ジョン・ラセターですら、いずれ必要とされない必定。 ピクサー社史としてのトイ・ストーリー4,3,1,2の順で鑑賞。 信者とも宇多丸とも違う感想。 

NHK庵野ドキュメント完全版お金払って観ました。
最近、
庵野秀明(暴君、イノベーション、信者)
幡野広志(余命、やらかし、機能不全家族)
に接して、ステーブ・ジョブズを連想するのは自然なことです。

特に、スカリーからアップルを追放され、
ピクサーとネクストを起こし、大逆転。
大変興味深いものでした。
更に中でも、ピクサーの歴史に惹かれた。

現在、
ジョブズは亡く、キャットムルは引退、ラセターは追放され、
初期のピクサーは終わった時期でもあり。

オモチャはいずれ必要とされない日がくる宿命を負う。
これはラセターはじめ、クリエータのメタファーですね。
そして、
トイ・ストーリーはピクサーの歴史に実に忠実に作られている。
4部作はちょうど、黎明期、成長期、成熟期、衰退期に該当して、
 ウッディ→ジョン・ラセター
 バズ→  エド・キャットムル
 アンディ→ステーブ・ジョブズ
と見立て、間違いないでしょう。
 
 
1.黎明期
 ルーカスからジョブズに売却。
 私費50億ドル(!!)を投じ、
 シリコグラフィクス的ビジネスモデル目指すも芽が出ず。
 アカデミー賞受賞の映画制作にようやく選択と集中。
 ディズニーとの(不平等)契約に漕ぎ着け、
 ラセターの才能とCGノウハウ全振りでトイ・ストーリー制作。
 同時にIPOで、企業としての信用と実力をつける。冒険に勝った。
 
2.成長期
 ヒット作連発しつつ、
 マイケル・アイズナー率いる帝国ディズニーとの抗争激化。
 ジョブズの策略も発揮され不平等条約撤廃を勝ち取る。
 引き抜き工作も、いろいろあったみたいだけど、
 結局、ピクサーでの作品作りサイコー。
 
3.成熟期
 ディズニー本体のアニメがピクサーやドリームワークスの後塵を拝する。
 危機感を持った創業家は商業主義のマイケル・アイズナー追放。
 クリエイティブに回帰を目指し、ボブ・アイガーCEO登場。
 死期を悟ったジョブズはピクサー売却を決意。
 キャットムルはディズニー全体のアニメ部門の責任者となり、
 ラセターはこの後、総指揮としてアナ雪も制作。
 不安もあったが我が世の春。
 
4.(初期の)衰退期
 ボブ・アイガーの元、ディズニーの映画はより盤石なものに。
 そして、初期の3人はピクサーを去ることになった。
 いずれ必要とされない日がくるクリエータの宿命に向き合う。
 ピクサーの面々はそれぞれの道を歩む、別れのとき。
 
 
個人的な嗜好としては当然4。最初に観ました。
批判が多いのに驚き、3との比較。信者への反感を持つ。
やはり最初の成功も見ようと1。ディズニーの敗北を目の当たりに。
宇多丸評では、2に苦言呈され確認しコンプリート。それは単体ならね。
 
参考文献

  
 
 
と、ここまで書いて、
トイ・ストーリー各々レビューの前に、庵野と幡野を。
 
  
NHK庵野ドキュメント完全版は、情報量は増えてなかった。
 ミニチュアやモーションピクチャでアングルの素材集め。
 →簡易CGのプレビズでアングルを検証、確定。
 →プレビズを元にアニメの絵を作成。
この工程の説明は結局されないまま。
岡田斗司夫の補完が必要なら、完全じゃないよ。
 
本来は、庵野秀明の特異な作家性を語るに、
シン・ゴジラで完成された写実原理主義に何故言及しないのだろう。
 
 シンエヴァ評も昔ながらの考察か、卒業式ありがとう、ばかり。
 監督が目指した、アニメ制作そのものへの挑戦を取り上げるもの皆無。
 岡田斗司夫以外に言及しないというのは異常。
 こんな手間掛かることして、やり直しはマネージャーとしては狂気だが、
 単に妥協ないクリエータとして定型な感動するんじゃなく、
 野心的な試みを褒めろよもっと。
 
