映画「万引き家族」兎に角傑作。的外れな外野の意見は無視してまずは鑑賞しよう。(若干ネタバレ)


是枝作品は一回じゃ分からないととこあるのだけど、一回観て感想書きます。
とりあえず、
このクオリティーを堪能できない人はとりあえず無視していいと思いますよ、
関わる意味ないと思う。言及しますけど、
 
日本で一番うまい役者ばかりを集めたわけですから、演技絶賛されてますが、
 
音楽のセンスが卓越でした、
どんな才能かとエンドロール観たら、樹木希林そっくりな細野晴臣でした。ま、それなら。
 
画も音楽も演出も、抑制具合が達者な素材を殺さない、引き算の技術。
堪能できないのは、損で不幸です。断定します。
 
 
作品のこと、個人的なこと、右も左もトンチンカンな外野のこと、辞退のこと、順に記しておこう。
 
 
 
1.作品のこと
 あの松岡茉優が霞んで見えるほど、役者さんすごい人ばかりで、
 逆に、こういう素材を活かす演出は素材が悪いとできないので、プロデュースの勝利ですね。
 
 樹木希林がドラゴン、安藤サクラは恐竜、自分(松岡茉優)はトカゲ。
 そう言ってましたが、それが謙遜に聞こえないほどの存在でした。
 そのままそこに居ることを強く要求される演出だったと想像されます。
 
 昭和のような家族は現代のおとぎ話ですが、
 ドキュメンタリーのような演出にドキュメンタリーのようなリアリティを与えます。
 ま、逆にあざといと文句言う人いるかもしれない。
 
 小津安二郎という指摘ありますが、こないだ見たミヒャエル・ハネケ思い出します。
 ああアレも家族の話だった。
 
 で、前半すげえと思いつつも話進まないので若干退屈です。
 この辺の構造もハッピーエンドに似てるかもしれない。
 で、細野晴臣の音楽のちょうど良さに気づくのは、終わってからでした。
 
 アジアテイストならではかもしれないが、じつはこんな日本はどこにも無い。
 流石昭和の遺伝子、昔はあったかもしれない幻影を現実かのごとく描きます。
 家族というと、兎角現代人としては、荒涼たる肖像しか描けないとしたものです。
 
 ホントのようなウソが前半の見どころです。
 そして、こんな幸せ、長くは続かないだろう、
 ビッグダディも最後は泥沼だったし、
 東芝もいい天気じゃないし、
 と予感させながら、お話は進みます。
 
 
 サザエさんやちびまる子ちゃんのような、三世代同居家族の全体を見せるのですが、
 モンタージュのように各パーツを並べてゆきます。
 祖母と孫、父と息子、母と娘、母と息子、兄と妹、男と女、夫と妻。
  
 それぞれの関係。無や崩壊を描くことはありふれて居るのですが、
 偽物の本物の再生を描いて見せるという勇気が素晴らしい。
 で完璧な計算で成功させてる。
 
 松岡茉優だけ、ちょっと特異点なんですね。
 彼女だけ親子の再生がなくて、「パリ、テキサス」するのですが、
 ベンダースは親子は再生させて、男と女は壊れたままでした。
 松岡茉優はその逆で。家族を失って、恋人はゲットできたのでしょうか。
 まあそれも、またDVを予感させるのが因果ですけどね。
 
 
 物語の方は、
 こういう環境で育ってしまうのは良くないのはないかと、兄の葛藤から動き出します。
 母性に満ちた父親に無い父性に息子が目覚めてしまいます。夢から覚めてしまいます。
 
 こんな満たされ方は、やっぱ長く続かないな。
 安藤サクラ絶賛されてますが、役得ですよね。
 「こんないい思いさせてもらったんだもの、これくらい安いもの」的なセリフあるんですが、
 出産後初仕事の奥さん、渾身でした。
 
 ああ、オレは高い授業料だったけどって、思わず我が身を顧みてしまいます。
 
 
 家族という幻想を実体は無いと知りつつ、もしかしたらあるかもということまで、
 描ききっているのは、ちょっとできないことだと思います。
 凡百な才能なら、崩壊までか、ウソの再生しか描けない。
 
 
 
2.個人的なこと
 一番好きなシーンは、母と息子の関係で、コロッケの前で安藤サクラが照れるとこ。
 泣きの演技より、気に入ってます。最も気に入ってます。
 
 向こうの不義理を向こうに突きつけて、
 向こうから縁切りを言わせて、心から人生の勝利を確信した身としては、
 幻影の中に幻影を見せてもらいました。
 
 
 リリー・フランキーのバス停のシーンでは、
 もう二度と会うことはないだろうと、電話したときのこと思い出しました。
 
 情が無いわけでは無いが、それを優先するわけにはゆかない。
 残念だが、ここでお別れ。
 
 
 最近、仕事も少し入れようかと動いてみたら、
 献身的に対応してくれた人が居た。
 でも、商取引として、そのやり方はダメだよ。
 情はあるけど、No deal。そんなことも思い出しました。
  
