「佐藤さんと佐藤さん」‪( ˙꒳​˙  )ナルホド無駄ない天丼の妙。自分の為に頑張るのは難しい。30代は埋めて上げて!!

せめて、次回作撮れるくらいには埋まって欲しい。
そんな気持ちになる映画でした。

岸井ゆきのは元より、宮沢氷魚も信頼してます。
天野千尋監督のプロフィール確認したら、
なかなかに異色。
 豊田市出身で名大の法科出て、リクルートに就職した後、映画制作を開始。
 ローカルの映画祭で受賞を重ね、メーテレが主管の本作で、東京国際映画祭に出品。
 
若き才能に、このキャスティング。
このくらいの丁度いい日本映画が、
丁度良く埋まって欲しいな。大ヒットでなくとも。
 
判官贔屓込みで予約。
破綻なく良い造りの作品なら、スカスカは悲しい。
本作の内容は果たして。
 
 《 開演 》
 
-ネタバレします-
 
 
ラストは流石の岸井ゆきの。 
 最善手だと思うよ。無理の無い選択してゆこうよ。親権は追々。
と声を掛けたくなります。

観てる最中は気付けませんでした。 
「キッズ・リターン」の本歌取りだとは。(後述)

本作は、
丁度良くリアルにヘビーな日常が素晴らしい。
 
以下の順で、
 0.タイトルとマーケティング
 1.過去分はスマフォ? 演出の完成度は高いが
 2.自分の為に頑張れない人
 3.子供の事が分水嶺
 4.無駄ない天丼が上手い
 5.キッズ・リターン
 6.当て書き
 
 
 
0.タイトルとマーケティング
 ターゲットは30代のカップルだと思う。
 ファミリー向けでも、高齢向けでもない。
 テーマからして、地味重い。
 同時期公開の「ナイトフラワー」と比べても、フックが弱いので。

 同じ、30代子持ちの女子が主人公なのに、
 集客し易いキャッチーな要素が、足りないのかなぁ。
 
 リアルな日常は、特別なことも無く、
  そういうことって、きっと有るよね。
 と登場人物誰かに共感させながら、
 爽快感無く、
 坦々と時の経緯を映す。
 
 丁寧な演出で、良く出来ていて、
 その分は興収も伴うと嬉しいのだが。
 
 タイトルが ”佐藤さんと佐藤さん”。伝わらなさ過ぎではないか。
 ”本名「佐藤」、旧姓「佐藤」” 程度はヤりたい。  
 
 
 馴れ初めから、結婚に至り、すれ違って行く。
  妻の岸井ゆきのは、
   司法試験に受かり、一家の大黒柱。
   姓もそのまま、がむしゃら。
  宮沢氷魚は、
   ウジウジと浪人続けつつ主夫。婿入りでもなく。
   将来のビジョンも無く、鬱屈を募らせる。
 
 特に、ドラマチックな展開が有る訳でも無く、
 歯車の狂ってゆく、日常の積み重ね。

 本作は、
  こういう事って有るよね。
 と伝えることしか出来ないし、敢えてしない。
 それすら伝わっていないかも知れない。
 
 共感して貰えそうな層にリーチしてるのか?
 この地味な映画が目に止まるかどうか、
 すら微妙。
 
 
 本作の誰かに共感出来るような、そんな人間関係を抱えてるなら、
 物語のカタルシス効果で、
 自分を取り戻し、客観視するキッカケに成り得る映画。
 
 そういう人も、日本の成人女性にも、多いと思うので、
 せめて認知は届くといいのに。
 もっと、タイアップ出来そうですけれどね。難しいのかな。

 フェミ系にも振らない、お説教もしない、話題作りをブッ込まない。
 現実を坦々と誠実に描いているから、
 届いて欲しい一方で、尚のこと伝わる難度も高いのかなぁ。。
 
 
 
1.過去分はスマフォ? 演出の完成度は高いが
 生活音、環境音に神経行き届いた、音響の使い方。

 ベタや過剰な劇伴は避ける。
 が一方で、
 映像は奇を衒う。

 オープニングから、過去回想パートは、スマフォで撮っているのか、
 粗い画質で、手ブレが酷い。
  ホンワカ馴れ初めの将来を予感させる、
  不穏な雰囲気を演出してる。のだと思うけど、
 画がウルさ過ぎて、集中出来ない。
 構図、カットは良き工夫と感じるのだけど、
 普通に撮る方が、少なくとも観客には親切。その方が良いと思う。
 
