新文芸坐で石森史郎追悼特集。
この作品の脚本を担当したことも、
土曜日の昼にタイミング良く掛かっていることも。偶然知った。
封切りの当時、ナンチャンがバラエティでパロディしてた。
高松の出身で、本作の舞台、観音寺と近く、
そういえば、加山雄三の「夜空の星」を何度かモノマネしてた。
原作は未読のまま、

予習何もせず初見で、映画館へ駆ける。
《 開演 》
こんな実験的手法だったのか(後述)と驚きつつ、郷愁に感じ。拍手。
同時に、
日本で60’ロックと言えば、まずはベンチャーズなのだと納得した。(後述)
本作が時代性を記録したことを思えば、ドキュメンタリーのようで、
手法に留まらず、ドキュメンタリーよりもドキュメンタリー。
タイミング良く映画館で鑑賞出来たことは貴重だった。
雰囲気に浸る没入感は、名画座の大きめなスクリーンで、また乙でした。
昭和40年台の瀬戸内の高校時代を、平成の頃(1992年公開)ノスタルジックに描く。
今では、CGでなければ再現不可能。
大林宣彦の作家性の集大成と言える。
昭和生まれとは言え、
ベンチャーズの衝撃は、流石に私も大昔で、
ナンちゃんもエド山口も「お笑いスタア誕生」で、観ていた世代。
鑑賞中は、高校生のアマチュアはリアルに下手で構わないと、私も思った。
大林作品は、
個人的には、カメラが煩くて苦手な部類。
ケレンも衒いも、サービス旺盛で16ミリで粗くとも華やか。
時代を感じる。
なのに、観終わって経ってから、予熱で思い出が静かに香る。
不思議な映画体験で、他に無い。
映画的ないつもの満足とは、ちょっと違う魅力と再確認し、
監督の全盛期に、ちょうどの時代性を令和の世に反芻。
バブルで変わるギリ前。昭和がまだ残るが、もう戻れない戦後。
「電波少年」的手法とシュールな表現の両立。
邦画には、安い志が溢れる当時、インディを保つ。
ちょうどバブルが綻び始める頃で、
娯楽はまだまだ、TVで充分だったし、
わざわざ映画館に足を運ぶには、もっと違う満足を求めていた。
ミニシアターで衝撃的にクラった↑りしていた。
私は、孤独なのに人生に不自由を感じて居て、
大林作品を楽しめる程、
過去を微笑ましく思い出す境地に、未だ到達していなかった。
ようやく今、
全盛期の大林宣彦を楽しめる年頃に成った。のかも知れない。
以下、語りたい。
1.大林宣彦と、16ミリの実験的手法
2.黒船ベンチャーズは、何故日本で根付いたのか?
2.1.ペンタトニック
2.2.程良く2&4バックビート
2.3.丁度手が届きそう
3.庵野秀明より細田守が近似しようと
4.石森史郎脚本の取捨選択
1.大林宣彦と、16ミリの実験的手法
始まってスグ、
ああ、そうだ、こんな風にクセ強だったなぁ。と気付く。
8ミリを思わせる粗い画質(実際はスーパー16ミリ)、
カメラは忙しくよく動く。(疲れるから止めてくれ!)
浅野忠信含め、高校生役の役者陣は、
良く言えば自然、
素人然と、セリフも聞き取りづらい。
ドキュメンタリー見せられてんのかな?
いや、
カットの割りの多さが異常。
そんなに急いで切り替えんでも。
主人公の語りに合わせ、比喩をシュールに映像で見せるのは、
監督の常套手段としても、
テンポ良いで済まないくらい忙しい。
何度も取り直しているのだろうか、それにしては粗い。
どうやって、撮っているんだろう?
ああ、黒澤方式で、
同時に3台回して、後で監督自ら猛烈に編集したのか。
合点はいったけど、
青春のリアルは、ドキュメンタリーのように撮りたい。
ということなのか、
8ミリの映像こそ大林宣彦の青春。
だからか、
夕暮れ時の観音寺の町並みを駆け抜ける青春を、
表現する手法と選んだか。
意図は必ずしも分からない。
監督の個性、作家性だと、
素直に、”そういうもんだ” と思えば充分な気もする。
角川映画で、薬師丸ひろ子、原田知世と、
青春アイドル映画で、世間に認知され。
どっちもユーミンでした。
間の「転校生」で名声を確かに。からの尾道三部作へ。
レトロな町並みを背景に、性癖も絶妙に撮る人だ。
得意の青春モノを封印しても、
ノスタルジーは健在で、話題作。
原作が山田太一。脚本が市川森一。なんか豪華でややこしい。
からの、得意技全開が本作。
銭形平次で有名な寛永通宝も映ります。
風景美しく、堂々の風格で撮ってくれてもいいんだけれど、
そういうんじゃないんだよな、そういうんじゃないんだよ。
うっかり忘れてました。
設定を、
男子のメインの青春バンドもの、
広島県尾道から香川県観音寺に、
に据えて、他は全盛期の大林宣彦が惜しみなく得意技投入。
って、
覚悟するまで30分くらい掛かりましたかね。
それからは、画面に集中して鑑賞出来ました。
ええ、もちろん思い出しましたよ。
カメラの質に拘らず、同時に多数のアングルから撮る。
演出はリアルを大事にドキュメンタリーテイストで、
役者に演技はさせない。
ま、格闘と違って、演奏はまだ安全ですからね。
そんな実験的手法の成功例が既に存在してたんですね。
しかも、
本作の方が、雑というか、、粗く繋いでいる。
良く言えば、食い気味で独特のリズムがグルーブを生むけど、、
覚悟決めて観ないと、慣れないです。
大林作品の中でも特に、個性色濃く、クセ強い。
敢えて普通に撮ってない。
高校部活動の手作り感とシンクロするような自主制作感。
知らずに観ると、ビックリします。
疲れてる時はオススメ出来ません。
2.黒船ベンチャーズは、何故日本で根付いたのか?
映像の次はサウンドですが、
本職の方々(エド山口はじめ)の後撮りが流れますので、ちゃんとしてます。
違和感も感じますが、安心して聴いてられます。
劇中、
なるほど、日本で流行る訳だ。と納得しました。
ビッグ・イン・ジャパンと言われますけど、本国より有名で当然だなと。
2.1.ペンタトニック
ベンチャーズってペンタトニック。らしい。
日本人にはヨナ抜き音階が染み付いてますから、
それは、馴染み深く、全く異な存在にも親近感湧きますよ。
一概にロック、エレキと言っても、
最初に衝撃受けるのが、これなら敷居が低かったはず。
ベンチャーズが日本の歌謡曲作れるの当然だと思いましたよ。
みうらじゅんが最初に買ったレコードはディランでなくベンチャーズ。
2.2.程良く2&4バックビート
日本人は盆踊りで裏拍は取れないって、良く言われます。
勘違いされているけど、
日本人だけが頭拍という訳でもなく、
クラシックは裏拍とか言わない。
ボサノバで学習しましたが、
奴隷で南北アメリカ大陸に連行された、
アフリカの黒人由来の音楽が、裏でリズム取る。
それから電子音楽も発展して、日本独自に四つ打ちの進化。
それは兎も角、
日本人が大好きな四つ打ちも、ここで確立されたのかも。
前乗りなのも、日本人にハードル低かったのでは。
ブラック味強く溜められちゃうと、
ルーツ遠く感じちゃうんじゃないかな。
私らの世代でも、
ロックというと3ピースパンドの方をイメージする。
美しくもシンプルなメロディーに、
リズムが丁度カッコ良く、かつ斬新に聞こえたと想像します。
2.3.丁度手が届きそう
もし、これが、
そりゃ、グッチ裕三は憧れたかもしれんけど。
ま、Charならねぇ。
凄いのは分かっても、無理ゲー感あって、諦めちゃいます。
トライしようと思わない。
↑こういうのが、民謡な人達がルーツなんでしょ。
ベンチャーズは音楽のキッチリ。教科書として学ぶには丁度良い。
ギターは当然、ベースもドラムも。
その上、
シンプルに見えて技巧も凄く、奥深い。
上達し甲斐がある。
更にその上、後年のジョン・レノンみたいに面倒くさい主張しない。
政治思想に染まったりしない。
すこぶる健全で、不良の音楽とは到底思えない。
ベンチャーズが日本にやって来た丁度良い時代性と地域性。
大林宣彦の全盛期が受け入れられたジャスト感も連想させます。
映画も世に連れ、
終焉を予感させるバブルへのカウンター。
失われて、もう戻れない昭和高度成長期への郷愁。
常にマーケットインな、踊らされるマス消費のウンザリ。
あくまで親しみやすく。でもTVほど安くならず。
3.庵野秀明より細田守が近似しようと
それから、
「理由」の映画化では、

