吉村昭「雪の花」で予習。小説は手に汗握る社会派。映画は賛否分かれる。らしい。 

映画館で観ると決め、先に原作を読んだ。

静謐な筆致で描かれる主人公の志は、読者の心揺さぶる。
物語は、
天保8年、冬の福井藩から始まる。
疫病が大飢饉と併せ猛威を振るう描写。
 天然痘の治療法はまだ日本では未開、
 主人公は行脚の末、蘭学経由で種痘を知る。
 役人達の保身と無理解を乗り越え、種痘の入手を許される。
短い枚数の内に、主人公の人格と当時の困難が伝わる。
試練はまだ終わらず、
 京都にて、出島から入手した種痘の培養にやっと成功するも、
 子供に接種をリレーさせて福井までワクチンを運ぶより手段は無い。
 免疫完了する前に、次の子供に接種せねば。
 京から冬山を越える旅は間に合うのだろうか、
 果たして種痘は福井に届くのか? 
物語の佳境、読者は結末知っていても、手に汗握る。
 しかし、種痘が福井まで届いても、メデタシとは行かず、
現代に続く社会派の問題提起。


 福井藩で接種が認められたが、デマや妨害と困難は続く。
 医師たちの献身的な活動の末、最後は天然痘の鎮圧に成功。
 
文章で読めば、並々ならぬ緊迫感。
しかし、映像では多くの時間は地味かもしれない。
以下の三部構成で、2時間と想像される。見せ場はあるが、、
 種痘を京で培養するまで
 福井へ決死の冬山超え
 殺されかける普及活動
 
映画界が、あの界隈を敵に回すような内容やるのかも気になる。
反ワクチン運動は出てこないかもしれない。
福井に種痘が届くまで描いて、顛末は文章の説明のみも考えられる。
単に偉人の感動物語で終わらせてはいけない問題であるが、
好評は主に、
 感動に満足とあり、逆に深刻な問題への言及はやや少なめ。
一方で、
 緊張感が伝わらず、退屈してしまうと不評も見受けられる。
  
 
映画のデキは如何に?
映画系youtuuberで賛否分かれると知った。

映画業界の方は酷評動画に憤慨していた。
 気合の入った画作りで、映像から受けるものは大きいと言う。
 画の凄さが伝わらない観客もいるかもと、批判を自ら和らげてはいた。 
一方で酷評youtuberは、
 説明不足でストーリーテリングが下手、だから駄作だと主張。
確かに、無知を前提に理解を得なければ、困難は伝わらない。

映画化は成功したのだろうか?
 単に観客に読解力が無いだけなのか、
 それとも作り手のテリングが下手なのか、
語りの稚拙は、ストーリー自体の良し悪しとは、また別物。
興味が湧いた。
   
小説を読んでみたところ、
 種痘の基礎知識を細かくは説明してはいない。が、
 文章なので、最低限のことは分かるように書いてある。
 困難な綱渡りを繋いで、漸く天然痘退治が成ったと知る。
 途中はハラハラもする。
 偏見は現代の方がむしろと、考えてしまったりもする。
 
まあ、百聞は一見に如かずである。休日に観てこよう。
 
 
酷評派に対して、
”いくらなんでも”と読解力に疑問を感じない訳でもないが、
原作を読んだ後では、何とでも言える。
医療ものの場合、
全くの専門への無知を想定した上で、上手に基礎知識を与えなければ、
観客を誘導することは出来ない。 
ここで失敗しては、退屈させてしまう。
 
役者陣の演技には、誰もが太鼓判を押す。
お金も掛け、過酷ロケの中、撮影したことは予告編で分かる。
成績が伸びないのは、ストーリーへの不満が多いためと思われる。
盛り上がりに欠ける、種痘への説明不足など。
個人的には、
松坂桃李の高身長が画的にノイズ、という点も気になる。
 
 
小泉監督の過去作品では、
峠 最後のサムライ」を観ている。

 ダイジェスト感強く、小説未読では役割不明の登場人物が出てくる。
 また、現代の単語が微妙に入り乱れるので、言葉遣いが気になった。
本格派の大作なのは共通で、弱点が共通でないことを祈る。
 
 
貧乏性なせいか、
 原作未読のため、理解が追いつかないのは、もったいない。
そこは、
 既読のため理解は出来るけど、
 作り手のプレゼンが下手だと、主張出来たい。
 
週末は、真面目過ぎる映画を観に行こう。

中島美嘉は歌下手と酷評された時期がある。
物語を知っているかどうかで、感じ方は全く違うものと、私は理解した。
 
 
2025.02.06 18:00現在
20MAが抵抗線として機能。
いろんな事あっても、株はドル円ほど動かない様子。
今週はまだレンジの範囲内と想定している。

 

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