 配信と、映画は違うのだから、
 観てるだけで、”快”という瞬間は必要だと思うんだけどなぁ。
 ”後で配信で観ればいい”と判断されちゃダメだもの。
 
 
 もう一つ、ちょっとだけ気になったのは、
  映像では、15年の経過が、あまり表現されていなかったこと。
  同じアパートメントに住み続けているのに。
 せめて、室内は分かりやすい変化を見せてよ。

 郵便局の24時間営業の廃止だけでは、勿体無い。
 
 
 役者さん達が素晴らしい、ちゃんと撮れば充分なのですが、
 観客を心地良くさせつつ、大画面を使ってくれても。とは思う。
 
 
 
2.自分の為に頑張れない人
 宮沢氷魚は秀逸で、その人物造形にイライラしたという評も多い様子。
 役に対する解像度高いですよね。
 
 司法試験に合格する実力は、早い時期から有ったとハズ。
 本番に弱いのと、運が無いのと、
 深層心理では、モラトリアムを望んでいた事が大きいですかね。
  弁護士に成れても、断念しても、
  田舎へ戻るかどうかの決断を迫られる。
  東京で暮らしつつ、結論は先延ばしにしたい。
 だから、受かりたく無かった。
 母親との関係に、心理的問題も抱えていそう。
 
 本当は、職業を塾講師と名乗っても一旦、良かったんですけどね。
 ま、作劇上は、
 猪突猛進型の岸井ゆきのに、負い目感じる方がイイけど。
 
 
 一方で名古屋の結婚式とか、親とか、流石メーテレ。

 あーメンドクセー。妻は気にしない性格だとしても、
 実は気苦労は一杯有っただろうな。
 で、ちょっと夫をゾンザイに扱って、夫も爆発。
 
  
 この生活じゃあ、いずれ綻びが顕に、と実感させる。
  夫はモラトリアムで将来のビジョンは無いし、
  そんな男と無軌道に子供作る女も悪い。
 
 いつまで頑張るのか、ダメな時はどうするのか、
 話し合っておけよ。最初から。
 先が見えない状態を、そんなに長くは続けられないよ。
 

 地元のツレとの飲み会から転機で、
  妻と違って、自分の為に頑張れない男だが、
  他人の為なら漢に成る。
  実は、そんな人物だと分かり、かつ、
 田舎帰ってもイイかなって、考え始める。
 ひょっとしたら、母親が弱ったのも大きいかも。
 
 
 夫側の地味で繊細な変化を、
 時間の経過の中で、じっくり丹念かつ、上手に描いていた。
 実体験を元にしたエピソードからの演出も立派で、

 手練と知ってましたが役者は凄いね。
 
 で、
 物語の行方は、
 他人の為に頑張ることで、決断するだろうと予感させる。
 軟弱なだけではない、宮沢氷魚。
 
 
 
3.子供の事が分水嶺
 遂に分岐点が訪れる。
 子供が保育園で、他の園児を積み木で殴り、ケガをさせてしまう。

 ああ、子供の事で対立が決定的になるのは、当然とは言え拍手。

 ダメな脚本だと、対立を起こす目的が透けてしまう処でもあり、
  父は子供の事で、男気を見せ、
  自分の時間を優先したい母はビジネスライクに処理した。
 保育士さんの前で揉めても意味無いのも、工夫が上手い設定。
 
 行き届いた脚本だとつくづく思った。
 例えば、実家だとか、
 他の原因で揉めると、事情を抱えるのは、お互い様になってしまう。
 夫側が大義を得るのは、子供ファーストしか無い。
 
 
 我が子が母親にゾンザイに扱われる姿を見て、
 モラトリアムを終える決心が着いた。
 ここで、負の連鎖を止めよう。

心に葛藤のある人は、他人を操作するという。
心に葛藤のある親は、子供を操作する。
ところで、親から見て「操作する」は、
子供から見て「扱われた」ということである。  
小さい時に「操作された関係」が、
あなたが「ものとして扱われた関係」ということである。
操作されているクーラーは壊れたら捨てられる。
壊れた時とは、持ち主の期待に応えられなくなった時である。  
恋人が電話をかけてきても、用件だけで切ってしまう。
それが「扱われている」ということである。

  
 
4.無駄ない天丼が上手い
 仕事優先しておいて、
 家族の為頑張って働いた、と言ってもね。
 恩には感じたとしても、信頼はされない。
 夫が別々に生きようと肚を決めるには、ここしか無く。

