チチチッというヤモリの鳴き声で起こされてしまった。
まだ夜は明けていない。電気も止まったまま。
どうしようもねぇよ。
外はもう、虫や鳥の声が聞こえるのだが、
真っ暗では身動きが取れない。
そしてなにより起きるのも億劫だ。
そうとう疲れていると分る。
多分精神的なものだろう。
ラホールやカラチと違って隔離された感がある。
どうなるか分からない不安感があった。
実際、ちゃんとラルカナに戻れるかどうかも分からない。
尿意を覚えて、手探りで用を足す。
多分、ダイジョブだったはず。的は外してない。ハズ。
若干自信は無いが、手を洗って、もう一度まどろむ。
夜明けまでは、起きていても出来ることは無い。
今度は正真正銘の朝が来た。
先ほどよりは体が軽い。8時半までベッドでウダウダして、
意を決して起きる。歯を磨く、シャワーを浴びる。
荷造りをして、チェックアウトだ。
食堂に行き、ペットボトルに水を貰い、鍵を返す。
戻ってくるから、荷物預かってくれと、
貴重品以外を詰めたバックパックを預かってもらう。
トランクルームにキーを掛けてくれた。
さあ、今日はストゥーパ周辺を見て回ろう。
モヘンジョダロの朝は普通。掃除したりして朝らしい光景。
まだ日差しは厳しくない。
改めて、ストゥーパを登る。頂でぐるりと一周。
東西南北を「歩き方」のマップで確かめる。確かに、影が差す方角が西だ。
東は遺跡が点在して広がり、インダス河に至る。
南北の境界は曖昧だが、
DK地区やHS地区から垂直に西に線を引いたあたりはテリトリーだっただろう。
本丸から東に城下町が拓け、接岸する。領土の外側は鬱蒼とした森。
そんな光景を思い浮かべる。
安土城から城下を眺める信長もこんな気分かもしれない。
さて、本丸の西側を眺める。
マップによると、学堂、倉庫、浴場などがある。
あ、高いところから見て今頃気付いたが、
西側はすぐ支流だ。1kmも無いんじゃないかな。
遠くに城壁の名残りと思われるレンガの塀が見える。
そうか、この都市は川に挟まれていたんだ。
本丸から南西の角に砦跡があるのだが、
西側は本丸に近い位置に防御線があったのだろう。
西南の角から、真っ直ぐ南から北へ線を引いてみると、
山のような盛り上がりが分る。
マップには南西のL地区の方に集会場とあるが、
真西のゆるい傾斜で扇型の広場の方が、むしろ劇場や集会場という趣である。
まつりごとに類することは、この西の裏手で執り行われていたのではないか。
感触が掴めたところで、ストゥーパを見直す。
形は仏舎利を納める塔。タイでもこんな形。
正面が東だということもスグ分る。階段らしき彫込みがある。
問題は、南に中心がズレていること。
本来であれば、仏殿、仏像、仏舎利は東に一列に並ぶ。
しかしこの配置なら、ストゥーパの北側に像があったはず。
東からは横並びで見ることになる。
現在、ストゥーパに登るときも北口からなんだよね。
ストゥーパは2世紀ごろ建てられたという。
もともと南北に長い長方形の神殿の上に無理やり、
仏教の様式をはめ込んだのではないか。
行政機関は西の裏手で、王宮的なものが北側にあったのかもしれない。
入り口は北からで、王や神官はそこから出入りした、そんな構造ではないか。
ストゥーパのあるところが元々王宮と考えることも可能だが、
神殿があったとこにストゥーパ建てる方が自然である。
古代の人が無宗教というのも考えづらい。
もっとちゃんと広域に掘り起こせば、いろいろ出てくると思う。
それから、近くで見ようと西側の方へ降りてゆく。
途中、スタッフの方がゴミ拾いをしてる。
マナー悪い人達だねぇ。と言うと彼も頷く。
宗教が違うからかもしれないが、
もうちょっと文化遺産に対する敬意があっていいものと思う。
もう特筆すべきこともないのだが、
相変わらず、井戸がそこかしこに掘られ、配管が張り巡らされている。
今のパキスタンとは違い、水に潤沢な都市だったのだろう。
