映画「ユリゴコロ」感想 クオリティは大健闘でオススメだけど、マーケティングは難しいもの。

難しい原作小説を、キャストも監督も最大限の頑張りでよく映像化してます。
評判は良いのに、興行成績は芳しくない様子。なんとか盛り返してほしいもの。
凝った映像に、グロテスクで重い純愛。良いんだけど、色々と客を選ぶ作品だもの。
 
 
だいぶ精神的に回復してきました。
仕事は願わくば、信頼できるチームで、納得感あるクオリティを提供したいもの。
しかし現実は厳しいもので、
後ろから弾飛んでくるような荒廃した現場も多々あります。
もっとマシな人と組みたいという贅沢は言わない、せめて居ないでくれたら、、
精神的負荷も、手戻りも半減するのに。。
 
ああ、仕事はやっぱ我慢料かって、思うことも数多くありましたが、
運命は巡るって感じですかね。
 
 
で、映画「ユリゴコロ」はお互いに信頼できるチームで取り組んで、
かつ、変な妥協もしない。と見て取れる。
 
だから応援する。
けど、一般受けは難しそうだから、公開規模やり過ぎたかなぁ。。
そういうさじ加減って難しいね。
 
 
 
原作との関係
物語の骨子をキープしつつの、映画化としての必要な改変。
だと思います。原作未読なので、あらすじだけ知った上での判断ですけど。
 
2時間の枠に収めるのに、登場人物と話の整理、簡素化は正解と思います。
トリックの重要なところ、映像化するにあたって、これ以上良い手が浮かばない。
 
もっと改変してよければ、
もっと苛烈な純愛にシフトさせたいですけどね。
そこが不満であり、原作に忠実な分止む得ないかとも思います。
 
原作はもっとホンワカした雰囲気で終わるそうですが、
重い純愛にしたのは、監督の誠意。
ま、最後ほのぼのした方が女性受けはいいでしょうね。
 
 
で、そもそもトリック自体は、原作の方に難ありと想像するのですよ。
そこのミステリー要素より純愛にシフトしたのは誠実でいい監督と思います。
ただ、作品の完成度上げるには、
「愛」の厳しさをもっと徹底して原作改変するしかないだろうな。
 
具体的には、ダムのシーン。
殺すに殺しきれない、死ぬに死にきれないをもっと壮絶にするとか、
原作のように「殺しきれないから何処かに行ってくれ」は弱い。
 
あとは、愛を知っても、壊れてる人間は壊れてるもので、
時間を掛けてマシになるかもしれないが、
基本完治はせず不完全なままだよ。
 
愛を知っても、それでも人の心は分からない。
そういう哀しみをもっと最後まで描き続けるべきだったかな。
 
 
ただ、そのためには、
よりミステリー要素減らして、改変しないといけない、
多分、原作の原型失いかねない。それは縛りあるだろうな。許可降りないかもね。
 
その辺のさじ加減の苦心で、
脚本がアップするまで数年掛かってるように見受けられる。
 
制約の中の苦心をボクは評価する派です。
ただ、
トリックがご都合過ぎる、純愛が振り切れてない、
批判自体はまあ、そう言われても仕方ないかなとは思います。
 
 
 
ああ、ご都合なストーリーについての見解は後回しにして、
まずは褒めるよ。良いところ。
 
・作家性の強い映像表現
 特に昭和編の映像は好きです。
 イヌカレーみたいで、目くるめく虚構に迷い込んたみたいで、
 青春映画ばかりオファー受ける職人監督と思っていたので、意外でもあり、
 わざわざ1800円払ってスクリーンで観る甲斐がありました。
 
 美しくて、痛くて、グロくて、アングルも不穏で、
 万人受けするかどうかは知らないけど、意欲的で、元は取りました。
 スタッフ気合入ってましたね。
 
 
・役者陣の頑張り
 一番拍手を送りたいのは、佐津川愛美さん。
 絶食して瞳孔開いた顔は、いいもの見れたって思いました。
 
 次は松ケン。
 松ケンはサイコパスよりずっとあり得ない人物を本当に居そうなように、
 自然に抑制効かせて演じてました。
 
 幼女、美少女と吉高ちゃんにバトン渡すまでの二人も好演でした。
 
 吉高ちゃんもよく頑張ってますけど、
 本来の明るさとか表情の豊かさ出過ぎかと、そこだけ不満です。
 いや、演出の問題かもしれませんが、
 しつこいですが、壊れた人が完治するのは無いもの。
 