膨大な情報量で、登場人物数珠繋ぎの原作を、
原点回帰的手法で対応している。
石森脚本もここまで。
それから先、2000年以降の監督は、反戦の主張を始める。
もう、創作はやり尽くしたから、ソッチ行ったのかな。
広島県出身とは言え、尾道だし、イイトコの出で、
仲代達矢が空襲で悲惨な目に遭うような体験も聞かない。
「時かけ」から「果てスカ」の細田守監督を連想してしまった。
うーん、青春だけやり続けるのは、キツイよね。
大林監督だって、脚本家居ないとキビシイよ。
原作読んでから、

観ると、面白いんだけどね。
脚本の苦心が伺われ、趣深い。
もっと、評価されていたら、別の世界線も有ったかと想像したり。
サンプリングとメタ構造、上手に魅せてくれたかもしれない。
4.石森史郎脚本の取捨選択
大林監督にとっても、
有能な脚本家失って行ったのは痛かった。
原作未読ですが、

Wikiによるとボリューミーで、エピソードは巧みなチョイスと想像します。
岸部一徳の当て書きは、微笑ましく、
箸休め的に気を抜いて観てました。
楽譜が読めないとか、弟さんの方でしょ。
安田伸、尾藤イサオの起用も敢えてでしょうか。
兎に角、当然かもですが、
顧問の先生を集約したのはナイス。
微笑ましい高校生の恋愛は唐突で、監督のヘキも想像させるのに、
違和感無く、観客をタイムスリップさせます。
一点だけ気になったのは、
文化祭の曲は、全部ベンチャーズが正解かとは思ったよ。
原作を改変してでも。
兎角、
センスは引き算に表れる。
素材の味を殺さずに料理するだけでも至難の技。
引き出すとか、私は贅沢は望まない。
素材を台無しにする下手な料理は累々と。
シェイクスピアが面白いから、それを素材にしたら面白いとか、
だったら、素直にそのキャストで古典やれよ。
提灯記事も大概にしろよ。
最近、笑止千万と思った。
ま、
本作、脚本の力は大きい。
青春の巨匠は、テーマに飽きたら難しい。
日本の曲がブームだと言われると、
はっぴいえんど史観から、
シティ・ポップなオシャレを指すことが多いが、
歌謡を語ってと、みのミュージックも指摘。
2025.12.22 現在
利上げして強し、2σタッチまで動かないつもり。
