サプライズとサスペンス、予定調和と敢えての外し。「マルチバース・オブ・マッドネス」「死刑にいたる病」。やはり諦めが肝心。

私事ですが、3月末までは、断る訓練。
 マネージャが兵隊としての知識、経験しか持ち得ない体制。
 責任者は責任回避が優先な組織。
などを経験させてもらい、
ようやく断れる自分になりました。 
 
奴隷労働を自己肯定してるベテランにも出会い、 
住む世界は住むべき好ましい世界を選ぼうと決意を新たにもしました。
 
 
5月からまた、新規プロジェクト参画しまして、
飛びつかず、十分に手順を尽くしてから合意に至り、
大手のしっかりした元請けさんの、
誠実なマネージャさんの下、働いております。
 
 
やらないことから決めるのは、ホントに重要。
USPとかブランディング考えるより前に。

GW明けの週、ガッツリ働きながらも、
作家性の強い、グロもあり、の評判の2作品、観てきました。
 
どちらも、混んでましたね。やむえず悪い席で観ました。
離席して眼の前を横切る客はイラっとしますね。
 2時間の作品なのに、なぜ離席する必要あるの?
ま、映画は楽しみましたけど。
 
 
ホラーでよく言われる。サプライズとサスペンスの違い。
一発でショックを与えるのがサプライズ。
ストーリーでハラハラさせるのがサスペンス。
名作「サイコ」がよく引用されます。
アンソニー・パーキンスの謎で引っ張りながら、
ショッキングな驚かしの演出も手数多い。
 
特にホラーでは両方とも大事な要素で、 
エンターテイメントとしての監督の力量が分るところです。 
 
 
 
「マルチバース・オブ・マッドネス」

サプライズは質量ともさすがのサム・ライミ印。現場復帰を愛でたい。
まるで玉置浩二の尾崎豊、平井聖のAKB48。唯一無二の作家性。

 
一方で、3ヶ月の突貫工事だからか
サスペンス要素はちょっとモヤモヤしました。
凄いけど、
お話で興味を引っ張る要素が足りない。緩急もフリオチもあまりなく、
濃い味付けの皿が連続して出てくるばかりでは飽きてしまう。
ま、  
CGとワイヤーのアクションでは心が動かないのは個人の感想ですけどね。
 
人間ドラマやるために、3時間トイレ我慢するのは嫌。
それよりはシンプルに整理してるのは好感なのですが、
強い刺激の連続ばかりでも、単調か。
 
 
モチーフは、
 ”死者を出したことのない家の芥子で、子供を生き返らせてあげる”
 からの、鬼子母神伝説的なのかと観てました。
更に、吉住入ってる。
 
一時期リアルに恋人が居るテイで、
二人分食事作っていたというエピソードは震えました。

 
 
それはさておき、 
人間ドラマは他の配信とかで補完してと、割り切るのは私は構わないのですが、
それにしても、多次元とはいえ他者は他者。当然、他の子には他の親がいる。
 ”でしょうね。” としか言いようがない。
それはスタートであって、エンドじゃない。
物語の着地が納得いかない。最大の不満でした。
   
リモートワークの能力者と、
どこのオフィスにでも出没できるD4Cのような能力者との追いかけっこは、
マルチバースの上手な使い方だとは思いました。
ま、多元宇宙というより、平行世界ですけどね。そこは気にしない。
 
この世で生きる以上は、諸行無常な物理法則から逃れられない。
からの、絶望の深さがスタートなんじゃないの?
 多元宇宙出したり、
 これからストレンジがバンパイヤのように人間辞めてくとか、
そことの対比で現世の狂気を描くもんじゃないのかな。
 
お釈迦様の説話と比べると、内容が浅い。
監督が降板したリスケだもの、仕方ないか。
そのおかげで、サム・ライミが現場復帰したのだし。
と、私は無念を成仏させ劇場を後にしました。
 
  
ホメのポイントはもう散々語られているので、もう満腹ですよね。

 
なので、一点だけ、
D4Cな能力者はヒスパニック系の女の子で、まっすぐな性格。
そのキャラクター造形に好感しました。
 複雑化してしまう多元宇宙(実質平行世界)のストーリーを整理しつつ、
 お話を停滞させるような人間ドラマはやらない。
それは逆に、魅力的な新キャラ出すのは難しいかと。
 
日本だと幼い能力者は、
ガンダムやエヴァのようにウジウジしてるか、ワンピースのようにバカ。
片やMCUでは、まっすぐな性格だけど、ちゃんと賢い。 
そういう健全なヒロインを描けるのは、アメリカのいいところ。 
 
