「スイス・アーミー・マン」感想 オーソドックスで美しくチャーミング

設定は奇をてらってますけど、骨格はオーソドックスな物語構造。
さすがの美しさですね。
キャリアに裏打ちされた技術力って大事だな。
それと、センスの有無って決定的。
 
手づくりのバスから乾杯までだけでも、
そのクオリティに1800円の価値あります。

 
 
 
HOMESのフェアの帰りについでに観ました。
山下達郎の門脇麦が歌う曲が評判良さげなので、
そっち観ようかと思ったのですが、
映画自体は日本映画のダメなとこ噴出してそうなレビュー多いので、変更。
賛否両論な話題の、こっちにしました。
正解ですね。 
 
 
ネタバレ全開で行きます。
スイス・アーミー・マン
 
主役の気弱なヲタク君と死体役のラドクリフ、ふたりとも素晴らしい。
映像と音楽と小道具、ダニエルズってオシャレですね。
 
脚本もよく出来てます。
 
孤独な少年or青年が異物に出会って心開いて、いろんな経験して、
別れる。
でちょっとだけ成長してる。
 
物語の骨格は王道です。
ETでも浦島太郎(?)でも、
今回はそれを宇宙人じゃなく死体でやろうという意欲的な作品。
 
 
十徳ナイフな死体でサバイブ。
交流深めパーティー。
現実に帰ってくる。
 
3つに分けて、なんか書きます。
 
 
 
・十徳ナイフな死体でサバイブ
 つかみは下ネタと「らくだ」ギャグ。
 多分ここでダメだった人は席を立ったのでしょう。
 
 文句があるなら、古典落語にも文句言えよと思いますけどねぇ。
 まあ、海も森もとにかく美しい。音楽もオシャレだなぁ。
 そしてラドクリフ大変な役だけど、なんで引き受けた。
 
 ヲタク君の境遇明らかにしながら、下ネタ中心で進みます。
 この辺達者だなぁって感心してました。
 
 それと、ちゃんと笑いとして成立してました。
 館内でも笑い起こってました。
 
 河原に捨てられたエロ本は男の子の好物って万国共通なんだな。
 カメ五郎さんはタンパク質を放出するなんてもってのほかって言ってたな。
 DT浜ちゃんはよく屁をこくけど、社交的だよな。
 
 ところで「らくだ」的ギャグは、
 松本人志が全盛期にやったら、映画でも面白く出来たかもな。
 ふと「さや侍」の酷評思い出してしまった。
 同じ裸の王様でも、北野武との違いは何なんだろう。
 独立と吉本の差なのか、映像に対するセンスかな。
 撮る前にもっと、映画に出ておけばよかったのか。
 
 そんなこと浮かびながら、ああ綺麗って観てました。
  
 酸素ボンベ代わりに死体使っただけだけど、
 物理的にはキスで、ロケットみたいに飛び上がるところは、
 セクシャルなメタファ感じます。
 ここから、メイン。
 
 
・交流深めパーティー
 いつも同じバスに乗るあの人に声も掛けられないけど、
 隣の席に座って、デートに誘ってみよう。
 死体を自分役に、自分を彼女役にして、実演します。
 そこらのゴミと木の枝で、バスから全て手づくりなセットで。
 
 小道具のクオリティがやたら高い。
 ティムバートン風なちょっと不気味で愛らしい。
 孤独なヲタクには相性のよいクラフトです。
 
 髭そるって、石鹸ないとムリだよってツッコミたくなりましたが、
 ヲタク君の女装はチャーミングです。けっこうイケてます。
 森の中で二人っきりな生活だったら、やっちゃうなって説得力あります。
 
 
 死体だから人形のように操作して二人で乾杯します。
 このシーン本当に美しい。
 ああ、月下独酌。そんな連想してました。
 この映画ダメだって人は、きっと何の屈託もなく、社会に順応してんだろうな。
 
 
 ま、とにかく、
 楽しい時間は長くは続きません、いずれ日常が訪れます。
 
 
・現実に帰ってくる
 いろいろあって、森をエスケープ。
 
 死体連れてるし、遭難してるし、いろいろと大変です。
 ヲタク君ちょっとだけ成長してます。
 
 オタク君の役名、ワタクシ耄碌してよく憶えられず、
 トムハンクスぽい名前って曖昧に記憶してました。
 ちょっと「ビッグ」を思い出したんですが、
 「キャスト・アウェイ」からの引用らしいです。
 
 
 ラドクリフは爽やかな笑顔で去って行くのですが、
 そうは言っても、現実は大変だよなこれからって、そんなエンドマークでした。
 
 ああ、どうしてこれから生きてゆこうか、
 死んだように生きるのは嫌だなぁ。
 
 もうハリー・ポッターで一生分お金は稼いだので、
 今後はギャラ気にせず、やりたい役をやるそうです。
 面白くてこの死体役引き受けたそうです。
 
 
かくありたいと思った次第。
 
 
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カテゴリー: 2017, 書評、映画評など タグ: パーマリンク

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