完璧な物語(ヒーローズ・ジャーニー)には完璧なヒール役「アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち」「神話の法則を使った ストーリーテリング」「小さな会社のストーリー戦略」「小池一夫のキャラクター創造論」

つまんないのだから、パターンどおりにやればいいのに。
そんな作品に出会うことも最近はある。王道でいいのに。
既に、数多の神話からパターンが解析されている。
 
心を掴む物語の定石、それが”ヒーローズ・ジャーニー”。 
 「オデッセイア」が代表だけど、「西遊記」の方が馴染み深いか、
 別に旅は旅でなく、最強のチャンピオンと戦う「ロッキー」もあり。
 
皮肉なもので、
作り物でも面白くなかったり、心に響くものが無かったりするのに、
王道ストーリーがリアルタイムに現実に存在する。逆に。

ファイターズの移転決定までのノンフィクション。
実話はまだまだ途中で、前澤本部長たちの奮戦は第一部といったところ。
 
興味深いのは、札幌市長や市のスタッフにも取材していること。
ネットで見聞きするに、こんな完璧な悪役は居ない。


有能と無能、情熱と公金チューチュー、リスクテイクする民間とお役所仕事。 
見事なまでの対比。
”けしからん”悪役は、市民を国民を刺激してやまない。
ベタ過ぎるキャラ造形で漫画なら、編集にダメ出しされてしまいそう。
 
王道ものには、
 やむにやまれぬ出発があり、
 途中困難を乗り越え、ゴールに到達し、遂に帰還。
ストーリーはそんな起伏で出来ている。
キャラで大事なのは、主人公以外に、敵(障害)と味方と師匠。
 丹下段平や月影先生の役は、メジャーのスタジアム経営。
 北広島市や新庄監督が味方、
 敵は第三セクター札幌ドームと札幌市、
中でも、秋元市長のラスボスっぷりが素晴らしい。
本当は北海道全体の発展の為に、敢えてヒール役に徹しているかと勘ぐってしまうほど。
 

ヒーローの満たされない心の隙間に読者は共感します。ヒーローの傷ついた心を癒すための旅が、ストーリーに感動をもたらすのです。
-中略-
その傷が影響して世の中や社会に対して尖っていたり、コンプレックスを感じていたりして、その傷を癒すストーリーを描いてゆきましょう。

敵または対抗者は、ヒーローの成長の妨げとなる存在で、ヒーローの挑戦を引き立てます。敵または対抗者がいることで、ヒーローの使命感や勇気、困難を乗り越える意志が試される場面が設けられるのです。また、敵との対比によりヒーローの価値観や誠実さが際立つようになります。したがって、敵役はヒーローズジャーニーの中で欠かせない存在です。
ヒーローが敵を打ち倒すことで物語はクライマックスを迎えますが、その勝利はヒーロー自身の成長や変容を視覚的に示す大きな象徴でもあります。
-中略-
どんな物語にも対立構造を生み出す悪者を登場させることが、盛り上げる要素として必須なのです。

 
エスコンフィールドの盛況は、悪役あってこその完璧なストーリー戦略。

なぜ人間はストーリーにそれほど心を引かれるのでしょうか。答えは感情に訴えるからです。

注意しなければならないのは、商品情報はあくまでもサブでしかないということです。
メインは顧客・消費者が感じる価値であり、満足です。商品を購入することでどのようなメリットを得られるか、です。直接得られる、つまり一時的な満足ではなく、二次的、三次的な満足をしっかりと視野に入れておかなくてはなりません。

自社商品にブランドを確立するのは安定した売行きを保証するものといえます。そして、ブランディングにはコンセプトが欠かせず、そのためにはブランドストーリーが必要になります。
 
ブランディングにはいくつかの要素があります。ポジショニングやターゲット、コンセプト、パーソナリティなどですが、ここではコンセプトに注目します(ここでもコンセプトは大切です)。
コンセプトとは本来、概念という意味ですが、ビジネスでは「誰が、なにを、どうやって」と解釈します。誰がというのはもちろんあなたであり、なにとはUSPです。
USPとはユニーク・セリング・プロポジションの頭文字で、商品の特徴、優れている点、競合商品との差異を表します。これは大切なもので、自分でも曖昧だった点をはっきりさせなければなりません。

上場企業でも基本は同じ。
日ハム移転のニュースに触れる度、
”世界一のボールパーク”に一度は足を運んでみたいと、心動かされるものです。
新千歳空港に近くても、新札幌駅に新幹線が延伸しても、
ヒールが存在しなければ、JRの新駅構想も無いかもしれない。
 
  
ノンフィクションを読んでいる限りでは、
秋元市長は、
札幌ドームを出ていくことは避けられないと、途中で肚を括ったようです。
しかし、移転をどうにか札幌市内に留めたい。用地は限定されるが、、
実際のところ、
初手の段階で、日ハムに指定管理者をヤラせるしかなかったみたい。
無能だったからというより、その意思決定が許されないシガラミがあったのか。

天然芝で屋根付きで、建設や改修費用は税金頼み。
Jリーグ機構に広告収入も放映権も持っていかれる。
年間20試合の開催で、1試合あたり1万人程度の入り。
天然芝は市民に解放せず、メンテにもホバリングにも費用莫大。
ペラペラな人工芝も天然芝ホバリングのため。
アウェイ側は売店も開けられず、
地元のファミリー層は、ガラの悪いネット裏が居るスタジアムには行かない。
 
新モードや黒字計画までが無能露呈であっても、集客の結果で勝負着いた後は、
どうやら悪役が交代しそう。
日ハムが出ていかざるを得なかったのは、
雁字搦めだった札幌市ではなく、真の黒幕がいる。
第二章のスタートには相応しい展開になりそうです。
 
