巨匠ジャ・ジャンクー(賈樟柯)の名作と誉れ高い、
「長江哀歌」を鑑賞するチャンス有り、早稲田松竹へ。
困憊しなければ、二本立て制覇のつもり。
祝日でもあり、ほぼ満員。どうせならと一番うしろの席を選ぶ。
劇場は傾斜充分で見やすい、万が一のトイレも万全だ。
予習無しで臨む。無謀だったか。
日本映画「ふるさと」(アマプラ視聴可能↓)の様な内容かな。その程度の認識だった。

三峡ダムの存在は知っていて、ヤバい噂は、ときどき聞く。
《 開演 》
2本とも、ネタバレ前提で感想を。
1本目、有り難いものを観ました。
貴重かつ疲れない画が、何より有り難い。
”無いとイイナ” が在る。(演出、撮影、ストーリー、音楽)
出来れば、大画面で観たい。チャンス逃さずに良かったな。
ほぼほぼ全部本物、これはスゴい。
主人公はじめ皆、役者を使わず労働者の筋肉。造り物では無理。
(その地の素人さんらしい)
それから、
30代前の女優さんと思しきヒロイン登場。
すれ違いものかと最初思ったが、
どうやら、
物語は2軸あり、(前者がメインだった)
労働者のオジサンが、別れた妻の住所を訪ねる。
そこは既に湖底に沈んだが、男は三峡に残り、
解体の仕事を請けつつ、行方を探す。
一旗揚げると三峡に向かった夫からは、
2年も連絡が無い。女は現地で夫を探す。
知人のツテで漸く出会うと。。
ドラマは淡々と、それぞれ尋ね人の行方を追いながら、
失わゆく三峡ダム↓周辺の様子が、遠慮無く映し出される。
周辺住民の立ち退きは、強制的にでも進み、
建物は取り壊しの最中、
デベロッパーの利権も時折、伺わせる。
(赤裸々に国情を映すので、監督は当局に目をつけられガチらしい、)
日本のマスコミでも絶滅してしまった手法で、
映画は、客観的に事実を提示することに徹していた)
おもいっきり、ドキュメンタリー色強い作品と知れる。
ま、
そこそこのドラマ演られるより、(アリガチな、伏線回収ものでなくとも)
三峡ダム開発の様子を、
まんま映した方が、映像は歴史資料的な価値も高いはず。
映像が残らなければ、
VFXで再現することさえ出来ない。
(逆に本作の一部で、VFXによる遊び心を発揮。それも楽しい)
古伊万里の大皿には、フグ刺しくらいの料理の見栄えが丁度いい。
絵を描くような色彩の料理なら、普通の白い皿に盛るべし。
この場所、この時代しか撮れない情景を、
よくぞ、余す所なく披露してくれたと満足。
余計なことしないのは、勇気が要るし、センス無くば出来ない。
共産党の国とは言え、
商業的成功は求められるだろう、
本作は、中国で生まれた異能(な夫婦)↓が、
決定的瞬間に立ち会えた、稀有な映画。
(今は規制厳しく、日本に来れないかもしれない。)
劇伴がごく一部に留まるので、最初に好感しました。
なんといっても、
逆光で自然光のまま、
会話を長回し、カット割らない。
芝居がかった演技はしない。(無理だし)
演出もストーリーも小賢しい事、一切しない。
普段、
邪魔クセーと、ストレス感じるものが無い。
ノイズが無いので、観てて疲れません。
それでいて、
ただ生活のリアルが伝わるだけでなく、感情移入できてしまう。
サブのキレイ目な妻の選択には、納得して観る。
メインの肉体労働者のストーリーは切ない。
別れた妻の居場所を、
十年以上ぶりに突き止めた男、
その心中推し量ってしまう。
失われゆく風景に溶け込みながらの、余韻に浸ってしまう。
ベネチア金獅子賞も納得でございます。
アート系で、当局に睨まれつつも、
名声得て、一安心でしょうか。
その後も創作を継続できて、良かったね。
コーヒー休憩でリフレシュし、2本目にトライ。
《 開幕 》
「新世紀ロマンティック」
これ、逆の順で観たら、なんだか分からないまま終わったかも。
途中で、
昔の映像を繋ぎ合わせていると知る。
過去作品から引用されているのだと。
映像の中の女優さんは、全て同一人物で、
特殊メイクでもなく、本当に時間が経過している。
整合性取れてないように見えて当然で、
恐らく、
