「たかが世界の終わり」 どっと疲れるけど「この世界の片隅に」よりほっとする<映画評>


西原画伯の素晴らしい漫画みて、欽ちゃんのエピソード思い出しました。
貧しさと組織維持のコストに耐えかねて、ある日母は解散を決意した。
皆住み込みで働くとこ見つけたりして、三々五々別れていったと。昭和の視聴率男は語ります。

修羅場な世界でも小さな幸せのある家庭という幻想が辛いなら、
平穏な世界の小さな家族という修羅場という現実に引き戻され、解散という希望を夢見る。
一服の清涼剤ですね。
 
まあ、観終わると、現実の重さに耐えかねるほど疲れますけど。 

先週日曜日も柏で若干お仕事。
高島屋でヤギ見かけて、肉屋の軒先思い出しました。カレーの味も。
たまには旅行したいな。
今はオシゴトしてるので、柏にはちょくちょく行けます。
そんな帰り、有楽町で見てきました。
若き天才のパルムドール。
http://gaga.ne.jp/sekainoowari-xdolan/

題名からして、「この世界の片隅に」と似てて真逆なのですが、
内容もそうです。

アニメの方は義姉がキーパソンで、実写は実兄がその役を演じます。
旦那さんに相当するのが、その実兄の奥さんか。
あとは、ほのぼのとした環境にはそれに相応しい人たちで、
修羅場には地獄絵図に相応しい人格が配されます。
 
 
それがイイ。疲れますけどね。
仲睦まじいとか、観てるときはいいけど、後で辛い幻想よりは。
 
演出は繊細で巧みだと思いますが、新しくはありません。
鬼才というよりは、優等生な感じもしてしまいます。
むしろ音楽とかは、説明過剰じゃないかな。
  
 
物語は、若くして脚本家として名声を得た、ゲイでHIVでもうすぐ死ぬ美しい男性が、
実家を久しぶりに訪れる。自らの死を告げるために。

世界が終わる前に、地獄へ来たのだからもう一度だけ地獄巡り。
そんなお話です。

待ち受ける地獄側は、主人公を異物として扱います。
懐かしさと羨望と嫉妬と劣等感と得も言われぬ恐怖と。
愛もあるにはあるのですが、ここは地獄ですから全て自己執着として描かれます。

とても美しい地獄絵図には、フランス語がよく似合います。
罵り合いまでもが、音楽のように聞こえる。
言い回しの巧みさは私には分かんないですが、
会話劇だけで、お話を紡ぐというチカラ技に大きな支援を果たしています。
英語だったら、日本語だったら、どうだろう、
こう流れるようにはいかないかも。そんな気にさせます。
 
 
 
家庭には経済は無い。
交換を成立させて、両方がより利するものがあるって、関係は難しい。
逆に経済が入ると簡単に骨肉の争いになる人工物ですから、

ニンゲンがむき出しだったりします。
支配欲に見える、承認欲求のようなもの。
 
ただ居るだけで自然にそれがあって欲しいもの、
それがあると思われてるもの、そんなのやっぱ幻想なのに、
そんな安心がそこにあると騙されている。

アニキはこの弟と比較されて、さぞ辛かったんだろうなぁって、
そっちに感情移入するか、美しい方に肩入れするかは、その人の境遇によります。

警戒しながら、それがアタリだから厄介だし、
でも、精神的に耐えられないのは、自分の克服の問題だし、
 
 
超然としてるのも、辛いことではあるのだけど、
それはそれで税金のように仕方なく払うべきもの。
この地獄に居場所がない祝福を、呪いとともに受け入れよう。

もっと明るく終わって良かってと思いますけどね。
居るべきでない場所から去るってハッピーエンドだもの。

それだけ確認できれば充分じゃん。
もう遭うこともないので、少々名残惜しいけれども、
エトランジェですから仕方ありません。
 
 
家族辞めれば、幸せになれるのにって、
ホリエモンがブラック企業の労働者眺めるように言いガチですけど、
にんげんだもの。居場所が欲しい。たとえそこが地獄でも。
 
その地獄を去れるのは強さだし、才能だし、能力だもの。
孤独くらい払えよ。

って、山奥一人の寒さに耐えきれず、都会で働いてしまった、
ああ2月の東京って暖かいな、って感じる自分の弱さが身にしみます。
 
 
ヤギ見ると、ダッカやラホールやコルカタ思い出します。
味覚と映像が一緒に蘇ってきます。

同じ言語を使っていても、会話成立しないとこよりは、
意思疎通成り立ちますから、寒くないってホッとするんですね。

交換が成り立つって大事です。
こういう作品を評価して、それで東京で観ること出来るのですから、
いい時代です。

儒教は人を幸せにしない、そんないい時代。
ただの動物でないヘンテコな生き物が、最初に維持するために立ち寄った場所。
その耐用年数がそろそろ切れるいい時代。

ラストは、そんなハッピーエンドな再確認で良かったと思うんだけどな。

 
 
 
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