”壊れているなら、なおさない” 現代日本映画最高峰「LOVE LIFE」と おそらく現代日本エンタメの正解「沈黙のパレード」

喪失からの回復がテーマに選ばれることも多い昨今。
真逆の狙いとアプローチが対照的な2作品鑑賞。  
悲しみとの向き合い方が2作とも描かれ、どうしても比べてしまう。
 
 
宇多丸評では、現代日本映画最高峰「LOVE LIFE」とあり、
褒めすぎかと観に行ったらさにあらず。本当でした。
こういう映画が制作され、公開時にスクリーンで観れた幸運に感謝したい。
メーテレ攻めてる、そして成功させてるのだから見事。
  
その後、「沈黙のパレード」観る。概ね好評だけど、不満もチラホラ。
基本良作でも、このオチでいいのか? という残尿感はたしかに。
原作がムズカシイ素材だったかな。あまり改変も出来ないだろうし。
フジテレビのメジャーな娯楽作としての葛藤もあるかな。

「LOVE LIFE」

ちょっと強引なところもあるのですが、
こんな完成度の高い映画らしい映画久しぶりだ。
   
深田監督は一貫して、
”孤独を描き、孤独な人が癒やされるために映画を作る。” らしい。
ゲシュタルト療法のような映画でした。
 
狙いとターゲットが明確で、原曲からすると反語的な内容。

原曲も不穏なコードだけど、坂本龍一との別れかなと想像してしまう。
別れは悲しいけど、愛ある生活と感じる。
が、裏を返せば、
 一緒にいても、嫌なことはある。
 悪いものだって与えてしまう。
 人は死ぬことだってある。

映画はそれでも、それでも人生を愛するという視線が伝わる。
人間の醜さ愚かさをリアルでナチュラルに描き、
それでも静かに肯定的に着地する。
そのままでいい。改善しなくていい。
自分も他者もそのまま受け入れてあげよう。
 
思いもよらず不幸に見舞われて、逆にそのままの個に帰ってゆく。
風の時代というけれど、極めて現代的なテーマ。
 
こういう日常系で静かな緊張を描けるのはもちろん監督の才能だけど、
映画大国フランスでも、ちょっと難しいんじゃなかろうか、
日本のインディ系映画ならでは。
現代日本映画最高峰と納得。
 
脚本、映像、演出がとにかく緻密。
サスペンスが上手い。
それぞれの関係性が最初よく分からない。
 オセロ優勝を祝う大人の集団はどういうサークルなの?
 妻の木村文乃と息子は手話で会話できて、夫の永山絢斗は出来ないの?
 
あとから、ああ、あれはそういうことだったのかと、
人間関係が解明されると謎が伏線回収される。
後から効いてくる布石に隙がない。 
 
登場人物の皆それなりにクズな面に納得させられる。
記号にしない、無理に良い人にもしない。
 
夫の永山絢斗はあの両親で、
 どこか満たされなく育ち、愛の情動にすぐに負ける。
 多分、浮気が原因で離婚して、何回か結婚離婚繰り返すんだろうな。
 いるよねそういう人。
と将来想像される。
 
妻の木村文乃は利他の人だけど、
 共依存関係に陥りやすい、親切ジャンキー。
 ”私が居ないと、あのひとは駄目なの” という人間はヤバい。
 高い授業料払って、学習出来るといいね。
劇中何度か、あなたの知らない他者の横顔が描かれる。
どんなに近い関係だろうと、全てを共有する訳じゃない。
 
人には持って生まれた形質があり、それによって性格も影響を受ける。
環境のせいでもなく、そういう運命を背負って生まれる。 

 
壊れていても、それでいいよ。
人間も種のサバイブが最適化するように設計され、
個としての幸せを追求するようには、もともと出来ていない。
環境の変化にも対応するため、多様なばらつきを持って生まれる。
 
この世に人として生まれる哀しみを、
冷徹にも優しく見つめる作品。
世界には他者しか居ない。
 
 
 
「沈黙のパレード」ネタバレします。
「脱力タイムズ」の告知は岡山天音でなく、ズン飯尾にすればいいのに。

↓は読んだことあるだけ、他は観たこともなし。

 
冒頭から、ずっとTV的。
分かりやすく説明するのは必然性あるとしても、
寄り過ぎ、切り返し過ぎ。スクリーンで観るにはちょっとキツイ。
ジョーダン・ピールほどでないにせよ。
TVドラマのファンに観せるのだもの、やむなし。
 
いちげんさんの私でも、充分楽しめたのだけど、
二段構えの謎解きにうーん。不自然過ぎる。
 
 最初の動機を”白状させるため”は無理、復讐一択。
 突き飛ばして、死んだと動転は雑過ぎ。
 犯人も死んだかどうか、最初確認はするでしょ。 
 猟奇殺人とゆすりは性格の違う犯罪。
 北村一輝の正義ズラなセリフは共感出来ない。 

協力者全員を無理やりでも良い人にしなければならない。
そのためには、悪役は悪役でなければならない。
主要キャラの北村一輝は実態はただの無能でも、そうは描けない。
そういう制約の中で作ってる。
 
本来はもっと、社会派になるべきテーマで、
 システムが機能しないときの、私刑の是非。
 死刑と冤罪の可能性。

全員グルからのもう一捻りだけど、
無理に、ドンデン返ししなくて、良かったんじゃない。

警察はあてにならない、千載一遇の好機だもの、
みんな覚悟もってヤル気じゃなきゃ不自然。
更に、
真犯人は別なのに、悪役をヤっちまった。で良かったのに。。
 
社会的テーマを無理やり脱臭して、
心温まるファンムービーに仕上げている。
多分それが正解と判断したんだろうな。 
きっと、
メジャー系のエンタメTVシリーズの映画としては正しいのだろう。
  
実写版「進撃の巨人」になりかねない危うさもあるのだろうに、
このクオリティでバランスを取ったのは見事な手腕。ではある。
 
コンテンツは誰に届けたいかが、一番大事。
そういうことなんだと思う。 
 
今週はボリバンの口が下に開いたので、一旦26000円割れまで下落しそう。
来週安値で拾える銘柄あれば、買いたい。 

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