最近の分(コロナ禍、カタールW配あたり)だけ、
本作用に追加撮影したはず。
あとは編集作業。
すげえ、っちゃスゴいけど。。。
ダサうるさい音楽も敢えてなのだろうけど、キツかった。
直近の映像は普通。悪く言えば通俗的。
監督のフィルモグラフィを既に知る人は楽しめただろう。
予備知識が皆無では、迷子も已むなし。
25年5月公開の世間の評でも、
高評価は、やはり過去作知る人。
そりゃそうよ。
私もSFかと勘違いしてたよ。把握するだけで手一杯。
女優さんが無言なのは、気づきもしなかった。
だって会話のシーン無いもん。特に意味見出す必要あるんか。
そんなことより、
現在パートはやっぱ冗長かつ、ありきたり、
どの国でも見慣れた開発後の風景と、
TVドラマ然とした後日譚。
もう、昔のような撮り方は出来なくなってる。(検閲が厳しいのかも)
普通だ。
ホメている↑けど、
初見で歴史の重みを感じられる観客は稀だと思うよ。
時系列順に、引用される作品(タイトル 原題/英題/邦題)は、
「任逍遥/Unknown Pleasures/青の稲妻」
「三峽好人/Still Life/長江哀歌」
「江湖儿女/Ash Is Purest White/帰れない二人」
そして、本作。
「風流一代/Caught By The Tides/新世紀ロマンティクス」
らしく、
フィルムを繋いだ、あらすじは以下。
(と観ながら、脳内で再編集し、理解した)
かつて炭鉱で栄えた都市、大同で、
キャンペーンギャルとマネージャのカップルが行き詰まり、
男は一旗揚げようと街を出る。
女は湖に沈みゆく奉節で男を探す。
見つけ出し、女は別れを決意。
男は、デベロッパ絡みで悪事に染まる。愛人を逃がす。
女も危険を冒す。
(ここから、現在の追加パートらしい)
女は大同に戻り、男は珠海にビジネスのツテ探す。
昔の知り合いも齢で、男も結局、大同に戻る。
スーパーに勤めている女と再会する。
女は、覚悟決めて、
現在の中国の濁流に飲まれながらも、駆け抜けて往く。
後で確認したら、概ね合ってるっぽい。
なるほど、
スゴイっちゃ凄い、
誰でも出来る芸当ではない。
とは言え、
無駄に疲れる。スッキリと観ること困難。
追加パートの撮り方が、普通なのも面白くない。
という印象が残って、スタンディングオベーションに至らず。
カンヌのコンペティション出品も、そこまで。
「三峽好人」とは勝手が違った。
続きは、気になってしまうけど。
まだ、走り続けるのだろうか。
当局の検閲も厳しそう。陳凱歌↓の様には、撮らないはずだし。
あとは、
どーでもいい事かも知れないが、
やっぱり気になる。
何故、これほどタイトルの意味が違うのだろうか?
特に本作は、邦題の乖離激しい。
一代は、
”ジェネレーション” の意味有り、
2000年以降の中国で世代間ギャップが大きい。
という意だと、
まだ納得出来るけれど、
風流=ロマンティクス はダメでしょ。
英題の方がマシと思う。
”時の流れの大河” とか、の意味じゃないの。
SFだと間違って、予備知識無しで観てしまったら、
遭難まっしぐら。不親切過ぎる。
そこまでメジャーでない、
中国の巨匠の新作を日本で公開した事は、偉いけど。
それにしても、
もうちょっと、見込み客に説明しておくれ。
ダサい音楽も、時代を表しているらしい。
そんな映像もUP出来るなら、配給さん、もっと親切でいいじゃん。
とにかく、「長江哀歌」の映像に圧倒され、
それから、「新世紀ロマンティック」で風雪の重みを知る。こんな試みも貴重。
前者だけでもオススメ。(凄さは、観て頂くより無く)それでも充分。
連続視聴は、余力が有れば。
庄司との熱愛がバレて、アイドル辞めたと記憶している。
今じゃ、旦那より稼ぐだろうママタレント。家庭円満で幸せそう。
風雪の重みを感じる。
やっぱビターエンドよりハッピーエンド。
2025.11.04 19:00現在
高市フィーバーも冷めるのか。
トランプ政権の政府閉鎖に注目は映りつつ。
テクニカル的には、まだまだ高値だと思う。
