創業者に投資せよと、昔習いましたが、その理由が分かりました。
昨日の早朝「閃光のハサウェイ」観てモヤモヤ。
それから佐久間Pお勧めの「鳩の撃退法」を続けて観てスッキリしました。
「鳩の撃退法」面白くて、意欲作なのですが、その前に、
意欲は買わないけど、職人仕事は立派。
という感想を得た「閃光のハサウェイ」。
作り手はちょっと気の毒。随分気を使ってるんだな。
創業者が第一線を退いたソニーって、こんな感じだったんじゃないかな。
優秀さと、クリエイティブの魂は別か。
予習として、「逆襲のシャア」「東京リベンジャーズ」もアマプラで観ました。
アニメに詳しい友人が、
”アンノは成長してエヴァ卒業したが、トミノはガンダム卒業出来なかった。”
と言っていた理由がよく分かりました。
私は子供の頃観たいわゆる1stガンダムしか知りません。
その間はwikiで埋めました。
お話は荒く、
あれー、昔はもっと丁寧に人間ドラマやってたのにと、最初戸惑いました。
富野由悠季も組織を描けないのか、アニメに限らず日本のコンテンツのダメなとこ。
悪を描くのに、権力者の横暴に問題が矮小化されてしまう。
メカニックは素晴らしいけどさ、、
と観ていて、ラストは。
ああこれは、富野由悠季の決意表明なのか。
と合点がいきました。
作品単体としては、力業が過ぎますけどね。
富野由悠季は、
モーツァルト(宮崎駿)に対するサリエリの視点があって、
とてもクールな自己認識をする。
クリエータの業に取り憑かれた狂った人達とは違い、
ロボットアニメを主戦場にするという生存戦略を選んだ。
その後、
資質は2つの方向で発現したと、私は見る。
A.ロボットアニメの制約の中で、人間ドラマを精一杯やる。
B.宇宙戦記として従来のロボットアニメを発展させる。
「イデオン」が振るわなかったこともあり、Aは苦戦する。
逆に、
1st以降も「ガンダム」はバンダイはじめ多くを潤わせた。
戦記ものとしてのガンダムブランドは確立されたと言っていい。
それだけの肉付けもされた。
そんな中、Bに全振りして、ガンダムという世界観を守ると、
ファンが望むガンダムで行くと、
シャアvsアムロの最終決戦に仮託して、
自らの葛藤にも結論を出した。
ブランドとは顧客に対する約束だ。
この後は、
自らは総指揮、プロデュースに回り、
ガンダムの世界観の中で、後進に監督と任せるようになるだろう。
と想像された。
まあ、
学生になってアニメも観なくなった私が、どうこう言えることじゃない。
「イデオン」を応援した訳でもない。
Aを捨ててしまったのは寂しくはあるが、本人とファンの選択だもの。
ただ、
組織を描けないという日本のコンテンツの弱点さえ克服してくれれば、
そこだけは、不満だけどね。
むとうやすゆき構成&脚本作品として予習。
これは売れる。
ヤンキー×タイムリームでサスペンスをやり、適度にギャグを挟み、
少年の友情と成長も描く、王道もカバー。
原作者はこの作品のため絵柄も変えたのか、、
恐るべき、才能と戦略。
と観始めたのですが、
途中から失速、というかビッグヒットへの戦略シフト。
個人的にはイライラして観続ける不快にもなりました。
東京リベンジャーズ 主人公
と検索ワードを入れると、グーグル先生は、
無能 とサジェストしてくれます。
やっぱ、皆そう感じますよね。
一向に学習しない主人公の感情の起伏で、ドラマ盛り上げられても。。
26才と中学生の内面の描き分けも、止めちゃいましたよね。あえて。
原作者達は、主人公が一度ミッションクリアした段階で、
気づいてしまった。
主人公が賢くなってしまっては、問題を完璧に解決してしまう。
物語を続け、メガヒットさせるためには、
このままバカで居続けてもらわなければ困る。
その間にAKB商法的に、キャラを増やそう。
ファンが推してくれるように。
ワンピースやドラゴンボールだって、主人公が成長しては短命だったかも。
そこはサブキャラの魅力や、バトルの構成で引っ張ろう。
アラバスタ編とか空島編とか、お話はいくらでも続けられる。
せっかく、この物語はそういう構成を有しているのだし。
と、私は想像しつつ、最新話まで一気観しましたけど、
いやー、途中からは辛かったです。
ここまで学習能力ないと、どんな組織でものし上がるのは無理だよ。
未来を知ってるというアドバンテージを活かせない。
当初は、成長させつつ、組織内でも出世するという構想だったはず。
でもそれじゃ、良作という評価で終わってしまう。
ので、メガヒットするように、路線変更した。
それは、編集側の意向なのか、作者自身の戦略なのかは、不明ですが、
