
医者が出資しておきながら、
感染症(腸チフス)の扱いに疑問です。(後述)
 
ええ、もちろん「砂の器」も、
差別を捏造し、ハンセン病を感動の道具にしてるだけと、
マイナス評価です。
 
 
大森一樹は、これで納得なのか? 大いに疑問でした。
原案は、古い東宝の映画(未見)とのこと。
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あらすじを比べると、以下。
 
 ・舞台は東海道宿場町
  →新選組など足し強引に京都に、必然性は無い。
 
 ・出世vs赤ひげ的な仁術 主人公にドラマ有り
  →蘭学vs漢方 ただカリカチュア。専門的知見も無し。
 
 ・チフス究明に高価な顕微鏡の必然有り
  →原作を流用しただけ。チフスは伝染病の記号。
 
 ・バクチの設定が顕微鏡の資金に活きる
  →いきなり医科大学設立に話が飛ぶ。
  
 ・家族が患者を連れ帰ろうとする
  →踏襲。原作からして無理筋。
 
 
ストーリーの大枠は流用し、
最後繋がり無く、大学の話に切り替わります。
プロのベテランが、これではダメでしょう。
予算やスケジュールのせいに出来ない。 
 
コロナを経験した現代人が、
よくぞ感染症を軽々に描けるものだと、
作り手が無邪気なだけに、尚更これはダメと断じました。
 
 
故人の関係者とはいえ、安易な作劇しか出来ない。
医療ドラマを扱うような人たちじゃない。

 連想してしまった。ちょっと不用意。
 これだけの俳優使う企画なら、専門の監修も入るはず。
  
 
正義を振りかざすのは、良くない事と知りつつも、
悪いと感じたものは、悪いと声を上げよう。
前回は多数決、今回は腸チフス。
 
 1.腸チフスと本作
 1.1.感染経路
 1.2.診断
 1.3.治療
 1.4.予防、対策
 
 2.現実の事件
 2.1.千葉大
 2.2.腸チフスのメアリー
 
 3.作劇は”遺志を継いだ”のか?
 
 
ポリコレ映画は嫌いだけど、
作り手の配慮が足りないように思えて、
どうしても、好きになれない作品が存在します。
 
 
1.腸チフスと本作
 医療的基礎知識を入れつつ、本作の内容と突合。
 引用は、
 厚労省検疫所腸チフス、パラチフス(Typhoid Fever, Paratyphoid Fever)より。 
 
 
 1.1.感染経路
  鑑賞中に、腸チフスは空気感染しないこと、急に思い出した。
  昔、小説で読んだ。作品は思い出せない。
   被疑者は研究者で、刑事から取り調べを受けている。
   食品にチフス菌を植え付け経過を観察していたと言う。
   刑事はそんな管理で感染しないのかと問うと、
   被疑者は、腸チフスは経口感染だと答える。
  恐らく、千葉大の事件(後述)が題材だったと思われる。

感染したヒトの便や尿に汚染された
水、氷、食べものを取ることによって移ります。
ごく少量の菌によって感染することもあります。

  劇中、
  どのような経路で感染拡大が起こるのか、
  言及されることはありませんでした。
  空気感染しないことは示されず。
  飲食物に対して、誰も発言しません。
 
  
 1.2.診断

感染して1~3週間は症状がなく、その後、高熱、頭痛、全身のだるさ、
高熱時に数時間現れる胸や背中、腹の淡いピンク色の発疹、
便秘などの症状が現れます。

  最新技術を習得した若手と、佐々木蔵之介で診断結果が異なります。
  聴診器以外に、二人の診断技術に差は描かれません。
  原作は、菌を特定するため顕微鏡を必要としますが、
  本作では、検査は想定されていません。
  腸チフスの特徴である、
  バラ疹と呼ばれる発疹が劇中描かれます。にもかかわらず、
  主人公は、腸チフスの知識が有るのに、”ただの腹痛”と診断します。
  雑なディテールで、不自然な作劇です。
 
 
 1.3.治療

効果のある抗生物質を長期間服用します。
南アジアなどでは薬剤耐性菌も多く報告されています。
医師から処方された抗菌薬を処方された期間で
適切に服用することが必要です。

  佐々木蔵之介のセリフによると、
   家族が連れて帰った患者は全員死亡。
   隔離生活を続けた患者は治った。
  抗生物質の無い時代に、どんな治療を行ったのでしょう。
  劇中では寝てるだけです。自宅とどんな差があるのでしょう?
 
