早稲田松竹の特集↓の最終上映日に、予定を間に合わせた。
名画座の上映は、気付くのが遅れることもあり、「ナチュラル」と連投。
体力が尽きるケースも想定し、通路寄り後部にを選ぶ。
予告編程度の知識のみ。歴史の順で2作品連続で観る予定。
予習無し。日本統治下の台湾が舞台と知る。風景は本物と分かる。
《 1本目 開演 》
うーん、
監督が影響を受けたとされる、
昭和の松竹映画のようなテイストと同じく、
ほっこりと、観終えることは出来。
当然ながら、
台湾の田園風景は美しく、
日本統治化の様子にもリアリティを感じ、
貧しくも、おおらかな農村の生活に一息つく。
89分なら手頃で、悪くない体験であります。
とは言え、
コメディ要素はどうでしょう?
出来栄えに微妙と思える箇所もあり、
1987年台湾公開の当時、
単独で日本のミニシアターの話題に成る程、でも無かったかなぁ。
若干の残念を覚えて、一旦休憩。
ネタバレ気にせず、以下の項目に分け感想。
1.コメディ要素の不調和
2.自然な子役にマヌケな父親
3.コメディリリーフは憲兵が
4.タイトルとメタファー
5.日本人として
6.監督の客観(2本目思えば)
1.コメディ要素の不調和
人情喜劇が得意とは思えず、、
ドタバタで笑いを取りに征く。
与太話(愚かな人物の出来事)オンリー。
ギャーギャー喚いても、
笑いの誘導が達者でない。
役者さんの与太郎演技は上手なのに、
笑えない。
演出の問題だと思われ。
ダイアン津田のなら、滑稽に至るまでの前フリが巧み。
が、本作。
王童監督、笑いのセンスが無い。
感情の行き場が見えないまま、マヌケなパート始めてしまう。
ユーモアと形容されるが、それは高度過ぎて、
プリミティブな処で笑いを獲ろうと頑張ってしまう。
無理やりマヌケな人物造形と、その言動は、
止めたら?
全体のトーンは、(本人は小津安二郎の影響と言っても)
モロ、侯孝賢。
こちら↑は徹底してる。
が、
本作は、ドタバタと調和しない。
ゆったりとした気分で鑑賞しようとすると、煩く騒ぎ立てる。
下手だなぁ。。とっても勿体ない。
抑制して、
そこはかとない可笑しみを醸すとか、
本当は出来るところでも、
ワチャワチャ。騒いで獲物を逃す。
若い頃、良き手本に出会って来なかったのだろうか。
それならそれで、笑わそうとせんでも。
2.自然な子役にマヌケな父親
農村の描き方、特に子供達は活き活きと自然で、
そのまま撮りゃイイのにと、毎度思ってしまう。
そこに、
父親に知恵の足りない与太郎役をヤラせてしまう。
しかも善人でもない。ただ愚かなだけ。
いつもイライラしている。
なので余計に笑えない。
子供も妻も姑も不憫に思えてしまう。
田園の中、貧しいながらも、子供達はすくすくと育つ。
一方で働き手は、日本軍に徴兵されてしまう。
遂に牛まで接収するくせに、
未来人の私は、もうすぐ撤退すると知っている。
その日常を描くだけで、いいよ。
後は、
不発弾エピソードの入れ方だけど。
父親は、
浅はかで在るべきだとしても、
情緒不安定なキャラに造形しなくても成立する。
寧ろ寡黙な方が、まだリアリティ有る。
善良でちょっとトロい程度で充分だった。
3.コメディリリーフは憲兵が
憲兵は、水野晴郎に似て山下という名で。

絵に描いたような駐在さん役。
コメディリリーフは、ここに全乗っけで構わない。
ホントは善人だけど、
体面ばかり気にして偉そうなのに、
上にはヘコヘコしてしまう。実力は無い。
滑稽な姿は描き易いし、権力は笑いの対象に都合良い。
そこで、
不発弾を上官の役所まで届ける道行きは、
コメディとして成功してる。
何故なら、
ギャグのアイデアが優良で、
父親のエキセントリックな言動も緩和され、
そして、
駐在さんが能く機能する。
威張るのにヘナチョコな滑稽さ。
能天気に記念撮影する笑顔。
水野晴郎の愛嬌。
やっと、ようやく、どうやら、
人情喜劇らしいユーモアを成立させた。
後は、
至近距離の不発弾に狼狽する上官の姿に、
観客の感情を同調させ、そこだけドタバタすれば、
もう充分なのに。
不自然に笑わせようとしなくても、
それで成功だったのに。惜しい。
4.タイトルとメタファー
原題 / 英題 / 邦題
が、
稲草人 / Strawman / 村と爆弾
何で、なの?
