マーケティングと違いを齎す違い。「十二人の死にたい子どもたち」「君の膵臓をたべたい」「スマホを落としただけなのに」 

先日、
ペルソナの設計を実践している大学生に出会いました。
彼のひとりビジネスです。
顧客層と提供するサービスがとても明確。
優秀な人なんだなと、感心しきりでした。
 
一方で、同じ話を聞いて、
ターゲットの絞り込みの意味を自分では考えられない、
思考力に難ありかと見受けられた方も一緒に説明聞いてました。
ネットワークビジネスに夢を追っているとのこと。
 
足の速さとかと同様に、知能も資質で決まるものかと、
残酷ながら、考えざるを得ませんでした。
 
 
前回「三尺魂」を観て、
インディーズ系なのに、監督の映画に対する志を感じない。
という感想を得ました。
 
逆に、志は高くないと世間から見られてしまう映画のジャンルで、
結果を出すとはどういうことか、
改めて考えてみた。
 
実写の高校生向け映画、大抵は学園恋愛もの。
そういうジャンルありますよね。
 
純文学でなくラノベ読むような気楽な気持ちで観ました。 
ビジネスとしての成功物語としても、観てました。 
 
 
2019年公開、興行収入15.5億。
アニメでなく、TVの劇場版でなく、明確に高校生向けと思われる作品としては、
この年、最大のヒットかと。

冲方丁のミステリー小説。漫画化され、
さらに実写映画に。日テレが製作に関わり、堤幸彦監督。
若干、「20世紀少年」的な予感を感じつつ、観始めました。
 
 意外なことに、堤監督が真面目に撮ってる。
 wikiによると、

撮影は群馬県藤岡市にある廃病院にて行われ、堤監督が好んで用いる手法である、映画の現場では異例の1シーンを複数台のカメラを用いて撮影するマルチカメラ撮影により、5台のカメラを用いて撮影された。脚本の劇作家・倉持裕が執筆したサスペンスフルな会話劇は1シーンが台本6、7ページ、クライマックスシーンに至っては12ページにも及び、ライブ感を重視して多くのシーンが長回しによって撮影され、約40分間にも及ぶノンストップの長回しも行われている[10]。

 ロケーションに恵まれ、日テレ予算なのでマルチカメラ。
 キャストに遠慮せず、会話劇を止めない。
 
 見込み客の居る原作で、
 集客力ある俳優を集めて、
 適切な予算で、丹精に撮る。
 
 これでヒットするなら、それはそれで。
 TVの映画化よりも好ましく観てました。

 ただ、20億行かないのは、
 脚本、というより原作に問題あるかなぁ。読んでないけど。
 レビュー見る限りでは、映画脚本が大きな改変を行ってはいなさそう。
 むしろ、2時間に収めつつ、よく交通整理したほうではないか。
 
 12人にしたのは、会話劇を原作から意図しているから。
 それがスリリングに展開されるような、お話になりずらい。
 提示される謎そのものが、どうでもいいんだもの。
 
 そもそも、やる気で参加したのに、議論の余地あるかよ。
 が、
 日テレ資本で自殺容認する結論も無理、園子温でもない。
 予定調和なラストは割り切ったとしても、
  
 途中の謎解きが本来の肝であるなら、
 会話劇の中で二転三転しないとな、
 しかも、
 12人それぞれの事情とリンクした形で、お話が転がらないと。
  
 うーん、
 原作の整合性が低そうで、厳しそう。
 脚本はなんとか意図を汲みつつ映画として成立させた。
 原作や脚本のアラは無視しても、一本撮り切る手腕を堤幸彦が見せた。
 
 ミステリーとしての出来も、
 せっかく12人にしたのに、会話劇としての完成度も、
 12人居ると、キャラの書き分けも掘り下げも尺に制限あっても、
 まあ、それは全て脚本までの段階で解決すべきことで、
 撮影や編集では限界がある。映画は三度作られるとしても。

 それは割り切ろう。渡された脚本に文句は言わない。
 堤幸彦の資質とも言える、その我関せず感が素晴らしいし、心地いい。
  
 興行的にも、監督とキャステイングの勝利。
 原作のネームバリューだけでは無理だったろう。
 複雑でご都合も目につくストーリーを割り切りつつカバーした。
 
 
 と観てました。
 これ以上の成功を望むなら、原作を解体しないと無理か、
 しかし、そんな大手術をしても成功の保証はない。
   
 クレバーな期待値の最大化という判断による、現実的な勝利。
 欠点を指摘するのはむべなるかな。
 しかし、それ目くじり立てるより、製作サイドの賢明さを讃えてしまった私は。
 
 そう思ったのは、
 TV的でなく、作品が映画だったからでしょうね。
  会話劇だけど、説明セリフは抑えて、緊迫感ある長回し。
  ロケーション活かす、スケールある画を観せてくれてるし。
 
