原題は英語でもないのに、なんでこんなタイトルなのだろうか?
広報のヤル気を疑ってしまう。
米アカデミー賞で評価され、巡り巡って日本で漸くシブい配給が実現したから。
と、正解を予想。
↑この配給の予告編が、作品の内容を一番良く伝えている、と今は思う。(後述)
微妙な褒め方しかされていない様子。作品の質がアレだとしても、
鬼滅の猛威が吹き荒れる夏休みならではの、逆に希少な体験かも、と予約。
南米の映画は、なかなか掛らない。
コンドル作戦のことは、既に予習済みで、
70年代ブラジル軍事政権に抹殺された元議員と、
家族のその後を描いた実話を、巨匠が映画化。
妻を演じた主演女優の演技は、高く評価されている。
その程度の予備知識だけで、劇場に向かった。
上映時間の137分は、退屈はしません。
子役含め、役者は凄い。
しかし、伝えたいことはよく分からない。
”アカデミーより国連、NHKの番組” という世間の評に同意してしまう。
ドキュメンタリなのかと見紛うほど、再現性に拘った映像なのは分かる。
でも、
社会派というステレオタイプな評とも、実際は違う。
艱難辛苦の末、名誉回復を勝ち取ったという、
”危機にひんしてからの逆転勝利”という物語に出来るのに、
作り手に拒否された。
物語は存在するのに、私の知っているフォーマットに嵌まらない。
なんといっても、理解不能な衝撃のシーン。
夫が公安に連行され戻らない(拷問死を隠蔽と予想される)、
軍政の横暴を訴えるため、記者が取材に来る。
記事に使う家族の集合写真を撮ることになり、
笑う。妻も子ども達も。
平常運転で笑う。親戚が集うリオの浜辺のシーンと同様に。
”もっと深刻そうな顔して” と記者が訴えるのは当然で、
これでは、観客の感情移入が難しい。予定のドラマが成立しない。
何で笑うんだろう?
左翼的主張強めな監督なのに、
本作は社会批判でなく、個人の生き方が主題と、
インタビュー↓にて明かす。
サレス監督は、「とてもパーソナルな映画です。最初は、軍事政権下という困難な状況にもかかわらず、生き生きと喜びに満ちて暮らす家族の物語です」「しかし、そこに運命がもたらした出来事が起こり、家族は大きな喪失と向き合うことになります」「この映画は、そうした喪失をどう超えていくのか──どうやって生き続け、学び、抗いながら、再び人生を抱きしめていくのかを描いています。つまり、これは何よりも<生きることそのもの>についての映画です」と本作について説明する。
ムズい。
予備知識無しで、この意図は読み取れるだろうか。
無理だった。
ポジティブ心理学をちょっと学んで、やっと理解した。(と思う)
一筋縄では行かないな。
因みに、
↑ポジティブ心理学と自己啓発のポジティブは別もの。
私の人生とは真逆で、無理ゲーな境地。
どんなに外部環境が変化しようとも、家族の在り方に影響は与えない。
幸福の要素は減っていない。
単純に”母は強し” というような表現では、済ますことは出来ない精神性。
理不尽に屈することもないが、必要以上に声高に主張もしない、
そして、
関係が無いことに影響は受けない覚悟を、静かな微笑みで表す。
本作は、相当に成熟した人間の内面が描かれている。
ということか。。分かりにくいって。
主題を理解した上で鑑賞したとて、感動出来たかというと、、
多分ノー。
”家族っていいな”と思うのなら尚更、
尊厳や自由の追求は、独りで済ませたい。大切な人を巻き込みたくない。
両立させようが無い。
そもそも、
夫の元議員は、
一旦亡命したのに、
家族と一緒に軍事政権下のリオに戻って来て、
危険な橋を渡る。
何で?
やるなら独りで戻れよ。家族の安全は確保しとけよ!!!
