前回の続き。
なぜ自称レベルの人達を共感させ感動させてしまうのか?
残酷な現実を突きつける物語であるにも関わらず。
私の感情は置いておいて、
その理由を考察してゆくと、マーケティングの技術として説明できるかも。
そんな仮説を立てると、
「ルックバック」と「リズと青い鳥」の違い。
ヒットの差をもたらした ”違いを産み出す違い” に思い至った。
キーワードはインサイトと確証バイアス。
マーケティングに利用される人間心理である。
顧客の秘めた欲望を叶えているかどうか?
顧客を心地良くしたまま、騙す工夫があるかどうか?
ストーリーをもう一度、ビジネス視点で考えてみる。
大前提として、
藤野より、京本の方が漫画家として才能がある。
しかし、藤野は努力によって売れっ子漫画家の座を勝ち取った。
と、勘違いする観客であること。
そうでなければ、自己投影できる人間は限られてしまう。
ここで、いしかわじゅん画伯とのBSマンガ夜話の共演者に登場いただく。
高校生の段階でジャンプに連載とか、ゆでたまご先生以来の天才。
デビュー当時は中野先生だって、画力は低かった。
努力だけでどうにかなるような甘い世界じゃねえよ。
と、つい考えてしまいガチだが、
”見たくないものは見ない” という認知バイアスの力を利用して、
制作側のテクニックに乗ってみる。
因みにハイクオリティにも関わらず爆死した後者は、
地味に展開としての面白さはあるが、誠実過ぎて騙しは一切ない。
で、インサイト。
インサイトとは、表面に現れない、心の内に秘めた欲求である。
本人が無自覚なことも多い。
マクドナルドは、
健康なサラダセットで振るわず、
顧客のインサイトの見極めを誤ったと反省し、
次は、肉増量バーガーでヒットを飛ばした。
客の本音は、ガッツリとジャンクなフードを堪能したいのである。
そんな例で説明されている。
赤身100%のギュウに野菜も挟んでるバーガーは栄養バランスも悪くない、
と個人的には思う。ちょっとイメージは歪んでる。
が、
付いてくるフライドポテトとコーラのタッグの方は確かに最凶。
こちらは、カロリー同様に利益率も高いのかもしれない。
インサイトに訴えるものの中でも、顧客に有害なものは”悪魔の誘惑”である。
残念ながら、有益な提案より、
マーケティングの世界では、悪魔の誘惑の方が強力な武器になる。と言う。
作品に戻ると、
雨に踊るシーンに象徴されるように、他者からの承認が常に描かれる。
承認欲求を満たすことが、本作のインサイトへのアプローチであり、
観客の脳汁(ドーパミン)が出るポイントである。
対照的に京アニ制作の方は、現実を受け入れつつの自己成長が描かれる。
前者が悪魔で、後者が天使である。藤本タツキはいつも悪魔を描く。
ここまでを踏まえて、
認知バイアスを利用した騙し。について、
確証バイアスとは?【具体例でわかりやすく】正常性バイアス
確証バイアスとは、自分がすでに持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集める傾向のことです。認知バイアスの一種で、自分の思い込みや周囲の要因によって非合理的な判断をしてしまう心理現象です。
見たいものだけを見る、都合が悪いことはスルー。
キャッチボールが義務で、負担に感じるプロ野球選手が居るだろうか?
芸人を自称しつつ、”ネタを書かねばならない”と発言するようでは、
第三者なら、そんな状態なら芸人辞めた方がいい。と当たり前に思う。
が当人は思わない。
プロなら当然で、平然と日々坦々と行う行為であっても、
資質が無い凡人にとっては尊い”努力”である。
オレはこんなに頑張っていると思う。
手を抜けば、他の誰かにレギュラー奪われるだけ。とは思わない。
結果が伴わないのは、プロ意識が足りないからだとは思わない。
中田翔とつるまずトレーニングに明け暮れる大谷の方が異常だと考えてしまう。
そんな観客は、
藤野は天才の背中を追って、(凡人の想像する範囲の)努力で大成した。
と思いたい。
そうでなければ、自己投影出来ない。立つ瀬も無い。身も蓋も無い。
そもそも、藤野は才能もプロとしての資質もあり、
作中のエピソードは彼女の世界線に影響は与えていない。
成るべくして、ジャンプの看板に成っている。
一方、
京本は漫画の才能はそこまででなく、
だから絵を美大で勉強している、クリエータの卵。
これも藤野との出会いは、世界線に関係が無い。
結局、才能とプロとしての資質。
これが総てである。
元も子もない、幻想の無い、ありのままの現実。
ジャンプの連載は、アンケートの結果が悪ければ打ち切り。
囲碁将棋なら、一定の年齢までに昇段リーグを勝ち抜けなければ退会。
プロスポーツなら、活躍しなければ、契約先が無くなる。
強制的に諦めざるを得ない世界の方が優しい。
10年で芽が出なければ、見切りをつけろと言った紳助は優しい。
成果無くともダラダラ続けられる世界は、より残酷である。
さらに、バイキングや錦鯉の例があるから、あまりに残酷である。
趣味でお笑いやってます。なら救われるが、
面白くもなく、プロ意識にも欠け、自意識だけを肥大させてしまうのは悲劇。
そんな悲劇に、承認欲求を満たすべく囁く。
藤本タツキは悪魔だと思う。才能とはそういうものだと思う。
客にも媚びず、堂々と自分の創作スタンスを述べている。
嘘はついていない。にも関わらず、
騙されたい心の隙間に忍び込んでくる。
インサイトを利用したセールス。ダメな人を甘やかす悪魔。
恐らく、作者は無意識にこれを行っている。
それがヒットメーカーとしての才能。努力でどうなるもんでもない。
ヒットするには訳があり、
ただ品質が良いだけでは売れない。
それがマーケティングの発達。みたい。
勘違いさせて、承認欲求を満たすサービスは、まだまだ流行る。
人たらしの極意は、
”本人が理解されたいように理解すること”
まだまだ、見つけられていない仕掛けは、沢山あると思う。
見つけたら、乗っかろう。
2024.11.13 00:00 現在
4万円の天井は厚いが、まだレンジか。
20MAタッチまで落ちても、
反発か下落かは、トランプ政策と近平政策次第だろう。
懲りずに、まだ待っている。