単純な話を複雑に撮る「アフターサン」前提を疑う訓練をサトマイから学ぶ

絶賛とはいかない。「アフターサン」

”子別れ”は王道でベタ、素材のままでも感動する人はする。
ごちゃごちゃ技工を凝らす必然性が見当たらない。
もうちょっと前評判を疑えばよかったか?
 
わたくし達は、前提を疑わない洗脳を幼いころから受けて、
日々それが継続されている社会で生きている。
だからこそ、”ぬけがけ”の効果も大きいので、悪いことばかりでもない。
タッキーみたいに。
 
 
遅れ馳せながら、劇場で「アフターサン」観ました。
ストーリーは至ってシンプル。
 11歳の娘と母とは離婚した31歳の父とのバカンス。
 空港での別れが今生の別れだった。
 父の年齢になって、当時のホームビデオを見直しながら回顧。
 当時の父は精神的にも経済的にも問題を抱えていたと今は分かる。
  
 
連想したのは西原理恵子と義父のエピソード。
 彼女が6歳のとき母の再婚相手は、案の定ロクデナシだった。
 事業に失敗しギャンブルに明け暮れ、たまに家に帰ればDV。
 しかし、西原理恵子にとっては、良き理解者、支援者であった。
 ふらりと家に現れた父に、大学受験のため上京すると彼女は告げる。 
 彼は励まし、親子は手を振って別れる。
 大学受験の前日、義父は死を選んだと娘は東京で知る。

「毎日かあさん」より前の連載で読んだのだけど、
書籍になってないのか見当たらない。↓これにも同じエピソードがあるが。

 
  
それはさておき、
「エブエブ」以来、アカデミーもA24も信用できない。
そんな昨今、こういうの流行りなのかな。是枝監督の「怪物」もそうだけど、
 必然性なくHGBT匂わせ乗っける、それから、
 ムリにでも複雑に編集して、”謎”を作ろうとする。
 技工の為の技工。
 
涙が止まらないという絶賛も多いのだけど、
普通にお話進めても、感動は変わらないだろう。
小津安二郎テイストに染まるなら「東京物語」のようでいいじゃん。
凝った映像表現と、担々とした物語の運びはアンマッチだと思うよ。 
むしろ、余韻を殺している。
 
せめて、
 時系列はムリにいじらずに、
 娘視点の回想とホームビデオの映像だけで構成して欲しかったな。
それで伝わるんだし、
ぐちゃぐちゃコネてないで、さっさとシュートしろよ。無駄。
お取り寄せの豆腐に、ジャブジャブ醤油掛けられた気分。無神経。
素材が良いだけに残念でした。
 
そこで漸く、酷評を見つける。

なんかホッとするのだけど、
無駄にコネるなという憤りより、自分が分かるかどうかが評価軸なのがやや微妙。
まあ、それはそれ、
映画系youtuberはアート系は避け、エンタメ向けな考察主流。
しかし、ミステリ作家さんは大衆芸能全振りなのに、果敢に芸術に挑む。
その意気やよし。
本人も教養と言ってるけど、
多感なうちに、どんなコンテンツに触れて来たかで決定的なことあるよね。
 