亡命先で、夫婦で、ちゃんと話し合っておけよ。
妻も、
夫の死がほぼ確実と知ったなら、
せめて、そのタイミングで、
子供達と情報共有すべきではないのか。幼いとはいえ分別は有る。
その上で、リスクマネジメントに当たるべきと思う。
相手に多大な影響ある事由を自分だけで決定して、処理しようとするのは、
夫婦共々ちょっと傲慢じゃないかなぁ。子供は所有物じゃないのだし。
リスクに鈍感になるのは、ポジティブのマイナス要素である。
生き延びる為には、
ハッピーなことは忘れてもいいけれど、
悪いニュースほど注意深く、大事に扱うべき。
人間は幸せに成れないよう、脳の構造上出来ている。
と習う。
マイナスの感情のダメージを、減らす訓練には努めるけれど、
宿命に抗うような真似はしない。私は。
理解は出来たとて、この物語に共感は無理そう。
確かに、
演技はセリフでなく情感を伝え、観る者を引き付けて離さない。
ディテールに拘った映像は、時代の質感をしっかりと感じさせる。
(三池監督みたいにアップ多く、カメラ動くので疲れる、映画的か疑問も残り)
うーん、褒めはそこまで。私の限界。
実は、
世の中の評価も、
似たり寄ったりだと推察する。一見、専門家からは絶賛っぽいけれども、
賞のハロー効果的な同調と疑っている。
なぜなら、
商業スジ含め、褒め方が大抵は、間接的だから。
本作の感動をダイレクトに伝えるものは、有るかな?
アメリカの配給も日本も、予告編はミスリード気味。社会派の映画かと見紛う。
”解説”は、概ね以下の3つに大別出来そう。それで本当に感動しましたか?
1.70年代ブラジル軍政の人権弾圧への問題意識
2.実話の再現にトリッキーな工夫が施されていること
3.巨匠のフィルモグラフィの解説と本作の位置づけ。
1.70年代ブラジル軍政の人権弾圧への問題意識
歴史的経緯を最初におさらい。
この動画↑が偏り無く、よくまとまっていると思われ。
左翼政権は”大きな政府”政策で財政破綻気味。
CIA跋扈するコンドル作戦の時代、
1964年に、カステロ・ブランコ将軍のクーデター起こり、軍事独裁政権時代へ。
左翼ポピュリズムから親米の資本主義へ。
人権弾圧激しく死者累々。一方で外資導入、市場経済への復帰を果たす。
本作の時代は、経済成長と苛烈な弾圧のメディシ政権の頃。
民政移行は1985年。神様が日本に来るとは思いもしない。英国人は関係無い。
まあ、ライバル隣国のアルヘンよりはマシ。
紆余曲折あり、
2023年、左派ルーラ政権↓の再登場、本作公開と時を同じくする。
車椅子の男性↑が原作者のマルセル君らしい。
因みに劇中、
父親が捕まる前、ロンドン留学中の長女と家族は会話し、
”ビートルズと一緒のジルベルト・ジル” とある。
ジルはロンドン亡命中と分かり、軍政の言論弾圧も始まっていると知れる。
↑政治批判でなく、音楽の幅を広げているのが異能。
トランプ再選からの右派の台頭より、左派の言路弾圧の方が私は怖い。
世間の評やメディア関連の評を見聞きしても、リベラルによる統制は順調と思われ。
1.1.”知らなかった”、”許されない” という定型
1.2.左派は左派を総括しない
1.3.リベラルの行先は、人民の楽園ディズニーの表現の自由
彼らをより危険視している。
1.1.”知らなかった”、”許されない” という定型
巨匠のインタビューでも言及されていた、「聖なるイチジクの種」は観ないの?
