”解らないけどなんか凄い”「2001年宇宙の旅」を久々に鑑賞。 

昔、テレビで放送された。

退屈で辛くてザッピングした。
 
その後「2010年」も放送された、
今度は全部説明されてて、まったく面白くない。
 
昭和生まれの多くにとって、
”なんか解らないもの”を観た最初の体験はこれではないか。
 
個人的には、
安部公房の小説だったり、フェリーニの映画だったかも。
 
ま、それはさておき、
敢えて説明しない。アンチ大衆性とも言える演出。
娯楽産業でそれもアリと示したのは、やはりこの作品。しかもSF。
 
実際これを大スクリーンで観たら、
ただただ、映像と音楽に圧倒されるだろうな。
CGがない分、CGくささもない。
どうやって撮ったのかは、さっぱり解らないが、とにかく凄い。
分かるとか分からないとか、どーでもいい。
映像と音楽を堪能すれば、それで充分。  
 
ところで、
「サニーボーイ」最終回観て、
この作品作る人が「2001年宇宙の旅」意識してないハズがない。
劇伴せず、説明セリフも無い。 

そういえば、グラスが割れてた。
ああそういえば、猿に教えて挙げ句、猿が殺されるのもそうだ。
 
 
と気づいて、 
改めて見直すことにした。
町山さんの予習を先に。

アマゾンプライム版
それから復習もそれから。
 
町山さんは丁寧な解説だったな。
この作品が映画解説のスタートなのが良く分かる。
 キラーエイプ仮説がテーマとして出てきますね。

戦争や個人間の攻撃性が人の進化の原動力となった、とする仮説。1950年代にレイモンド・ダートによって提唱され、ロバート・アードリー(Robert Ardrey)の『アフリカ創世記』African Genesis(1961年)で拡張された[1]。
キラーエイプ仮説によれば、人類の祖先が強い肉食性であり、それによる大きな攻撃性が他の霊長類とは異なっていたことが人類を他の霊長類とは異なった種として進化させた要因であった。さらにこの攻撃性は人類の本性として残っており、殺人本能となっている。

・時代とテーマ
 劇中では、
  進化への示唆=道具を使う が部族間の戦争を生み、
  それは米ソ冷戦下の宇宙開発の時代も変わらず続いてる。
 と描かれて。
 時代の閉塞感は伝わってきます。

 youtubeのコメントには、
  キラーエイプ仮説でなく文明の格差が支配を生む的な、
 反論があり、興味深いのですが、
 だから、それを生む根源としての暴力性の話をしている。
 皆がお釈迦様のような性格だったら、
 強力な武器があっても利権を独占しない。
 
 弱肉強食な世界と、人間の業と進化。
 時は、米ソ冷戦。核戦争で人類は滅ぶかもしれない、
 そういう時代に、人類の進化の行方を考えずにいられない。
  1962 キューバ危機
  1968 「2001年宇宙の旅」公開
  1975 サイゴン陥落
  1977 「スターウォーズ」公開
 
 
・コーチ役の天使と神の不在
 「まどかマギカ」でもキリスト教の文化圏のことが、「デビルマン」経由で日本人でも分かる。
 「平穏世代の韋駄天達」や「エターナルズ」、「プラチナエンド」でも描かれる構図。
     神   
     ↑ 
  悪魔← →天使  
     ↓ 
     人
 
  天使は人間のコーチ役だが、直接介入はしない。
  人間の対立軸は神だが、近代以降は通常は不在、沈黙している。

 ハリウッド映画なんだから、文化的な下敷きは前提にせざるをえない。
 それを無視するのは無茶。
 ”描かれてないから”と言って、教養の無さを肯定するのは良くない。
 
 そもそもが、「幼年期の終わり」由来なのだし、
 高次の存在による人類の次のステージが描かれると、そこは素直に解釈しよう。
 
 
・AIの自我と動機
 町山さん解説は小説版同様で、そうでない解釈をする人も居るが、
 そこはそうでない解釈に無理にこだわる必要もなくて、
 映画内のセリフだけでも、
  AIのハルは死を恐れている。
  自己防衛のため殺したと自白している。
 それだけで充分。
 要はAIも自己保存のため仲間を殺す。人間と変わらない。
 やはり弱肉強食の世界。
 なお、
 ボーマンとハルが次の人類の座を争ったと解釈できるかどうかは、
 私には判断つかない、そこまでは言えないかな。この段階では。
  人間同様の知性と感情を持つ存在なら、殺人を企てることもある。
 改めてテーマが描かれると観てた。
 
 
・超人への招待
 曲からしてニーチェの超人思想なので、避ける訳にはいかない。
 神は死んだし、無限の輪廻の果に、力への意志によって行動する超人。
 脱キリスト教。
 なるほど、
 このテーマをわかり易く、畜群向けに演出する訳にはゆかない。
 ただ、
 テーマ曲から”人類の進化と超人思想”だと最初に気づけば、
 そんなに、難しくないかもしれない。
 分かっちゃうと退屈かもしれないけど。

 で、現代の目で観ると、
 AIのシンギュラリティだけでなく、
  人類の進化としてのスーパーヒューマンは目前かもしれない。
  超人と畜群の分離が起こるかもしれない。
 
 
で、まあ攻略本としての小説版が、
映画公開の後に発表されたのだし、
解らない部分は、”そういう意味だった”でいいと思う。

 
 
町山さんはベダな演出で駄目と日本映画をくさしてるが、
いやいや、それはハリウッドだって同様。
「さよならジュピター」以降日本ではSF特撮駄目になっても、
アニメの世界で富野由悠季を生んだのだから、
衰退してゆく中、日本はそんなに捨てたもんではないよ。
  
 
暗い時代が終わって大衆娯楽の復権がスターウォーズ。
配信の時代になって、日本のガラパゴスの終わり。
アニメファン向けでなくとも、創造できるとよいね。
異世界モノばかり、鬼滅の二匹目で吸血鬼増えた2021秋アニメですが、
デスノートの天使版「プラチナエンド」はフォローする予定。

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