名前も強そうで、役者さんの身体能力も高そう。
魔術でなく拳のアクションを今後期待したい。
CGのアクションはもうアニメでいいじゃん。とどうしても思ってしまう。
 
 
 
「死刑にいたる病」

阿部サダヲの目がヤベー奴が話題。白石監督の演出が冴える。
凝った映像演出はスクリーンで観るだけの価値あります。
 
ホメポイントは既にいろいろ語られているので、多くは端折ります。

レクター博士系かと思わせて、描いてるのは実は別のこと。
それが嬉しい。 
    
竹内力のリキプロ制作で独立系の日本映画。
ハリウッドや韓流ホラーのように、ド大衆を狙った娯楽作とはちょっと違う。
若干、大衆性より芸術性に寄せてるところに、独立系の日本映画の良さがあります。
私は、日本映画を観るときは、
その日本映画のテイストを堪能したいと常々思ってます。
  
 ド大衆娯楽作のホラーと刺激が違う、
 その予定調和とは違うラスト、
 会話劇だけの演出が退屈、
等々は、”ワンピースでも読んでろよ”と同じ反発を覚えます。
特に、映画評論家名乗って、そのレべルで作り手の意図を汲めないのは問題だと思う。
  
 
外国のことは知りませんが、
日本社会に渦巻く、
承認欲求による欲と恐怖のメソッドによる支配と隷属の構造。
親、教師、上司というリアルでも、SNSのバーチャルでも、日常茶飯。
特に、身近な関係だとね。
 
西原理恵子がアルコール依存でDVな夫の体験を語っていますが、

彼らは外面よく、ものすごく狡猾です。
だからこそ、閉鎖空間で通用する支配メソッドも身に着けた。のだろう。
もっと健全な努力すりゃいいのに、とは思う。が、
 
「銀と金」で、
 
“相手が理解されたいように理解してあげる”
のが、人たらしメソッドの要諦とレクチャーを受けた。
”己を知る者のために死す”の裏返しですね。
 
サイコパスな阿部サダヲは、テクニックとしての人たらしを極め、
逆にテクニックだけでは満たされず、恐怖と苦痛に歪む顔のみにリアルを感じる。
卓越したテクニシャンだからこその虚しさ。
 
関係ないけど、


銀シャリ橋本を思い出しました。
 
 
典型的な秩序型殺人鬼をとても上手な造形で描く。等身大の阿部サダヲ。
ステレオタイプという批判もあるのですが、そこは敢えての狙いどころで、
まあ、
ジョーカー型無敵の人と吉良吉影の区別ないのは論外としても、
日本だともっと社会性低いヲタクな方が、異常者に馴染む。
 
が、
外面よい狡猾な異常者は日本にザラにいますよ。経験上。
   
それと、ステレオタイプと批判する人が、
そんなに多様な社会を生きているとは思えず、そこに違和感があります。
そのステレオタイプで、この均質な社会の気味悪さを描いてるんじゃないのかなぁ。 
この世界の支配構造は、安い権力批判とは真逆で出来てる。 
 
 
まあ、確かに強引なとこもあり、
說明セリフに頼るという批判は私も同意できるのですが、
そこは描きたいものにフォーカスするため、敢えて割り切ったと観てました。
 シンプルに支配と隷属の構造を提示する。
で、いいじゃんと。
あんまり丁寧にやりすぎると、3時間の大作になってしまう。それはそれで嫌だ。
 
逆に、
阿部サダヲの幼年期の凶悪のシーンは不要と思いました。
一切気づかれず、静かに暮らしていた。とする方が正解じゃないかな。
なら弁護士もあそこまで要らないかな。
 
 
で、   
賛否両論あるラストなのですが、
”見慣れた刺激に着地しろ” という批判は無視して、
大事なのは、テーマの承認欲求による支配と隷属の構造ですよね。
 
このテーマに忠実でないラストだと、逆に興ざめしてしまう。
 ああ、岡田健史もキラーになるとか、そんなダサいオチじゃなくて良かった。
と、劇場では、驚きながらもホッとしてました。 
 
 
 
ま、ともかくも、2作品とも盛況で良かった。
KAPPEI」失敗はマーケティングの失敗で、
負けに不思議の負けなし。
 
ブランド確立してる人って、
これはやらない、拒否するポイントを良くわきまえてる。
歯を食いしばって、だが断る。
仕事でも、欲に負けるってあります。ありました。
断るべきを断るのが、個人ブランディングの第一歩。
今年そう学んだ。
 
 
今週は、ガッツリ働きつつ、「生きててよかった」と「シン・ウルトラマン」を観る予定。

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