「散歩する侵略者」 感想 まあVシネだな。

宇多丸は何故これを勧めるのだろう。
彼が今まで酷評してきた日本映画のダメなトコ凝縮してるじゃん。
全てが類型的、記号的、「げ」な描写で意味がない。
古き良きB級SFじゃなくて、ただ感覚が古くて、安いだけ。
 
舞台なら面白いとも思うし、WOWOWで本領発揮なら楽しめるとも思う。
でも、1800円払って、わざわざスクリーンで観るってそういことじゃないじゃん。
 
 
 
現在、絶賛放電期間中のワタクシでございます。
そんな最中に観た映画です。ライムスターに勧められて。
で、結果ガッカリですね。
長澤まさみとか、
小泉今日子とかああいう系の顔好みじゃないのも関係あるかもしれんけど、
 
三度目の殺人と立て続けに観たので、余計に。
「実写の映画であること」の価値を余計に考えさせられました。
 
途中トイレ行きたくなって、
でも今行ったらそのまま帰っちゃうなと我慢しながら観ました。
これ、Vシネだよね、
劇場でわざわざ観なくても。WOWOWでやってればそれでいいじゃん。
って、欠点について書きます。  
 
 
 
ヤクザとホラーしか描けないし、そういう予算の掛け方。
厚労省のなんとかって、国家権力に追われるんですけど、
それが、ただのチンピラやくざの一門にしか見えません。

・武装組織=ヤクザしか描けない 
 一方向から追っかけて包囲しない。
 組織的に追跡しない、検問はしない。
 銃をもった私服の連中がマイクロバス的な1台でやってくる。
 
 一家惨殺の重要参考人で逃走して、途中警官二人もヤッてる。
 厚労省の出る幕じゃない。
 国家権力舐めんなよ、
 組織的に追跡するし、公開捜査に踏み切るかもしれないし、
 侵略者という大きなウソひとつ設定してんのに、
 他で安いウソつくと、映画として崩壊しちゃうよ。
 
 逃避行も追う側ちゃんと描けば、
 概念盗みと乗り移りを駆使し、ガイド役の長谷川博己のみソレ出来ないで、
 もっと面白いお話できたと思うけど、
 
 意味あり「げ」にムダに町を自衛隊走らせるより、
 もっとちゃんと予算使って、組織をちゃんと描けよ。
 
 
・類型的なホラー 
 冒頭、血まみれのセーラー服なアクションとか、
 私はその時点でデジャブでした。
 そこでの演出自体は黒沢清の得意ワザなんでしょうけど、
 新鮮味なくて、外したかなってイヤな予感しました。
  
 病院のシーンは全て、Vシネのホラーで観た事ある感じばかりでした。
 パンデミックで混乱してる風とか、(隔離をちゃんと描かない)
 医者が「治ると思いますよ」とか言うとか、(経過を見ましょうじゃなくて)
 とにかく全てが雑です。
 
 予算が無いから雑ならバッサリ切れよ。
 脱走シーンすらいらない。
 警察が行方を追ってるって話で充分。厚労省いらない。
 
 Vシネならば、だけど、それで不安感煽るってもう安くて古いよね。
 
 
・類型的な戦争観
 戦争と言えば空襲で、物資が不足する病院。
 脳に直接作用できる侵略者がなんでミサイルみたいな攻撃なんだよ。
 射殺で充分な長谷川博己ひとりになんで空爆なんだよ。
 攻撃までのプロセスの描き方が「シンゴジラ」と真逆で大変お座なりでした。
 とにかく組織が描けない。
 
 東京大空襲から時間が止まってます。
 今はyoutubeで洗脳して勧誘して、人混みの中で銃乱射するそういう戦争なんだよ。
  
 精神攻撃受けた満島弟が「侵略される側にも問題がある」って、
 北朝鮮の工作みたいな事言うとこだけ、リアリティありましたが、
 あとは全然ダメです。
 この監督に戦争は描けません。
 警察や公安組織ヤクザにしか描けないのにいわんや軍事おや。
  
 本来ならあんなCGにカネ使うんじゃなく、
 洗脳とか精神的に侵食されてく様、ちゃんと描くべきでしょうね。
 
 
・類型的な「愛」というオチ
 ボクもマクロス思い出しましたけど、
 今更手垢がついたそこに着地するの。ダセえな。
 そうなら、もっと真摯に「愛」描かないと説得力ねぇなぁ。
 
 東出昌大の牧師(神父?)はヤバイ感じでこの人得意だなそういうの、
 って思いましたけど、
 アガペーと夫婦の情愛って概念的にも別ものだから。
 雑にやんなよ。
 
 オレは侵略者から侵略って概念奪うってオチかと予想してたんだけどさ。
 役者さん達の演技はとても良いので、その着地はガッカリでした。
 小栗旬の「ルパン三世」思い出しました。
 役者は頑張ってるのに、脚本と演出がダサすぎ。
 
 
・類型的な概念喪失 
 最初の前田のあっちゃんの「家族」喪失だけは、成功してると思いますが、
 他は全てダメでした。浅すぎ、お座なり、類型的すぎ。
 
 「自分」「邪魔者」はなぜただ腑抜けになるの?
 ご都合なだけだよね。
 
 それと反(アンチ)と無は違うから、
 「所有」の否定は自分のモノと他人のモノの区別が出来ないであって、
 否定からの明るい共産主義者じゃない。
 むしろ、区別出来ない人が横領とか私物化とかすんだから、
 もっと描くことあると思うが、
 
 「仕事」の喪失は趣味(遊び)との別がないってことで、
 「仕事クソくらえ」じゃないから、
 光石研はいい仕事してんのに、お座なりな脚本でかわいそう。
 仕事じゃ遅刻しても、ゴルフや釣りならせっせと早起きする人はいっぱいいる。
 
 概念の喪失によって、
 執着からの解放とアイデンティティ崩壊の二方向在るにしても、
 もっといろいろ描き方ある。
 
 物語の面白さが舞台版にべったり依存してる。
 映画化の脚本の段階でもっと練るべきだろうなぁ。
 
 原作以下で、映画として面白くないって日本映画の類型かな。
 
 
 
駅伝ばかり走ってると、それに特化してマラソンランナー育たないって、
そんな話聞いたことあります。
多分、映画館で黒沢清は二度と観ない。

質問コーナー、お問い合わせは、sanpome.net@gmail.com まで。

  
 

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