コントラストとバランスの妙 映画「はたらく細胞」感動はギャップと多重性、 「名探偵津田」「永野に絶対来ないシゴト 株式会社yutori」 の物語である。「脳が読みたくなるストーリーの作り方」 単純なウソは滅び、 「悪意とこだわりの演出術」「山口めろん」 複雑なホントが栄える。

水曜の夜、近場で娯楽大作の日本映画↓を観た。評判の良さに惹かれて。

なるほど、評判に違わぬ出来栄え。
ファミリー向けで特に、お父さん、お母さん、大抵の中高年は観た方が良い。
これが日本でコンスタントに出来たら、ハリウッド崩壊までありそう。
日本映画は、ようやく実写映画化の成功のコツを掴んだのではないか。
娯楽大作でも。
 
進撃の巨人」が大底だった。思えば長き道程。
あれは町ヴァーさんが勝手に始めた物語だったが、
 「ジョジョ」「ハガレン」など負け戦を仕掛け、
 「約ネバ」のような無謀なキャストありきの改変も非難された。
 
日常系はいざ知らず、ファンタジーな舞台設定は予算が掛かる。
絵を書くようには描けない。
日本のマーケット規模ではハリウッドのように逝かない。
 
劣勢を「るろ剣」「キングダム」が、覆してきた。
そんな汚名返上の作品。興収50億行くといいね。
    
 
近年、ハリウッドの娯楽大作はふるわない。日本で結果残せない。
MCUもピークアウトして、アニメもディズニー帝国は不評だ。
 あれだけポリコレとコンプラに雁字搦めでは、そりゃ面白いもの作れんよ。
 如何にCGやワイヤーの技術が進歩しても、安全第一が透けるアクションは退屈だし、
 一方、コストばかり青天井に鰻登りで、俳優のストライキも発生する。
例外的に成功したシリーズは「ヴェノム」「モアナ」「インサイドヘッド」くらい。
 
アメリカが下落始めて、日本が復活するサイクルは経済の定番であるが、
配信の時代になって、日本漫画原作ものアニメのマーケットが拡大したことは大きい。
 
アメコミは類型的と揶揄される。漫画は多様で大人の鑑賞にも耐えると、が、
膨大な競争の中で育ったヒット作だから母数が違う。日本の方がメジャーリーグ。
地域格差がフラット化すれば、
資金力の差も縮まり、手塚治虫以降の財産の差が直接反映してしまう。
かつ、アメリカよりも表現の自由がまだ生きている。
実写映画化においては、これからも躍進が期待出来る。

・堂々たるVFX
 ハリウッドのように法外でなくても、適正な予算と技術を投入すれば、
 山崎貴が本家アカデミーで認められる程にも成った。
 技術の進歩も、日本のクリエータの精進も、讃えよう。
 お金と技術が無いからショボいのは、今は昔。
 本作でも、白組は活躍してる。(血球だけに? とエンド・クレジット観ながら)
 日本は数億円で出来ること、アメリカで実現したら、数十億円は下らないだろう。
 ここはポジティブに喜ぼう。この格差を。
 才能溢れるデザイン、異な世界観の画が、実写で力負けしないことは絶対条件。
 
・漫画連載→アニメシリーズ→実写映画 のノウハウの蓄積
 超えるべきハードルが明確になった。
 多くの尊い犠牲の果に、武内監督始め日本映画界が到達した。Netflixはまだ微妙。
 いかなる理由であれ、原作の面白さを損なうような改変はもう出来ない。
  現在だったら、「カリオストロの城」「ビューティフル・ドリーマー」くらいでも、
  原作ものでなく、オリジナルでやれよ、となるだろう。作家性出すなら。
 更に、
  今のVFXで実写化困難なら諦めろ、アニメで充分である。言い訳すんな。
  画も演技も、なまじアニメのクオリティは高く、
  それ以下なら実写化する価値が無い。企画の段階で見極めよう。
 逆に、原作を損なわず、
 敢えて実写映画でやるだけの意味を見つけることが出来たなら、
 成功確率は高い。既にイメージは共有されている。集客も計算できる。
 企画書だけの「大怪獣のあとしまつ」はギャンブルだが、
 実績ある原作ものは、面白さが約束されている。

