映画「彼女がその名を知らない鳥たち」感想 後味スッキリ白石監督の整理する力に敬服

沼田まほかるって、日本の、それも女性じゃなきゃ書けないオンリーワンなので、
せっかくの映画化だもの。ユリゴコロに続き観てきました。
後味が予想に反して爽やかなのも、白石監督の整理の良さだろうな。
画は綺麗だし、観て損はないと思います。
ただ綺麗にまとめすぎて、物足りない感もあったりして、
グロテスクなモノが観たい人には期待はずれかもしれない。
 
 
 
キャスティング流石です、特に蒼井優。
松坂桃李手練って感じです。
竹野内豊、やりすぎないところがいい。
この役で阿部サダヲなら、このくらい当然演ってくれるでしょう。期待通り。
 
そこで、蒼井優。このジャスト感。
皆ジャストですけど、蒼井優は中でも別格でジャストです。
 
もっと本格的に美人な女優さんだったらどうでしょう、
石原さとみとか、新垣結衣だったら、
ムリです、成立しません。
 
そんな美人なら、献身的に駄目になる男が居ても仕方ないか、
そう思ってしまう。
また、その女優さんに何処かで好感抱いてしまいがちでしょう男って生き物は。
 
この映画じゃヒロインに一ミリも感情移入させない、容赦ない造形。
蒼井優の徹底ぶりは流石です。
エッチなシーンでも、チンコピクリともしません。観てて。
男優さん頑張れ!ってむしろ応援したくなります。
 
現実にもこういう女性居るけど、
闇抱えてそうだし、絶対関わらない方がいい。
性的な魅力も感じないし。百害あって一利なし。
 
 
沼田まほかるって、
「ホントはオメーの方がクソ女だろ!」という客観性も込みで承知してて、
そういう客観性が欠落した壊れたオンナを主観的に書く異才。
 
その容赦のなさ、言い訳のなさを完全に体現してます蒼井優。
でもこれが、市川実日子とか、江口のりことか、じゃダメだ。
美人の要素が薄すぎる。無機すぎる。性的なシーンは観たくない。
 
やっぱ、雰囲気でいいから美人の要素は必要なんだ。
で、ここに、雰囲気美人の代名詞たる蒼井優をはめた白石監督素晴らしいし、
 
また、それ全て客観的に理解して、容赦なく演技出来る、
女優の賢さが素晴らしい。
 
 
 
白石監督の整理力。
お話的には若干ムリかなって、思います。
人は悪魔超人じゃないので、そうそう忘れること出来ません。
 
が、カードを切る手順と、端折るとこ、見せるとこ、
そのチョイスが凄いですね。監督。
尺の関係で、松坂桃李に一回目にキスさせることにしたと語ってましたが、
そういう、分解して、整理してから再編集して伝える。演出力高い。
 
「シンゴジラ」とか「この世界の片隅に」とかに慣れると、
画面の情報量が膨大な方が普通に感じてしまう。

でも、ひとつの画面でひとつの情報をちゃんと伝えるのが本来あるべきで、
それを忠実にやりますよね。
だから、観ててスッキリする。画も綺麗だし。
雑味なく、順番に頭に入るし、誘導されるままに感情が動く。
 
なんだか分からない不安定感が一切ない。
 
 
 
あ、あと後味スッキリなのはラストのお陰でしょうね。
ズルズルと生きちゃうほうが人間としてリアルだと思うのだけど、
 
「もはやここまで」と潔い。
 
そうじゃないと、無償さより、エゴ感が勝ってしまうのだろうなぁ。
 
このまま関係続けると、2人のちから関係が逆転してしまう。
 
そうなると、無償の愛じゃなくなっちゃう。
だから、関係終わらすしかないな。
 
無償だけど、身勝手といえば身勝手。
でもそれしか、無償の証明できないから、
 
なんという潔癖さ。
 
 
って、そんなわかりやすいこと感想に持ってしまう。
それもこれも、白石監督の整理整頓が行き届いてるからだろう。

シンガポールの中華街にも似て、その整然さ清潔さは寂しくもあるが、
 
泥沼を清流のように映像化してくれる人が居てもいいじゃないか、
それはそれで得難い映画。
 
  
 
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