昨日公開した「オリラジアカデミー」渾身の力作でしたね。
貨幣論を歴史的にやるのと、投資の詐欺話は別々に分けて、
それでも充分なボリュウムだと思うが、これだけの力作に拍手。
疑問なところもあるけどね。
お金を刷るのは権力者のボロい商売という説明は大衆迎合で、
国家の運営とはそういうもの、
自身が発行した通貨の信用が及ぶ範囲が、経済圏であり領土。
通貨の信用を毀損させる行為は領土の侵略と同じ国家への挑戦。
ボロい商売でなく舵取りが難しいから中央銀行制を採用するのに、
それでも、ときどき破綻するのに。
投資の話は、
チューリップ・バブルやLTCMとか、
豊田商事とか投資ジャーナルとか、クエストキャピタルとか、
ま、ポンジっぽい、カンボジア投資の噂とかも聞いたことあるけど、
それだけで、ネタは山程あるのに。せっかくTKOさんをツモったのに惜しい。
でもまあ、力作だし、
TVと同等以上の予算とクオリティのコンテンツが、個人中心で成り立つのだから、
メディアの王者が変わったんだと実感させてくれました。凄いです。
それはさておき、
映像は素晴らしい。役者さんもいい。
「青べか物語」っぽいものを期待してしまったので、ちょっと違って残念。
充分観る価値あるのですが、
敢えて小さい世界を、しかもコストの掛かる時代劇で、という意欲作なので、
ちょっと惜しい。
坂本監督の資質とテーマが、ちょっとアンマッチかな。
作り手の解釈を通して観る江戸の社会や暮らしや経済なのが、ちょっと邪魔。
立場が強弱とは別に、
武士と豪農では言葉も振る舞いも、にじみ出る価値観も、もっと違うと思うのだが、
身分の違いが、ただの現代の貧富の差と同じに描かれ過ぎかな。
皆等しくウンコするにしても、
一億総中流社会のように誰もが等しく卑しい訳じゃないと思うよ。
無礼討ちという制度があったとしても、
果たし合いに娘さんが参加したり、
それを切ったり、
却って武士のメンツを汚さないのかな。
無理にドラマ作ろうとせず、
汲み取り事業から見る身分社会と暮らしと経済を、
もっと丁寧に淡々と描写してくれると期待してしまっていた。
モノクロで男女三人なので、ジャームッシュからの小津安二郎的なものを、
期待してしまっていた。
物語が邪魔だなぁと。
あと江戸弁がこなれてない。うんこだけに。
坂本監督は大阪の人だから、江戸時代のナニワの方がよいのだろうけど、
汲み取り事業の資料が江戸のしか無かったのだろう。
とても素晴らしい映像なのだけど、満たされないものがあって、
↓これで満たした。
価値と価格の歪みを買うのが投資。
江戸時代のウンコは、身分の高さが価格にも反映されてしまったらしいが、
おしろいの有害物質が混じりガチなため、価値は庶民のより低く、
敬遠されたそうだ。
あと、
リターンは現金とは限らず、撒いた畑で取れた野菜だったりもしたらしい。
ドラマ抑えて、当時の身分と暮らしと経済を描いて欲しかったなぁ。
趣深い映画であり、
なんでも分かりやすく説明するアメリカ映画に疲れた後で観ると正気に戻る。
丁度よいテンポで心地良いです。
撮影は大変だったと思うのだけど、雄大な自然を雄大に撮らない。
ビスタビジョンでもなくスタンダードにしたのは、
自然より人間模様を描きたいからなのか。
人間模様は丁寧に描かれ、
無理にLGBTにもせず、
何十年もの家族の葛藤をちょっと会話してハグして解決したりせず、
とってつけたようなハッピーエンドにも着地しない。
音楽も普通だけど、押し付けがましくない。
ストーリー自体は辛いけど、心地よい時間が終劇まで流れます。
ストーリーは辛いです。
カトマンズ方面とトリノ方面を行ったり来たり、
定職もなくプラプラしてる男の方が自由で幸せそうで、
片や、
山の暮らしで自己完結したいだけなのに、貨幣経済への参加は抗えず、
牧場経営の拡大に失敗し、借金に苦しみ、一家離散する家族。
アリよりキリギリスが楽しく生き残るという。なんとも辛い現実を突きつける。
夢で金借りちゃいかん。数字に弱いのが金借りちゃいかん。
いい借金が出来る人は、それなりにお金のIQがある人。
利益を産むものが資産、返済を上回る利益が想定できなきゃ借りちゃいかん。
しかし、貸し手も、
差し押さえた牧場にそんな価値あんのかな。山奥のその土地に価値あるのか?
そもそも、そんなに儲からないなら、なんで審査通ったのだろう。
もっと早く、リスケできなかったのかな。
山の生活を守る再建計画は、まだあったんじゃないかな。
働きもので質素でも、お金の知性がないと、やっぱこの世じゃ幸せになれないなあ。
こういう経験者に相談できれば、死なずに済んだものを。
大事なのは、友情よりお金の知性だな。