前回の続き。
逆に、クオリティも高いと予想され、劇場で観ても損はない可能性高いけど、
さほど興味を惹かれなかった2024年公開の新作も幾つかあります。
その中から、公開中が有り、早速観てきました。
ベタな感動故の大絶賛が非常に多く、当初敬遠していました。
オシャレなアニメのようだけど、「ルックバック」と同じパターンで、観客が渇愛気味の傾向あり。
まだ劇場に間に合ので、念の為、改めてyoutubeで評判を確認してみました。
すると、新たな発見がありました。
幾つかの批評の中で、
作品へ疑問を呈される共通の部分があり、そこに面白みを感じました。
曰く、
ロボットはそもそも奴隷的で、恋人や友達のような関係ではない。
そこをスルーしたまま感動するのは、いかがなものか?
人権派の方々(大島育宙、IGN)は言及してます。
中でも最も端的なのは、宇多丸評。の中のリスナーの指摘。
「この映画の犬とロボットはお互いを大切な存在だと考えていますが、その関係は対等ではありません」と。なかなかね、ちょっときつい表現も出てくるんだけど……「ロボットは犬に買われており、悪く言えば買春のような関係です。主導権を持った犬からは関係を解消させることができますが、ロボットからはそれができません。ロボットも捨てられる夢を見たりして、それを自覚しています。さらにロボットは動くこともできなくなっているため、それはいっそう際立っています。そんなロボットは……(後に修理されて)体の自由を取り戻しますが、同時に心の自由も手に入れており、自分の意思で関係を選択することができるようになりました。一方で犬の方は新しい関係を作ろうと模索しますが、最終的にはお金で買った関係しか構築できずに、変わることができなかったのは残念に思いました」という。まあ、確かに。このケンコバさんが言っていることは、一個も間違ってはいない、という感がしますよね。
絶賛の能天気さとは一線を画し、興味深い。
ロボットものといえば、いにしえの手塚治虫のロビタから、このテーマあります。
最初に浮かんだのは、
是枝監督が映画化↓してますが、原作↑の方がお勧めか。
破けてしまえば機能ぜず、それまで。
交換可能な愛といえば、アニエス・ヴァルダ↓も思い出します。
今は有料になってしまいましたが、まだ配信されてます。
何事も無かったかのようなエンディングの家族団欒は、
人間の深淵を見つめて妥協が無い。
それはさておき、本作、
人権派の指摘はモットモではあるのですが、
正義感に寄る前に、自分ごとの感想がよぎります。
相手から見れば、私も交換可能。
いや、どんなに偉大な人でも、”貴方だけ”は幻。
イチローが引退したら、大谷翔平に熱狂してるかもしれない。
真の意味で自分が、かけがいのない存在なのは自分だけ。
手放しでの感動とは、ちょっと違う感慨に浸ってしまいました。
私は このオシャレアニメを、幸福を掴むハウトゥーものとして観ました。
他者にとって交換可能な自分であるけれど、或いはだからこそ、
かけがいのない自分を肯定する。
過去にも、他者にも、因われることなく。
軽やかに、爽やかに、おおらかに。
作り手が作品の中で説いてることと、
感情の消費を最優先することは、
ベクトルが違うと感じます。多くの感想に違和感を覚えます。
報酬系による感情消費の中毒者の様に見えます。
「ルックバック」でも同じ違和感。
第一線で活躍するプロとしての矜持が示され、
クールで厳かな精神を感じました。
”さあ、感動してください” とは言ってないのに、
ジャンキーのように感情に溺れる観客もいて、
もうちょっと作者の声に耳を傾けてもよいのではないか?
作品はハイセンスでオシャレなのに、客はベタ。
ま、とにかく。
感情消費を優先させ過ぎだと、幸せには成れない。
同様に、
犬くんを断罪しちゃうと、軽やかさの台無しが実感されます。
人権派は犬くんに厳しいなあ。
犬くんは彼なりに最善を尽くしたよ。精一杯生きている。
肯定してあげようよ。おおらかに。
正義も快楽の報酬系なので、それじゃやはり幸せには成れない。
人の話聞いてんのかな。
本作は、ポップでおおらかな幸福への道を示している。のに、
絶賛する中には断愛の治療が必要な観客も居そう。
物語が元カレものとはいえ、そんなドロドロしない。
過去を思い出しながらも、あくまで爽やかに別の道を歩む。
ストーリーは”追憶”ものと”遭難”もののサンドイッチです。
故障により、ロボはビーチに止むなく置き去りにされるのですが、
ロボットのドリームズというタイトルの割に、
捨てられる側の夢は多く提示されない。ロボットズドリームならまだしも。
現実と妄想の区別が曖昧ではあるものの、
ビーチが閉鎖されてから翌年の海開き、それまでの経過が示されるだけ。
途中はもっとスリリングで、白日夢を見るのかと、想像してました。
因みに、
何らかのトラブルで自分(だけ)が置き去りにされ、救助を待つ遭難ものは、
山岳系と宇宙系が二大派閥。
ビーチは斬新で、かつ満ちてくる潮が怖い。
その気になれば、もっと娯楽色出せましたが、それは本意では無いのでしょう。
ま、ストーリーについては、シンプルでもう解説不要ですね。
表現については、
以下の説明に、なるほどと膝を打ちました。
平面的で単純化された絵柄により、内容もより一般化、抽象化され、
リアルの辛さ、重さを回避している。
あくまでポップに。
絵柄とテーマが一致している。
アニメに初トライで、”アニメならでは”に成功した。
ストーリーの説明でないyoutuberは希少なのですが、それはさておき、
作品の魅力を良く解説しています。
更に因みに、
小ネタの考察系は、探せばあるかもしれませんが、私は興味湧きません。
鑑賞中もそういう情報処理は停止してました。無駄に疲れますから。
アニメだと背景に情報量増やすのは、いくらでも出来てしまいます。
いずれにせよ、
世に溢れるベタに過剰な反応には、違和感あります。
それじゃ作品の長所が台無し。
オシャレな幸福へのハウトゥー。
感動はほろ苦くも爽やか。
それで良いじゃないですか。
せっかく抑制効かせてクールに決めてるのだから。
もっと因みに、
最近の私は、めろんちゃんの歌声に幸福を感じます。
もとい、
解釈は人それぞれですが、私はこのアレンジが好きです。
2025.01.08 09:00現在
アメリカはインフレキツく、利下げ難しい。
債務の支払いに支障きたすか。
まだレンジは続く。