表現と時代、「荒木飛呂彦の漫画術」読んだら「奇子」読みたくなった。

昨日、奇妙な夢を見た。
コレ↓ 読んで寝たからだろうか。

 
「奇子」読みたくなったのは、コレ↓ 読んだから。

 
黄金の道=王道、それも少年マンガの王道について的確な分析。
理論だけじゃなく、実践付きなので、ことさら説得力が高い。
 
 
少年ジャンプというマーケットで勝負するためのフォーマット、
王道への理解を深めながら、、独学で絵の勉強をコツコツ続け、
ついにオリジナルを確立してゆく。
 
仙台在住ゆえ、アシスタント修行出来なかったのも、結果的には良かったのかな。
 
 
 
キャラ、ストーリー、世界観、テーマ、を4大要素として、
プラス表現力としての絵。
それぞれの要素を解説してゆくという構成。
 
 
キャラ立ちは当然として、(これがダメならどうしようもない)
やっぱ荒木先生、ストーリーが強いのが特徴と思う。
王道フォーマットを守りつつ、構造が巧みだ。
 
この本でも、冒頭、「つかみ」とはどうやるのか、
編集部への持ち込み原稿の1ページ目を読んでもらうには?
の実践解説から。
 
 
あまたの持ち込み原稿はページがめくられもしない。
表紙の絵柄、タイトル、セリフ、情報量を吟味し、
 
5W1H、個性、複数の狙い、作品全体の予告。
を盛り込んで、次のページへ誘う。
 
自身の手塚賞準入選作を題材に、実にロジカルに解説されてる。
 
導入で、導入のやり方を解説して、
この本全体の内容を示し、他のマンガの書き方とは何が違うのか、
おも表現している。 
 
次のページをめくりたくなってしまう。
 
 
王道は常にプラスを重ねる。と言い切ったのは企業秘密でしょうね。
S字カーブを描くのが好ましく、途中マイナスに凹むのはダメだと。
 
漫画家になるまで、いろんな壁があったと想像されるが、
それはさらりと触れて、学んでいったことを積んでいく語り口。
 
500ページくらいボツになった頃、
最初のページをめくってもらい、最後まで読んでもらうコツを、
次第に習得したという。
で、4大要素の分解にたどり着く。
 
 
 
世界観の重要性に言及したのって、
あんまり多くない気がする。
テーマについて語るのは多いけど、
モチーフを語るのは、表現論としてよりも、マニアックなものに傾きがちで。

読者がそして作者が浸りたい世界を描く。
これは、キャラやストーリーよりも毎回読んでもらう魅力の鍵で、
かたや画力含め、どこかに破綻や矛盾がバレると白けてしまう危険がいつもある。
 
 
 
最初は絵がヘタと言われた荒木先生、
いつ気づいたんだろう。
「ヘタでも売れる」と「上手くても売れない」の違いを生み出す違いに。
 
絵のオリジナリティ。
売れる絵は10m先でも誰の絵かすぐ分かる。
 
ジョジョは絵柄が気持ち悪いから受け付けない、という人も多いけど、
あれが、万人受けする絵だったら、こんなに長く残ってないのだろう。
最初の頃はむしろ少年漫画らしい絵だったものな。
 
徐々に絵柄を変えていった。
絵柄が古くなってしまうのも怖いと言っている。
そういえば、もう昔の主人公は同じように描けないと何かで言ってた。
 
 
マーケティング的にも、荒木飛呂彦先生は王道で。強みに集中する。
ワンアンドオンリーでお客さんを選ぶ。
 
 
ところで、手塚先生は強者の戦略を最後までとり続けた。

読んだのは、王道なの読みたくなって、なら手塚治虫。
ま、アマゾンで第一巻が99円だったってこともあるんだけど、
 
4大要素プラス絵。やっぱ神様ってひと味違う。
 
 
強者の戦略は弱者の戦略の逆で、
全方位的に敵を迎え撃つ。
 
この頃の手塚先生、もう終わったと言われ始めた頃で、
青年誌で劇画というものが猛威をふるう。
時代に必死にキャッチアップしようとしてる必死の姿勢がつきづきしい。
 
 
元々手塚先生、ストーリーは得意だから、
それを中心に持ってくるサスペンスはとても上手い。
下山事件の取り入れ方はとても巧み。
 
この辺は、松本清張あたりを意識してのことだろう。
(仮想敵は漫画だけじゃない。)
 
