アクション増量の爽快パロディ映画「きさらぎ駅 Re:」アイディアの妙、脚本の妙「一番伝わる説明の順番」

賛否両論が面白く、我が目で確かめようと、水曜日の午後シネマロサへ。


レビュー検索した限りでは、永江監督のテイスト承知の前提で、
低予算映画の楽しみを楽しめる人は概ね好評。
前作を、観てないとか楽しめなかったとか、なのに、
敢えて本作を観るのは、自己責任なので知ったこっちゃない。
不評の中には、
 この映画に、いったい何を期待しているのだろう?  
と疑問の沸く声も散見される。
マイフィルタリングの結果、有効そうな低評価は見当たらず、予約を決定しました。
   
 
 
結果、予想以上の満足を得ます。
スカッと爽やかに劇場を後にしました。ザマアみやがれ的な感情多めで。 
何度も声出して笑ってしまいましたし、
アクションが意外にヤルのも、想定外で嬉しかった。

鑑賞後感は「国宝」を上回りました。嬉しいような哀しいような。
 余計なことは割り切って、
 やりたい放題なパロディ、アイディアの勝利。
 とぼけたギャグの手数も多く、シリアスとの緩急も上手い。
 意外にツボを押さえたアクションと爽快な演出で、
 感情に拘泥しない躊躇無いキャラ造形と相まって心地よい。
 3年後の逞しい本田望結に対して、臨機応変な当て書きが成功。
 対照的に佐藤江梨子の次に奥菜恵、どこか不健康そうなキャスト。
上記全て、
本作に有って「国宝」に無いもの。「国宝」が残して本作が排除したもの。
低予算には低予算の戦い方がある。ランチェスター戦略
前作からタイムアタックなだけでなく、いつもバジェット(予算)アタックな永江監督。
戦上手でした。
余計なことはせず、諦めるべきを諦め、勝てる処でのみ勝つ。
なんといっても、
プレゼンというか、説明が上手いですね。
 
今回は第2章の一節 ”結論から話す”よりも先にやるべきこと を参考↓にします。

ま、理合いが分かった↓とて、実践ですぐ使える訳じゃないけど。

わかりやすい説明をするために、結論を述べるよりも先に、一番はじめにやるべきことは「前提をそろえる」ことです。  
前提とは何かというと、  
これから話す内容について、相手がどの程度のレベルの知識を持っているか  ということです。

映画の冒頭、日曜日の午後に放送されそうなTV番組が流れ、
作中のTV番組の中で、
 前作の事件のあらましと、本作の現在時点までの経過、
 とりわけ、
 現実世界に戻った、主人公(本田望結)のハードな境遇、
が分かります。

さらに、
 番組タイトルが「アンチフィクション」とあり、
 単にモキュメンタリー形式で、淀みなく前提を説明しただけでなく、
ふざけたパロディ映画だとジャンルが想定できます。
 
敢えて、
 ツッコミどころを残すモキュメンタリーで笑わせにかかりながら、 
 カーアクションは意外と緊張感を醸し、やるじゃん!
いつもの低予算ながら、緩急自在は健在と期待させます。

サトエリに次いで、
奥菜恵というキャスティングに意図を感じつつ、
ホラーらしいドンデン返しは前作同様に仕掛けそう。

相手の知らないことを伝えるときや、過去に話したことはあるけれどその内容を覚えていなさそうな場合は、結論や主張よりも前に、前提情報の共有を行いましょう。
-中略-
知っておかないと話がかみ合わない情報は、最初に説明しておく必要があります。  
なお、相手が「知っているかもしれない」情報については、くどくならないように注意しながら言及することができると、説明が非常にわかりやすくなります。

 
予告編の段階で、 
 本田望結が勇者となり、
 残された人を救うため、
 異世界に旅立つ、
 時間制限アリのアドベンチャー。
それは分かっているのですが、
オープニングからの展開で、勝ちを確信しました。
 
「国宝」と比較してしまう。
  幼年期は、
   黒川想矢が渡辺謙に見つかることと、
   永瀬正敏の絶命の見せ場だけで、
   引き取られていい。
   入れ墨とか、高畑充希との関係とか、仇討ち失敗とか、不要。
 
