それを”どんでん返し”と呼ぶのか? ミスリードの理合いと小説の芸「ミステリーのおきて102」「どんでん返し THE FINAL」

ミスリードしない”どんでん返し”をその範疇には入れない。私は。
それは”予期せぬ結末”(サプライズエンディング)ではあるが、大抵は、
デウス・エクス・マキナ”というか、ただの”ご都合”だったりする。
希に、真相のヒントがフェアに提示されてる作品もある。
クソと炎上することもある。
 
”逆転劇”がすべて、”どんでん返し”とは限らないし、
”予期せぬ結末”も、”どんでん返し”の手法を用いずとも可能だ。
私は”ミスリード”をちゃんとやってるものだけを”どんでん返し”と勝手に定義し、
その技工を評価するものである。
(”ミスリード”にも叙述トリックとそれ以外があるのだけど、それはまた別のお話。)
 
アイデアは大体出尽くしているし、過去の名人芸を超えるのは至難。
それでも敢えて古典に挑む、その意気や好し。とする派なのだけど、、
思いつきを無神経にプレゼンされると拒否反応を起こしてしまう。

”どんでん返し”がスゴいと言われる今風の小説を薦められて読んだ。
小説としてのクオリティに問題は様々あるが、それは置いておいて、
惹句が気になった。
 ”どんでん返しの名手”
うーん、

 そんなのお前の匙加減一つやろ!
とツッコまざるを得ない。取って付けたようなオチ。
もう突然ゴジラが現れて街を焼き尽くして全滅エンドでいいよ。
 
下手の典型にしか見えない着地だったのだが、
市場の評価は違うらしい。
 
ヒッチコックあたりで、どうやら”どんでん返し”は飽和した。
その歴史は無かったことになって、
どうやらプリミティブ(原始的)な物語の市場が、ゼロから形成されているらしい。
敢えて、オールドファッションドをやる作品↓はレアケース。

ヒッチコック風のスコセッシ。
 
伏線回収だろうと、ミスリードだろうと、
ヤルこと自体は難しくはない。
プリミティブ市場には、誤解がある。崇め過ぎ。
特に小説の場合、書き手と読み手の情報格差は甚だしく、
公開するものと秘匿するのを、100%書き手がコントロールできる。
絵だと隠せないこともある。 
 

作者が〝田中一郎は死にました〟と書いていたら、田中一郎は死んだと考えるのが当然であり、生きているのは困る。
だから、作者が読者をしてまちがった道に導き入れることは本源的にむつかしくはない。そう書けば、よいのだから……。
-中略-
結論を先に言えば、ミスリードのむつかしさは、導くことのむつかしさではなく、それがミスリードであったと読者に明らかになったとき、 ──ひどいよ、アンフェアだよ。理屈が合わないよ── と、読者にしらけさせないこと、つまりアフターケアのむつかしさ、なのである。

現実には、ミスリードだけは波乱万丈で、しかしアフターケアはいい加減、読者に気だけ持たせて、構造のもろいミステリーも、ないではない。楽なところで大暴れをして、困難なところではネグっている例と言ってもよいだろう。

原始市場では、ミステリーとして成立しているかどうかの基準も、
伝統文化に比べると、とてもユルい。

「推理小説は棒高跳びに似ている」
-中略-
助走から始まって、棒を入れる角度、踏み切り、体の伸ばしかた、ねじりかた、腕の使いかた、腰の浮かしかた、棒の離しかた……いくつもの条件をクリアしなければならない。
-中略-
察するに棒高跳びという競技は、いくつものクリアせねばならない条件を、少なくとも平均のレベルでクリアして、しかも一つか二つ、ずば抜けてよいことを具現したときに、すばらしい記録が誕生するものではないのか。一つでも平均以下があったら、決定的に失敗し、その失敗はだれの目にもわかるような無様なものである。
推理小説もまた、クリアしなければいけない条件をたくさん含んでいる。殺人の動機、殺人の方法、登場人物の性格づけ、アリバイの作りかた、隠蔽工作、さらに犯罪の見破りかたや絵解きなどにも工夫が必要だ。すべての条件を平均以上の巧みさでクリアして、しかも一つか二つ、傑出したアイデアを示したとき、天晴れ名作が誕生する。
一つでも失敗があると、作品そのものが成立しない。たとえば殺人方法に決定的な問題があり、「そんなことじゃ、殺せないよ」 では、ほかがどんなにうまくできていてもストーリイが成立しないだろう。