・原作愛ある制作陣と役者達
 公式サイト等で演者のコメント見れば歴然としてますが、隔世の感あり。
 仕方ない面ありますが、
 昔の日本映画や、今のハリウッドから伝わる”やっつけ感”と、
 熱量が違います。やりたい人が作ってます。
 愛の有無で、理解度が全く違う。
 例えば、
 今回のアクションは佐藤健の「るろ剣」組が担当したそうです。
 チームの一体感も大事。
 
 セカオワFukaseは想像を超える好演。
 否が応でも制作側の熱は観る側に伝わってしまう。
 特にアクションパートは本気がダダ漏れてしまう。
  

と、マクロ的に、
日本の原作もの実写映画化の繁栄を実感しましたが、
視点をマイクロに移し、
本作成功のポイントと若干の改善点について。
 
映画実写化は、漫画原作ともアニメとも違い、
どうしてもカスタマイズが必要な部分もある中で、
今回、工夫が上手に活きたと、私は拍手しました。
 
・視点のコントラスト、人間パートの追加
 映画は没入感が強い半面、
 カメラ視点で客観性も映してしまう。現実が映ってしまう。
 そこで脚本は、
 マルモ親子+子ども店長トリオの人間パートを追加した。 
 人間の現実世界での視点と、人体内部の細胞の視点、
 2つの視点を交互に対比させて見せた。
 映画は2時間近く閉じ込められているので、転換が全く無いと観客は飽きる。
 また細胞のパートは比喩表現が多く、
 それだけでは我がこととしてのリアリティを感じにくい。
 対比構造を入れることで、お話が立体的になる。成功ですね。

・実写でのイメージの具現化、デザインの実現が見事
 原作の段階で、基本設定と世界観、キャラクターデザインは唯一無二。
 国士無双13面待ち状態である。
 それをお金も労力も掛かる実写でやってのけた力量は凄いっす。
 特に阿部サダヲの体内の昭和の飲み屋横丁は秀逸。ハリウッドも真似出来ない。
 才能とオリジナリティ溢れる総合芸術。
 冒頭、くしゃみまでのシーケンスで元は取れました。
 つくづく、「シン・ゴジラ」で特撮もの当てて良かった。
 それもこれも実写版の「進撃」あってのこと。
 映画評論家を一人失ったが、補って余りある成果。
 衣装、セット、撮影もっと褒めましょうよ。 
 異論も一部ありましたが、私は疑問です。 
  原作の体内イメージを改変してとか(「ドラクエ」以降、中世ヨーロッパばかり)、
  →失敗のリスクを取るべきところでない。ここは送りバントでいい。
  ハリウッドでリメイクしたらとか、
  →「聖闘士星矢」で失敗したばかり、期待出来ない。 
   
・絶妙なキャスティングで、生身の役者が演じるアクション
 既出であるが、
 アニメでは、アクションが凄くても、そりゃなんとでも出来るよ。
 でもそれじゃ、そこに感動は無い。
 人間の身体表現で見えるものは、絵とは伝わり方が違う。
 直接的に伝わる。嘘もすぐバレる。
 如何に予算と技術が凄くても、今のハリウッドの安全第一も伝わる。
 佐藤健とアクション監督始め、これまでの資産を活かしたのは大きかった。
 それら含めて座組の勝利。
 昔は数字持ってるからとの主役抜擢で、コスプレ感満載だったが、
 今は役ありきで選んでいるし、役者もそれに応える。
 活き活きと、かつ真剣に演じている。
 特にFukaseと加藤諒が個人的には評価高い。
  
・絶妙なバランス
 医学的に為になるのに、笑いあり涙ありのエンタメ  
 原作からしてそうなのだが、本作の、このバランスは立派。
 まるで栄養士さんの献立のように隙がない。
 ただ、それでも薄味で単調との指摘も無くはないが、
 ファミリー向けでもあり、
 これ以上濃い味付けにして、バランスを崩すのは私は反対。
 綺麗な幕の内弁当のように、原作のエピソードを配置した。
 出し入れのセンスは上手と判断します。
 シリーズものの映画化の難しさを上手にクリアしてます。

