無関心の肯定イルセ・サン「身勝手な世界に生きるまじめすぎる人たち」浅井リョウ「正欲」は逆「怪物」的意欲作。生きづらいソサイエティとコミュニティの居場所を描く、映画化は難度高そう。しがらみから解かれるyoutuber渡部健、TKO木本。「少女は卒業しない」もついでに。

高い技術に、技術だけでない本人の強さって大事。
TVに出れなくなったyoutuberにそれを発見。
しがらみ無い方が生き生きしてる。
 
無関心の肯定が痛快、この閉塞空間に生きて。
「怪物」も意欲作なんですが、少し前の話題作「正欲」はカンヌ脚本賞と真逆。
読後感も爽やかな良作で、その意欲は買い。構成も巧いのにテーマ性強い。
弱点も目立つけど、それもまた良しという気になります。
映画は今週公開で、説明セリフ合戦にならないか、期待より心配が勝つ。
 
でもまあ、 
浅井リョウの本分は、やっぱ思春期モノに限るかとも思い、
レビューのタイミング失った映画化を渡部健のように褒めよう。
 
 
 
今秋、吾郎ちゃんとガッキー主演で映画化されるとのことで、
遅れ馳せながら、敢えてオーディブルで聴いてみました。

長編小説は読んで鑑賞した方がよいですね。
今回。聴くオンリーのため、文章の良さは判断しません。

それでも、
物語の構成が大変巧みで、かつ必然性があり、
テーマへの取り組みの志の高さが伝わってきます。
 
傑作と呼ぶには欠点もあり、問題作だとも思いませんが、
良き意欲作で、
技術以外の部分でも、心に響きます。
大人の事情抜きで、創作者の想いがダイレクトに表現できるのが、
小説や漫画のいいところですね。
 
是枝監督が作品を語らざるを得ない立場で、
語るとまた叩かれるのはちょっと気の毒です。
いろんな思惑のバランスを取ることを敢えてトライしてるので、
自業自得とはいえ。
 
 
それはさておき、「正欲」テーマがいいです。
リベラル界隈がダブルスタンダード気味で、結局は政治的発言権を拡大したいだけか?
と疑問に感じるのは昨日今日のことではないので、そこに目新しさはありません。

多様性を認めない人を認めないのは多様なのか?
という分かりやすいメタ認知の命題がありますが、
そもそも、
険しい剣幕で平和を訴えるような矛盾にどう対応するかは、
個人個人で先に解決しておきたいものです。
”平和のために戦う” は、私にはムリです。
自由のため、独立のため、なら理解できますけど。
もちろん、
侵略されたら常に降伏する国に安心して暮らせるとは思いません。
 
作中にも出てきますが、
ミスコン反対と多様性推進は本来相性良くない。
多様性なら、賛成派も反対派も認めるべだし、
女性の人権保護は別に、多様性謳わなくても成立するし。
 
その辺の矛盾を負わせる大学生の八重子というキャラクター造形は秀逸。
彼女の善意のウザさは、過干渉な母親のよう、
一方的で相手の拒絶をも無視する独善。に敷き詰められた地獄への道。
 
理解し合えるものだけが理解し合えばよい。
しがらみなく心理的安全が確保された、ネット利用のコミュニティ。
それを選び、無ければ作り、
この生きづらい社会というものと関わりながらサバイブしてゆこう。
爽快な読後感を残します。
 
社会は社会として存在し、機能しているという現実を見据え、
社会のせいにして終わるような、
現実解にならない幼稚な精神は許さない。
 
キャッチーなものに飛びついて、話題をさらうだけでない、 
作者の骨太な精神に触れることが出来ました。
 
 
ストーリーテリングも巧い。
家庭、職場、大学と、
それぞれ生きづらさを抱えるコミュニティに属する3組を、
同時並行で描きつつ、どうやらその3組の接点になるyoutuber二人。
Xデーに、ヤバいこと起こっちゃうのか?
という中心の謎にハラハラしながら、安心したと思ったらどんでん返し。
”ああ、そうくるのか” 見事な展開に舌を巻く。
 

ま、欠点もあって、
浅井リョウは思春期や学生を描くのは巧いけど、
社会人やビジネスを描くのは、ちょっと経験に欠けるのか、
流石に、
 ”オメーの性癖関係ねーよ、飲み会に行きたくないとか、誰でも乗り越えんだよ。”
30過ぎて子供か。
それに職場は男子校の部活じゃない。
 
