「アリスとテレスのまぼろし工場」は「君たちはどう生きるか」の分からない問題ではなく、「SAND LAND」の高品質なのに爆死にも非ず、札幌ドームの事業計画の如く。

試写に招かれたインフルエンサーが宣伝しない!!と、
アニメ系youtuberが憤慨しているとの話題を見かけた。
「アリスとテレスのまぼろし工場」
評価は賛否両論で、客の入りは芳しくない。
作品のデキを確かめようと観てきた。
 
この方の意見が中立公平と、私は判断。

売る勝算があっての企画というよりは、
制作費の辻褄を合わせるための公開規模ではないか。
まるで、
新モードの札幌ドームの事業計画にも似て。
 
死者を鞭打つと、
「SAND LAND」とは違って、作品の完成度にも問題はあり、
さらに、賛否分かれる原因は、
「君たちはどう生きるか」のような、”分かる分からない” でもない。
そこは、はっきりさせておかないと。失敗学としては、
 
いかがなものかと?
 

振り切れてもいない、のに。刺さる層も狭い。 
この中途半端さを第一の敗因に挙げたい。

・ターゲティング
 子供向け、家族向けではない。
 大人向けでもない。
 思春期のドロドロと瑞々しさと世界の狭さに共感できればよいが、
 充分に成人してしまうと精神の幼稚さに白けてしまう。かも。
 
引きこもりやモラトリアムに共感できないと感動は厳しい作品。
 恋愛や近親者への感情だけで、社会は構成されてないんだよ。
 人道的モラルや善意を愛憎だけで塗り潰そうというのは精神の未熟。
という邪念がよぎると、共感に水を差す。
刺さる層はかなり狭い。
 
「君たちはどう生きるか」では、真善美。
人としてどうあるかというテーマに普遍性あるが、
古代哲学者の名を冠している作品は、うーん。
 
確かに、
引き籠もって、変化ない生活送っていても、
生きてはいるし、ポテンシャルを秘めているだろう。
とはいえ、
 
庵野秀明が勇気を出して告白したけど、
”気持ち悪い”と拒絶されるような、
振り切れたものは見せてくれない。

迷子は社会として保護しろよ。
オリジナルの世界での関係性は関係ない。
学校も運転免許も発行されるなら行政は機能している。
軟禁に近いネグレクトはコピーの世界では犯罪でないのか。
 
どうせコピーの引き篭もり世界は迷子と関係なく滅ぶなら。
現実世界の迷子はさっさと返してやれよ。人として。
モラルはないの? 
愛憎だけで世界は構成されていない。

  
・お話が雑だから、刺さる人を選ぶ
 設定は、
 「SonnyBoy」のパクリとも言える。
  プラス庵野秀明的宇部市的工場の風景。なぜ製鉄かは知らん。
  プラス京アニ放火事件。
 が、
 設定の謎で興味を引く訳でもなく。
 設定上の世界の成り立ちや運営の法則も練り込まれていない。
 説明されないのでなく、SE設定としての論理性はない。
 「SonnyBoy」では、
   勉強や野球といった能力で得られるものがリセットされ、
   新たに超能力がギフトされる。
   その先天的能力と得られる権限。
   いや、ルール優先という法の支配。
   さらに個人の尊厳とルールというとこまで描かれるが、
   次いでに、コピーであるという謎は、
   勘の良い少年のゲーム制作の過去によって解明されてゆく。
 本作では、 
 作者は愛憎以外に関心がない。だから描かない。描けない。
 
  当然、
   コップが落ちて割れる描写で、
   時間の存在や可塑性を表現するなどという、
  SFの古典名作のオマージュとか、
  世界の成り立ちや構成をセリフ以外で見せるような、
  客にサービスはしない。
  世界や他者に関心はない。
  だから子供のような大人しか出てこない。他は記号。
 
 
・説明しないからアート系という訳ではない。
 ビジネス文書なら、結論、結果から始めて、説明は後が正解。
 映画の演出がその連続なのは、興味が持続しない。
  主人公の絵の上達すら、結論が提示されるだけ。
  過程は描かれない。
  せめて絵の上達ぐらいセリフ以外で観せて欲しい。映画なんだから。
 成長や変化が無いことを洗わずために、
 紙芝居のような演出で一貫したとは思えない。
 作家性はあっても、表現の芸術性は低い。センスがあるとは思えない。
 監督としてはベタドラマの人。
 説明しなければ誰でもキューブリックに成れる訳じゃない。
 説明するときは全てセリフ。橋田壽賀子よりセリフ。
 
 
演出はベタで、分かりやすく。
人間的成長とか、社会性とはどーでもよくて、
一生ワンピース観てるのの、思春期版。
(成長しようとしたキャラは消えてゆくと描かれているが)
 
これで、刺さる人はそりゃ限定されるだろう。
さらに、”分からないからつまらない”すら生むのだし。
 
 
こんだけ観る人を選びまくって、
MAPPAの画力だけで、300規模公開は蛮勇。
民間版の札幌ドーム新モード。
 
「君たちはどう生きるか」とも「SAND LAND」とも、
事情は全然違う。
むしろ、「ギャラクシー街道」。脚本と監督の能力は別とか、
刺さったアニメファンは、
 「SAND LAND」と同じく高品質で、
 「君たちはどう生きるか」の”分からないから”と同列に、
着地しようとするかもしれない。 
    
いや、素直に認めよう。
 映画としての演出力と、
 SF的世界を構築して提示する説得力、
どちらも力量が不足している。
苦手を避け、得意に特化して勝負する戦略性があって、
作品のクオリティーを評価するのは、それから。
 
資質に見合う、
半径30mの領域の身近な関係性での感情の動きだけ、
丁寧に表現すれば、よかったのに。
 
ビッグバジェットの企画なら、ステークホルダからいろんな要求が飛んでくる。
それを取捨選択して、
捌きつつ作品の完成度を維持するのも監督の能力の一つ。
監督2作目で自分のスタジオでもなく。
荷が重いのは当然で、任命の方に問題がありそう。
  
  
経験浅い若手を登用するが育てず使い捨てる。
選手思いのコーチから辞めていくような、
そんな戦う集団にはならないで欲しいとは思う。
企画側の責任は直視しようよ。

新海誠だって、もっと小規模から始めたはずだよ。
クリエータの未熟をマネージしないプロデューサに問題ある。
そう結論づけた次第。 

カテゴリー: 書評、映画評など パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


*