 木村多江さんの不吉な死神っぽい雰囲気は流石と思いました。
 
 松坂桃李クンは、泣いたり喚いたりの演技が一本調子かな、
 強く表現する中にも微妙な感情があっていいと思うのだけど、
 全体的には顔だけじゃなく良いのですけど、、
 
 
 
で、欠点の前に、観る前のワタクシの前提条件を。
 
・沼田まほかる
 「九月が永遠に続けば」は読んでます。賞獲ったときに、もう10年以上前。
 その時も、今と同じ場所で仕事してたのでよく憶えてます。
 因果は巡ります。
 「湊かなえ」と似たテイストですが、ストーリーのイヤさより、
 身体的生理的感覚をより重視ですね。
 このウエットなイヤさは男じゃ絶対書けないなって当時思いました。
 ただ一発屋で終わるか、この異能を量産できるかは不明かと、
 その後、私日本に居ない間にまた賞獲ったのですね。
 
 「ユリゴコロ」は読んでないですが、どんなテイストかは想像できます。
 ネタバレしない方が良いかと未読で映画見ました。
 
 で、ミステリーとしての完成度追うのは、
 八百屋で魚買おうとするようなもんと初めから思ってました。
 
 
・熊澤尚人監督
 キラキラ青春映画のオファーを受ける職人監督と思ってました。
 観たことはありません。
 映像表現には全く期待していませんでした。
 
 
・前評判
 レビュー読んで気になっていたのは、
 ご都合すぎる展開、後半安いメロドラマ、松坂桃李クンの演技、でした。
 
 ご都合については、30%くらい同意です。
 
 純愛は安く落ちずに、描けてたと評価しました。
 日本映画はそういうの安く、不誠実に描く傾向ありますから、
 成功してると思います。
 
 松坂桃李クンは予想よりずっと良かったです。
 ただ声を荒らげるとこは記号的過ぎるかと。
 
 
 
で、最大の欠点とも言えるご都合について、
 えーっと、運命の輪を描くのと、だたのご都合は区別する派です。私は。
 例えば、
 「スラムドッグ・ミリオネア」をご都合と、
 ライムスター宇多丸師匠は批判したような気がするのですが、
 因果を敢えて描いてるのと、結論が先にありきのご都合と、区別しない人も居ます。
 
 だから、人物の相関図とか、偶然の出会いとか、
 そういう点は今回はご都合にカウントしません。私は。
 宿命がテーマなんだし、
 
 が、
 設定より劇中の細谷さん若すぎ、民間人捜査力あり過ぎ、木村多江無双過ぎ、
 これらの点については、擁護出来ない。
 ので30%くらいは同意です。
 
 しかし、
 原作のミステリー要素を捨てずに、
 じゃあどうすれば良かったかと言うと、妙案は思い浮かびません。
 ミステリー要素を減らすくらいしか。
 
 だから、長所も多いけど、70点くらいの出来、
 と評価が落ち着いても、まあ合意はします。
 
 
 
ただ、70点よりもずっと応援はしてます。
もうちょっと、小規模でもよかったんじゃないかな。
 
純愛ものとしては、グロなので、女性受けダメージだし、
ミステリーとして観たら、そりゃアラ目立つし、
 
 
そもそも、サイコパスが主人公って時点で一般受けしないのに、
それをちゃんと描いたから尚更、
 
 
 
この本読んでて、日本企業の不真面目さについて、書いてました。
曰く、
「会社とは何か」「成功とは何か」「成長とは何か」について深く考えていないと、
100%同意します。
 
アンパンマンが自分の顔ちぎるように、 
本来、犠牲を伴う「愛」という劇薬を、
安く描いた方が万人受けするというのは、
なんか救いがない。
 
「ひふみ投信」も、真面目な努力したものが報われる社会をって、言ってます。
 
報われて欲しいなこの映画。
 
 
 
 
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