書評「最終退行」 池井戸潤が苦手な訳が分かった。

私は池井戸潤苦手だ。
テレビの半沢直樹は最初の5分ほどで挫折した。
その理由も書くけど、この人の正義自体が嫌いなんでしょうね。
それと、勧善懲悪にするために、犠牲になる整合性が、、
そこは犠牲に出来ないよ。
まあ、組織の人は虫のいいこと考え過ぎで。そこに共感の源泉があるのかな。
 
 
ども、ホーチミン帰ってきました。様子は先ほど書いたとおり。
http://sanpome.net/?p=2100
 

で、池井戸潤苦手なんですけど、例えば、半沢直樹の冒頭。
 
如何に中小零細とはいえ、F1から発注あるほど独自技術あって、
社員のモラル高く、工場は清潔。経営者も信念の人。
仮に資金ショートするようなことあったとしても、
最後に頼りにするところが、都銀かよ。

いきなり、社員路頭に迷うんだよね。
吸収合併の話もないんだろ、ワンアンドオンリーなのに。
経営的によっぽどの失敗したんだろうけど、どんな失敗?
それ明かしてくれないと、感情移入無理。リアリティない。
 
でも、それはスルーして、
絵に描いたような末期の会社への融資と、対比させるとこから始まる。
 
 
理不尽さだけを描けばいいのだろうか、
経済は理不尽だけど、理由のない滅亡はないよ。
共感得るために、原理原則スルーし過ぎじゃねぇの。
 
 
この正義感の根底には、根拠無い安心感が前提にあるじゃねぇの。
そんなもん、最初から無いんだよ。
だから、人は平時からリスクマネージメント考えるんだろう。
 
 
という前振りで、この本読みました。

じゃあ、何で読むんだと聞かれると、
空港の待ち時間で丁度よいかと、たまたまカオサンの古本屋で見つけて。
と答えてしまう。

内容は。
(以下、完全にネタバレです。)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
A: 銀行会長(悪役)が
  ゼネコン絡みで横領したカネをM資金探索に利用してマネロンしようと企む。
  はみ出し者の銀行退職者含む宝探し一味は銀行会長一派を出し抜こうとする。
  両者の駆け引きが展開される。これが本線のストーリー。
  副支店長の主人公はこれに気づく。最後ははみ出し者に加勢。会長はツメが甘い。
 
B: 副支店長の主人公が支店長(悪役)に貸し剥がし関して濡れ衣着せられる。
  支店内での主人公の不倫と家庭崩壊も並行する。
  C(後述)からの協力もあり、復讐を遂げる。
  左遷先で不倫相手と仲良くするという大円団。支店長は詰めが甘い。
  
C: 銀行会長派は主流であるが、冷や飯食わされてる反主流もいる。
  最後は反主流派がAの悪巧みを暴き、痛快な逆転劇。
  反主流派は情報入手のため、主人公と取引する。
  主人公に便宜図る後輩が反主流派だがさほど活躍しない。
  
  
という構成で出来てる。
微妙に複雑だ。
Bは要らないと思う。

詰めの甘い会長にせず、最後まで両方の駆け引きを中心に据えたらどうだったろう。
面白いエンターテイメントになる可能性はあるんじゃないかな。

ただ、そうすると、はみ出し者が主役のピカレスクロマンになってしまう。
池井戸潤は組織人の悲哀を描かねば気が済まない人である。
そのためにBを挟んだのだろう。
 
 
Bは、とにかく主人公に共感できない。
支店で中小企業向けの融資畑一筋は出世の本線ではないらしい。
証券業務がやりたかったと愚痴る。
いや銀行は金貸しが本業だろ。何言ってんの。
手数料商売なんて、知れたものだし、なら最初から証券会社行けよ。

融資で審査や資金調達のノウハウ積んで、
ファンドのマネージャかなんかに転職すべきでしょう。
 
今でしょの林先生は入社してスグ長銀破綻見抜いたというけど、
腐った組織いやなら、とっとと辞めろよ。自己責任で。

転職は、住宅ローンがー、とかブランド志向の妻がー、とか、
知るかよ。
住宅ローンという悪魔の契約したのも、
結婚という地獄行きのキップ買ったのもオマエの意志だろ。
 
で、不倫しといて、妻に裏切られたとか、
オマエが先に裏切ったんだろ。なに寝言ってんの。
 
まあ、あまり人として魅力感じない、つまんない人。
で、悪役の支店長なんだが、

出世と保身しか眼中にないッって書かれる。
うーん、だけどさ、
出世と保身ってベクトルちょっと違うんだよね。
とにかく人物造形がおざなり。
 
小物の割には、ヤルことが大胆。
相手が自殺しようがどうでもいいと思うようなマキャベリストなら、
保身より野心あるだろう。
恨み買うようなことやるのは保身のマイナスだからね。
小物なら、もっと無難な選択するよ。
 
途中まで周到な人物に描かれてるのに、最後脇が甘い。
もっと、徹頭徹尾バックレてるハズ。
 
最後、善玉が勝ってもいいけど、
悪役ならチャント映えないとダメだよ。
死力尽くした攻防だから面白いのであって、

逆転劇の道具のようなご都合は萎える。
ご都合でもいいけど、最善を尽くせよ悪役は。
 
 
あと、Cにも絡むんだけど、
クライマックスがそこじゃないでしょう。

海に潜る必然性が何処にもない。
お宝は偽装すればいいんだけなんだから、手から離す必要ない。

見つかったことにするだけだろ。
それでバレるプランなら、潜ったってバレる。
せめて、偽物埋めとくとか、悪役側も最善尽くせよ。
 
 
本来のクライマックスは反主流派の暴露だろう。
そのためにも、後輩の使い方もったいなくないか?
むしろ彼が親切装って、諜報活動に暗躍して、
その真相が、最後にドン。
 
それだと、主人公が活躍する余地ないから、
悪役は詰めが甘いし、
反主流派は取ってつけたような動き、もっと地道に活動しろよ。日頃から。
 
 
大衆芸能なんだから、ご都合で構わない。
だけど、そのご都合の方向が萎える。

読みやすいから、最後までスラスラ読めちゃう。
それは作者の力量だと思うよ。
だけど、それをカタルシスする感性に違和感あるんだよねぇ。
 
 
悪役をちゃんと描いては、単純な勧善懲悪ならないから、
意図的にやってんのかな。
 
悪を描くことは人間を描くことだから、
それ掘り下げちゃうと、大衆芸能からアート方面に寄っちゃう。
だから、自ら禁じてるのかもしれないね。
 
 
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