レバノンの国旗が杉なように、昔は砂漠も森だった。
モンスーン地帯の河岸である。周りはジャングルだったはず。
ま、私にとっては、違う意味で、今でもジャングルだが。
そろそろ日も高い。帰るとしよう。
宿まで戻る。シェフなスタッフの方に帰ることを伝える。
荷物を受け取って、ラルカナへの帰り方を聞くと、
ポリスのオフィスへ行けと言われる。
ポリスなオジサンにラルカナに帰りたいと言うと、
待ってろと、オフィスの奥で待機するように言われる。
一時間くらい待っただろうか、
連れてくからと、軽トラなパトカーに同乗。
近所のバス停で降ろされた。程なくミニバンが来る。
こいつをラルカナまで乗せってくれと言ってくれたみたい。
ミニバンは満席で、屋根に登る。
爽快でちょっと危険。
見晴らしよく、灼熱の下、強い風を浴びる。
ハンドル切り損ねて、ひっくり返ったらダメだろうけど、
一人旅だし、そのくらいが丁度イイ。
誰も頼る人はいないけど、
なんとか、お世話になりながら、生きて前に進む。
決して平坦ではないけれど、
人生は旅だと古人は言うが、きっと、そういうことなんだろう。
行きと同じ、田園風景を眺めながら、おシリちょっと痛くなりながら、
ラルカナに到着50ルピー。リキシャの客引きに会い、「ペリシン」と言う。
争奪戦になったけど最初の人が勝ったらしい。50ルピーでホテルまで。
ホテルで「ただいま」もう一泊お願い。
明日はアリさんに会えるかな。
あと、両替したい。
と伝える。とりあえず、シャワー浴びて、部屋でリラックスしたら。
マネージャにそう言われ、言われるままに実行。
寒いのでエアコン切ってもらう。リモコンは無い。
何の為のエクスペンシブな部屋は分かんないが、健康第一。
2時間くらい寝ただろうか、受付に降りて、両替の依頼。
30分以上ワチャワチャしてるが、
レートが0.9で交換すると決まったようだ。両替屋が無いので宿が代行してくれた。
千円札5枚出して、4500ルピー受領、そこから2000を宿代に払う。
まだ明るいし、散歩に行くというと、
護衛の警官つけるから待ってろという。過保護である。
そこまでには及ばない、明日、散策する予定だし。
今日はここのレストランで飯喰って寝ます。
チャイ二杯飲んで落ち着いてから、
チキンビリヤニとチキンベジタブルスープをオーダー。
スープもシングルサイズは作れない、ハーフからだと言われる。
相変わらずボリューミーなことは覚悟した。
多分、一度に作る量の最低がこれくらい、で作ってるんだろうな。
丼飯2杯ぐらいは有に喰ってる。でも完食した。やっぱモッタイナイ。
あと24時間くらいは食べなくていい。
ピーマンが嫌いだとよけたりするのは論外だが、
残すのも嫌いだ。貧乏性だね。だから太るんだよ。
自分に出されたものは全部味わっておきたいと思う。
苦いのは嫌だというのは子供の味覚。
様々な味のハーモニーを味わうのが料理である。
甘けりゃ旨いというは、楽しければ楽しいというようなもの。
平面的な味は物足りないと思うものである。
酢豚のパイナップルが嫌いとか言う奴は、
一生、簡単なもんだけ食ってろよ。
酢の酸から果実の酸まで、
酸っぱさと甘さのグラデーションというものが分からず、
固定観念で食べる人達。安全で退屈で灰色な味覚。
ああ今、望んだ人生を生きてると実感が迫る。
脱線した。
今日のビニヤリはミントが効いてる。レーズンも入ってるだろうか。
ややケチャップ味で、チキンは後から追加方式だな。
こういう料理はやはり長いお米じゃないと。
もう一杯チャイを頼んで、部屋に戻る472ルピー。
ネット接続出来るはずだが、今日は奥の部屋で不安定。
かつ、スグに停電するので、動画アップは無理かな。
何とかメルマガくらいは配信したいもの。
明日も順調に行きますように。
とは言っても、そう願わずにいられない。
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