過去の他国の人権弾圧が許せないなら、せめて、
現在進行型の人権弾圧で、ノーベル平和賞受賞の話題は知っても、
罰当たらないと思う。
同時に、最近のニュースにも反応しないのかな。 疑わしきは、無慈悲に殺す。
人権弾圧続くイランが支援するハマスを、
ガザから追放しようとするイスラエルが、
アルジャジーラの記者(イスラエルはハマスの下部組織リーダーと主張)を殺害。
日々の生活に関係ない話題に関心が無いのは、普通のことだと思うけれど、
定型な反応を見聞きしてしまうと、
与えられた情報だけで判断する、戦後教育まんまのファスト思考に見えて、
いつか”騙された” とか言いそう。
人間は空恐ろしい。
1.2.左派は左派を総括しない
現政権を批判する前に、バイデン政権の総括はしようよ。
何が良くて、何が悪かったのか、
選挙で負けるだけの理由は無いの?
戦争は減ったの? 反戦だったはずだけど。
韓国でも、ブラジルの巨匠でも、
左派は右派政権のダメな点は指摘するが、左派政権の総括はしない。
昔は格差拡大に反対だったはずだけど、
左派政権で庶民の生活は良くなったの?
善悪二元論を好むのは、トランプ批判に誘導する手段なのだろうけれど、
”ソビエトの核はきれいな核” と、ご都合は伝統芸。
右翼政権の虐殺は悪い虐殺で、
スターリン、毛沢東、ポル・ポトはきれいな殺人、
とか、
イーロン・マスクの商売は汚くて、
ジョージ・ソロスの金儲けは善。
などと、言い出しかねない。
そんな洗脳する人とされる人で、今のリベラルは構成されていると疑っている。
1.3.リベラルの行先は、人民の楽園ディズニーの表現の自由
言論人という単語は死語だけど、
クリエータ達が、リベラルの言われるがままなのは、恐ろしい。
「白雪姫」のような作品作るようになってから、声を上げても遅いよ。
現在のカリフォルニアを是とするなら、軍政下でも表現の自由を謳歌出来る。
そんな楽園の表現の自由は、
オールドメディアも、映画の資本も味方にした、検閲される自由。
人民の楽園と信じて、北朝鮮に引き揚げる戦後の人達も多数居たらしい。
今の日本では、
自公政権にノーを突きつけたくとも、
維新や国民民主は組織がダメだし、
もっと左派なら石破政権と同じかそれ以下だし、
保守中道を選びたくとも、
もう参政党まで飛び越える以外選択肢が無い。
そんな参議院の結果だった。
↑動画でも、
単に歴史の教科書をなぞるだけでなく、
政治・経済に踏み込んで言及する。出来るだけの造詣がある。
イデオロギーに染まらず、偏らず情報提供してくれて、
一番参考になる。
参政党か、多様性の検閲か、
二択を迫られる時代になったんだと実感。
ジャンボタニシは悪だと思うけど。
TBSが公平だとは思わない。
2.実話の再現にトリッキーな工夫が施されていること
私は最初、特殊メイクかと思いました。
主演フェルナンダ・トーレスの年老いた姿は、
母親のフェルナンダ・モンテネグロが演じる。
ああ、家族の物語だから、ワザとヤッてるんだと後で知る。
フィルムを変えて、時代の質感を出すのは、
よくある手かもしれないが、巧み。
私には分からないことも多いと思うのだけど、
時代の再現はディテールまで行き届いているはず。
個人的には、
ワーゲン(だと思う)のカーアクションには驚いた。
70年代の雰囲気を完全再現して、劇中、
家族がリオから撤退するところまでがメインで、
そこからはもうエピローグ。その後の経緯を再現するのみ。
この構成がトリッキー。
これから、
政府に情報開示を請求する、活動家として戦う姿を描くのかと、
観客は身構えると。
えっ、これで終わるんだ。。
社会派とは、ちょっと違う映画だと知る頃には、2時間がもう過ぎている。
私は本作のテーマに思い至るまで、1日以上掛かった。
いろんな時代の、家族の写真や映像が映されるから、
記録性に意味を持たせようとしてるのは分かるけど、
”だから何なの?”
