映画「パターソン」感想 ああ才能って、こういうことだな。日常の偶然に感謝。

打ち合わせが2件ほどあり、たまたま時間があって、偶然有楽町で観た。初ジャームッシュ。
映画という総合アートで美しいものを体感させる能力に脱帽。(セリフがアレな映画の後なので尚更)
テーマは、 街角の詩、日常のライム(rhyme:韻) 
これを実現させるのはやっぱ才能だなって。
 
 
今年東京で暮らし始めてから、特に最近、
淡々した日常が過ぎてくだけで、これといったことがありません。
老化かなぁ。感動する能力が減退してる。
 
でまあ、映画評です。
 
 
偶然が無ければ観なかったですね。選択肢に無かった。ジャームッシュ。
だって退屈そうなんだもん。昔から。
 
食わず嫌いでした。ホントに観て良かった。いいもん観たわ。
 
 
 
テーマは、 街角の詩、日常のライム(rhyme:韻) 
双子が出て来るのも、韻を踏むリズム感でしょうか、
いつもと同じ日常がちょっとづつ違う、定型詩のように流れる。
 
主人公のドライバーさんはバスの運転手で、
パターソン市のパターソン氏。(金沢市の金沢さんみたいな。)
オーガニックな意識高い系の陽氣な奥さんと仲睦まじく、慎ましく暮らしている。
 
朝出社して、運転して、帰宅して、
夕食後は犬の散歩を兼ねて外出、馴染みのバーでビール一杯飲んで、寝る。
空いた時間は、詩作にふける。
 
そんな一週間を映画は詩を表現しながら映してゆく。
 
 
まあ、日常にもそれなりにエピソードはあるものですが、
観る前から、あらすじ聞くとオシャレ系で退屈そうでしょ。
でも退屈させないんですよ。
美しいから。リズムが旨いから。
 
美しい詩を流れるように展開してゆく、これがこの映画の推進力になってて、
セリフが全て、耳のご馳走。
映像も然ることながら、音声がとにかく美しい。吹き替えじゃムリ。
 
 
冒頭マッチ箱についての詩を、
ノートに手書きしながら、朗読するんですが、
パターソン市の景勝地にて。
 
紡ぐ文字に合わせて、ドライバーさんの声が流れる。
映像と音楽が詩を補助しながら、
 
 
このシーンでああ、こういう映画なんだなって、
最初に提示される訳です。
 
私はそのとき圧倒されたのですが、
このタイミングで乗れなければ、素直に劇場出た方がいいですね。
行き先間違えたようなもんで、速やかに対処した方が時間の節約です。
 
詩そのものが綺麗で、アランドライバーの朗読が耳のご馳走。ええ声。
 
 
ボクはこの段階で、ああスゲエ。才能って。
酷な話ですが、直前に観た映画と比較してしまった。
ジジイの巨匠がこんなに瑞々しいままなんて。歳より才能。
CMは数分で確実に説明しなければならないけど、
映画は2時間掛けて感動させる競技ですから、説明セリフは減点対象ですもの。
 
 
 
そんな感じで、街角の詩を紡いでゆくのですが、
ボクは金沢の風景思い出してました。
パターソン市は滝で有名で、著名な詩人を輩出してるそうです。
犀川の流れに、どこか重なる気がしてました。
 
こういう風景の中で、ああいう詩人は育ったんだな。
最後に永瀬正敏出てくるんですが、彼の心情も分かりました。
 
  
ま、金沢との一番の違いは、民族と人種ですね。
ジャームッシュって名前自体、どこかイギリスじゃないヨーロッパっぽいし、
アランドライバーの顔も生粋のアングロサクソンって感じじゃない。
 
奥さん役は、インドいやもっと中東っぽいなと思ってましたが、
著名なイランの女優さんでした。とても美人。
ネイティブではないでしょうけど、言葉もとても美しく響いてました。
 
