宮崎駿の正当な後継「中国奇譚」これから長編やるなら原作次第かな。

サービスウィークだったのと、限定公開と知り、チャンスは逃せないと予約。

 
本作は、
 上海美術映画製作所プロデュース。
 2023年に配信され、中国国内で大いに評判を呼ぶ。
 全8話中4話が今回、日本で映画として限定公開される。

上海美術映画製作所は、
 中国アニメの老舗。国営放送的でもあり、
 伝統的で健全なコンテンツには定評があった。
 しかし、アニメが世界的なエンタメ産業化してゆく中で、振るわず。
 1984年に、
  高畑勲と宮崎駿がスタジオを訪問した頃にはもう、
  クリエータの志を失ってしまったと、両氏の落胆が伝えられる。
 近年は、
  ほぼ東映動画の下請け制作会社。
 
それ以上の予備知識無く、とにかく劇場へGo。
 
  
1話目が、「ワンと神様はバスに乗って行った」

 松本大洋のような画風に静かな物語。こんなのアリなんだ。
 画のことはよくわからんが、クオリティが高いだけでなくオシャレ。
 あざとく無いオシャレ。
 伝統音楽(だと思う)が、ちょっと五月蝿い。
 中国は音楽の演出が、相変わらず未発達かも。
 何はともあれ、
 今中国では、ちゃんと評価されるんだ。こういうアニメでも。
 軽く衝撃を受ける。
 
 伝統文化を扱うなら、規制の対象にもならないから、ノビノビ作ってる。
 そう思うと、何故かホッとしました。 
 スクリーンで観る価値充分。 
 
 バスもやって来て、
 近代化が進むのかと思いきや、開発が頓挫し取り残される。
 そんな時代の端境期にある郊外の村。
 少年の目を通して、
 移り行く四季の風景を、淡々と、そしてオシャレに描く。
 少年が「月下独酌」みたいなセリフを吐くのも、やり過ぎなオシャレ。
 
 「昔ばなし」とは言え、バスなので近代以降のお話。
 「遠野物語」のような民話ベースという訳ではないらしい、道祖神の物語だけど。
 バスと異世界と言えば、「熱海の捜査官」を思い出す。
 たぶん知らないパロディがもっと入ってるんだろうな。
  
 
次に、「妖怪くんの夏」

 コミカルで、アニメらしいタッチの画と裏腹に、
 物語は意外にも、階級組織の労働者の悲哀を描く。
 正直者が報われるという、どんでん返しで締める。面白くて安心の出来栄え。
 
 西遊記を背景にした寓話で、
  ブラックな組織の末端の構成員が主人公。
  横暴な上司の無理難題に応える。
  自身の工夫は許されず、理不尽に耐える。
  資本主義社会の縮図のよう。
   内向きには、権力者は絶対のパワーに見えても、
   外部の市場原理は、ダメ組織に無慈悲。ひとたまりもなく殲滅。  
  それでも最後は、正直者が報われる。めでたし。
 
 ほっこり、安心してしまう。
 思い起こせば、
 今は昔の話、 夜7時台は子供のゴールデンタイムで、アニメも多く放送された。
 今は少子化もあって、健全な作品ばかり製作は出来ないと、
 「君たちはどう生きるか」↓にそんなセリフが有った気がした。
 
 
 残りの2作品もそうだけど、宮崎駿の影響をいっぱい受けて、
 志は取り戻してんじゃないのかな。立派じゃん。
 
 
3作目は、また絵柄がガラリと変わり、
「売店」
 
 お話の骨子は「笠地蔵」と一緒で、
 表現は、「千と千尋」↓の影響受けている。と思う。
 
 
 頑固ジジイのキャラ造形が素晴らしい。
 寂れゆく街並みの描き方も素晴らしい。
 CGを効果的に使える時代で、才能が発掘され易いといいね。
 
 もう日本だと、”泣け”ないオシャレ表現は、評価されないか。
 かといって、拘りが強い表現で、作り手に満足されても辛い。
 原作ものは別として、地味なオシャレは難しいかと、しみじみと惜しむ。
 