その時、声を上げなきゃ、意味無いっす。
死後、風向きがどう変わろうと、知ったこっちゃねえです。
左翼なら言論の自由を守ると思っているのは、左翼だけ。
多様性を認めない価値観は認めない多様性の世界。
原作の肌の色が塗り替えられてしまう現実は、
軍靴の音よりよっぽど、今目の前にあるディストピア。
クリエータは、
トランプ批判はしても、
多様性の強要が、表現の自由を侵害してるとは訴えない。
本当に、当時の軍政を批判するべき人達なの?
オールドメディアも映画資本も押さえて、決して少数ではなく、権力の側。
米アカデミー賞受賞のお陰で配給された作品とはいえ、
声を大にして言いたい。
言論統制する側に与しておいて、
権力批判はズルくないか?
とりあえず、
ディズニーに声を上げなかった、ブラジルの巨匠を覚えておく。
時代の感覚が止まってる。と解釈している。
3.巨匠のフィルモグラフィの解説と本作の位置づけ。
この動画↓が詳しかった。
けれど、知らなくても鑑賞に問題無い。
作品の解説とか感想とは、別もの。
それはそれで、意味有るのだろうけど、鑑賞の足しには成らなかった。
参考文献 ポジティブ心理学について
概念は動画↓で、
人間関係の捉え方は書籍↓で学ぶ。
どろどろトライアングルから抜け出すには、まず気づく必要があります。
そこには《犠牲者》《迫害者》《救済者》が必ず登場し、相互に絡み合いながら、悪い関係を繰り広げているからです。
ああ、ヒロインは《犠牲者》↑で在ることを拒否したから、笑ったんだ。
相手がいいことを話してくれたときこそ、じつは《犠牲者》と《迫害者》の関係を改善する絶好のチャンスです。
相手のいいニュースに関心を持って一緒に喜ぶ
「建設的積極的傾聴」(ACR)というコミュニケーションスキルを使うと、人との関係がとてもよくなります。
《犠牲者》は、何か問題がないと人は自分のことを見てくれないと思っているところがあります。ですが、このACRの傾聴を続けるうちに、
「自分にいいことがあっても人は離れていかない」 と気づくようになり、
「いいことを一緒に喜んでくれる人もいるのだ」 ということもわかるようになります。
こうして、どんどん悪いことを見るクセがなくなっていきます。
なにげに凄いこと↑を言う。幸せで在る秘訣↓を説く。
《犠牲者》は自分にないものばかりをスキャンするくせがついています。
また、幸せになると人とのつながりがなくなりそうと無意識に恐れています。その呪いを解く最強の方法が、「What’s good?」とACRなのです。
反政府運動の闘士になるのではなくて、人生を創造的に生きたのだろうな。
幸せに淡々と生きるパートは、映画には成りにくいのでキング・クリムゾン。
この曲↑、《犠牲者》の歌だったんだ。知らなんだ。
映画人に左翼は多い。それはそれで知ったこっちゃないが、
ディズニー的なポリコレ検閲が広まっても、
表現の自由を守る立場からの表明は無い。「白雪姫」が公開されても。
アカデミー賞を喜ぶ彼らに気骨は無さそう。と改めて認知する。
リベラルによる支配が圧倒的に怖い。トランプ政権よりも。
幸いなことを探すと、現代の日本人の私には投票権が有る。
言論の自由を守りたいので、中道保守に政権維持して欲しい。
が、石破政権に否定的なら、もう一足飛びに参政党。
それでも、良いところを見つけて、どこかに一票投じます。
ポジティブ心理学には、地獄を追い出す効力が有る。らしい。
ロンドンに亡命したお陰で、彼は世界中の音楽を吸収することが出来た。
2025.08.17 23:30現在
想像を超える上昇についていけなかった。爆死。
そんなに、先行き楽観視したものなのか。
敗北を認めて、地道について行くしかないですね。