井上夢人「ラバー・ソウル」 無能に救われるというお話でした <書評>

シャマラン監督観て、井上夢人って似てるよね。って改めて思ったので、
久しぶりにブックオフで手にとってみた。

ああ、懐かしい。うん、やっぱ似てるわ。
 
 
ヒッチコック調な話運び、
どんでん返しな仕掛けが得意で、
でもって、超常現象とスピリチャルなオチ。
なのにほろ苦い余韻を残す。
 
 
で、読んだら、なんかバランス悪い。
変なとこまでシャマラン監督に似だしたんじゃないの。 
 
いや、映画1本しか観てないけど、、 
 
 
 
それはさておき、感想を。
2013年このミス13位だそうで、妥当な評価だと思う。
容疑者Xより後なのね。
 
 
ま最初に、金持ちで異様な容姿って、
例えば高須先生なら、なんとかしてくれるんじゃないかなぁ。
見られるって肯定できる程度には、心の傷は治せなくても。
 
それは言うだけ野暮ってことで舞台装置はYesと許容して読み始める。
分厚いんだけど、大丈夫、井上夢人先生のはサクサク読めちゃう。
 
 
次に感じた違和感は、ヒロインが魅力的でない。
昔の印象だと井上先生、ヒロインの造形がとても上手で、
ああ、こんな娘いたら、そりゃ惚れちゃってもしょうがないね。
って思わせるの得意なんだけど、今回はそれが無い。
 
 
醜いストーカー男に対して、美しい被害者側が押しなべてボンクラ。
外見だけで愚鈍なヒロインと類友な職場、
いかにも頭軽そうな友人が犠牲になってくんだが、
 
その間ずーっと、
モデルプロダクションのマネージャーがまあ、無能。
このマネージャ一見常識人に描かれるが、無為無策にも程がある。
 
 
 
なので、被害者側に全然感情移入できない。
不幸な生い立ちな異常者の方に感情移入させようと仕向ける井上先生。
そこまでお花畑なら、自業自得じゃねって、思わせる。
 
 
「シンゴジラ」では犠牲者は突然の厄災で偶然に死ぬんですが、
一昔前の怪獣映画やホラー映画なら、
チャラい感じの若者とかが、最初に犠牲になったりするわけです。
人間の脳は確率論は苦手で、因果律が好き。
 
だから、思慮の浅さが犠牲の理由に選ばれる。
しかし現実は発生確率的なもんですから、
突然の厄災を突然らしく描いたところに、
庵野監督の演出の新しさがある。
 
誰かがそんなこと言ってました。
 
その逆ですね。伝統的な手法と言えます。
 
ここを巧みと評価するかどうかですね。
個人的にはやや微妙。オチを考えるともう少し、
異常者を憎めるようにしておくべきじゃないかな。
 
被害者側が自業自得と思わせるほど愚かで、
異常者の側は理路整然と動機がある。
 
ここまで、対比的に理由説明されちゃうと、
あとは異常者側にどれだけ感情移入できるかですけどね。
 
 
ま、とにかく、 
被害者側が不自然過ぎるほど愚かなのには訳があるだろう、
井上夢人のことだからって勘ぐってしまう。
消去法で、被害者側の愚かな二人のうちどちらかが何か隠してんだろうなって、
逆に犯人はクリア過ぎるし、、
 
 
そんな雰囲気で話は進みます。
流石のスケッチ力でサクサク進みます。 
 
 
で。
え、そっちかい!ってどんでん返しに驚きました。

ワタクシはオチの展開までは結びつかなかった。
 
 
無能のどちらかは嘘つきじゃなきゃ、あまりに不自然だもの、
ああ、でもそっちでしたか。
 
なるほど、で、もう一人はタダの無能か。
 
 
 
最近職場という処で生息しているので、 
ワタクシ、どうしてもマネージメントについて考えてしまう。
この物語の二人の無能な点について考えてしまう。

 
一人の無能なマネージメントは全て後手後手で、先手を取る気が無い。
リソースを預かる身なら、無神経過ぎますね。
居る価値が無い。まあ任命した組織が悪い。
 
 
もう一人の無能は、他人に任すことが出来ない。
そっちの方が有能なんだから、任せときゃいいのに、
余計なことするから、全て台無しにすんだよ。
居ない方がマシ。
浅はかに自分で自分のクビを締める。
 
 
まあ、根がボンクラなので仕方ないね。どちらも。
そう盆が暗い。見えてないの。どちらも。
ただ状況に右往左往。場当たり的。
 
お陰で一ミリも感情移入出来ないように仕上がってます。
 
 
 
一方で、理路整然としたストーカー側ですが、
ああ、対象が無能な人だったから、救われたんだなぁって、
この救済のされ方が新しいというか、価値のあるポイントだと思いました。
 
生活に何不自由なくて、コンプレックスは抱えている。
しかも頭はクリアじゃ、なかなか生きる理由を見つけづらい。
 
それで、たまたま外に出たら、犬も歩けば棒に当たる的に生きる理由を見つけられた。
あとはどうでも良いじゃないですかって気持に確かになります。
 
そういう救済もあるよね、たとえ対象の価値が客観的には無いものであっても。
これは、ああX後って感じでしたよ。発見でした。
 
自分が宝石だと思えたのなら、それが石ころでも構わない。
 
その、いやむしろ、ホントは石ころだって分かってるけど、
今のオレはそれに騙されることが唯一生きる理由なんだって。
 
善悪や賢愚を越えて、優れた諦めにより救済されてくラストは、
読んでよかったと素直に思えました。
 
ああ、そうそう、この感覚がシャマラン似なんだよな。きっと。
 
 
 
って、感想でした。
ま、なるべきネタバレしないように書きましたが、
もうちょっとだけネタバレします。

どうしても、読んでてツッコミたくなります。そこはストレス溜まります。
何が無能かって、 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
とりあえず引っ越せよ、マネージャなら引っ越しさせろよ、で警察行けよ。まず。
そんなストーキングされたら。
能天気にも程がある。
   
 
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