映画「ゲティ家の身代金」 価格と交渉の物語。 リアル交渉人マーク・ウォールバーグの勝ちだが、制作側は判断誤った。 (ネタバレあり)


交渉力が資本主義に生きる者にとって、最強の武器であると教えてくれる。
オイルショックとスタンダード・オイルの価格という背景も興味深い。
リドリー・スコットの職人技術に納得。美術も凄い。
ただし、
映画としての面白さが弱いのは、トラブル後の交渉で制作側が失敗したからかも。
 
 
最近、株の勉強ばかりして、何も書けずにおりました。
紙の資産の技術習得については、もう少しうまくなってから書いて見たいと思っております。
 
イタリア懸念はどうやら後退した休日。観てまいりました。
 
 
ああ、そういえば、最近、市場で価格交渉しながらモノ買うとかしてないな。
今は定価のバーコードどおりにレジの計算のまま。
外国人だと思って、なんだその値段は! ってことは無い。
 
いや、
日々マーケットでは、相対取引だから価格交渉してるのだが、
まあ、兎に角、精進せねば。。。
 
 
交渉って、契約破棄出来る方が強いもので、
その立場の強弱の見極めと取引材料のカードの切り方で、最終的に価格が決まる。
 
 
そういうことを教えてくれる映画です。
 
石油王ポールゲッティの孫が誘拐されますが、
払わないと言って、値切り。
耳送りつけられて、税金の控除が効く分だけ払ったり、
流石です。
 
まあ、金持ちは浪費はしないですね。
途中、なんでも鑑定団的な展開もあるんですが、
価値と価格の歪みを上手に買ったから、金持ちなんですもの。
貧困ビジネスの方が儲かる所以でもあります。
 
価値を認めたものに、相応の価格で取引する。
そう、終始一貫した人物として、当時のミダス王は描かれます。
 
「愛してはいた」的な枕詞つける人も居るでしょうけど、
いや、あの息子と孫に、そんな価値があるとは到底考えてないでしょう。
身内だから、金づるにされるの嫌って隔離したい、
そんなディフェンシブな思惑が強かったんじゃないでしょうか。
 
価値の無いものは愛せませんよ。たとえ自分が生み出したものでも。
そうでなければ、違う人生歩んでいたはずです。
確固たる信念があったから、美術館開けるほどの美術品収集出来たんですよね。
 
一代で財を成した人、舐めちゃいけません。
 
 
価値と価格と、交渉と、そして資産を保護すること。
大変、教訓に富む映画でした。 
 
 
 
そして、興味深いのは、衰退期と出口と下半身の人格。
自分がつけた価格をスタンダードにしたかったんですね。
で、OPECが発足して、メジャーな価格の主導権が移ったのは衰退の始まり。
晩年だけに、オイルショックですね。

出口戦略があんまりスマートじゃない。
どのくらいあれば、というところで具体的な数字無いからでしょうか、
美術に入れこんで財団にしたのは出口っぽいですけど、、
 
 
晩年衰退期に入って、金持って、下半身だらしない人は大変ですよね。
紀州のドンファンな方の事件とか最近話題ですけど。
いろいろなことが、群がって来ますもの。
 
上半身くらい、きっちりしてたら、こうなってないだろうな。
その点、バフェットとかビル・ゲイツとか偉いですよね。
 
ああ、ドナルド・トランプはどうなんだろ。
失脚するとしたら、下半身の問題でしょうね。身内はみんな有能そうですけど。
オーソン・ウェルズだけじゃなく、
ドナルド・トランプという稀代の交渉人のこと相当意識してますよね。
 
 
衰退期に入ると、下半身の因果が巡るもんでしょうね。
そういう意味でも教訓的な話です。
  
当時は札束数えるし、値動きはティッカーテープだし、
今なら、リベンジポルノ的にネット流出しちゃいそうです。スキャンダル。
 
そういえば、王監督が最近結婚発表したのも、遺産関係なんでしょうね。
長島さんを反面教師にしたのでしょうか、
 
 
まあ、人生の出口は、願わくば、スマートにゆきたいものですね。
 
 
 
ああ、映画の見どころですが、老練な監督と俳優の職人技だと思いますよ。
イタリア、モロッコ、イギリスと絵として素晴らしい。美しい。
美術品も重要なアイテムですから、なるほどと思わせます。
 
そして、撮り直しを感じさせない名演技。
もとから、ケビン・スペイシーにする必要なかった。
 
これだけのトラブルに見舞われながら、
この完成度で完成させた、その職人技術は圧巻です。
 
 
ただまあ、映画として面白いかというと、やはり微妙で、
公開スケジュールもあり、妥協したんじゃないかな。
 
 
ドラマとしての面白さは、
吝嗇ジジイvs息子誘拐された母 という構図と、そこでの交渉だったはず。
 
それが、ややピンぼけ。
 
 
 
元の脚本自体に問題があったのかもしれない。
マーク・ウォールバーグの役どころ、いらないですよね。ほんとに不要。
 
 安閑としてた、ただの玉の輿のおばさんが、
 息子を救おうと必死なうちに、次第に交渉人としても成長して、
 ついには、身代金を勝ち取り、人質を取り戻す。
 最後は後見人として財団の実権を握る。
 
 
って、盛り上げ方してたら、ぐっと来るものあったと思うんですけど、
なんか場当たり的で賢くなった感がない。
愚かなママ、翻弄されてるだけに見えて、感情移入できない。
もとより、バカ息子は不憫だけど感情移入できない。
 
主演女優、主演男優の人物造形が、致命的に駄目で、
それが映画のつまんなさになってる。
 
 
 
だから、制作陣、判断誤って、交渉失敗したんじゃないかな。現実は。
マーク・ウォールバーグはリアル交渉人で、役より有能。
公開スケジュールを人質に、撮り直し分のギャラ釣り上げた。
主演女優はその1%のギャラで再度の撮影に応じたそう。
 
男女の差というより、交渉力の差を感じる。
 
制作陣は、強欲な主演男優切るべきだったよ。だってあの役いらないもん。
交渉は全部ミシェル・ウィリアムズで良かったじゃん。
 
スケジュールの方なんとかして、
脚本書き直しての、撮り直しだったら、傑作になったんじゃないの。
 
エンターテイメントとしては、ヒロインが魅力的であるべきだったよ。
ミシェル・ウィリアムズにはリアリティは感じるけど、
感情移入できる人物として描かれていない。それは致命的かなぁ。
 
ほんとに勿体ない。
 
 
交渉は断れる方が強い。
制作側が断るプランBを用意してなかったのが、悔やまれる。
 
 
 
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