逆に、敢えてキャラを立て過ぎないようにしてる。
自分の得意技を禁じ、相手の得意技で戦う。
そうでないと、キャッチアップ出来ないもの。
 
ま、 
最後「先生あと何回で打ち切りです」って言われたかの如く、駆け足なのと、
刑事の息子はいらないんじゃない。
ってトコは構造上、残念だけど、
 
どんどんマイナスを積み上げていって、
この後どうなるのだろうって、ページをめくらせる力は強い。
 
 
 
世界観は戦後の日本、敗戦から今日(当時)まで。
手塚治虫そのものと言ってもいい時代。
 
復員兵を冒頭で描き、高度成長期に物語は終結する。
アトムを読んで育った子供と一緒に漫画も成長し、大人向けになる時代。
 
没落してくムラの大地主一族のドロドロなので、
横溝正史を迎え撃つ気概だろう。
 
 
で、テーマは人間の欲と醜さ、一言で言えば業(ごう)かな。
逆に王道以外も出来るとこを見せとかないと、
全方位的に戦えない。
 
エロスについても同様で、
こういうことだって描けるんだ。
という叫びが聞こえる。
 
 
 
しかしなんといっても、絵に驚いた。
レビューであまり言及ないけど、
全部勝たないと気が済まない。神様の業。
 
手塚漫画が描いてこなかった、カウンターへの反撃。
劇画だけでなくて、他も相当意識してる。ガロ系とかも。
 
 
森を鬱蒼と描く、水木しげるなのかな。
田舎の異界は諸星大二郎を思い出した。
奇子の性徴は「赤い花」が浮かぶし。
モダンな都会の描写は佐々木マキじゃなかろうか。
 
 
舞台みたいな構図が、これこそ手塚らしいって、思ったのだが、
誰か仮想敵いるのかな。それも。
 
敵の技、全て吸収しながら、バランス崩さず配置してる。
読みやすく、シンプルなのに美しい。構造的に。
 
やっぱジョジョもそうだけど、
最近の漫画って読みにくいもん。
一周回って、とても新鮮だった。
 
 
 
この後、死に水を取るつもりで開始したブラックジャックが当たる。
編集者の思いとは裏腹に、
それまでの習作を終えて、
時代にキャッチアップした上で、
もう一度、少年漫画で勝負という計算はあったのだろう。
 
絵柄もストーリーもその時代のバランスを正確に測っている。
今(当時)の時代ならではの内臓のリアル。
医療という世界観は他にあったかな。
 
本気の勝負だから、今度はキャラも立てる。
主人公の人物造形は、ゴルゴ13が仮想敵。
テーマは少年漫画だからヒューマニズムで世界情勢じゃない。
 
 
で、
神様は時代に追いついて、昭和はもう少し続いた。
 
 
 
ちなみに奇妙な夢は、SE時代が舞台で。
大手メーカか、お役所のシステム間データ転送の案件。
ボクは下請けから派遣されて、ソフトとハード両面からの解決策を提示する。
何とか受け入れられて、危機を脱出したみたい。
 
ただ、途中の議論が、本質とは関係ないところばかり会議してる。
こういうのにいつまでも付き合うべきじゃないなと、
ボクは辞表の提出を決心する。
 
 
どうも、複数のいろんなプロジェクトの経験が混ざってる。
でも、モチーフは会社員を辞めること決心した会社だろう。
大手メーカの子会社SIerで、昭和な体質だった。
21世紀のこの時代に、いい若いもんが居る環境じゃないと見切った。
でも、会社員じゃ転職しても、いずれそんなもんかとも懸念した。
 
閉鎖空間からの脱出というイメージが「奇子」からインスパイアされたらしい。
まあ、ムラ社会だったな。
大量生産で右肩上がりの時代の、これぞ日本株式会社。
 
 
 
どうでもいいけど、
水俣病で被害受けた少女をブラックジャックが治療して、
回復したけど、少女は治してくれたお礼にと、
海に魚取りに行って、再び公害に汚染されて死んでしまう。
「今度はキレイな海に生まれろよ」と天才医師は独り言ちる。
 
その回がボクは一番記憶に残っている。
 
 
エコに興味ある訳じゃないんだが、
拙を守りて園田に帰る。ことにした。
 
 
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