さらに、
公共性も収益性も疑問なJリーグが悪役になれば、
日本のスポーツビジネスは大きく変わりそう。

川淵三郎がサッカー側というのは無理があると思う。
正解がどうという話でなく、ナベツネさんは見事なヒール役。
もうちょっと調べたい。

あのときは、 
万年最下位で、球場はガラガラでも広告塔だからヨシ。という親会社も存在した。
Jの理念はそのカウンターだった。
今は皆、問題点はあっても球団は努力を重ね、そんなオーナーは去った。逆転した。
よっぽどプロ野球は地元密着で貢献してる。明治安田生命のよりも。
 
とりあえず、
Bリーグでは、3期連続赤字や債務超過でリーグ除名ということは知っている。
儲けられないチームは存続できない。
浦和レッズですら本当は儲かっているのか怪しいリーグとは対照的。
アントラーズですら身売りした。
  
 
閑話休題。
物語には力がある。
そして悪役による対立構造がなければ、物語は成り立たない。
 
なのに何故、作り物の悪役の方が駄目なのだろう。
最近、市場調査も兼ねて読んでいる↓。

第1話は読んだ。アイデアはいい。
小説の上手い人にストーリー、演出、文章は担当して欲しかった。
主人公はイタコと探偵のコンビで、癒着気味の警部がサブキャラで登場。
 イタコの能力いちいち疑うムーブがウザ。
 探偵と警部はもっとドライで距離あっても成立する。(無理に違法にしなくとも)
 イタコのシステムの説明はもっと簡潔でいい。
 探偵はもっと理知的でないと対比が弱く、子供っぽい同じ人ばかりに見える。
 会話は説明的過ぎて、キャラの書き分けも弱いので、やり直して欲しい。
 ストーカー匂わせでなく、窃盗犯にミスリードして、真犯人は別の方が適切。
 イタコは直感で、犯行時に現場に行けと探偵に連絡するも間に合わず。なら有能だが、
 
なによりも、
真犯人の葛藤と、被害者の「高嶺の花子さん」ぶりをきちっと描けば、

いい余韻のラストになったと思われ、惜しい。

第2話はいきなりキツイ。

横たわる女に嚙ませた猿轡を外してやる。「お願いします。助けてください……」

ホントに会話の下手な人だ。リアリティが無い。
そこは、”恐怖に引き釣った表情で、声も出ない”じゃねぇの。

だが、それでももし、自分の存在に行き着く人間がいるとしたら。 
それは警察組織ではなく、それこそ超常の力を持った人間に、違いないだろう。

あまりにダサい悪役の独白。ここまでアレなのは私も流石に経験が無い。
主役がイタコなの知ってか知らずか、自信家であって構わないけど、
その説明は必要なのか? 読者を馬鹿にし過ぎじゃないのかな。
ちょっと恥ずかしい。
対比を描くべきなのに、キャラすべての思考が作者と単一である。
かみしもの無い落語のような語り。
 
  
世間の評価は高いので、きっと逆転してくれる、
これは乗り越えるべき困難だと信じていても、それでもなお、
読んで消耗が激しいので、物語の御大に泣き付くことにした。

主役と敵役の二人には、あんまり自分から喋らせちゃいけません。「俺は強いんだ。空手三段で、剣道五段だ!」「俺は正義感が強いんだ」と、聞かれもしないことを自分からベラベラと喋る主人公は格好良くありませんし、「俺は魔界の大王様も一目置く魔界の将軍の一人で、炎を操ると向かう所、敵無しなのだ!」などと自己紹介する敵役も同様に、小さく弱そうに見えます。 
しかし、読者には伝るべき情報を伝えなければなりません。 
そんな時、ナレーションの字幕を使うのはあまり良い手ではありません。 
ではどうするのか。
もう一人、主役や敵役の周りをウロチョロしている、お喋りな奴を創る。

犯行の描写で悪役登場まではありとして、
明晰で用意周到な犯人なことは、捜査側(イタコの霊感でもよし)に語らせないと。
サイコパスなシリアルキラーは、吉良吉影ほどキャラ立ちしてなくてもいいけど、
演出があまりに原始的過ぎる。
 
 
とはいえ、私だってガキの頃は、
”平吾、これも仕事だ” とだけ諭す、寡黙なヒールのカッコよさは分からなかった。

分からなくても、
熱狂にはそれだけのバックボーンがある。

その物語が《正義》を成す物語なら、主人公は「《正義》という役割を背負った存在」ですし、《夢》を叶える物語なら、主人公は「《夢》を叶えるという役割を背負った存在」なのです。 だから、もう一人、「正反対のキャラクター」を創ってください。 
キャラクターは、二人で考えると創りやすいのです。《正義》を成す主人公には《正義》を邪魔する敵役のキャラクターを。
《夢》を叶える主人公には《夢》を叶えるのに障害となる敵役のキャラクターを。 
そして、主人公には《弱点》と親しみを覚える《オーラ》を、敵役には《欠点》と恐ろしさや近づき難さを覚える《カリスマ性》を付けて。

 
「呪術廻戦」に限らず、

そして、世界に悪役・敵役を創ることによって、「主人公が何をしていいかわからない」という状態から脱することができます。 
その悪役、敵役が「何か」をすることで、事件が起こり、物語が始まるのです。

キャラに魅力無いと物語がつまんないのは、私が昭和を引きずっているからでしょうか。
人間心理は普遍の法則があると信じるのだけど。

カテゴリー: ファンダメンタルズ, 書評、映画評など パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


*