 妻の態度と、離婚調停中のベンガルが天丼で、二重写し。
 自転車は元より、場面やセリフを重ねるの多用し、かつ上手い。
  
 横暴なパートナーに耐えかねて、を説明セリフで説明しない説明。
 精密な設計。
 言葉で説明した方が分かり易いし確実に伝わるから、
 ダサくても、ベタに説明セリフに頼る脚本の方が優勢な昨今。
 ホントに貴重なんだよなぁ。
 
 状況説明でもあるけど、エピソードを積み重ねて、
 時間の推移と共に、関係の変化のドラマを魅せる。
 実に無駄の無い脚本。
 
 
 
5.キッズ・リターン
 自転車は常に二人別々に乗り、そして”これで終わっちゃう”。
 観てる時は私、気付きませんでした。
 
 他のルートは無さそうだしなぁ。
  自分の為に頑張れる人なんだから、きっと大丈夫だよ。
  親権はこれから、時間掛けて話し合えばいいよ。
  夫は息子ともども田舎に帰りそうだけど。それでいいよ。
 と、そんなこと考えていた。

 元ネタは疾走感も有るけど、

 本作は、のほほんと見せて、空回り。
 自分の為に生きるって修羅の道だけど、
 人間だもの、仕方ない。
 
 子供をぞんざいに扱った結果だもの、
 失って優先した仕事だけが残ったとて、
 自業自得。
 前向いて行きましょう。
 
 日常系で、女性側に救いの無い終わり方は珍しい。
 逆に女性監督ならではかも知れない。鮮やかでした。

不幸を受け入れられない人は生き方の基本が間違っている。
それを直さないで、悩みを解決しようとする。
シーベリーの「不幸を受け入れる」とはフランクルのいう苦悩能力である。  
不幸を受け入れると、することが見えてくるとシーベリーはいう。
苦しむ中で生きる道が見えてくる。問題解決の能力が生まれたのである。
人生のスタートは運命である。

 岸井ゆきの側の親の造形が、実は上手いね。
 邪魔くさい、世間体ファーストだったりするかも。
 鈍感なのと、自立心旺盛はウラハラ。

自分の親が神経症者であるという時に、
母なるものを持った母親のもとで育った人と同じことを自分に期待することはできない。  
例えば母なるものを持った母親のもとで育った人と、
同じような心理的安定を自分に求めても無理である。
同じような楽しい日常生活を求めても無理である。
人といて同じような居心地の良さを求めても無理である。  
自分の親が神経症者である時に、
自分に心理的健康な人であることを期待しても無理である。
人は無意識に問題を抱えたままでどんなに努力しても幸せにはなれない。  
自分の原点を見つめ、成長の過程を反芻し、そこで自分に期待できることを期待する。
それが自分を受け入れる強い性格の人ということである。

 ここで、終わらせる物語。見事でした。
 一旦、一人乗りを自分で漕いで、生きる。
 
 
 
6.当て書き
 ”だっぺ”とか、”風評”とか、言ってましたから、
 北関東から福島だと推察しました。
  
 佐々木希で、アレ秋田なの? とか思ってしまいました。
 そんなことより、夫がDVで逃げて来たとか、
  渡部の野郎最低だな。謝罪しろよ。

 って思っちゃいました。連想しないのは無理です。
 
 昔は大根とか言われてましたけど、上手いじゃないですか。
 一人だけ妖艶で、そこはかとないヤンキー感を残しつつ、
 宮沢氷魚がグラっとくるの、当然だなと。
 
 
 そんなことより、
  ”風になりたい”って歌ったり、
  アメリカ人の奥さんだとか、
 子供出来たとて、結婚するかどうかは別だし、
 当て書きというより、当て擦りに近いですかね。
 
 意地悪な小ネタで笑わせつつ、
 ヘビーな話が進むの、監督テクニシャン。
 辛く成りすぎないよう配慮してくれてます。

 だから、エンディングは映える。
 あの顔が出来る名女優をキャスティングした功績。
 
 
別れを決断したと実感する、去来する絶妙な感情。
こういうの刺さる層に届いて欲しいけど、、
やっぱタイトルからして、どうなのよ。話戻るけど、
リーチしてると願う。

名女優がまた名を挙げたコチラ↑は、フックある題材なだけでなく、
風景の撮り方で魅せるんだよなぁ。
 
本作も、映像次第で、もっと賞狙えるのにと、
そうなれば、リーチも届くかと、夢見てしまいます。
ちょっとだけ、心残りでした。
 
 
 
 
生きていれば、いろんな別れも至る所在り。

予告編流れたので、また会えるようです。
 
 
 
2025.12.06 現在
 20MA越えて来ましたが抵抗線が見えます。
 下落が見えてから売り玉建てるかな。買いづらい。

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