うーん、「怪物」は前半の坂元裕二パートを褒めるのか、

私には、わざとらしくてキツかった。
サブライズが安いという印象は拭えない。
そこまで、過剰な演技と驚かしを演出せんといかんか?
予定調和の範囲なのに所詮。
 
せめて、後半の是枝パートの「銀河鉄道の夜」を褒めたいところ。 
繊細さって表現では大事だと思うんだけどな。 
子役に演技させるの難しいし。
  
「エブエブ」「怪物」「アフターサン」過剰で安い作為が、
どうしても苦手だ。
 
 
ま、それは置いて、
作り手の選択が適切かどうか、
昔の映画評論はもっと論じた印象がある。
今のエンタメ考察系は、素直にすべてを受け入れた上で反応してるよう。
 
前提を疑わないように生きている。
それは多分、生存戦略という知恵だと思う。
 
 
しかしまあ、
わたくし達は、前提を疑わない洗脳を幼いころから受けて、
日々それが継続されている社会で生きている。
 

中野 「疑わないこと」が「いい子」として評価されるための一要素であったりもしますからね。
鴻上 教育そのものが枠組みを疑わせない構図になってますよね。
   校則でいうと、枠組みを疑って、
   ツーブロックという髪形が禁止になっている理由を聞く生徒が現れると、
   学校側は、「高校生らしくない」と答える。
   「高校生らしくない」とは何かと聞くと、
   「高校生らしくないことは高校生らしくない」と繰り返す。
   さらに「高校生らしくないとどうしてだめなのか」と理由を問うたら、
   ある教育委員会では、
   「因縁をつけられて危険な目に遭うかもしれないから」
   と答えていました。
   でもそれは実際、街に行って調べたものなのか? 
   サザエさんに出てくるタラちゃんだってツーブロックなわけで、
   タラちゃんは危険を感じているのか? っていう(笑)。
   枠組みを聞かれたら答弁できないことの上に、
   校則は成り立っているんです。

 
ある地方の大学教授が
 ”最近の若者は、吉良吉影のように目立つのを嫌い、静かに暮らしたい。”

という傾向が強い、との著作を発表した。らしい。
それを紹介されて私、
 その大学に進学するような学生なら、
 地方公務員になるか、地元の優良企業に就職するか。そんな進路選択なんじゃないの。
 目立ってもメリットないから、正しい生存戦略じゃん。
 丁度よいチャレンジの失敗が役に立つほど、世界は安定してないし、
 彼らの方が人生にカラい。
 
 チャレンジが必要な人生を選ぶなら、せめて一旦は東京に出るよ。
 若いうちに、いろんな経験しておくなら、
 ネットが発達したとしても、東京でいろんな種類の人に会っておくべきで。
 そういう選択するでしょ。

 
地方のその大学の学生という母集団に偏りがあるのだから、
”今の若者” というのは流石に主語がデカい。サンプリングが公正でない。
 
著者の主張を鵜呑みにしすぎ、前提を疑わなさすぎ。
 
紹介者に私はそう主張した。
「謎解き統計学 | サトマイ」チャンネルを思い出しながら、

チョコプラのTVでも紹介されたんだ。
 
  
日本人は外圧でしか変われないと言われて久しい。
ジャニーズの性被害も、
国際社会の力を借りて、日本の闇に光が当たり、
それでTVの既得権も解体されるなら、私は歓迎です。
なんで、思い出したかというと、
 
最近の若者は検索を”タグる”と言う、と池上彰が紹介してたが本当か?

なんでも鵜呑みにすんなよ。権威性という影響力かな。
そんなこと回答してた。
同時にここに来ての、タッキーの機敏な動き解説してた。
彼が優秀でないはずないもの。追い出した方が愚かだと思ってた。
所属のタレントさん達はむしろ被害者側だろうから、受け皿あるとよいね。
一方で、
ジャニーズ事務所は過去成功した手法にしがみつくのみ、
何処も同じ ”名は一代”、後継に有能な経営者は居なさそう。
 
ま、個人的に気になるのは様子見決めてるTV界隈への波及なのだけれど。
買えるものが見つかるかもしれない。
 
 
ところで、前提を疑った上で、「君たちはどう生きるか」期待してます。
彼が分からないというなら、老人は迎合せずに好き勝手やった可能性が高い。

特に、タイトルが内容と関係ないとミステリ作家さんは言う。
ならば、
 ”オレはこう生きて、もうすぐ死ぬけど、君たちはどう生きるんだい?”
という説教が分かりづらく表現されているのだろう。
    
砂守講師は適切に理解し客観性高い批評だと私は評価してる。
もうストーリーの整合性から自由なのだから、好き勝手やってください。
安いお説教されるとキツイけどね。
あなたも私も、電気消費してアニメ見るような同じ穴のムジナなんだし。
 
まあ、  
エンタメ系の人からは、概ね不評なので、
多分退屈しないで済むと思う。
来週くらいに客少なめな時間を狙って観にゆこう。
分からないときは、進撃の巨人のタキさんの解説を聞こう。
前提の解釈が間違っていないことを祈る。

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