インディーズの話題作と聞き、聖地シネマ・ロサへ。
役者を断念し教師の道に進んだ米寿の父、
父の夢を叶えようと舞台のプロデュースに奔走する娘、
さらに役者と成った孫2人が主演。
舞台は遂に映画化された。
内容は、、
置いておいて、
”素敵なご家族ですね” って声掛けたくなる映画。
映像が自主制作レベルなのは構わないけれど、
脚本には大いに不満が残る。
が、それを言うのは野暮だわな。
ストーリーは、どうしたら良かったか?
自分だったら、
”舞台上演に向けて奮戦する”姿を描く舞台にするかな。月並みだけど、
「カメラを止めるな!」や「侍タイムスリッパー」のような、メタ構造を入れて。
家族総力戦で「幕が上がる」みたいな内幕ものにする。
本人が本人役を演る「ノマドランド」や「15時17分、パリ行き」のような再現ドラマ。
だったら、手放しで拍手喝采だったかもしれない。
まあ、映画公開に至るまでの物語も消費するなら、
ほのぼのとした気持ちで、映画館を後にすることが出来き、
逆「どうすればよかったか?」な鑑賞後感でした。
そんな折、
youtubeから、この予告編↓がのオススメされて比較してしまった。
とても現代的なテーマ、ミュージカル向きとは思えない題材。
が、ブロードウェイで大ヒットし、映画化され日本公開に至る。
もし、ストレートプレイで映画化なら、地味な社会派。娯楽作では成立しない。
「ザ・ホエール」のように、賞の候補で単館上映されるかも。
内容は、
機能不全家族の引き籠もりが自殺してしまう。
生前交流があったと、主人公の感動的な嘘が伝わる。
救われる家族も居て、引っ込みがつかなくなる。
さらにSNSで”いいね”が拡散される。
現代社会の生きづらさ、負の側面にフォーカスする内容で、
感動と言うにはモヤッとする。問題は最後まで何も解決しない。
敢えてカタルシスを与えないような作り。
それでも、
感動する人、
歌の強い力とは逆に、アンビバレントなストーリーに反発する人、
テーマへの共感を重視する人、
テーマに共感しつつ、ミュージカルには疑問な人、
評価は程よくバラけていた印象がある。
4分割で図示すれば以下。
感動 不快
”泣ける”を重視 A B
テーマ性を重視 C D
個人的には、C寄りで若干D。
昔、フェイスブックで嘘丸出しの感動話が拡散され、反感覚えたし、
私が嫌いなものへの、作り手のささやかな反旗に共感した。
”でも実際、こういうことって、あるよね” と、やるせない。
映画系youtuberは当然とは言えBが優勢。
感動ポルノとして消費できる(=”泣ける”)かという視点に立ち、
かつ、それに抗う物語に反感を示した方が、
再生数は回るのだろう。
とはいえ、
歌の力で感動させようとしてるからな演出側は。
煽動的で強引なのに、このテーマかよ。Bも当然の反応とは思う。
片やAで感動作と単純化するのは、ちょっと疑問。
悪質なのか、言語が未熟なのか。
決して”いい話”ではないが、逆にそこに、現代の生きづらさが在る。
そんなリアルな物語を美しく歌い上げる、
想像とは違うミュージカルの映画化だと、
ちゃんと説明した上で、奨めるなら奨めないと。
そんな中、D派の元映画宣伝マンは少数派で善良↓。
舞台ではなく映画としての成立に、動画は異議を申し立てる。
”そんな重い事柄を、歌の力で感動させるのか?”
という疑問は残るんだよなぁ。確かに。
メガミュージカルと違い、ブロードウェイはアメリカ社会を映すもの。
ミュージカルと言えば、前者のイメージの方が強いので、
そんな暗い現代的なテーマがミュージカルとしてヒットするのかと、意外で、
多分アメリカのミュージカルファンのようには消化出来ていない。
けれど、
こういうテーマでヒットするような社会だなぁと、
背景まで含めての共感はあるかな。
まあ、達者な歌唱だから損したとは思わないし。
人気に推され、映画化に至った作品にもいろいろ。
そういう映画って、単体で評価するとモヤッとすることも。
共通点があり、幸せな家族と不幸な家族が対照的で比べてしまった。
我が身を顧みると、
私にも家族の幸せも存在したと思うのだが、もうよく思い出せない。
そこで、
お涙頂戴に萎えない範囲で、家族のいい話を摂取しようとしてみた。
読んだことのない作家の最近の作品も試みたが上手くゆかず。
(法律に対する偏見が酷いの多し)
結局、安全なところでの再読に終始してしまった。
安定の辻村深月。
視点の転換でサプライズを起こすのが毎度上手いのですが、
本作は家族の日常を描き、地味めの驚き。
リアルな共感で、ちょっとホッコリ。
改めて読むと、ディテールで感情移入させるの巧みだ。
「私のディアマンテ」が個人的に一番好ましい。親子の話だし。
作品集の中では一番大きなサプライズで、
階級の格差も描いている。
結局、年収の差は知能の差で、それは遺伝みたいな。
実は、IQが違い過ぎると、相互理解は難しい。
そんな残酷も描いているんだろうな。
からの、因果は巡るで、ハラハラさせて、
”素敵な親子ですね”という着地。
虚構には違いないのだけれど、それでいいじゃないのと思ってしまう。
「明日の記憶」が話題となった頃から変わらず上手い。
短編だけが名手という訳じゃないと評価するのだが、
最近のエンタメはどうしても、大味でも派手なのが受けガチなので、
技工はあまり尊ばれない傾向にあるよね。
と再確認して、昔に回帰してしまう。
伊良部を思い出してしまう「スピードキング」がフェイバリット。親子の話だし。
最後にちょっとしたサプライズが用意されていて、それも良き。
作者は野球好きなんだと思う、ディテールが緻密だ。詳しすぎる。
どうしても「さらば宝石」が野球には付いて回る。
なんともほろ苦い。いい話。
野球しか取り柄が無い人はノンフィクションでもよく取り上げられるが、
結局、プロで一生分稼ぐほどの才能ではないのに、今更に他の才能を探すのは大変。
という人も現実には多いと想像する。
いずれは、さよならという決断の時が訪れる。
結果は伴わなかったけれど、それでも人生捨てたもんじゃないと思えるお話。
著者らしからぬ、ド直球のお涙頂戴もの。
てらいも無く家族との別れを描く。
コラムの印象が強いが、漫画も巧みだなあ。
絵の上手さと、漫画の巧さは別ものと改めて知る。
作りものでも、丁度いいリアル。ヤリ過ぎず、スカし過ぎず。
何と言っても「最終戒」がグッと来ます。
読み直すと「第15戒」がサラリといい話。
死別でないのも異色で良き。一番好きかも。
ああ、やっぱ、
手放しで ”素敵な家族ですね” は得難い。
現代のおとぎ話だな。
改めて聴くと、ドロシーのオマージュだと今更気づく。
別世界のような人生も、どこかにある。
2025.05.18 現在
売り目線に転じるのが当然とも思えるが、押し目かも。
売り玉を慎重に建ててゆきたい。