公開最終日に圧倒的映像との評判にて、鑑賞を決定。
それは予告編で充分伝わる。
ネタバレは避けた方が良さそうなので、予習は軽めにしました。
映像のことは詳しくは分かりませんが、
浮世絵をモチーフに、スタッフはこだわり抜く。
陰影は付けない。明度は一定。敢えて2D(紙)っぽく。
和紙の質感。木版印刷のような線。
村上隆っぽい現代アートだ。
内容は映画単体でも理解可能とのことだけど、設定は最低限確認。
あらすじ(唐傘)
アサは御右筆のお役目に憧れ大奥へやってきた。そしてアサは大奥の前で出会った同期のカメと仲良くなる。大奥には過去を断つため、自身の大切なものを底が見えない井戸へ捨てるしたきり「出離の儀(しゆつりのぎ)」を行う。そこで「捨てるものはない」と言ったアサ、そして大事な櫛を捨てたカメ。二人は大奥で頑張ろうと決意する。アサは優秀だったが、カメは仕事が不得意で先輩に叱られてばかり。アサは大奥のしごとや、彼女の世話に追われながらも、カメといると楽しいと感じるのだった。そんな二人だったが、やがて大奥で事件が起きる。そこに現れた怪しげな薬売り。薬売りは「これは、唐傘だ」と言い放つ。
江戸時代だし、「陰陽師」と「呪術廻戦」の中間に位置する”あやかしハンター”もの。
大奥が舞台で、女子校みたいな相棒(バディ)が主役。(ハンターは狂言回しかも?)
アニメファンのネタバレなし感想も参考に。
作り手の自己満足的な表現かもしれん。
映像だけ見ても分かるが、情報量は多い。というか過剰。疲れるのは覚悟しよう。
理解が追いつかず、落ちこぼれるかもしれない。
(その時は、ネタバレ考察で復習しよう)
設定の新情報を得る。
ハンターは3条件(犯人の特定、真相の究明、動機の解明)を満たすと、
容疑者有罪として、必殺技を発動出来る。
アクションも重要そうだけど、判じものとしての要素もあるのか。
そこまで踏まえて、監督の発言は興味深い。
予告編では、承認欲求的な動機が語られる。
そのうえで、聞き慣れない経済用語が出てくる。
合成の誤謬
何かの問題解決にあたり、一人ひとりが正しいとされる行動をとったとしても、全員が同じ行動を実行したことで想定と逆に思わぬ悪い結果を招いてしまう事例などを指す[1]。
例えば、家計の貯蓄などがこれに当たる[1]。所得が一定の場合、一家計が消費を削減した場合、必ず貯蓄額が増加する。これはミクロの視点において、一家計の支出削減は経済全体に影響せず、その家計の収入を減少させる効果はないと考えられているためである。そのため所与の収入において支出を削減すれば貯蓄額が増加する。
デフレ・スパイラルを描くの?
大奥で緊縮財政と言えば、吉宗がリストラしてた。
江戸時代において、米沢藩の財政改革は成功したのに対して、江戸幕府の改革はたびたび失敗している。米沢藩が歳出削減や他藩への輸出興業を図ることにより財政収支を好転させることができたのに対して、当時は外国との交易が制限されていたため、幕府の自らの改革は、全体の経済活動を冷え込ませるだけに終わることになってしまった。領国経営において緊縮財政による財政改革に成功した徳川吉宗、松平定信の改革が国政レベルでは失敗したのはこれによる。
賃上げ実現しないとデフレ脱却は無理で、そのためには産業の発展が欠かせない。
藩単位なら、他の藩相手に貿易が出来るが、
鎖国の江戸幕府全体では、何処も緊縮してては、財政再建は成らない。
不景気リストラの嵐の渦中の、サラリーマンの生存戦略を、
大奥の人間模様に、なぞられて描くのだろうか?
確かに、
個人と組織の関係において、貢献と待遇の相関性が低い点は、
大奥と企業はよく似てるかもしれない。
それなら映像は置いてでも、作品は興味深いが、
そんな考察は見当たらない。。。
で、鑑賞。
ネタバレという程のストーリーでもないですが、ネタバレ全開で行きます。
エリート官僚の組織下での三様の生き様を描く。
カメ 適性無く脱落
アサ 幹部候補生
北川 燃え尽きてしまった
どうやら、
この大奥には、やりがい搾取的な洗脳を行うラスポスが存在するようで、
その謎解き&決戦は、続編で描くことになると想像します。
それはそれで、構わないのですが、
問題は、本作のクライマックス。
燃え尽き症候群の怨念が退治される場面で、
北川の蹉跌、バーンアウトに至るプロセスが描かれない。
そこは、一遍の映画の中で、対になってないとダメでしょう。
真相究明が必要条件で、必殺技が発動するというお約束なのに、
自らが架した設定を破ってしまう。
自分で決めたルールすら守れないなら、脚本は辞めた方がいい。
混同も有り、
”心臓を捧げよ”的な入省の儀式と、
競争に適性無いなら、その組織から離れた方が幸せなことと、
能力も意欲も有っても”燃え尽き”が発生してしまうこと、
をそれぞれ区別して、心理までチャント描き分けられていない。
更に、この作品のテーマが、
”手段の目的化”であり、”合成の誤謬”に成ってない。
組織と個の利害が相反するという話ではなく、
出世という個人の自己実現の手段が、いつの間にか目的化してしまい、
その上で、
ドロップアウト、トップを目指す、途中でバーンアウト
の三様が存在する、というストーリーに成っている。
それならそれで、構わないけれど、