私だって「魁!!男塾」に整合性は求めないが、
プロットを成立させるために、
 キャラの言動がブレブレだったり、手段と目的が一致しなかったり、
 ストーリーが偶然頼みだったり、ご都合だったり、
プロットで楽しませるコンテンツとしては、
失格扱いせざるを得ない小説が、原始市場には多い。
楽しく騙されたいのだけど、読後にがっかりしか残らない。
 
不満が募って、↓ハウツー本も読んでみた、

テクニックは解説しているが、肝心なことが書いてない。
 読者の納得感への配慮が重要。
という、クオリティを決定してしまうポイントを説いていない、だけでなく、
ミスリードが成立するための理合い、本質理解が蔑ろにみえる。
 
↓これを文章でヤルんだよ。

マジックが成立するのは、人間心理を利用してるから。仕掛けが単純でも、
ま、Kilaさんは名人だけど、
原始市場の作品の多くは芸事が下手。
 
やはり、
作り手が上級者の技を喰らっていない、その経験に乏しい。
沢山喰らってこそ、体で覚えるというもの。

白川先生は達人だけれども、
物事には原理原則があり、人体構造を利用した理合いがある。
効果的な方向に力を作用させ、誘導して崩して、投げが決まる。
それが、達人の技。
 
原始市場は力任せのブレイキングダウン。
そんな中にも、辻村深月米澤穂信のような手練れが居たりする。
侮れない。ただし市場の評価は当てにならない。
 
 
そこで敢えて、全方位的に評価の高い↓銘柄をチョイスしてみた。

まだ、読み終えていない。
序盤からイライラが止まらない。
 イタコが相談者の職業を当てると、いちいち驚く。

「どうすれば、信じていただけるでしょう?」 
翡翠の眉間には、僅かに戸惑いを示すような皺が寄っていた。
「そうですね……。では、倉持さんにしたように、僕の仕事を当てられますか?」

  →事前に調べとけば分かることに驚くなよ、検証にならない。
   そもそも信頼できない相手に重要な相談すんな。
 
 殺人現場でイタコが窓の外の景色を当てて、いちいち驚く。殺人に驚け。

少し離れていて目を凝らさないと見えないが、お寺があるようだった。 
どうして、翡翠にはそれがわかったのだろう。 
彼女は、リビングにすら入っていない。

  →優先すべきを優先しろよ、それで”犯人に怒りを覚えた”とか、大概にしろ。
   つか、Googleが教えてくれること当てても、殺人を予見できない霊媒師は無益。    

 警部が第一発見者の探偵にベラベラ情報流す際に、意味の無い言い訳。

普通は捜査情報を一般人に話すことは禁じられている。何度かマスコミに勘付かれたこともあったが、あくまで非公式なものであり、こうして鐘場が香月の元を訪れるのも、勤務外の時間を割いてのことだった。

  →情報漏洩が非公式で勤務時間外なら免罪されるのかよ。
   仕事中に堂々と背任行為を決行するバカいるかよ。(ビンタ喰らわしてやりたい)
   そこは”警察が探偵に協力を仰ぐ”のお約束でいいよもう。
 
下手くそな印象操作はいらないから、違法は違法。無駄無駄。
さっさと、話すすめてくんないかな。ページの浪費。まるで情報価値が無い。
一言、”そういうリアリティラインの設定です!”でいいよ。
 
バカが馬鹿相手に書いているとしか思えない。
会話も、地の文も、合理性の欠片もない。
 
 
それでも、全方位的に評価されているのだから、
どっかで、逆転してくれることと、期待している。
 
しかし、なんにしても無駄が多いストレス溜まる小説だな。
ビジネススキル的には、
相手の時間を消費させることに配慮できない人は無能だけどね。
 
どの業界でも、
 買ってみようかな、と見込み客を前のめりにさせる営業。の一方で、
 早く帰ってくんないかな、とイライラさせるセールスも。
極端な技能2つアリ。
 

オレにこのペンを売ってみせてよ、原始市場。

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