「ジュピターズ・ムーン」映像は素晴らしい。が、問題意識の雑さが作りに滲む

凝った画作りと、セピア色のブダペストの街並み。

これに1800円の価値ありと考えるかどうか、
お話は雑なので、映像以外の部分で期待してると肩透かしを喰らう。
ハンガリー社会の閉塞感は伝わるが、この監督、難民問題とか真面目に考えてねーだろ。
色んな要素トッピングしただけに終わる。
  
 
渋谷に用があったので次いでに見ました。
期待はずれに終わりました。
文春のこの評に完全に同意。

★★★☆☆奇才の力作。ただし大粒の寓意と娯楽要素がどこか混ざり合わない。傑作ゾーンに掠(かす)る瞬間は何度も認められるのだが。
森直人(映画評論家)

  
 
 
 
映像は褒めましょう。異論は無いでしょう
CG抜きで、ローテクを駆使して完成した映像は凄いです。
そして、色彩感覚。
赤茶けたレンガ色と翡翠のようなブルー。そこにセピア色の光線が織りなす風景。
 
ああそういえば、カウリスマキの色調にも似てますね。
ああ、主題も同じシリア難民。(まその扱い方はぜんぜん違うけど。)
 
カーアクションとかも映像は切迫感満載でした。信じられないようなアングルから撮ってました。
 
映像に関心の90%を注いでんだろうなこの監督。っていう本気度が伝わります。

ただ構成がとても悪く、食いあわせの悪いものなんでもブッコンでます。
魅せたい画さえ撮れればいい、他はお座なりという雑な態度も伝わってきます。
 
 
 
ハンガリー社会の閉塞並べて、途中からアクションで唐突に終わる。
そういう構成になってます。

最初の方は、ああそういうのを寓話的にやろうとしてるのね、意欲作だなぁ。
って、観てるんですけど、

脱走するあたりから、アクション物になる。
一段落したら、元の話に戻るのかと思えば、何も解決せずそれでエンドロール。

シナリオ描く前に、構想だけで撮りたいシーン撮ったのかな。
例えば、「未来世紀ブラジル」とか意識して、現代のブダペストに置き換えたらって発想で、
 
それで、
前半の浮いて回るシーンと、後半のアクションをバラバラにそれぞれ撮っちゃった。 
 
そんな風に見えます。
構成はあまり考えてないみたい。
あと難民とか、関心があるとは思えない。
 
 
 
リベラル界隈の人中心に難民問題を描いたというけど、、観ないで書いてんじゃないの?
この雑な扱いで、難民問題扱ったことにしちゃ、イケないよ。
雑すぎてムリです。
希望のかなたの後なので、ことさら気になりました。

まあ、シリア人の背景が全く伝わらない。関心無いでしょ?
 主人公はシリア人に見えません。
 役者さんはハンガリー人らしいです。
 なんかムリっぽいなぁって、観てて感じます。

 異文化から来た人として描かれるとこはなく、
 フライドポテトしか食べない人としてだけ描かれます。
 ハラルじゃないのは食べられないってことだと思うんだけど、
 なんの奥行きもありません。
 
 さらに、悪徳医師とシリア難民の主人公の会話は英語なのですが、
 アフレコらしく、芝居としては微妙なのですが、会話自体はスムーズです。
 ドクターが英語堪能でも構わないけど、
 シリア難民の主人公はもうちょっと英語カタコトだと思うよ。普通。
 ネイティブに比べたら簡単な単語で簡単な言い回ししか出来ないはず。
 
 文化も全く違って、言葉も自由には通じない。こういうことも難民問題には大きな点と思うのですが、
 アフレコの英語でスムーズに会話成立って、
 ポテトフライしか食べないけど、イスラムの習慣はそれだけ。

他から来た人というのが描けてないよ。   

  
主人公は巻き込まれるだけではあるが、破壊活動しかしてない。
 悪徳医師がバス襲撃し、浮く男脱走させる、
 それで金儲け企む。浮いて見せてカネ巻き上げる。
 公道で刑事とカーチェイス、車数台破損。
 浮く男はテロ実行犯と現場で接触。
 さらなる逃亡の果に、ホテルで機動隊とドンパチ。
 悪徳医師は銃撃戦の末、満足げに死ぬ。
 浮く男はヘリに包囲される。
  
とくに良いこともせず、同情できるようなシーンも無く、、
追われて当然だし、捕まって当然。

難民が来ると治安悪化するって話なのかなぁ。

なんでこんなストーリーなんだろう?
 
 

まあ一貫して、中立的ではあります。
映画評論家の中でも、
難民を憎む悪徳警官が隠蔽するためにとか、デトロイトと同じような文脈で語るのもあり、
いや、それはムリ。自分好みの話に歪曲しすぎ。
界隈の人たちは相変わらず酷いね。 

ま、それはされおき、
 
最初の誤射のシーンでは、逃げるところ後ろから銃向けられて「フリーズ」と言われているのに、
逃げながら、振り向きざまに、
右手を内ポケットに手を入れるような仕草をします。
(パスポートかなにか取り出そうとしたのか)

こんな動きしたら、撃たれます。
結果銃持ってなけりゃ、撃った方の過失は問われるでしょうけど、
 
 
で、悪徳医師に依頼してカネでもみ消そうとはしますが、
撃たれた主人公ピンピン回復してるので、もみ消す理由も失います。
 
バス襲撃+脱走は追って当然で、
テロリストと接触してるのも事実なので、捕まえるのは最重要です。
 
ラストで撃たないで捕獲目指すのも当然です。
浮く男は反撃してこないのだし。聞くべきこと山ほどあるし。
 
唯一、カーチェイスで轢こうとするの不自然ですが、浮くので無理筋です。
そこ以外は、やり過ぎで悪徳ではあるが、職務に忠実って感じです。
刑事ものだと、こういうヒーローものも多いタイプです。
 
 
まあ、悪徳医師が騒ぎ大きくしてく話で、そのせいで、
えっと、何がテーマだったっけ?って途中、構成の破綻の方に気がいってしまう。 
 
 
ま、映画としては完成度に問題あって、その雑さを評価できません。
 
 
 
あと、映画とは関係ないけど、
シリア難民の問題解決はシリアの治安回復であって、寛容じゃないから。
なんかの政治利用のためでなく、問題解決考えるなら、
もっと、積極的に関与したら。

タイムリーにこんな記事見たけど、
シリア反体制派、クルド人兵士の遺体を侮辱的に扱う 

国際介入を訴える人は見受けられない。
 
オバマ政権がもっと積極的に介入し、
イラクからの野放しのままの撤退しなきゃ、
状況全然違ったと思うけど、

不思議と界隈の人は、中東に厄災蒔いて退場していったオバマ政権は批判しないねぇ。
 
 
映画とは関係ないけど、雑な関心で関わっても、政治利用されるだけって、ちょっと後味悪かった。

 
 
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