イケメン揃えての実写で、今興行収入40億突破ですもの。
大成功です。
観ててイライラはしますが、あっぱれですね。
そこで、アニメでの、むとうやすゆき構成&脚本。
1クールで一度目のミッションクリア(成長あり)まで描いてから、
駐車場の事故というショッキングで引っ張る。
2クール目からは、
ヤンキー、タイムリープ、サスペンスという要素はそのまま、
ワンピース的手法の展開に舵を切った。
おバカな主人公の感情の起伏で、ドラマ盛り上げる演出は、
あえてのセグメンテーションかな。
配信中心になって、
視聴者の属性も、分あたりの反応も、格段に分析の精度は高い。
テレビ時代とは比べ物にならない。
そういう時代の中で、構成の判断も誤らない。
むとうやすゆきという人は、そういう感覚も備えた脚本家かと想定。
そんな予習の後、劇場に向かいました。
随分と、気を使いながら作ってんだな。
作り手が気の毒になりました。
映像や音響は確かにすごい技術なのですが、感想はそこにはなく、
創業者が第一線を退いた後のソニーみたい。
多くの評価にあったように、確かに脚本は荒い。
セリフは聞いててキツイし、
物語の展開ありきで人物が動く。
しかし、それもガンダムの世界観と原作を守るためかと、観ていました。
主人公のハサウェイ君の人物造形や動機の描き方は不評のようですが、
私はそうは思いません。
純粋と出生に対する逆コンプレックス。ビンラディンもアラブの大富豪の出だし。
個人的な思いから社会を憎むのは、深くなりすぎない程度によく描けてる。
ファンムービーとしての評価はファンがすればいいし、
一般視点では、ハイレベルな映像と音響でスペクタクルを楽しめるかどうかだね。
脚本は荒いが不出来とは言えない。優等生的作品。
という印象でした。
それはそれとして、見過ごせないのは、
今の戦争やテロが描けているという評価です。
他人の感想確認してて、イラっとしました。
それは、お花畑が過ぎる。
ガンダム村の問題というより、日本人村の問題だけど。
宗教や民族の対立は描けず、
自爆テロもドローン空爆も、AIも無い、
理性的で人道的な優しい世界。
それで、現実世界を描こうとは無理な相談。
米軍が撤退して、タリバンが実効支配するアフガンでは、ISが自爆テロを起こす。
この世界線から分岐したワールドの話だよ、ガンダムは。
お花畑な視点でガンダムワールドを褒めるのは気に入りません。
原作は1990年、地下鉄サリン1995年、911は2001年。
作り手は30年前の原作を忠実に再現しようとしている。
劇中、証明書出せとかいいますが、監視カメラで顔認証判定すら無い。
あれだけ科学技術が進んでいるのに、AIは存在しない。
大人気ないことを言うが、
なんで人が乗る必要あるの?
疑問を払拭できなかった。
無人のドローンで誤爆とかするから、憎しみが連鎖するんじゃないのか?
しかし、
戦闘は常に有人であるという設定を壊しては、ワールドが成り立たない。
作り手はとても周到に配慮して現代を排除している。
グリーンピースは居るけど、環境問題では民衆の支持は得られまい。
テロリストが信じるものは、ガンダムワールドでは描けない。
この聖戦で死ねば天国に行ける。
程度の思い込みなくして、
無差別な行為に手を染められるだろうか?
そして、自爆テロは許されない。作品の倫理観にも縛られている。
中国のマーケットを捨てる覚悟で、
宗教や民族を描く根性は作り手には無い。
あるならガンダムでは、そもそもやらない。
テロというセンシティブな題材を扱いながら、
創業者にも気を使い、中国で上映禁止にもならない。
クリエータの情熱とは違う、優秀さを強く感じる作品でした。
職人技術としては称えるべきだし、大ヒットに拍手ですよ。
野暮なこと言わずに、ワールド堪能するのが正解。
残念といえば残念。
企業の代替わり、特に創業者のカリスマが強ければなおさら。
ウォークマンを世に出したソニーは、
その後ジョブズのようなビジョンは語れなかった。
製品の高機能のみ。
なるほど、創業者に投資せよと言われる訳だ、
財務諸表だけで判断してはいけない。
見終わってから、この記事↓読んで、しみじみしました。
「そうか、僕は手塚治虫先生と同じ立場になっちゃったんだな」
大御所に歯向かって、クリエータの情熱ぶつけるような人材なら、
今は別の手段を選ぶかな。
佐久間Pはテレ東で縁のあった「愛のくだらない」も褒めてた。
夜、新宿テアトルまでゆくかな、
ちょっと面倒くさいが、今日までかよ。
技工より情熱って、気分の日もあります。