と同じこと書いてしまったが、
「もうアニメは作らない」発言を確認し、溜飲下げる。

 宇部新川駅で、アニメの世界にサヨナラ。
 猛ダッシュで実写の世界に、夫婦でエスケープ。
 高校時代8ミリ回してた少年が成長して、還って来た。
 ウルトラマンも、仮面ライダーもやるんだね。
 信者への義務も責任も充分果たしたよ。
 もう好きなもの撮ろうよ。
 そして、映像への取り組みももっと評価されようよ。
 より親和性の高い古巣の特撮の世界で。
 
ああ、あとは電車の種類がどの時代なのか、
解説してもらえば、満足なんだが。
スーツ交通さんあたりに、いやNHKだから、タモさんでもいい。
 
ほんとに、命を大事に、そして有効に使ってもらいたい。
ありがたき才能なのだから。余人を以って代えられぬ。 
 
 
ジョブズは、余命宣告を受けたことを、
ピクサー売却の直前に、アイガーCEOに告げている。
CGでのアニメ表現に革命を起こしたあとの時間は、
情報デバイスの革命に捧げた。
 
「特注品ナポレオン」という阿刀田高のエッセイ思い出す。
時代の要請によって忽然と現れ、用済みになると忽然と姿を消す。
日本なら、織田信長や西郷隆盛か。
ジョブズはまさにその範疇の人だね。
 
ガラケー使う人が稀なように、
スムーズなCGが映像で当たり前になった。
そこで、
日本の特撮という伝統の技と融合し、
世界に衝撃あたえて欲しいな。浮世絵がゴッホを生んだように。
 
信者を満足させるなんて、志低い時間の使い方しなくて、
情報量は増えてないけど、NHKにお金払って、なんか安堵した。
 
クリエータにとって、信者は目指す革命の果の副産物。
ま商業的には信者ビジネスしないといかんけど。 
 
 
ジョブズは家族との時間をもっと大切にすればよかったと悔いたらしい。
幡野さんはどうなんだろうか、
 あの相談の回答では、
 残された時間に真剣に向き合ったとは到底思えない。
 
惰性で仕事してないか?
 
 
ジョブズは類稀なる戦略家でもあり、
自分の強みも弱みもよく理解していた。
だから演出も上手かった。
 
アップルを追放されてから、
ネクストを起こし、ピクサーをルーカスから買取り、どちらも育てる。
 アップルの弱点はOSで、
 ネクストではアビー・テバニアンという才能を擁し、
 アップルがネクストを迎い入れるという勝利を得る。 

 これは、ピクサーでジョン・ラセターという才能を発掘し、
 ついにディズニーを飲み込むという結果と似てる。
 ただし、ピクサーでは、
  ハードウエア+OSを売るモデルは市場が無く頓挫し、
  映画製作にたどり着くまで、時間と資金を必要とした。
 
 ディズニーとのやり取りだけでなく、
 アップルを取り戻すプロセスも交渉上手。
 相手の弱点に、自らの強みをぶつける。 
 オラクル創業者ラリー・エリソンは朋友で、
 評価の落ちたアップルを買収しようかとオファー。
 しかしジョブズはこれを断る。
 敵対的では意味が無いと。
 
 以降iOS然り、技術のコアはOSだった。
 デザインやビジネスモデルは、ジョブズが戻れば、
 アップルらしさは取り戻せると踏んでたのだろう。
 
 情に流されること一切なく、目的を成し遂げた。
 進撃のエレンみたい。
 妥協なく無能を切り捨て続けた。
 自分の人格はクソで構わない。
  
なんで幡野さんは、無能なcakes編集切らないのだろう。
ジョブズはむしろ、腐りゆくアップルに居たら、
映像でもデバィスでも革命起こせなかったよ。
残りの時間が限られているなら、
戦略的に、妥協ない選択をすべきと見えるけどな。
 