タイトルを変えた意味が分からない。
”案山子” でいいじゃん。ひらがらでも、カタカナでも。
日本の統治も、憲兵も、結局は見せ掛けで、
飛んでくる物を追い払うことが出来ない。
実力は無い。見掛け倒し。
カカシとは暗示的で、邦題は良くないと思う。
それに、
田園風景へ郷愁を誘うのに、ただ”村”は無いでしょ。
ま、作品の叙情が弱いと判断して、
分かりやすいタイトルに変えたのかもしれない。
それも含めて余計。
5.日本人として
複雑な気持ちになります。
戦後生まれの個人に戦前の国家の責任は無いと、
突っぱねることは可能でも、
”日本人として申し訳ない”
という感情はどうしても湧いてしまう。
関係無いけど、山下という名前から、
戦争マラリアを思い出してしまう。
厄災を追っ払うどころか、
ホントに役に立たない。責任取らない。
と言ってる私だって、君だって。
6.監督の客観(2本目思えば)
三部作の最初に位置する本作。
段々と長くなって、二作目の「バナナパラダイス」は148分。
王童監督は大陸生まれ。
日本統治下の台湾はまだ部外者。
その為、
蒋介石の国民党が台湾へ落ち延びて来る様を描いた、
残りの2作に比べると、視点が中立客観。
やや思い入れが弱い。
それが、プラスに働いたと評価しています。
本作だって、構成が上手いとは言い難いが、
89分と程良く纏まって、完成度上がる。
段々と、映画下手になってるんじゃないかと、疑ってしまう。
やがて、
場内が明るくなり、まだまだ余力充分。
コンビニでコーヒー買って、2本目に挑みます。
《 2本目 開演 》
飽きはしなかったけど、少しウトウト。最後まで観た。
悪い処が浮き彫りに。
そもそも引き出しが少ない上に、映画がより下手になってる。
もう、項目に分けません。
ただ感想、思いつくままに書きます。
初手、
マヌケな同郷の兄弟分2人が主人公というのが、
もうキツイ。
正常な分別の範疇から逸脱した言動で、
笑わせようと空回りしている。
やがて、
パートナーが出来て、その連れ子も居て、
それでも主人公は、父親の自覚も無く、ただ愚かなまま。
別に、無垢な善人でもない。
主人公は先天的な疾患を抱えているのかと疑ってしまう。
関わる人達が不憫過ぎて、笑えない。
退席が正解だったかも知れない。
それでも、
はるばる大陸から落ち延びて来たという、
監督の複雑な想いダダ漏れは、見応え有り、
耐えてしまいました。
身分偽って、ドサクサで流れ着いた大陸の人も多数居たのでしょうね。
日本人としては、第三者的な視点で眺めてしまいました。
高市首相の発言に絡み、キナ臭くもあり、
逆に、
共和党政権になって、水面下で、
事情が大きく変わったのかも知れない。
まあ、当時のように、
台湾解放を能天気に喜んで居られるような現状でもなく、
台湾人同士は団結必要かもしれない。
(台湾側の主張の報道は少なく、不明。
マスコミは、人民共和国一辺倒の平常運転だし)
と、
感慨は沸きつつ、不満はやはり残り、
背乗りみたいなエピソードを、コメディにするには下手で、
論点整理した上で、ちゃんと普通にスリリングに描いてよ。
主人公を与太郎にするのは失敗。
外省人としての複雑な想いをそのまま、ぶつけりゃイイのに。
下手なんだから。役者が上手くても無理。
最後駆け足で終わり、2時間超えでグッタリ疲れました。
構成も上手くない。予告編が編集巧すぎ。
頑張らずに生きてゆきたい。
2025.11.16 現在
20MAを潜る、下落に転じるかもしれない。
それなら付いてゆこう。
月曜を待つ。
