衣装・美術・演者は素晴らしい「ファイヤーブランド」フェミと言うにも主張が稚拙。 チューダー朝の予習は「セシルの女王」よりyoutubeで済ます。


 世界史の教科書から、そのまま抜け出したような映像、
 暴君に扮するジュード・ロウの怪演。
それだけでも、スクリーンで観る価値はあると判断し、決定。
 
しかし、よく日本公開まで漕ぎ着けたものである。賞も逃した、このマイナーな素材で。
チューダー朝の中でも、名前を列挙されて終わる程度の人物がヒロインとは。
 
私だって、イギリス史に詳しい訳じゃないし、
今からシェイクスピア読むのはかったるい。 
漫画なら、エリザベス1世がヒロインで丁度よいの↓有るのだけれど、

(6巻くらいからが該当の時代か。)
まずはもっと簡単に、基本知識を入れたい。
 
ヘンリー8世と6人の妻↓など予習。ウィキペディアも参照にした。

・正室の子にしか王位継承権がなく、かつ男子が望まれる
 古今東西、好色な王は枚挙にいとまがない。が、
 当時のヨーロッパの特殊性か、宗教的な影響が色濃く、縛りがキツイ。

・お妃たちは地味で若くもない有能
 ファーストレディの条件は政治的理由の方が強そう。
  ローマやスペインと距離を置くこと、
  国内の改革派勢力を味方にすること、
 もっと若くて美人を選ぶことも可能と思えるが、
 意外と外見より能力重視の人選。

・世継ぎに恵まれない、好色にも関わらず
 梅毒に罹ってしまったこと。
 当時の医療水準の低さ、英国の衛生環境の悪さ、
 或いは、暗殺も有ったかもしれない。

・妃の交代は政変。内部権力闘争でもある
 離婚問題を期に、ブレインが失脚してゆく。
 トマス・ウルジー、トマス・クロムウェル、(最後は漫画の主役ウイリアム・セシル)
 が離婚・結婚問題に連動し、国家デザインを確立しつつ、
 次の結婚で失脚し、実質的政策決定者が交代してゆく。
 
 
時代は日本では、戦国の最初期、今川が隆盛を極めた頃。
戦国から徳川幕藩体制への準備期間が安土桃山であるのに似て、
チューダー朝は、
 薔薇戦争終結のどさくさで興り、
 大英帝国への初期準備期間。
 中央集権、富国強兵、政教分離と近代に向かう。
 一時ブラッディマリーのより戻しがあるも、エリザベス1世の黄金期。そして断絶。
 スチュワート朝で連合王国の強化。
 その後の、栄光と没落の歴史を我々は知る。
  大航海時代、議会制へ権力の移行、東インド会社、産業革命、
  アメリカ独立、2度の世界大戦、アメリカへ覇権の移行。
 
ヘンリー8世は秀吉にも似ている。
 怪しい家柄から天下人まで登り詰める。
 有能なブレインを重用する優れた政治家。
 比叡山焼き討ち(信長だが)など既存の宗教勢力を封殺。
 検地刀狩りなど安定的な中央集権を目指す。
 好色だが、世継ぎには恵まれない。
 秀次処刑など用済みなら無慈悲。
 朝鮮出兵で国家財政を危うくする。
 利休切腹など、有力な人材を自ら失ってゆく。
 晩年は孤独、五大老に政治を託すが、豊臣家断絶。
もっと野蛮で残虐、生産的で合理的。
イギリスというか、近代資本主義そのもののような風貌。
この情報革命の時代において、
 トランプがヘンリー8世に、
 イーロン・マスクがトマス・クロムウェルにと、例えられるのは、
浅薄な誹謗とは無関係の、歴史の必然があるのかもしれない。 
 
 
それはさておき、
史実を無視した改変も目に付くと、評判を聞く。
暴君をかわし、巧みに生き延びた女性を描きたいのであれば、
こちら↓の方が興味深く、実際の勝利者ではある。

美貌は本当は大した問題ではなかったはず。
悪臭というが、もっと性的なものではないかな。
子供を作れない理由を打ち明けられた。そんな想像が浮かぶ。
後継者が病弱なエドワードと女子のみでは、生殖能力は最優先事項。
そこで誤算があった。
 それも巧みに利用して勝利を掴んだ。ブスの汚名と引き換えに。
それはそれで、目の離せないドラマだ。
最後の王妃↓は結局、改革派派閥の一味に政治的に利用されただけ。

トマス・シーモアは最初から、
エリザベスを担いで簒奪する目論見だったのではなかろうか、
女性の自立ものにするには無理筋。 
  
 
そんなリベラルの断末魔は、
ディズニーでヤってくれと願う。格調高い史劇でなく。

美人で人格者の女王が、邪悪に描かれた邪悪を退治のクエストでいいと思う。
あるいは、
 「白雪姫」の強引な改変ではなく、
 「女盗賊プーラン」的なオリジナルをヤればいいのに。
私たちは帝国の落日をネットの評判で知る。
  