 お話が王様とはいえ、画がダメな2時間は無理だし。
 興味が続いたのは、撮影と演出の力量でした。
 
 
 
2017年公開、興行収入33.0億。
その上位の邦画は、コナン、ドラえもん、銀魂、ポケモンですから、
実質この年の邦画No1ヒットの企画。

本屋大賞2位の原作。綺麗なお話の綺麗な実写化。
 
 やっぱり、月川翔監督を褒めましょうよ。
 この手のジャンル映画を得意に何本も撮ってます。
 その中でも本作は最大級のヒット。

 美男美女の綺麗なお話を、綺麗に撮る。
 映画の画として綺麗。紗が掛かって。
 
 原作に集客力あって、ほぼストレートな話。
 その分、やや単調なのですが、
 その未来編を追加し、クロスオーバーさせることで、単調さにアクセントつける。
 脚本に苦心の程が伺われます。
 まあ、オジサンにはそれでも高校生の恋愛は退屈感ありますけどね。

 未来編の小栗旬は、最初小栗旬と気づかないほど、良かったです。
 逆に、北川景子はもうちょっと上手くてもいいと思う。
 上地雄輔が正解なのかどうかは、全くわかりません。
 
 「勝手にふるえてろ」ならイチが北村匠海で主役は松岡茉優ですが、
 このジャンル映画に、その演技力要求しなくていいじゃないですか。
 美男美女が綺麗に撮れてりゃ。

 ストーリーはそれを邪魔しないし、
 女子高生がこの映画観て感動して泣くなら、何の文句もないですよ。
 
 TVとは違う、映画の美しさ堪能出来るし、いい経験だと思うんだよな。
 文句言う人は、この映画に何を求めているんだろ。

 あと、繊細とガサツの描き分けも好感持ちました。
 そう思うと、北川景子も正解かな。
 
 素材が素直に良くて、料理人の腕もよい。
 それが素直にヒットして良かったね。と素直に思いますよ。
 
 
 
2018年公開、興行収入19.6億。製作幹事TBS。
同年の明確なジャンル映画は、
やはり月川監督で「センセイ君主」12.3億があるのですが、
同じの2つは被りすぎかと。
「ちはやふる -結び-」17.3億より売れて、
高校生メインの客層ぽく、話題性もあったので選びました。

原作は
「『このミステリーがすごい!』大賞シリーズ」より「隠し玉」シリーズとして刊行。
分かりにくい説明ですね。
『このミステリーがすごい!』大賞に落選した。
想像ですけど、
 素材はいいので、構成直せば、良い作品になるという。
 編集側の判断があって、
 テコ入れした。 
 
 お話自体面白いと思いますよ。
 映画だけ観た感想では、とても粗いけど。
 
 この映画で、技術的なツッコミは野暮かな。
 段々と、被害がエスカレートしてゆく構成は良かったですよ。

 問題は、誰もが指摘するように、
 北川景子のあのエピソードとエピローグが蛇足なこと。
 犯人逮捕で終われよ。
 
 
 あとは、いきなり沢山殺されてるのはダメでしょう。
 そこは1人づつで盛り上げて、次はヒロインが。って定石どおりでよいはず。
 それ端折って、終盤に蛇足を足すのは、著しく品質を落としている。
 
 それが、北川景子の事務所的な力関係とかか?
 そこはなんとかして欲しかったなぁ。
 製作が内向きなのではと、勘ぐらざるを得ないアンバランスさ。
  
 サスペンスとして、お話の面白さで引っ張る作品なのですが、
 そこは切れよ、と終盤イライラしてカタルシスを得られません。
 
 千葉雄大と原田泰造のパートは演技プランが統一されてて見易いのですが、
 田中圭と北川景子のパートが、
 最初コメディタッチの大袈裟な演技で始まる。
 しかも、そこそこおバカカップルに描かれる。
 その残像が、、
 これサスペンスなのかコメディか観てて迷う。
 
 成田凌が顔芸と言われるけど、落差も演じ分けてる。
 逆に、北川景子の顔芸はやっぱりキツイ。
  怖い、驚く、悲しむを
  表情だけ先に作りにいってそれで説明終わりという手法。
  TVなら分かりやすいけど、感情移入は出来ない。
  映画では、観る側は醒めてしまう。
 芸達者と認識されてる田中圭の演技プランも良くないよ。
 怯えてるのか、ただの変顔なのか、って迷ってしまう。
 どうしてもノイズになってしまう。
 安心してハラハラ出来ず。
 なんとかサスペンス成立させてくれとハラハラしてしまう。
 
 
 「リング」の中田監督で貞子オマージュですけど、
 これはTVで充分かなと、映画として怖がれなかったですね。
 怖がらせる演出はもっと出来るはずなのに。

 あるいは、  
 ヒロインをあまり活躍させず、気を使わないで済むキャストにして、
 千葉雄大と成田凌の、同じプロファイルを持つもの同士の対決メインなら、
 もうちょっと面白く、終われたんじゃないかなと、観てました。
   