アフリカ系の人は分かりますけど、
インド系、イタリア系、はセリフで、ああそういう顔だって分かりますが、
他はちょっとユダヤ系なのかな、ヒスパニック系なのかな、ってとこまでは、
私ゃ分かりません。
ま、多様性ってやつですか、
意図的にいろんな民族出してるようです。
 
劇中、退屈しなかったり、閉塞しなかったり、なのは、
そういうところにも関係あるかもしれません。
 
 
 
そういう土地柄でのドライバーさんの佇まいが素晴らしいですよね。
ドライバーさん本物の元海兵隊員だそうです。
道理で、あの身のこなし。素人には見えない手練でした。
主人公が元軍人という設定は、キャスト確定後追加されたそうです。
 
ドライバーさん長身なんですが、
これアンガールズのようなひ弱さ醸すと、
もっとコミカルなものになってしまう。
 
静かなる男にすることで、詩以外の余計な要素を排除してます。
海兵隊を除隊して、郊外の街でバスドライバーとして働く。
ペルシャ系のオーガニック的オシャレな奥さんと二人暮らし。
趣味は詩作。
 
 
内省的で、一見平凡で、どこか温かみもある。
テーマが詩ですから、特に定型詩は。
ちゃんと引き算できてないと成立しないので、
 
この人物造形は映画の勝利の大きな要因ですね。
 
日本なら誰に配役するでしょうか、
人畜無害そうな顔じゃないとイカンし、難しいなぁ。
声の良さで、あんがい星野源とかにしちゃいそう。
 
 
対照的に、陽氣な奥さん役も、よく選んだなって思います。
日本なら、
アレじゃなければ、高樹沙耶って感じです。
千葉の勝浦でピザ焼いてるころならセーフじゃないでしょうか。
 
セクシーさも、重要な役どころでしたからね。
仲睦まじいだけじゃなく、夫婦の性も日常の一部ですものね。
過剰でなく、かつちゃんとヤッてる感が大事ですもの。
 
 
キャストで唯一難ありは、永瀬正敏さんですねぇ。残念ながら。
謎めいた日本の詩人という存在感は説得力ありましたよ。
だけど、
セリフが美しくない。耳に心地よくない。
日本人が発音綺麗じゃないのは、役柄上構わないのかもしれないけど、
棒読み過ぎじゃね?
 
オシャレなセリフなんですよ、恥ずかしくなるような、
「詩の翻訳はレインコート着てシャワーを浴びるようなもの」なんて、
それを棒に読まれてもさ、
 
もっとゆっくりでいいので、感情とリズムに乗せて、
美しく響かないと、
皮肉なり、詠嘆なりの感情が乗ってないと、
 
ペルシャ人の奥さんだって、感情に乗せて会話してます。
日本人だけ棒。セリフのためのセリフ。まるでダメな日本映画みたいに。
大事な役どころでもあるし、この点は大幅減点ですね。
 
まそれでも、それ以外は素晴らしいし、
日本の詩人は突飛な役なので救われてます。
 
これ、才能ない人が撮ったら、どうしよもなく退屈な凡作になってしまう。
絶妙なバランスってセンスです。
 
やっぱ、センス良いものに日々触れてないと、ダメっすね。
幸福って、日々あたらし。
そういう感覚失いガチな今日このごろですもの。
 
 
 
最後に教訓は、バックアップの重要性とペットは家族。
スマフォは街角の詩にはもっとも遠い存在なので、持ってないドライバーさん。
全部手書き。入力してクラウド上に保存しとけば、ガッカリは防げるのに。
 
せめて、奥さんの進言受け入れておけば、一日伸ばしにしないで、
何気ない他者からの忠告は神のお告げなのだし、
 
 
そんで、犬とか猫とか、特に犬だな。嫉妬するんですよね。
除け者にされたりすると、怒ります。
だから報復されちゃったりします。
 
ペット飼ってる人は気をつけましょう。
 
 
とにかく、いつまで上映してるか分かんないので、
美しいもの観て、退屈しない人は観といた方がいいです。

 
質問コーナー、お問い合わせは、sanpome.net@gmail.com まで。

  
 

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