でも、一理無い訳でもない。
ただ批判してるだけではどっかの野党と同じ、対案を出せよ。
といつも不快なので、
若干改善の余地について考えてみたい。
 
  
結論から言うと、
原因と結果の因果律を、もっと親切にやってよかったんだよな。
せっかく人間パート出したのだから。
生活習慣病はある程度分かりやすかったと思うけど、
空気感染、食中毒などの原因は描いた上で、細胞の活躍を見せたかった。
それでこそ、
原因の究明は現代の医学では出来ず、発生確率的にしか扱えない病例が際立つ。
人間の脳は確率思考が苦手で、つい因果律で考えてしまう。
福島の白血病の検査への反応は記憶に新しい。
不安を煽った人、煽られた人は今、平然と暮らしているのでしょうか。
当時酷かったですけど、人間は確率思考出来ないという分かりやすい例。
 原因は分からないが、一定数発症してしまう。
 そんな厄介な病気も存在する。
ジャンクフードばかり食べてる高血圧は自業自得で、感染ですらない。
医学的な説明も込みで、”原因と結果”を人間パートで描いた方が良かったよ。
 
物語の構造に当てはめると、

物語は原因と結果で展開する。人間の脳的には神様はサイコロを振らない。

物語は、〝起きるだろうと思ったこと〟と〝かわりに起きたこと〟の対立のあいだで生まれ、最初から最後まで、原因と結果の明白な軌跡に沿って語られていく

脳は原因と結果の観点からすべてを分析する。このため、物語が原因と結果の明白な軌跡に乗っていない場合、脳は何を理解していいのかわからなくなってしまう。そのせいで本を窓から投げ捨てたくなるぐらいはましなほうで、身体的な苦痛の感覚の引き金となることもある[6]。ただ、物語を軌跡にとどめておくためには、〝もし〟〝その後〟〝だから〟という三つの呪文があれば充分だ。〝もし〟私が火の中に手を入れたら(行動)、〝その後〟私は火傷する(反応)。〝だから〟私は火の中に手を入れないほうが良い(判断)という論理性だ。 
行動、反応、判断――これが物語を先へと進める。物語は、最初から最後まで原因と結果の軌跡に従わなければならないため、

そこだけは、本当に惜しい。
せっかく、人間世界と体内で、対立構造を持ち込んだのに、
人間の脳は、対立構造に根源的に興味を示すもの。それは大成功だ。

人間が生き延びてきたのはリスクを冒したおかげでもあるが、人が目標とすることは、絶対にそうしないとならないというとき以外は微塵も変化を求めずに安全を保つということなのだから。これぞ対立だ! そして物語もまさにそうだ。物語の仕事は、まさに人間がこの対立をどう処理するかという取り組みであり、極論すれば恐れと欲望の闘いを示すものなのだ。

人間視点では何気ない日常でも、体内では起伏に富んだドラマが起こっている。
基本成功してるんだけど、人間パートはもっと不穏でいい。

読者に〝一見そうとは見えない〟ものを感じさせるためには、対立が表面化するよりずっと前から確かにそこにあることを示す必要がある。起きるすべてのことに切迫感を与え、最も害のなさそうな出来事にも予兆を感じさせることが、対立の可能性だ。これによって、募る緊張感で物語全体を波立たせ、面白い物語に熱中するときに放出されるドーパミンの快感を読者に味わわせることができる。
実際に何が起きているかを知りたいという欲望をかきたてる、いわゆるサスペンスというものだ。

もし弱点があるとするなら、人間パートでの予兆の盛り上げ方。かな。
 
 
そもそも原作からして、「Save the cat」パターンでいうところの”相棒”もの。
新米とベテランの組み合わせで、様々なエピソードを経ての成長物語に成ってる。
かつ、組織と個人の対立やホロニック構成をも導入する。
テレ朝のも、フジの今話題の「踊る」もそう、刑事ものが得意とする分野。
それでかつ、原作の時点で、設定とキャラは卓越してる。
これで面白くない訳がない(読んでないけど)。
今回は若干惜しい点はあるものの、
基本、映画2時間の脚本は手練れで、ノウハウが蓄積されていると感じます。
 
 
マイクロな視点での感想は、そんなところです。 
で、もうちょっとだけ、日本論の一般論で言うと、
 現場視点と、
 それを俯瞰で観る見物視点、
この対立構造で面白さを立体的に増幅させるのは、
日本のお家芸になってるかもしれない。
 