 
 で、その方向で続編作られるのですから、
 千葉雄大と成田凌。二人の好演は報われたということですね。
 まあ続編は続編で評価割れてるみたいですけど。(後述)
 
 本作のクオリティはおいて、
 興行成績残したので、頑張ってた二人が報われるなら、
 それはそれでめでたい。
 
 邦画の悪いところもいっぱいあるけど、原作のアイデアの勝利かな。
 あとは若手二人の頑張り。脇役は安定してた。
 逆に、構成犠牲にしてまで、北川景子にそんなに集客力あるのかなぁ。
 
 
 続編も観てみました。
 コロナで半減した客足の中、11.9億は立派。「クレヨンしんちゃん」より上です。
 
 千葉雄大と成田凌を中心に、特に成田凌の怪演を引き出す方向で。
 同じネット犯罪の手口は使えないのは痛いところですが、
 構成は整理されてスッキリ。長所を伸ばし、短所を削った。
 断然2が良くなったと観ました。

  とはいえ、
  何故ここまで神奈川県警は無能なのか?
  神奈川県警だからと言われると、否定も難しいか。。
  1も脚本が雑でしたが、2のご都合を許容出来るかですかね。
  でも、それ許容出来ない人は1で脱落してると思われ、
  脚本の粗さは受け入れて観る映画と、私は欠点に今回反応しません。
  そういう設定、神奈川県警という世界線の前提で観ました。
 
  説明過多に不満な向きも多く、分かるけど、
  それは内容上仕方ないんじゃない。
  それ言い出すと、もっと問題なこと他にあるし。
  とそれも許容。
 
  白石麻衣の演技は私は気になりません。
  1の演技プランの方が問題は重く、
  むしろ、記号で余計なことしないので、邪魔にならなかった。
 
  アルピー平子も役者として扱ってあげていいじゃないですか。 
   本編のような人物造形なら、成田凌の仕返しはカタルシス。
   もし、お人好しの善人だったら、残虐なサイコパスをより印象づける。
   演出意図次第でどちらもありでしたが、
   カタルシスを得て、
   徹頭徹尾機能しない神奈川県警vs知能犯の構図を示した。
  その導線は成功してるので、充分役を果たしてます。
 
  あとは、消去法で早めに犯人予想出来てしまうのですが、
  サプライズを楽しもうとは最初から思ってないので、それでいいです。
  完成度低いミステリーでもサプライズなら嬉しいという感性は、私は理解しない。 
 
 以上は欠点とせず。期待の無いところに落胆なし。
 逆に、
 中田監督は、もっとやれたはず。
 演出は問題視してます。
  
  千葉雄大は前作から演技が顔芸方面にいってしまいました。
   成田凌の進化とは対照的に。ちょっと残念。
   同じトラウマを持つものでも、闇落ちしない側として、
   今でも引きずる内面の葛藤を表現する役を担う訳ですが、
   それを演技で要求されると、ちょっと荷が重い。
  顔芸演技は分かりやすい記号だけど、内面の表現には向かない。
  しかし、演出で工夫出来たでしょ。
  力量が無いなら、顔映さなければいい。演技させなければいい。
  そういうとき、ヒッチコックの昔から間接的なカットで映画は演出してきた。 
 
  恐怖演出は、監督が下手になった。
  緊張感を顔芸演技とテンプレな音楽で表現しちゃ芸が無さ過ぎ。
  サスペンス盛り上げるの、もっと上手い人ではなかったかな。
 
  同様にズン飯尾の使い方は邪魔過ぎ、
  緊張を緩和させるシーンに特定したい。
  演出のメリハリに問題あるでしょう。
 
 
 良かった点あります。
  神奈川県というロケーションを効果的に使ってますよね。
  褒めない人多すぎではないですか。
 
  成田凌は、アンソニー・パーキンスからホプキンスですが、
  その試みは成功してるので、素直に喜びました。
 
  続編やるなら、井浦新の登場も成功でしょう。
  良い脚本で、成田凌vs井浦新を確かに演出できれば、
  満足得られるサスペンスになるでしょう。
  千葉雄大は補佐役なら充分機能すると思われ。
 
 もう、「スマホを落とす」というタイトルも捨てて、
 成田凌メインでシリーズ化、行けそうな気もします。
 TV発でないシリーズものの誕生は近年の邦画では快挙。
 次はハードル上げて観ても、大丈夫な予感もします。
 
 最初は原作の話題性主導で売れた作品が、
 都度、長所を伸ばし、短所を捨てて、成長するなら、
 それはそれで、素晴らしいこと。
 
 
短所だけ挙げても、それだけでは、
振るわなかった他との区別は出来ない。
似たような企画沢山あるなかで、その作品がヒットした要因はある。
ラノベ風、高校生向けと、何でもかんでも侮ることなかれ。でした。
投資でも、小さな違いを大事に生きてゆきたいものです。

  

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