 
 1.4.予防、対策

生水、氷、生肉、生野菜などから感染する可能性があります。
十分加熱調理してあるものを食べましょう。

  ワクチンは無理な時代ですが、
  せめて、衛生面の注意喚起は語られるべきでしょう。
  劇中、如何に感染拡大を防ぐか、関連のセリフは一切ありません。
 
 
 
2.現実の事件
 本作では、
  診療所に隔離すれば治り、
  自宅では死亡ただし、感染拡大については言及無し。

 ベテランが、こういう処で、専門的チェックを怠るなら、
 脚本と監督には引退して欲しいと思いました。
 この作劇に、真面目な取り組みは、見受けられません。
 悪い見本を播かないで欲しい。
 
 善意でクラファンする前に、
 医者なら、内容チェックして貰いたいのですが、
 それは現実的ではないですかね。
  
 コロナを経験した現代人として、
 気になる過去の事件も、検索でヒットしました。
 どうやら、記憶は正解のようです。
 
 本作と関係ありませんが、参考まで。
 腸チフス題材に、様々な作劇可能だと考えます。
  
  
 2.1.千葉大
  ゆき.えにしネットより、

1966年から82年にかけて、
メディアを連日、賑わせた事件がありました。
医師がバナナやカステラに腸チフス菌や赤痢菌を注入して、
知人にプレゼントして発病させたという、
千葉大腸チフス菌事件です。
容疑がかけられた医師の鈴木充さんは地裁判決で無罪だったものの、
高裁で逆転、最高裁で有罪が確定しました。
人体実験が目的かと報じられたのですが、
「実験にしては科学性があまりに乏しい」
と科学部の記者だった私は思い、調べ始めました。
その後、国立予防衛生研究所の専門家の発案で、
カステラやバナナに菌を注入する実験が行われましたが、
起訴状通りの量を植えたのに、菌は増えるどころか死んでしまったのです。
私は今も、あれは冤罪だったと確信しています。

  私には、真偽の程を確かめる手段は全くありませんが、
  大変な事件で、小説の題材になったのでしょうね。
 

 2.2.腸チフスのメアリー

  抗生物質の無い時代、健康な保菌者が居て、
  どこまで人権を制限できるのか、難しい問題ですね。
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  隔離先で、
  仕事を与え、生活を保証すると伝えておけば、
  納得感は多少違ったかなぁ。
 
  手術で100%解決するのか、信頼出来ない気持ちは、想像出来ます。
  自分の能力を発揮できる道を絶たれるのは、辛いですね。
  多くの犠牲を出してしまったのは、無知故か、
  自分を不当に迫害してくる社会に、恨みを抱いた可能性も。。
 
   
 
本作の、軽々しい扱いが、場違いな題材に思えて仕方無い。
3.作劇は”遺志を継いだ”のか?
 作品の出来は論外と評していますが、
 問題は、企画意図。
 
 出世作は、私はTVでしか、観てませんが、
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 踏まえて、 
 ”映画人生の集大成”がコレってことは、あるのか。
  お気楽なコメディが望みだったの?
 
 大学側に請われたから、やっつけたようにしか見えない。
 大森一樹が残した原稿が、
 本当に、こんなだったのでしょうか。
 
 漢方<蘭学<最新の蘭学 で技術が違うらしいですが、
  何が? 
 違いを示してくれない。
 蘭学で、生薬を栽培し、薬の調合してるらしい。
 それじゃ、漢方と変わんない。
 違いをマトモに描けない時点で、作劇が破綻してますよ。
 漢方に対しても失礼で、不快なだけでした。

 
 大森一樹の名誉も傷つけてる気がするのです。
 故人が、ライトな喜劇望むなら、やむなしですが、
 もし、
 真面目に医療に取り組む作品遺そうとして、
 死後完成したものがコレなら、ちょっとキツイ。
 出来不出来の問題でなく、
 テーマに対する取り組みが。
 
 あるいは、
 用意の金額で、脚本も、全く違う質になるのか、
 
 
 生前、
 仕事仲間に恵まれなかったのだろうか、、
 そう思ったら、泣けてきます。
 
 
時間と、おカネに余裕が有り、”泣ける”作品を確認したい方には、、
 

 
それでも、お奨め出来ない。。
”邦画がダメ”と言われる理由の典型は、
作り手の、”これくらいで良いだろう”という、やっつけ感。
 
 
 
やるせないモヤモヤを、今回は告げてしまった。

 
 
 
2026.05.12 05:00現在
 まだ、バンドウォークするかな。
 利確の売りで、20MAまでは戻っても、不思議無いと思ってる。

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