職場の悩みと性的マイノリティであることがリンクしてない。
また、職場の設定はにリアリティに欠ける。
前半の中盤、高校生のままの社会人の精神が繰り返し描かれダレる。
常に一つの軸でセグメントされる訳でもないしね。現実は。
いつも少数派では居られないよ。
  
 
終盤、 
多様性界隈の話しを総花的に両論併記するのだが、
ちょっとお説教が過ぎるのと、八重子にその役をすべて負わすのは酷。
 
主役の検事は人権派弁護士とかにして、両論併記はそっちでやっては。
家庭では強権的で頑迷でも充分成立刷ると思うよ。
てか、検事の人格がステレオタイプ過ぎて感情移入しにくいし。
 
 
あと全編を通して、
登場人物や地の文で、他人の言動をクリティークし過ぎ。
それじゃ、そりゃ苦しみが増えるよ。マイノリティ関係ない。

事実を事実として受け止めて、必要な対処を行い。
それだけで、批評は不要なことは多い。
ま、広末涼子がどうだろうと、
当人たちで解決すりゃいいと思うのが正常だと、オレは思うけどな。
 
関係ないものに関心を持つ必要はない。
また、関係ないんだから、関わんないでくれ。
 
”愛の反対は無関心” と言われると、とかく、
愛が善で無関心が悪のように扱われる。
が、さにあらず。
小国寡民が幸せと訴えるのだから、
日本人らしい他人への粘っこい視線止めたら。
心理描写の文にちょっとイラッとしました。
 
 
も一つ、
どんでん返しのキーにもなる点。
 特殊なフェチだということと、
 それにしか欲情しないのは、 
別の話で、それ区別ないままなの釈然としないまま話が進んで、
そりゃそうなるわな、というオチ。
実際に、人には欲情しない人というケースがありうるのか、
現実の例が欲しかったですね。説得力が弱い。
  
 
欠点も感じるので、傑作とは思わないけど、
無関心は幸せという、お花畑でないテーマは爽快で、嬉しかったですね。
 愛さなければいけない、関心を持たねばいけない、
そんなプロパガンダに洗脳されている自分を再発見しました。

自分を不幸にする罪悪感から解放される↑この本有効でした。
どうやら、親を見捨てるのが、レッスン1なのは、
洋の東西を問わないようです。
  
 
で、生きづらさから逃れてyoutuberとして居場所を見つけるといえば、

あっちゃんも褒めてましたが、ほんとに素晴らしい。
グルメレポの技術も思想も全開で、
かつジモンのように押し付けがましくもない。そこも差別化できてる。
しがらみなく、生き生き伸び伸びできてよかったね。
もうTVに戻らなくても。
マスに好かれようとするとストレス溜まって精神やられかねないし。

TKOも頑張ってる、NFT関係の投資詐欺もあったんだろうな。

覇権を握るのは、中田興業でなく、森東かもしれないね。
  
 
 
それはさておき、
「正欲」の映画化は不安の方が勝るかな。
浅井リョウは青春ものに限るということもあるし、
 
この内容では、脚本が相当に上手くないと、
説明セリフのオンパレードになってしまう。
 
吾郎ちゃんもガッキーもこのキャラのイメージないな。
吾郎ちゃんは温和で人の話しを良く聞くし、
ガッキーは華がありすぎる。この役には。
むしろ、河合優実くらいの地味さ出来る方が、、、

ああ、渡部建にならって、褒めよう。
 
動画観てても、褒めと質問のコンビネーションがほんとに凄い。
TVみたいな見え透いた予定調和じゃない会話。 
 
 
で、浅井リョウと河合優実の組み合わせを褒めます。

もう、河合優実の高校生はこれで最後だろうなぁ。
4者4様の卒業を描いて、大抵の日本人にはどれか刺さる。
個人的には、中井友望に共感。
図書委員だったし。同級生とは距離感じることもあるし。
 
演者は皆上手いし、演出もベタに落ちないで、
微妙な心情を表現することに成功していた。
ほどよく観客を信用した作り手の姿勢が静かな感動を呼ぶ。
なんで死んだのだろうか、古い友人のことを思い出したりもした。
中川監督もイイし、何よりプロデューサが偉い。
この座組出来た時点で勝ち確。
 
褒める一方だとあんまり、書くことないのだけれど。
このくらいの距離感のこのくらいの規模感の映画、コンスタントに観たい。
 
いろんな思惑が混ざらず、ほどよく観客を信用してかつ、
奇をてらわない。あざとく無い。
まっすぐを生み出す力はまっすぐでない。
 
よくぞ公開してくれた。
そんな満足感に満たされていました。
  
 
褒めるって難しい。

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