是枝裕和「怪物」テクニックが凄いのと感動は別。競技用漫才が面白くないのに似て。


↑観てきました。ネタバレ全開でゆきます。
これだけの役者さんを揃えての演技、子役の使い方の上手さ、
美しく格調高い音楽、天国のような地獄の映像。

素晴らしく堪能したのですが、うーん感動はまた別腹。
めんどくさい構成をまとめ上げた脚本はまあ、
賞は取るべく作られているけど、感動作という世間の評価には違和感。
 
キャッチーであざといので、手前で興味は引くのだけど、
必然性に乏しい点が3つ。
1.LGBTでなく友情でよかったのに、
2.「藪の中」方式でなく子供視点オンリーでよかったのに、
3.ノーラン的時間操作は、謎が担任陥れる意味あんのか?
 
 
1.LGBTでなく友情でよかったのに、
 中村獅童は仕事のストレスのはけ口に子供を虐待してる。
 性癖的な問題でなくても、理由はなんでも見つける。
 本来は ”ダメな大人に囲まれて生きる子供にとって日本社会は生きづらい”
 で、よかったのに、 ”性的マイノリティだから生きづらい” 
 では、
 テーマが今どきの時流に乗るって賞狙いのあざとさしか感じられない。
 
  
2.「藪の中」方式でなく子供視点オンリーでよかったのに、
 安藤サクラ母親視点では、自己保身丸出しの学校側をカリカチュア、
 担任の瑛太視点でも、母親はマトモでモンスターペアレントではない。
 田中裕子校長と以下取り巻きはクソなまま。  
 これじゃ対比にならないので、視点変える意味ない。
 特に比重が子供視点に偏るのだから、子供視点オンリーで差し支えない。
 考察とか盛り上がるだろうけど、所詮ギミック。技工のための技工。
 
 
3.ノーラン的時間操作は、謎が担任陥れる意味あんのか?
 結果を先に提示して、その謎ときを時間を遡って後から。
 タランティーノやノーランがやる時間操作系を本作もやる。
 見ずらい。
 担任を陥れる動機が無いので、なんだかな。
 そこは、いじめっ子に仕返しでないと、必然性がなさすぎ。
 ”男らしく” だけじゃ取って付けただけ。
 いろいろ餌撒いているから、
 考察とか盛り上がるだろうけど、所詮ギミック。技工のための技工。
 
 
ま、演技も映像も音楽もハイクオリティーだから満足感はあるけど、
これで感動しろといわれても、ちょっと微妙。
 
 
個人的には、自分の小学校時代思い出したけどね。
(元)親とか、2年生のときの担任とか、
どこかで殺す方が、いっそまっすぐな生き方だったかな?
そう思わんでもない。
 
殺意を理性で制御するのでなく、そこは感情に従うのが正解で、
それが嫌なら殺そうと思わないでいられる精神でなければ。
 
主人公達の反撃すべき相手は担任の瑛太じゃない。
自分に危害を加える相手と戦うべきで、
 ”ルクセンブルクに爆弾を落とすな” で、
敵と戦え、中立な相手に被害を出すなよ。
 
閑話休題。
 瑛太は暴力教師なのか? という謎を提示して、
 実は、嵌められてました。というフリオチがやりたいだけ。
 
 ”何故少年たちが嘘をついたのか?” を解釈する考察班は、
それで楽しいかもしれないが、
所詮、サプライズのための仕掛け。それ以上の意味がない。
エンタメのストーリーとしては小手先の興味。
 
児童虐待、小学校のいじめ、どちらも素材として配置しただけ。
「藪の中」方式やノーラン的手法に頼って、興味を引っ張る。
それを今どきな性的マイノリティーでお茶濁されてもな。
 
ストーリーもテーマ性も弱い。ので、
エンタメとしては、モヤッとしてしまう。
社会派というには浅さが目立つし、
巧いだけって、競技漫才と同じ鑑賞後感。 


いや、アメリカのリベラルだって、そうとうキ◯ガイでしょ。
トランプ大統領が当選したとき、結果が気に入らないからといって、
彼らの言葉の汚さには良識は微塵も感じられなかった。
 
一見綺麗なお花畑だけど、一皮むけばねぇ。
自由に映画作りできるポジションの人が迎合せんでも。
左派系の思想の持ち主であったとしても、これはどうだか。
もうちょっと丁寧に、
 ”クズな大人にぐるり囲まれる子供の生きづらさ” 
を描いて欲しかったな巨匠に。 
  
 
時代は違うけど、子供心に痛快でしたよ。

”偽理解者の詩人” 良いフレーズでしたね。
 
思い出してしまいました。
あーあ、友情物語でよいのに。
そして、物語がちゃんと面白かった。
 
 
時流に乗って賞取りにゆく。大人の聡くて薄汚いところ。
まあ、当てにいって狙いどおり当たるのですから、
その精度の高さを褒めるべきですよね。
 
「エブエブ」もそうでしたが、
繊細な才能が失われてゆくようで、映画の内容より悲しい。

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