普通に良作「君たちはどう生きるか」宮崎駿の魂に震えて泣いた。この程度で分からないとか騒ぐなら想像の余地を残す作品の鑑賞はムリ。一生、流動食だけ飲んでいればいい。

絶賛って程でもないけど、とても爽やかな良作。
説教でなく、肩の力が抜けた巨匠からの次世代へのエール。
 
退屈はなく、上品な満足は広がる。
スーラの点描みたい。
勧善懲悪とも違う、こんな優しい味わいを提供する人だったんだ。
つい、癒やされてしまう。
アメリカンな味覚だと味わえないかもしれない。
オレは毎食マクドナルドはキツいけどね。
 
前衛作品ではない。
昔がウェルメイドすぎるだけで、普通の表現の飛躍の範囲。
  
ムリにストーリーに固執せず、
「微笑がえし」だと思って気楽に鑑賞すれば、
創造者の魂は伝わる。

優しい悪魔と住み慣れた部屋
それでは鍵がサカサマよ
おかしくって涙が出そう。

「優しい悪魔」に気づくかどうかは考察班に譲っていい。
私はジブリファンでもないし、
カリオストロ伯爵みたなインコくらいしか気づけない。

そういう仕掛けに気づかずとも、
情景と心情は分かる。したもの。
 荷物も全て運び出し、ドアの鍵を閉める。
 まごつく所作が可笑しくて涙が出るのではなく、
 これでお別れだから。
それ、説明するのは野暮で、書いててうんざりしてしまう。

「SonnyBoy」の方がよっぽど好き放題だったね。
 ”君たちは本当にバカだなぁ。
  一から十まで全部説明されないと何も分からない”
客に喧嘩売るのが爽快だった。
あるアニメに詳しい友人と「SonnyBoy」を放映当時話題にした。
 ”アニメは子供のもの”(by 富野由悠季)だから、
 こういう表現はアニメファン向きじゃない。
彼は私をそう諌めた。
 
 寓意と分かりにくいオマージュをちりばめて、
 結論は観客側の解釈に委ねる。
”大人は説明しない”(by利根川)だけど、それは大人向け。 
 
そうか、、
「2001年宇宙の旅」や「素晴らしい日本野球」とかダメか。
 
責を負うては、人は賢くなってしまう。
自分で決めなくよければ、幾つになってもモラトリアムのまま。
そんな老人だって見たことあるよ。
 
 
それはさておき、
「君たちはどう生きるか」いいエールだと思うよ。
 
今の宮崎駿はエクストラタイムだから、
チャレンジングというより、
プレッシャーから解かれて肩の力を抜いて、自由に創造してる。
もう、客に忖度しなくていいよね。
島に散らばる石のように、あざとい作品は尽きないのだし。
納得できる運命を自由意思で選んでね。
駿の魂に震えました。  
  
老害にならない、生涯現役ってかっこいいね。
 
 
ネタバレなし感想はそんなことっす。
ここからはネタバレありで。
 
 
 
 
予習は失敗でした。「微笑み返し」と吉野源三郎だけで充分かな。
妊婦の義母はグレートヒェン味あるけど、
男女の話にせず母と息子の話でまとめる。ま、子供も観るんだし。
水先案内人は、
 アオサギなメフィストと、
 少女時代の生母がベアトリーチェ。
 
ちょっと変則的な三部構成でした。
1部は、
 少年の生い立ちと現状、抱える困難を丁寧に描く。
 コペル君や宮崎駿本人にも重なる、いいとこの出の少年。
 自作自演で学校行かないのはぶっ飛んでる。けど、
 自分の意思で運命を選べないのが子供の辛いところ。
 すべて知らない間に話しが進んで疎開。
 
 生母の死はトラウマになるし、
 いきなり紹介され、妊娠してる義母、しかも叔母。
 当時は家同士の結びつきだから、そういうこともあったんだろう。
 だけどキムタク手早くね。

 葛藤抱えながら、ゆめうつつの境が揺らいでゆく。

この丁寧な導入は上手いと思った。
スペクタクルより、丁寧な味わいを重視。
これで退屈とか言われてもねぇ。
ジャームッシュですら、ヨーロッパでしか評価されない。
日本は小津安二郎を産んだ国だから、バックボーンが違うと言われるが、
アメリカン過ぎる。そこまでファストでなくても。そんなに待てないか。
 
 
2部、3部はちょっと交差するみたい。
異世界(黄泉の国)からは2つのテーマ。
2部 二人の母との和解。少年の成長。
3部 引退と後継者、次世代へのバトン。

2部
 これは解釈なんだけれど、
 義母が黄泉の国で出産となると、
 死産流産、ないし母子ともに死。と考えてしまう。
 息子が現世に連れ戻すのは、生命の運命を変えてしまう。
 世界の法則としては大問題だけど、

 そこで、和解する。
 ”あんたなんて大嫌い” 100%でなないけど始めての本音。
 橘玲のコラム思い出す。
  子供を虐待で殺す親は大抵連れ子。
  これは自然界ではよくあるケースで。
  自分の遺伝子を残すのが本能だから。

 別に父親の子供を身ごもっているのなら、
 義理の息子を心から愛す義理も本当はない。

 それを受けて少年。  
  ああ、この人もいろいろ大変なんだな。
  それでも、オレにここまで心砕いてくれて。
  聡明で優しい彼は初めて後妻を”おかあさん”と呼ぶ、
 我が身を振り返ると、わからず屋で愚かだったわたくし。
 複雑な家庭ではなかったが、そんなにスマートには成れたことがない。
 
 地頭の問題かもしれないけど、駆け足な冒険だけど、
 人間としての成長を感じる。 
 
 少女時代の母親とも冒険の苦楽を共にし、
 ラストで死別を受け入れて、それぞれの人生を歩み直す。
 ウエットでなく、演出過剰でないのも好感でした。
 爽やかな成長物語。
 
 
3部
 大叔父から継承。いずこも後継者は問題。
 ジブリの問題と見れば、
  宮崎吾朗にクリエータとして継がず気はないだろう。
  残酷だけど才能は見限っている。
  裏方としては有能だと思う。
  うーん、
  「風立ちぬ」で誘ったのは継がすためだったか。
  でも、
  庵野秀明は「シン・ゴジラ」で実写特撮に味しめ、
  「シン・エヴァ」を最後にアニメから足を洗った。
  今後は撮るとしても、もっと実験的なキュビズムみたいな実写になりそう。
 
 ああ、やっぱ後継者いないまま、死後は解散も覚悟してるのかな。
 作中でもそんな匂わせ。
 ま、ひとりひとり運命を受け入れつつ、
 納得できる選択をしてくしかないか。
 
 次世代のクリエータも、志高い作品創造してね。
 説教でなく応援する姿勢が、やさしい。

個人的には、ここらへんで感涙。
そして、米津玄師でトドメ。
 
 
こんな風に、静かな純真を味合うとは。想像の外であった。

ぶっちゃけ、分かる分からないと、魂が震えるかどうかは関係ない。

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