「ひらいて」に充たされる。首藤凛脚本・監督の高い志と完璧なキャスト。 成長物語にみせて幸福について。

「かそけきサンカヨウ」の欲求不満をすべて「ひらいて」で解消しました。

まあ、とにかくスッキリしましたよ。
人間の心理なんて、
そんなになんでもかんでも明確に言語化出来るもんじゃない。
 
綿矢りさ先生の原作では、もっと明確に心理も説明されるのですが、
この原作を映画化するために生きてきたという首藤凛監督。
説明セリフはできるだけ排除し、映像で表現しています。苦心のあとが伺われます。
撮影は今泉監督御用達の岩永洋。「サマーフィルムにのって」もそう。
スクリーンで観れてよかった。隅々まで美しい。
 
 
 
スカッとする要因は、主演の山田杏奈ちゃんに依るとこも大きく。
バッキバキの目ヂカラで自分に忠実な人間に覚醒してく。
潔く、一本気で、自転車で疾走するシーンは男前。
特に、彼の父親役ハギーと対峙するシーンは拍手喝采しました。
  
キラキラじゃない一筋縄ではゆかない青春モノですが、
大人の期待を脱ぎ捨てて、本来の自分を取り戻してゆく。
成長物語の王道やってます。 
 
ただそれだと、原作の忠実な映画化なのですが、それだけではない。
首藤凛監督の作家性が伺えます。
公式から引用してしまいます。

綿矢りささんの『ひらいて』を初めて読んだ17歳の冬から、この映画を撮るために生きてきました。
静かな戦いのような撮影期間、そうずっとあなたに会いたかったのだと思う瞬間が幾度もありました。
歪な彼女たちの青春でもって、世界にはこんなやり方が無数にあるのかもしれないと予感されるように、私の才能と熱の全てを使います。

JK首藤凛もまた、本来の自分を殺し、周りに気を使って生きていたはず。
子供は無力ですから、なかなか辛い。
そんなときに、原作に出会い。

世界にはこんなやり方が無数にあるのかもしれない

と教えてもらった。
ストレスフルな世界でも、充たされる可能性を示唆され、救われた。
 
褒められても、いや欲しいのはそれじゃない。
 他人の欲望を自分の欲望とするのは、海水を飲むようなもの。
 また飲みたくなるが、どんだけ飲んでも渇きは癒えない。
そういう経験がある人ほど共感出来る。ように出来てます。
 
 
高校時代の綿矢りさ先生が山田杏奈に似てると見えた。

目ヂカラの感じがとてもよく似ている。

紫野高校出身なのですね、
当時はもっと進学校だったはず。
 
可愛くて、賢く、名声も欲しいがままの女子高生。
投影するには、ピッタリのキャスト。
原作は過去を振り返って書いているので、そんな境遇を対象化してます。
 
映画全体の色調ですが、サクラ色というより、ムラサキがかってる。
物語の経糸は、
 のもりはみずやきみがそでふる
 
ジャニーズ八頭身美人の作間龍斗と対象に熟練の芋生悠。
その純愛カップルに監視の目を光らす狩人。という構造。

山田杏奈ほどの美貌で言い寄っても、超然としてる八頭身。
どうせオレも、トロフィーの一つなんだろ、と突き放します。
同じセリフでも、”自分しか愛さないものの笑顔” と容赦ない。
この辺の妥協のなさが、綿矢りさ先生男前です。
 
その才能と美貌で、何でも獲得してきたハンターが、
初めて、拒絶という挫折を味わう。
一番欲しいものだけ、手に入らない。

そこで、方針転換、将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。
恋人の芋生悠を落としにかかる。
 
芋生悠は、片桐はいり? 麗子像? 何かに似てると思った。
しばらくして、気づいた。
ダダだ。

ブサイクとは言わないけど、美貌なら断然、山田杏奈。
そして性別もよく分からない。
中性というより、ゴツゴツと男らしくて両性具有っぽい。
それでいて、儚げ。
明らかにわざとやってる。
 

山田杏奈の誘惑を平然と受け入れる。全く拒絶しない。
需給関係の成立。
 恋人は居てもプラトニックしかないから、肉欲は不足してる。
 一方は、任務としての行為が、打算も名誉欲もなく受け入れられた。
 
こころもからだも、ひらいて。の瞬間。
なんでも悠然と受容する芋生悠は、だんだんとマリア観音に見えてくる。

 
そして、
なんの条件もなく受け入れられたヒロインは、
自分に覚醒してゆく、バッキバキにキマってます。
ヤベー人全開。 

そこから、卒業式までの3人の物語が展開してゆくわけですが、
萩原聖人はヤベー人やらすと右に出る者はいない。
ヤベーだけでなく悪い奴。
役満振り込んじゃえよと観てて思う役を怪演してました。
  
キャスト完璧!!
 
 
首藤監督は原作より、
 ”人は何によって満たされるのか?”
に寄せてる感触です。
欲しいものを手に入れる、欲しくないものは要らない。
どんな生き方だって出来る。
 
原作はもう少し続きがあるらしく、成長物語で終わる。
しかし映画は、教室を飛び出し、マリア観音の元に出向き、言葉をかける。
そこで、エンドロール。
なんて言ったのか、よく聞き取れない。
 また、一発ヤろうよ的なことと想像するのですが、
受け手の芋生悠の表情は見せずに終わる。
 
原作ではそこで、泣くらしいのですが、
やはり悠然と微笑んでいて欲しい。

観る側の解釈で終わらせたのも、映画的で嬉しかったです。
 
 
監督は最も思い入れが強いのは主人公よりネコ役の方だった。
受け取りながら、欲するものを与える。
神々しくて、拝んでしまいそう。

この映画がこうして完成して観れたこと、やっぱり奇跡だと思いました。
 
 
 
昨日は仙台から戻り、
ツイッターに ”枝野やめるな” が踊るの眺めてました。
左右両方の完璧な合意でした。
 コロナ対策に不満はあっても、ちゃんとワクチン配ったし、
 不平不満なだけの君等がより上手く出来るとは到底思わない。
  大阪でコロナ対策の当事者たちが躍進し、
  不満の正当な受け皿たらんとした玉木さんが堅調だったのも、
 満たしたもんが勝ち。
 
津軽海峡に軍艦が現れたのも、自民党の応援になったでしょうか、
満たし満たされたもの勝ち、多少稚拙であっても、
あの枝野さんの発言聞いてると、一生幸せになれなそうだもの。
政策はリベラルで悪口は言わない岸田さんなのも、相手が悪かったな。
ま、原因は、
共産と組んで労組敵に回すのは、
総裁選で石破さんと組んだ河野太郎さんの如く。
1+1は2にならない。しかし他の手段も無い。
 
中道野党の存在は、満たされないを満たす。ことになったら良いですね。
玉木さん男前で、ブレなければ、
維新と国民で衆院100議席くらい、立憲共産を逆転する世界線もありそう。
 
 
この世は満たしたもん勝ち。
一つ勉強になりました。
世界経済先行き不透明でも、買い増す銘柄は見つかる気がします。

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