今年「極悪女王」が大ヒット。
昭和の時代は、ダンプ松本にカミソリ送られてくるような、ガチの勧善懲悪だった。
今は、ヒールはその役だと承知で見物している。リテラシーが上がった。
藤井健太郎Pはほのぼの系こそヤラセの宝庫だと言う。
物語を成立させる仕組みを俯瞰しながら、
虚実ないまぜの中、演者のリアルな生き様を見物している。
TVのワイプに賛否あるものの、観る側は進化してる。
多分、日本オリジナルだと思う。
・予定調和のウソは避け、構造を入れて、ズラす
・オシャレなセンスでサンプリング、オマージュ
・ロジックはきっちり入れる。オチは着ける
この辺が、日本の”面白い”の標準に成ってゆく、気がしている。

最初から用意されていたゴールに無理矢理はめようとするのが見えると醒めてしまいます。そして、無理矢理手を加えるなら、「こういうことが起きたからこう扱った……」と、その手の内まで見せるのが最近の温度感かと思います。 
視聴者に合わせようとは思いませんが、世間の温度感は気にしています。そして、温度がわかった上であえて少しズラすくらいの感覚で番組を作っています。

自分に何かをゼロから生み出す能力があるとは思っていなかったけれど、昔から面白いモノや良いモノをジャッジする能力、センス的な部分には少しだけ自信がありました。  
ヒップホップ以降のモノ作りには、引用やオマージュといった手法があらゆるジャンルで用いられていますが、テレビにおいても、ある程度パターンが出尽くした中で、どうやって、すでに存在するモノを違う文脈で使って新しい魅力を引き出すか、いかに新しい表現に結びつけるかは重要なポイントだと思います。

自分の作るものでもオチは大切にするし、つい構造で遊びたくなってしまいます。  
そして、理由のないモノが苦手です。 
見て楽しむぶんには良いのですが、自分が作るときには、ひとつひとつの出来事や流れにちゃんとした理由がないと気になってしまいます。 
面白さはもちろん、いかに展開や構成で遊びつつ、理屈のきっちり通ったモノが作れるか、それが永遠のテーマかもしれません。

名探偵津田の1の世界、2の世界。本当に結実している。

”長袖をください”には痺れました。
 
先日も、好きな番組が好評で第二弾。


企画を壊すのがお約束との予想を裏切り、きっちりMCする永野。
TVの予定調和を徹底して排除するZ世代版「カンブリア宮殿」は、
やり手な若手が出てくるかと思いきや、チャラい。と見せかけてやっぱ超有能。
カート・コバーンのTシャツで登場し、永野をグランジでコーディネート。
やはり新しいビジネスモデルなのだろう。 
 アマゾンがロングテールと称賛されたように、
 ブランドを細分化し、一方で盛衰も受け入れる。
番組は視聴者を裏切りつつ、大事なところでは、ガチでチャント伝える。
茶化して笑いを取りにゆくようなTVの悪癖はやらない。
 
TVのワイプに賛否あるものの、多重な視点の提供は、もはや必須。
ハリウッドで一時流行った、「デップー」的な、
カメラの向こう側の客に語りかけるのとも違う。
多重に構造を入れ込んで、予定調和に媚びない。オチまできっちり作る。
そういうコンテンツが日本で”面白い”の主流に成ってくと思っている。
 
 
そんな訳で、遅ればせながら、最近は「山口めろんちゃんねる」にハマってる。
ピアノと歌の二重構造のコントラストで魅せる。予定調和は裏切る。
これがワザとなら天才。天然ならやっぱ天才。

”なーるわけないかー”は凡人には思いつかない。
原曲が分からなくなるので、対比させる。

 
CDデビューも果たしている。世間は広いな。皆んな目利きだ。

この”サイレンナーイ”でカノンは上手に弾く。脳がバグる。
やはり対比させずにはいられない。

サブスク解禁されてないので、コピーのコピーで多重。
いろいろ有ったが、今年の相場はレンジで終わるかな。
 
 
2024.12.20 23:30現在
今週は特にイベント目白押しでした。
中でも、圧力かかったかのようなハト派な植田発言の影響は大きい。
一方、数字はそこそこ強いアメリカ。
なのに、株はそろそろピークアウトしそう。
週末のNYはこれからですが、円安株安の方向感は変わらなそう。
 
テクニカル的には、日経は±2σのレンジ継続。
現在20MAを割り込み、-2σタッチまでは行きそう。
その後レンジ継続か、年末の下落はどうかな。
アメリカはお休みに入っちゃうから、レンジ継続濃厚とは思ってる。 
トランプ政権発足前に調整あるとも思うんだが。 
 
 

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