ドローンもCGも無い時代。
大スクリーンで、日本映画黄金期最後のパノラマを観たくて、
また芥川比呂志の音楽にも惹かれ、検索すると、
どうやら4Kリマスターで、木村大作監修の完全版らしい。
このチャンスを逃す手はないと、判断しました。
映像は大満足です。
寒さの恐ろしさが心臓を締め付けられるように伝わります。
これはナポレオンもヒトラーも勝てないと納得。
音楽は風格が有って、日本映画らしいエモーショナル。
日本アカデミーは音楽にあげて、撮影は褒めてないとは不思議。
予想外に脚本が見事でした。
さすが黄金期を支えた橋本忍。
死活を分ける諸々の要因が、説明を省きながら、映画らしく表現されてます。
あっという間の3時間弱でした。
それでも尺は足らず、ダイジェスト気味の編集でしたが、
説明より大迫力のシーンを優先するあたりが、黄金期の味わいでしょう。
役者については、
スター達がよくこの撮影をOKしたものです。
顔も吹雪でよく判別出来ないし。演技より体を張る時間が長い。
物語同様に命懸け過ぎて、現代ならNGかもしない。
五十過ぎて、あの撮影は凍死しても不思議は無い。
丹波哲郎は冬山の撮影を渋り、三國連太郎に交代したそうです。
そのままなら、Gメン75の上司然としたルックが想像されますが、
キャスト変更の功名で、
憎たらしくも悲哀溢れる部長職が見事。組織人の絶望が胸に迫ります。
佐藤浩市も畏怖する恐ろしい役者魂。
徴兵され最前線の中国で終戦を迎えた体験も、説得力を与えたかもしれません。
課長役の北大路欣也も実直なエリートを良く体現します。
観る前は、
三國連太郎も北大路欣也も、
もっと無能に描かれるかと想像してました。
実際は、組織の事情でやむなし感が強く、競争させる組織の冷酷さが際立ちます。
世は正に、島耕作な高度成長期。
多くの共感を得て大ヒットに至ったのは、
中間管理職の悲劇を重層的に描いたからこそ。
因みに本作、
松竹と東宝を競合させたそうです。陸軍上層部のように、
企画の段階で東映は断り、
デモの映像とシナリオを見せて、
条件の良い方に配給が決まったそうです。
製作に野村芳太郎(松竹)とクレジットされますが、
金額が違えば、監督も兼ねたかもしれません。
4Kリマスターの木村大作版では、
主人公補正ばかりでなく、高倉健も非情な組織人として描かれる。
公開時は、案内人達に口外不要を言い渡すシーンはカットされた。らしい。
生存者は、行軍中に組織を離脱した緒形拳以外は、
全員、口封じも兼ねて二百三高地に投入され戦死したそうです。
↑動画では、組織の都合で偉業が報われないとあります。
それだけでなく、
死者に手厚く生者に苛烈な日本なのは、
ブラック企業も義務教育も未だ変わりありません。
精神力は無限のリソースで、諦めないことばかりが称賛され、
死して初めて枯渇するものと刷り込まれています。だから、
チーム戦になると強いけれど。。
ま、それはさておき、
スタッフも演者も、日本映画の総力戦。最後の勝利と位置づけます。
前年に「犬神家の一族」が登場し、角川メディアミックスが開始。
6年後に「南極物語」で雪と健さん、再びの大ヒットですが、
フジテレビ製作と覇権が移り、動物もので、お話が優しくなる。
作品の評価を離れて、個人的な感想は、
勝者は勝利条件によって異なるということが第一です。
サバイブというテーマが色濃いので、リアリストに傾いてしまう。
反戦とか市民の犠牲とか、ドリーマーな感情は動かなかったな。
再び、為末大にご教授願う。
戦略の失敗は戦術では補えない。目的に叶う手段を選択すべし。
生き延びることが目的なら、勝者は、
組織に見切りをつけ、
手足を失いながらも戦後まで生き延びた緒形拳。
任務の成功なら、
慎重に準備を重ね、現地民を酷使しつつ、
無事に作戦を遂行した高倉健のスペシャルチーム。
生還すれば良しとするなら、
途中で絶望してしまった北大路欣也と対象的に、
最後まで沈着冷静に判断力を失わなかった加山雄三。
ですが、
無謀が正しく全滅し、周到が生き残る、という結果から、
雪中行軍の貴重なデータを得て、
ひいては日露戦で勝利する。日本陸軍が一番の勝者かもしれない。
とはいえ、
ロシアから賠償金が取れず、
満州の利権に、ユダヤ資本をいっちょ噛みさせる約束を反故にし、
国際金融とも英米とも反目し、遂に旧国連を脱退し、ナチスと結び負け確。
アメリカ仲介による勝利は、コテンパンな敗北の遠因かもしれない。
もっと極端なことを言えば、
北大路欣也隊列の遺族は、手厚く恩給を受け、
高倉健チームの家族は、栄光に報われていない。
生き延びても日露戦争で結局は没するのなら、
ダメが美談とされた前者達が勝者かもしれない。