 
予習はこの辺にして、週末映画館へ。
期待を下回った。
これは私の知識でなく、作品の問題と判断。
理由は以下。
・キャサリン・パーでは主役は荷が重い
・無理な主張のため、ドラマが退屈
・衣装美術の割に撮影が今ひとつ

その前に、
予習はヤマを外してしまったので、youtubeで復習↓。
 
アン・アスキューという物語の重要な要素が抜けてました。
背景
 国教会は、カソリックに反旗を翻した、プロテスタントとはいえ、
 この時代はガチもんの急進派を許容せず。危険視していた。
 (実際、後の世ではピューリタンの手で、王は処刑される)
アン・アスキューとキャサリン・パー
 王妃は急進派の旗手に好意的で支援もしたらしい。
 危険思想の活動家と目されたアン・アスキューは、
 ついに異端を理由に保守派主導で逮捕されるが、
 拷問を受けても口を割らない、仲間を売らない。
 最後、女闘士は火あぶりにされるが、6番目の妻は嫌疑から逃れた。
   
 
では、感想と評価を。
・キャサリン・パーでは主役は荷が重い
 フェミニズムを啓蒙したいのであれば、 
 いっそ、アン・アスキューを主役にすればよいのに。
 それはそれで、いくらでもドラマ作れるのに。拷問は描かない。
 
 トマス・シーモアの描き方にも不満。期待外れ。
 ここでは、野心の弱い臆病者にされてしまう。
 本来なら、
  自らの手駒である王妃を庇い続け、
  暴君の死後は彼女と結婚し、自身の政治権力に利用。
  更にエリザベスを誑かし、簒奪を狙い、用済みの妻は暗殺。
  しかし反乱の計画がバレて処刑される。
 そのくらいは描かないと。本作は史実よりつまらない。
 
 キャサリン・パーでは主役には弱すぎる。 
 ヘンリー8世やエリザベス1世、散々描かれた主役を避けるにしても、
 ドラマチックな人物は他にもいる。
 
 
・無理な主張のため、ドラマが退屈
 より致命的なのは、
 ”男と戦争の時代が悪い” という主張のため、
 無理な歴史解釈が拙すぎる。
  王の死後、キャサリン・パーの運命は描かず、
  女王であるブラッディマリーの暗黒にも触れず、
  エリザベスの黄金期が ”男と戦争の時代” ではない。と主張するが、
 笑止千万。
 むしろ、
  女を捨て、偉大な王として生きたからこそ英国は繁栄した。
  スペインとの海戦に勝利して、後に海洋覇権国家の地位を奪った。
 フェミニズムと言うにも、お粗末過ぎる主張。
 エンドロールの趣味の悪さも相まって、最後は呆れてしまった。
 こいつはダメだ。 
 
 いくらでも優れた人間ドラマに出来る素材なのに、
 ブラジルの監督がシェークスピアでなくとも。
 これじゃ優勝は無理、いくらプレイヤーとスタッフが優秀でも、
 監督は交代した方がいい。(ザキオカも苦言)
 賞を逃すのも、当然と納得した。
 
 
・衣装美術の割に撮影が今ひとつ
 衣装、美術は凄いのに、撮影が残念。
 照明のせいなのか、機材が高性能でないのか、画面が暗い。
 自然光だから、無理に飛ばす必要はないけど、
 コントラスト付けて、もっとビビッドに映すべきでしょうね。
 スクリーンで観てる割には平坦で、画の魅力が弱い。
 
 
脚本と監督と撮影以外は、素晴らしいからこそ、残念。
わざわざ映画館で観るべきかと問われるなら、
衣装・美術・演者に惹かれるのであればと、答える。
若干の敗北感を味わっております。
 
来週は逆に、
ベルリンで主演女優賞を撮った、仲間を売る物語「ステラ」を観ようかな。
 

秀吉をも演じた名優は、実は冷酷な暴君だったとの噂。合掌。

ヒアノは弾けている。もとい、
 
阿久悠作詞と知り、J-POPとは違う日本語の巧み。
シェイクスピアの英語までは分からない。
 
 
2025.02.15現在
インフレ抑制のため利下げなど出来ない。らしい。
関税は掛ける。日本にも。貿易には打撃。
日銀はインフレ対策からまだ利上げしそうと見る。
ドル高に向かうのもつかの間で、
日本株安の方向感が出て当然と思っている。
とはいえ、まだまだレンジの範囲内。上昇が否定されただけ。 
月曜からは、 
20MAを割り、-2σまでの間で、一旦積極的に利確する予定。
-2σでまた支持されるなら、ゆっくり買う。
逆に更に下落ありそうなら、また待つ。

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