やればできるじゃんアメリカ娯楽映画「air」ノスタルジーは捨てたくないんです。

社運を賭けたギャンプルを情熱で乗り越えてゆく。
「グッド・ウィル・ハンティング」コンビが贈るプロジェクトX。
素晴らしいのはそのままだけど、みんなもっと他のところも褒めようよ。
会話と音楽が粋なアメリカ映画は絶滅危惧種なのだから。
 
ラジオで佐久間Pに薦められて観てきました。
マット・デイモンとベン・アフレック当然のキャスティングですが、皆本物と似ている。
特に、マット・デイモンのイケオジでないダルダルな中年ぷっりは敬服しました。
賢さより、情熱に全振りでマット・デイモンと気づかないほど。
  
エンタメとしてのストーリーは素晴らしいのは、誰でも言及するところですが、
会話や音楽を褒めないのが悔しいです。
 
 
アメリカ映画の悪癖をおさらい。
 1.ポリコレへの過剰な配慮
 2.特に音楽がダサくてベタ
 3.何でも家族愛に着地

それが全部無い。満点です。
ナチュラルに80’sの社会での白人と黒人の関係が描かれている。
 ”黒人はランニングシューズなんか履かないよ。
  そんなことしたら警官に職質されてしまう。”
ポリコレ的なアピールでなく、さりげない。
 
ありふれた手法ではありますが、
ベストヒットUSAで流れたMTVのヒットチャートが劇伴。
しかも、いいチョイスだなぁ。
パソコンや電話などオフィスの小道具も忠実な再現のため尚更ですが、
バブリーで華やかな80’sにタイムスリップ。します。
ダイアー・ストレイツで始まり、ブルース・スプリングスティーンで〆る。
容赦なしだ!!
場面と曲名や歌詞を合わせているですね。当たり前だけど。
だって最近はA24ですら、音楽の当て方はメロドラマみたいに安いし、
個人的には、↓この曲がグッと来ました。

丁度いい選曲。そう必要なのは奇蹟。
 
また劇中に、当時の選手達の名前をちりばめるので、タイムスリップ効果があるよね。
ナイジェリア出身のフィジカルモンスターとか、左利きのQBとか、
プレイを脳内再生してしまう。
 
 
会話のセンスもいいよね。
ちょっとキツめのジョークとユーモア。
最近のアメリカの娯楽映画では奇跡的なこと。
独立系のA24が大衆化し、アマゾンの資本でこれが出来るのだもの。
特にマット・デイモンと、
MJの代理人(クリス・メッシーナ)とのやりとりは最高だった。
もっと笑っていいのに、
不謹慎だからか、他の観客は笑わないので、ちょと気まずい。
 
史実だから、ネタバレもクソもないから言うけど、
ラストのCEOベン・アフレックのセリフもいいよね。
自分を赦すマインドフルネスの最中に、赦すべき罪があるのかと問われる。
 
 利益分配の権利を認めると、企業側を弱体化させる。
 今後アスリートは皆、利益分配、更に株の譲渡だって求めるだろう。
 私は、悪しき先例を作ってしまった。

詳細は忘れたがそんなセリフを吐く。
説明っぽくなく、アスリートビジネスの歴史が脳裏を駆け巡る。
 カール・ルイスがアスリートをプロ化し、
 MJがスポンサード契約の構造を変えた。ブランドビジネス。
 大谷は無頓着そうだけど、年俸以上。

CEOっぽくて、歴史的意義まで解説してる。
 

”I have a dream” のくだりも良かったよね。
原稿は売らずに所有している。
 あの歴史的なスピーチの前半は原稿どうり、しかし、
 オーディエンスのウケが悪かったらしく、後半はアドリブで変えた。
 情熱をぶつけ、モーゼのように民衆を導く。
 
MJへのプレゼンで、マット・デイモンは伏線回収。
プロモビデオを止めて、直接語りかける。
 
80’は公民権運動の時代じゃなく、商業主義の爛熟期。
ナイキはスポーツビジネスを変えた。
難色を示されながらも、情熱で賭けに勝つ。

劇中なんども、そこは”Just do it”だろって応援してしまいます。

丁度良く分かりやすくなくて、上手いなぁ。上質な娯楽。
大衆芸能はとかく下品で媚びるけど、こんな奇跡もあるんだな。
 

それでも、
 会話劇は字幕を読むのが辛い
という感想も世の中には存在する。らしい。
一生流動食だけ食ってろって思ってしまうけど、うーん。
邦画だけ観るか、英語のリスニング能力上げるしかないんじゃないかな。
吹き替えだとベタさが増してニュアンスがねぇ。

まあ、切れ目がないのが辛いよね。
聞き取れなくても、すげえ掘り出しもんだぜ、って興奮は伝わるじゃん。

セルフ無用な全部オートマチックな娯楽で溢れているけど、
そんな中でも、お宝は発見できる。という物語に感動しました。

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