個人的には、緒形拳的な勝利を勝利として生き延びてきたけれど、
オールスターで、多種多様な勝利を描き切ったのは素晴らしい。
TVの時代なら、
橋本忍のリアルで苦い脚本はウケず、
家族愛の感動や、反戦メッセージでエンドマークだろう。
”この時代はまだ官僚でなく、軍事の専門家が軍人やってたんだなぁ。”
という感想が、情動より先に来てしまいます。
旧陸軍と言えば、
インパール作戦のような無謀のイメージが付きまとう。
とかく兵站は軽視されガチ。戦略、戦術に比べて、
ところが、
日露戦の準備として、満州でのシミュレーションする八甲田山の演習、
この時期はまだ、兵站を重視していたのか。
ところで、
昔から戦さの要諦を知る人は居た↓。
主人公の源範頼は、源平合戦の総大将にして、
政治の天才の兄、頼朝と、
戦術の天才にして戦略音痴の義経を弟に持つ。
凡人な中間管理職の悲哀を描くのかと思いきや、さに非ず
マイナーな歴史上の人物の、
マネージャーとしての有能さを読者に知らしめる。
実は大変な戦略家で、思慮深く見通しが効き、兵法の王道で勝つ。
頼朝兄さまは、閉ざされた禁裏の中で繰り広げられる空虚な権力闘争を横目に、ただ地道に、全国の武士たちとの間に信頼関係を積み上げてきた。
その蓄積が物を言って、いまやこの国の武士のほとんどが頼朝兄さまに固く忠誠を誓い、義経の元に集まっている兵など千騎にも満たないのだ。そんな状態から、いかに後白河法皇の命令とはいえ、そんな宣旨ひとつでハイそうですかと武士たちが簡単に義経に鞍替えするわけがない。
「……勝てます。戦いは数ではありません、兄上」
「戦いは数だよ、義経ッ!」
更に、「鎌倉殿の13人」に至る。
明日は我が身の危機感の無い、能天気な家臣団の未来も暗示される。
和田殿は私の情けない言葉を聞いて、
「たしかに骨肉の争いはつらかろうが、これも武士のならい。これしきのことで吐きそうとは、心を強くお持ちなされよ蒲殿」
と言って、ガハハといつものような無遠慮な笑い声をあげた。
私はもう何も言い返す気力もなく、ハハハと力なく笑った。
それを見た梶原殿が肘で和田殿を小突いて、
「やめなされよ、和田殿。いくら何でもそれはなかろう」
と、私に聞こえないような声でこっそりとたしなめていたが、全部聞こえていた。
執権北条に粛清されてゆくのに、、
勝ち馬に乗らないと滅んでしまう。
古来より戦を知る人は同じことを言っている↓。
兵法の大家にして、徹底したリアリストの言↓。
平和を望むのであれば、戦いに備えなければならない。
勝利を望む者は、兵への訓練を怠ってはならない。
成功を望む者は、偶然ではなく原則に基づいて行動しなければならない。
リアリストは準備と兵站の重要性を知る者である。剣ではなく飢えで勝つ。
勇気よりも運の良し悪しが影響を与える通常の戦闘よりも、飢餓や奇襲、恐怖によって敵を屈服させる方がはるかに望ましい。
最も優れた計画とは、実行するまで敵が気が付かないようような計画である。
戦争における機会というものは、通常は勇気よりも大きな価値を持つ。
敵の兵士に投降を促した際、彼らが望んでこちらに降伏する場合は、こちらに大きな安心感をもたらすものだ。なぜならば脱走兵は死傷者よりも敵に打撃を与えるからだ。
最前線の兵力をむやみに拡張するよりも、後方に十分な予備隊を配置する方が良い。
-中略-
軍隊は働くことによって強化され、怠けることによって弱体化する。
勝利の見込みがない限りは、軍隊を戦闘に導くべきではない。
目新しいことや衝撃的なことは敵を混乱させ、慣れ親しんだことには侮りを抱く。
無秩序な追撃を行う者は、自らが手に入れた勝利を敵に与えてしまう。
穀物や食料が不足するような軍隊は、一撃を与えられる前に屈服するだろう。
戦争は兵站で勝つもの。
国際金融を敵に回し、石油の出ない国が、
中東を抑えた英米に精神力で勝てると、何故思ったのだろうか。
意思の力も有限なのに。
為末大は説く↓、リソースの限界を前提に作戦を立てるべきと。
いくらなんでも、
人は歴史から学ばないとは言え、
現代のオペレーションは、根性論から脱却しているらしい。
「自分の能力の限界を超えるような仕事をしてはいけない。自分の役割以外の仕事(権限のない仕事)もしてはいけない。自分の能力と与えられた役割の範囲内でしっかりと仕事をしてくれ。その際には全体の方向性と自分の仕事とをマッチングさせよ」という意味合いです
-中略-
そうした戦力配分は微妙なバランスの上に成り立っていることが多く、がんばって能力以上の仕事をしようとして無理をしたり、気を利かせて他人がやるべき仕事にも手を出したりするフォロワーがひとりでも出てくると、全体最適が崩れてしまいかねないのです。