座組に物語を整理する脚本家が不在で、その結果、
映像を魅せることが目的化して、
ドラマの演出効果としての映像表現、という本分から乖離してしまった。
とにかく、
映像は忙しいのに、設定を一つプレゼンし終わるまでが逐一長い。テンポ悪い。
”いいから、チャッチャと説明終わらせろよ” とイライラします。
クラファン募るような手弁当映画の、弱点に成りガチ。
本丸の謎を続編に先送りするのは可としても、
本編の敵=唐傘のドラマは、一本の範囲でキチンと盛り上げて完結させないと。
この監督で映画の脚本はダメです。実力不足。
30分程度の一話完結なら出来ても、(つーかTVシリーズでも脚本は別の本職)
2時間の映画一本を成立させるだけの体力が無い。
映画の尺で起承転結を収められないから、3部作に成っている。
これだったら、プロの脚本家を権限付きで入れないと、
凝った映像と詰め込んだ設定に、自分で満足するだけならアマチュア。
引き算で構成出来ない監督に、全権預けるプロデューサーが悪い。
バーンアウトって、
本来の目的を見失って頑張るとこから始まる症例ですが、
本品は、映像表現という手段に執着して、ドラマそのものは痩せ細る。
お話のテーマと作り手の姿勢がどちらも、手段の目的化で構成されるフラクタル構造は、
興味深いと、個人的には思うけれど、
”凄いけど、何やってんだろ?” という疑問は拭えません。
表現としては抜きん出てますが、演出としては評価出来ない。
”分かる、分からない”の問題でなく、”情念”と言いながら人間心理を簡略化し過ぎ。
ドラマそのものの盛り上げを端折り、映像に頼り過ぎ。
設定は詳細に追加するが、感情のドラマを提供する力が無い。
表現が優れているのでなく、バランスの悪い作品に成ってしまっている。
自主制作の陥りやすい弱点。非常に残念でした。
あと、
将軍を”天子”と呼ぶのは、いかにも左翼映画人っぽく、
そういう人って、プロフェッショナルより趣味人だよなって、思うこと多い。
偶然でしょうか。私の偏見が強すぎでしょうか。
更にあと、
主題歌はアンマッチだと思うけどな。タイアップやむなしと言えど。
音楽全般に頑張っているのに、そこだけ残念だった。
映像は、
ヒンドゥーやゴーギャンとか、異物が楽しかった。
いっそストーリー自体を諦めれば良かったのに。物語もテーマも要らない。
一般ウケ失うけれども。もっと遠慮せず存分に出来るよ。
競争社会での燃え尽き症候群が描かれた映画を今観るなら、
「ケナは韓国が嫌い」を推します。
韓国社会の新自由主義的で苛烈な競争の実情を訴え、
その行き場の無い苦悩が伝わります。(着地はフワフワしてますが)
もう一度、参考文献↓紹介。
深刻なのは、優等生が大学入試を控えたある日突然に「バーンアウト」するケースだ。
「幼稚園のときから全校トップを通していた生徒が、高校2年生になって、突然、登校拒否になり、引きこもったケースがありました。
-中略-
勉強によるストレスで体の不調を訴えるケースは少なくないという。
日本の組織に関しては、この本↓を面白く読みました。(若干冗長ですが)
学校教育以来の洗脳と、組織による個人の搾取の構造と。
それを承知の上で、個人側の最適な生存戦略。
努力教を信奉する限り、組織のロジックから逃れることはできず、自己実現できる可能性は限りなく低い――。「従業員をできるだけ安く働かせて、できるだけ高い利潤を手に入れたい」という資本主義の枠組みが、企業に強く働きかける。この中で一個人においては、「努力教」の称揚する「キャリアアップ」そのものが、そもそも一種の幻想にほかならない。
組織と個人の利害の相反を描くなら、個人側の勝ち組も描かないとね。
従業員個人の立場からすれば、昭和時代を彷彿させる彼ら「働かないおじさん」こそが、資本主義社会における「勝ち組」のひとつのモデルなのではないだろうか。「働かないおじさん」とは、大企業の安定性と悪くない収入収入を確保した上で、解雇されないギリギリのパフォーマンスを発揮し、人生を楽しむ生き方である。個人の生き方として、これ以上のものがあるだろうか。
競争社会で頑張るのは、優れた戦略とは言えない。
事務次官も大臣に人事権握られる。
さらに個人のキャリアから見ても、熱血サラリーマンは中途で燃え尽きてしまう恐れがある。社長になれるかどうかは、運によっても大きく左右される上に、仮に社長まで上り詰めることができたとしても、大企業の場合、創業家や歴代社長、株主など睨みを利かせる存在が目白押しで、好きなようには振る舞えない公算が高い。
組織内の個人の勝ち組を描いたこちら↓もおすすめ。
ハウツーや自己啓発となると、まだまだ組織視点ばかりですが、
組織と利害が相反する個人の生存戦略を説くもの、幾つかありました。
住みよい国を作るため、明日の幸せ一筋に!
作詞が鈴木敏夫とは秀逸。
2025.03.14 06:00現在
火曜日の-2σタッチから反発。
レジサポ転換の抵抗は強そうだけど、
またここでしばらくレンジかもしれない。
そう考えて、
手仕舞える玉は手仕舞い、軽い利確。現物はしばらく塩漬けでいい。
レンジもありの前提で、ポジション作り直す。
金曜の朝まででは、反転上昇とは往かず戻される。一応切り上がっているが弱い。
イーブンくらいの両建てでSQを迎えたい。