 
最後は、本格派をぶつける。
「リンリン」 
 
 若き女性の姿に化けて、という民話が多いところ、
 本作は女の子が狼の化身。
 
 まあ、
 別に連想する必要は無いんだけれど。
 
 
 ダイナミックな戦闘の演出も、実に正統派。
 雪山の息を呑む景色に、毛並み一本まで美しい狼。
 
長編となると、また別に、
お話づくりの才能が必要とされてしまうかもしれないが、
そんなことは、一旦忘れて、素直に喜ぶ。
これだけのクオリティの作品をスクリーンで観たのだから。
 
 
宮崎駿には鈴木Pが居る、そんな本田宗一郎みたいな幸運は稀だけど、
今回、中国アニメは老舗がプロデュースして、底力を魅せつけた。拍手。
タイミング良く、限定に間に合って幸運。
やっぱ、気合入った映像はスクリーンで観たいし。
  
表現の自由は、非共産圏でも難度高い時代だけれど、
頑張ってね。
映像が目まぐるしく疲労感高いけど、
心地よく映画館後にした。
 
  
最近はどうだか知らないけど、思い起こせば、
中国での公開は難しい時代も有ったと想像する。
中国市場を狙うなら、日本産のアニメでも、気を使っていた。
 9.11以降の製作のはずなのに、
 テロが題材なのだから、以下の対立構造が当然描かれる、と決めつけていた。 
  政府側は、
   世論を恐れ兵士の被害は出せない。
   だから無人の空爆がメインで、誤爆は憎しみの連鎖を産む。
  テロ側は、
   貧困で命は安く、狂信的なら、なおさら、
   だから自爆テロが可能かつ、最も効果的。
 
 ところが、 
 自爆もせず、ゲーム感覚で身代金要求する。
 民族や宗教の対立は一切存在しない。
 機械が発達する近未来でも、AIやドローンは登場しない。
 原作者に忠誠を誓い、現実とは違う世界線の近未来を描く。
 そんな奇妙な日本の作品だった。
 
 政府とテロ組織が、ロボットという同じ土俵で戦う、
 その映像は、すこぶるハイクオリティだった。
 ”ストーリー無い方が良くね?” と私は心底ガッカリし、
 創業者が去ったソニーを想い出した。アップルって偉いんだなと今は思う。
  
 
そんな折、「ケロロ軍曹」を福田雄一でリメイクと聞いた。

どうっすか?
いろいろ断られて、福田監督にお鉢が回ってきた気がする。
期待出来ないけど、頑張ってね。
スクリーンでなくても、配信では観るかもしれない。
いきなり映画はギャンブルな気がするけど。福田監督は数字持ってるはず。
商業ベースに乗せるのって、大変なこと。
 
 
 
そういえば、これも↓サンライズ制作だったかな。 
 
ずっと戦記もの作ってるのだね。
日本は漫画が原作を供給してくれるのが強み。 
アニメを独りで作るのは、まだ稀だから、漫画ほど多様じゃない。
異世界ものが流行れば、そればかりなのは辛い。
福田監督と聞くとズッコケてしまうけど、頑張って欲しい。
 
 
 
2025.07.09 13:00現在
 ここ数日、日本時間はNYの値動きを無かったことにする。
 日本時間の日経平均を見れば、今年2月までのレンジに戻ったような動き。
 両建てマスターなら上手く立ち回るのだろうな。
 私は、
  保険の買い玉を寄り付近で手仕舞い、
  その後はほぼ静観。ちょっとだけ売り玉を追加し、
  昨日の終値で膠着し始めたので、保険の買い玉をちょっと。
 日本時間で20MAタッチはあると想定し、まだ売り目線。

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