少なくとも、無能を信頼してはいけない。
大熊さんが、人生の時間を補填してくれる訳じゃない。
 
 
 
最後に、短めのレビューを。

完璧と言っていい出来。何が不満なの?
ストーリーも映像も演出も一切隙がない。
ラセターですら追放される世界に生きるクリエータ。
いつか必要とされない日が来る宿命。
 ピクサーが起こした革命で、
 ディズニーの2Dの職人も多くクビ切られたことだろう。
因果は巡る。
 
必要とされるだけが幸せじゃないし、
必要とされることを追求したっていい。
ガビって人格は進撃に似てるのは偶然かな。

いつか最後はゴミ箱行きが確定的なフォーキーを自作。
ここにも、クリエータ達の覚悟が見えます。
 
 
ラセター追放の原因はセクハラだけど、
ホントにディズニーが彼を必要としてるなら、揉み消したよね。
人権問題的にそれが正しいかどうかは別として、
メリット・デメリット比較して、そうしてたよ。
 
ラセター居なくても、キャットムル引退しても、
もう、出来るんだよ。必要とされなくなったんだよ。
例外は無い。
 
3では、問題の本質は先送りされただけ、
ピクサーの創業が解体してくタイミングで、4の結論を出すのは、
極めて、誠実にクリエータが問題に向き合った結果と見ます私は、
ポリコレの影響は本質じゃない。
 
これが納得いかない信者の言い分も読んだのですが、
 子供も大人も楽しめるって、ことは子供と同じ視点で楽しむってことなの?
という疑問が払拭出来ませんでした。
理由が些末過ぎるのは却下で、
結局荒野を目指す自立は好まず、お花畑な仲良しが好み。
ワンピースでも読んどけ。
 
奴隷じゃなければ、いや奴隷でも、
自分のキャリヤに悩んだり、見直したりすることないのか。
成人してそれが無いなら、真の依存だけど。
隷属を是とする人生なら、4に共感出来ないだろう。
 
日本でだけ4の評価が低いというの本当ですか、
なら日本人の精神年齢は12歳のままという説の裏付けじゃないの。
信者はオモチャに喜ぶ幼児性、飽きたり凶暴だったりするくせに。
私は占領者の説に納得感あります。
  
現実を見据えた、完璧な着地と評価してます。
誇りもって仕事した経験あるなら、共感できると思いますよ。
4作中一番の好みです。
 

 
 
1,2と比べると、映像が暗く、覇気が無いようにも見えます。
技術は進歩してても。
これは買収の不安が反映されているのではないか。
アンディの退場はジョブズの売却で、
紆余曲折を経て、保育園に譲渡。
 
まだ、
アイズナー時代のディズニーの残像が拭えない。
アイガーがどう処遇するのか、未知。 
 
 管理のされ方とかに、綱引きはあったのだろう。 
 いかにアイガーが物分りのいい人でも、対立はあったんだろうなと。
 バズが洗脳されるくだりは、間に入ってキャットムルが苦労したんだな。
 そして、ラセターだけの引き抜き話もいろいろ。
と映画見てました。
 
ディズニーのアニメ部門は、ピクサーが中心になってゆき、
アナ雪で結果出すのだから、
ハッピーエンドな譲渡という結末は現実に即して描かれる。
保育園側も管理変わるのは、
ディズニーが旧来の2Dの部門も残してという意味かな。
 
それはそうで、文句ないけど、
いずれ必要とされなくなる宿命、
所有者の気まぐれ次第という問題は、
先送りされたに過ぎない。
 
いずれにせよ、それでも人生は続く。
手放しで喜んでいいエンディングではないよ。
 
この点で、信者にも宇多丸評にも違和感を感じる。
いずれ直面する未解決な問題を先送りにして、
それを見ないのは子供だましではないか。
私にとっては、
3は作品としては素晴らしいけど、4をより支持する理由が増えた。
 