うっかり信じたら死んでしまうような洗脳を随分と受けてきた、私は。
本人に悪気がないから、よりタチが悪い。
折角だから、
ロシアの話題なので、最近の情勢も気になってしまった。
そもそも、ロシアの南下を食い止めることが、今も昔も日本の一大事なのだし。
ちょっと古いけど、無料で学ぶ。
著者はウクライナ戦争が始まった当時から、
たとえ戦術的に勝ったとしても、
戦略的にプーチンは既に負けていると説明していた。
なるほどと思った。
(ただし、著者はアトキンソンに賛成だが、私はそうは思わない)
地政学的な宿命としてロシアは、
凍らない港を求めて黒海への出口で争い、
アラスカを売ってでも、強国との緩衝地帯を確保しようとする。
(正当性は別の問題。それを今議論しても意味無いと思う)
一方アメリカ、
911で幕開け、イラク戦争からリーマンショックで終わるブッシュJr共和党の後。
民主党オバマ政権の誕生で、
北アフリカ、中東のみならず、旧ソビエトでも敵対勢力を失脚させる。
(最小労力で最大効果。善悪は別に、とても賢い。)
ウクライナでも政変が繰り返される。
そこで、
当時のバイデン副大統領には疑惑がある。
CNNのインタビューの中で、オバマ大統領は「米国は、ウクライナにおける権力の移行をやり遂げた」と認めた。
別の言い方をすれば、彼は、ウクライナを極めて困難な状況に導き、多くの犠牲者を生んだ昨年2月の国家クーデターが、米国が直接、組織的技術的に関与した中で実行された事を確認したわけである〉
「『ロシアの声』など信じられない」という方は、YouTubeで「Obama admits he started Ukraine revolution」を検索してみてください。確認できます。
2014年3月、激怒したプーチンは、クリミア併合を断行。2014年4月、ウクライナ東部ルガンスク州、ドネツク州(いわゆる東部親ロシア派)が独立を宣言。ウクライナ新政権はこれを認めず、内戦が勃発しました。
これら一連の歴史的大事件と、バイデンファミリーは何の関係があるのでしょうか?
革命の後、バイデンの次男ロバート・ハンター・バイデンが、ウクライナのエネルギー会社BRISMAの取締役に就任したのです。彼は、以後2019年まで、同社から月500万円の給与を得ていました。
その後のバイデン政権で、
ウクライナ戦争が始まり、
株価は上昇を続けた。(インフレもキツイが)
武器は供与するが参戦はぜず、4年間そのまま戦争は続く。
任期が過ぎても戦争はまだ続く。
資源は有っても国際金融を味方に出来ないロシアが、
消耗戦に持ち込まれては、戦略のみならず、戦術でも既に詰んでいる。かも。
トランプ政権がどうあれ、決着を着けるのは共和党の役でしょうね。
話題の中心はもともと、
太平洋を挟んで海洋国家としての覇権争いであって、
アメリカの対ロシア政策も、その一環とのこと。
そこで、
中国共産党に勝ち目が無い理由が説明されてゆきます。
・グローバリストで国際金融資本家のソロスは、
習近平を「もっとも危険な敵」と呼んでいる。
・米中覇権戦争は、アメリカの勝利、中国の敗北で終わる。
・中国が勝てない理由は、
1、中国経済は、もはや高成長することができない
2、中国の政治体制(一党独裁)は脆弱である
3、戦闘以外の戦争で、中国は勝てない
著者は更に警告してます。
日本が同盟国を裏切り、中国に付くと、
ナチスと組んだイタリアみたいになっちゃうよと。
中国共産党政権が崩壊すると、さまざまな混乱が起こります。ドイツ帝国崩壊後にヒトラーが、ソ連崩壊後にプーチンが登場したように、新生中国にも独裁者が出てくる可能性がある。彼は、「台湾、ウイグル、チベット、尖閣、沖縄は中国のものだ!」と叫び、侵略を開始する。
中国軍が尖閣に侵攻した時、アメリカは、日本を助けてくれません。米中覇権戦争で日本が貢献を渋って何もしなかったため、同盟が破棄されたからです。
アメリカが本気なら、石破政権を放置しないとは思います。けれど、
海洋覇権を争って、隣国の壊滅的敗北の始まりが、
台湾有事である可能性は否定できません。ポーランドやクウェートのように。
結局、
引越せないから学ぶのが、地政学らしいです。
日露戦争前夜の映画を観て、2025年だからこそ去来するものもあり、
準備の差によって、負けるべくして負けると知る。
勝敗は戦う前に決している。
2025.05.24現在
CFDでは、20MAを割りMACDもデッドクロス。
-2σへのタッチまで下落は折込みます。
そこから先は、反転なのか、下落継続か分かりません。
戦争が続くうちは、暴落は一時的なものしか、起こらない気がしますが。
トランプ政権の行方は誰も分からない。
それでも、
一旦下げる想定で、売玉を建ててゆきたい。