  高畑充希は、
   横浜流星との駆け落ちの相手であれば充分。
   後に結婚を許され、跡継ぎを産んで育てればミッションコンプリート。
 
  逆に吉沢亮の転落は、理由が弱い。
   箱入り娘に手を出したとて、不十分。
   息子に跡を継がせたい母の画策を描くべき。
   あれで追放なら、染五郎は抹殺されている。 
   梨園では隠し子はよくある話。
   出生が反社というだけでは関係無い。
 
  横浜流星の復帰も、ドラマが無い。
   吉沢亮を追放し、空位に息子を呼び戻したなら、自然だけど。
  
  吉沢亮の再起のキッカケも弱い。
   横浜流星が自らの死期を悟り、
   お家や息子の行く末を託すため呼び戻す。なら分かるが、
   ドラマとしての盛り上がりに欠ける。
  
 王道物語に徹した割り切りは評価するのだけど、
 エピーソードの取捨選択はまだまだ上手くない。
 折角のベタなのだから、原因と結果は明確でありたい。納得感が弱い。
 その上なおさら、尺の余裕も無くなり、緩急が付けづらい。 
  
ラストで感動させようとして、私には台無し感が残る。
脚本の推敲が、そもそも甘い気がするんだよなぁ。「国宝」

前提、レベル、範囲を先にそろえましょう。これらの内容を話の冒頭で相手に明確に言葉で伝えることにより、相手の理解がスムーズになります。

制作期間や予算が潤沢であることより、
脚本がまとまるまで妥協せず、どれだけ耐えることが出来るか?
の方が重要かな。
日本映画黄金時代、黒澤明は複数の脚本家を競わせたと聞く。
 
 
低予算に戻ると、
 ”バケツリレー方式なら距離稼げた”と、皆ツッコんでいて笑った。
 その前に、”簀の子じゃ無理だろう”と映画館で笑った。
折角、笑わせようと隙作ってるのに、
真面目というか、野暮というか、
もっと、客はシャレが効かないと想定すべきかなぁ。
とにかく、”答えが有るものは答えが有る”と教育されてるんだし。
 
ま、限られた資源で、最大の効果を産むための配慮は強く感じました。
 ゲームの世界観の共有、
 ディテールの粗さの統一、
 異世界の範囲を限定、
プレゼンで結論を言う前に、オーディエンスに示す。
 
 
納得出来るこのアイディアが浮かぶまで、続編作らなかったって、
結構凄いこと。オファーは有ったはず。
行動しないことを褒められることは稀だけど、賢い人にしか出来ない。
 
  
で、
その3年の間に本田望結は、可憐な女子高生から充分に育った。
ルックを確認して、あのキャラ造形はファインプレー。
ウダウダ感情を演出されても余計、観る方もイライラするだけなので、
葛藤の説明はジャンルじゃないと省略。
逞しく、男前で、覚悟決まった勇者。とても強そう。
 
片や恒松祐里は、
躊躇ないマキャベリストで漆黒の意思の持ち主。
あっぱれでした。
とかく、
湿度の高い日本映画にあって、ハードボイルドな造形は絶滅危惧種。
   
それがアクション多めにも呼応します。無駄のないスタイリッシュ。
合気道系の技かと思ったけど、水面蹴り↓も披露してたから、

カンフーのオマージュなんだろうな。
余計なカット入れず、スピード感ある展開で、
アクションの演出が意外に上手い。 

その上、
グダグダ言う分からず屋どもを爆破するので爽快。
 この有時に ”説明してください” とは、
 どこまで洗脳されてんのかと、判断力の欠如にイラっとするが、
 爆破されてホントに気持ちいい。
 

序盤は、
 君塚良一かよと、ツッコミ入れてたんですけどね。
 爽快な復讐譚なんだ。
ラストのドンデン返しは意外で、
田辺さんみたいな本田望結が男前でした。
 
 
着地の出来って決定的なんだな。
当然だけど、
魅せるべきをちゃんと魅せて、欲求不満を残さない。
最小労力で最大効果
永江監督は賈詡みたいな策士。
 
 
 
シンプルで安くても、ヒットさせるセンスは実在する。 

プレゼンはプレゼントだと鴨頭さんに教わる
 
 
 
2025.06.19 22:00現在
 2σから突破するのか、抵抗されるのか分からず。
 とりあえず、20MAは上向き。
 買い目線のまま、利確しそこなったとも言える。
  

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