 
 

これが創業3人と財務のローレンス・レビーが勝負を賭けた一作目か。
そりゃ今よりはCG感あるけど、鮮やかで活気みなぎる。
トイ・ストーリーの前と後で時代が違う。 
 
特に、ラスト付近のカーチェイスを見たら、
ライオンキングとか作ってたディズニーの職人さんたち、
敗北感は幾ばくか。同情を禁じえない。
これを見せられては、ディズニーも降参せざるを得まい。
 
もちろんジョブズの戦略も交渉上手もあったけど、
作品という現実が決定的だ。
もし流失して、ドリームワークスと手を組まれたら、
ディズニーのアニメは終わる。
 
凶悪なシドも庇護者アンディもどっちもジョブズと見ました。
最初は、シリコングラフィクスみたいなビジネスモデルで、
コンテンツ制作はオマケだった。
いつ切り捨てられても不思議はない境遇で、無理難題ばかり言われる。
  
ビジネスのコンサルでは、
ダメな中にも成功体験はある、それを引き出し伸ばせと教わる。
日本シリーズで野村監督がイチローのインハイを攻めたように。
ただそこに至るまで私財50億ドルだもの。
文句は言えない。
  
作中でもバズは自信失ってる、
これはハードもソフトも売れず、金食い虫な社長としての苦悩で、
ラセターが作品作りを牽引してくれたことで、ピクサーが跳ねる。
 
どんなに技術が凄くても、作品の王様はストーリー。
この技術に、ラセターの才能が搭載されてホントに良かったね。
演出は宮崎駿の影響よく分かる。とても効果的。
 
これ見せられたら、ジョブズも強気にIPOするよな。

 


宇多丸評では、
 鑑定団の北原館長にコレクターズアイテムとして大切にされるのと、
 子供の相手するのと、どっちが幸せかなんて、勝手に決めるな。
 
 スターウォーズのオマージュもサムい。
 
と難癖つけられる。
いや制作者も、
 オモチャの幸せが何かと断定出来るものでないと、
分かった上でのストーリーでしょ。
 
最終的な幸せは何か分からないけど、
今はピクサーというクリエータの楽園で作品作るのが最高。
って、宣言してるだけで、それ以上の決めつけではないでしょ。

ピクサーが世に知られ名声は高まった後だから、
とりわけラセターは別格で、引き抜きの話が山程あったってことでしょ。
 
財務のローレンス・レビーがジョブズに電話して、
スタッフへのストックオプションの額上げないと、ピクサー保たないと直訴し、
苦々しくジョブズが承認するのだけど。
条件のいい話はいっぱいあったのでしょうね。
 
かたや、悪の帝国アイズナーのディズニーとの抗争は激化。
不平等条約の撤廃という勝利までが描かれる。
  
バズが二人出てきますが、
やっぱ社長は大変だったのでしょうね。間に挟まれて。
 
 
スターウォーズやってるのは、ルーカスへの見返し。
父親はルーカスフィルムなんだし、嘘じゃない。
恐竜がやっつけるのも象徴的で、
ジュラシックパークのCGを担当したのも、ルーカスフィルム傘下の会社。
 
結局、離婚とか家庭の事情もあったけど、
ジョージ・ルーカスは、CGの可能性を拡大出来なかった。
あんだけの才能でも。
最後は、ディズニーに買収されてしまう。
ピクサーの父でも立場逆転。
 
新興勢力のヤル気満々が伝わってきます。
 
この頃が、
ピクサーにとって、一番楽しい時期だったかもしれません。
楽しいからこそ、宿命が哀しいのですが、
それはまた別のお話。
 
 
ま、総じて、これだけのもの見せられたら、文句のつけようがない。
でも、自らの運命に誠実に向き合った4が一番好きです。
 
人生は時間で出来てますね。 

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