 生きてゆかねば。
 情だけでは生きられない。父性というか理性の必要。
 
 ああ、ゼロサムゲームなトレードの勉強だけでは辛いから、
 職場ごっこがしたいんだなと自覚しました。
 
 オママゴト。家族ごっこをするチャンスはもうなさそうなので、
 せめて、職場ごっこがしたいんだな。
 
 初めて、職場というものに感謝したよ。すべてがとても遠くに感じる。
 思えば、カネのことばかり、考えて来た。
 
 
 タダで手に入れようとすると、どこかで破綻するんだから、
 何かを差し出して、何かを手に入れなくちゃ。
 
 人とつながることの代償を払う覚悟がオレにあるのだろうか。
 
 もう、高い授業料を支払う、若さは残っていない。
 
 
 
3.右も左もトンチンカンな外野のこと
 「貧困」は主題じゃない。社会問題として扱うなら、虐待(DV)やネグレクトだろ。
 現在日本で、貧困で餓死のニュースは聞かないが、
 虐待で親が子供を殺すニュースの頻度は高い。
 
 にもかかわらず、
 「貧困」にフォーカスを当てて、虐待をスルーする人間を人間だとは私は思わない。
 金持ちだって虐待はあるんだよ。物質や経済より精神の問題だから、
 自己責任がどうこうじゃなくて、虐待(DV)やネグレクトは犯罪なんだよ。
 サヨクな方々が社会保障の名目でカネを毟ろうとしているとしか見えない所以である。
 ほんとうの弱者は救済しない被害者ヅラ。
 私に裁く資格はないけど、そういう人を人とは認めない。
 
 
 で、ウヨ側の同じ文脈で「貧困」に反応してる人間にも人間性を感じない。
 高須医院長は、じゃあパートナーの西原の「ぼくんち」も批判しろよ。
 
 生きてゆく中華屋とか、
 差し押さえられた家で最後に鍋囲むとか、
 そうとう参考にしてる気がすんだけど、
 
 
 あと、映画で描かれる貧困は、経済でなく精神の病としての貧困。
 現代日本では貧困は治る病だけど、必要なのはカネじゃなく、お金の知性。
 裸一貫大金掴んでも、マイク・タイソンとアレックス・ロドリゲスでは結果が違う。
 
 「貧困」が社会問題だという方々が、なぜか、
 お金の知性というワクチンで、自助という治癒は存在しないものとする。
 薬漬けにするように、お金を与えることばかり言う。
 宝くじは愚者の税金というが、
 発言者と貧困ビジネスとの距離感は気にした方がいい。
 
 
 悪い環境から逃れられない子供の問題は昔も今もあるよ。
 お金の知性と情報リテラシーは義務教育で必須科目と思うけど、
 教えられるような師匠を選ぶことができない。
 カネは人を金持ちにしない、カネで見識は買えない。
 
 
 無粋なこといえば、映画の中での万引きは趣味。
 夫婦ふたりで真面目に働いていれば、せめて25万はカウントできると思われ。
 それに年金足して30万。さらに緒方直人から副収入もあり、
 松岡茉優は自分で働いてるのだから、食い扶持分くらい入れさせてもいい。
 
 家賃はなく、税金もすべては払ってない、食事は自炊なら、
 食料と衣料品はじめ生活必需品と水道光熱費。
 あのレベルの生活ができない収入ではない。
 
 劇中で描かれるように、
 怪我で働けないとか、会社都合で解雇とか、そういう不安定さは打撃だけど、
 食い詰めてやむなくの盗みではなく、働いてても常習化してるもの。
 
 お金払うより盗んだ方が得だと考えている。
 経済の成立のさせ方を学んでいない。だからその境遇から脱出できない。
 
 フィリピンのスラム街のような貧困でなく、リテラシーの貧困は現代日本に蔓延してる。
 それは再分配でもセーフティネットでも解決しない二極化。
 
 行為だけを観て、
 日本にも内戦直後のカンボジアと同様の貧困があるかどうかと論じるのは、
 見る側の浅はかさ。そうは描かれてない。
 
 「盗みしか教えられるものがない」それは物質でなくリテラシーのない哀しさ。
 
 
 
4.辞退のこと
 今回については、作品の質がいいから擁護するんじゃなくて、
 ギリありかとは思う。
 左右かかわらず日本の人があまり持っていない独立と自由の問題だから、
 
 助成金もらっといてという批判はもっともだけど、
 映画の助成は国としてもうちょっとしてもいいよね。クールジャパンで。
 ウヨの人は韓国に対抗したいなら、そこは助成する方向で運動してはどうか。
 
 国民栄誉賞とかで、それがなぜ政権の人気につながるのかも理解できないのだけど、
 賞獲ったから、人気取りに利用されるってのは、なんかヤダって心情は理解できる。
 
 当時の民主党政権だったらどうかは、ありえない仮定であるけど、
 国とかから、勲章もらうの、嫌なら嫌でいいじゃん。
 もとより、捕まる側の人間なんだから。
 
 逆に、
 貰っといて、揶揄して、それを批判されて、見苦しい言い訳するのはクズだと思うけどね。
 楽曲がどんなに素晴らしくても人間はクズだと思うけど。
 
 
 国から貰っちゃうと自由な表現に影響しちゃうって、
 助成金貰っといてという弱点はあるけど、
 名誉も欲しい、カッコつけもしたいという無節操じゃないんだから、
 
 国からの名誉は要らないっていう態度で一貫するなら、ギリセーフでいいんじゃない。
 
 ワタクシはそう判断しました。
 
 
 まあ、国とか国民はクール・ジャパンの活きたカネの使い方、考えようよ。
 
 大事なのはカッコよく見せることでなく、品質の高さじゃん。
  
 
 
 
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