第1話見返すとホッシーが、
”君はほんとに馬鹿だな、全く想像力がない。
わかり易く示さないと、何にも理解できないんだから。”
最初からアニメファンに宣戦布告してました。
マニュアル人間養成機関である中学校を舞台に。
わかり易い説明が無いから分からないというのは、一旦置いて、
解りにくい要素を分解してみます。
・SF設定として、量子論や相対論などの物理学の理論の引用
・寓話、メタファーで社会や関係性を表現
・ストレートな青春モノだが、既視のフォーマットを裏切る
をそれぞれ、整理しておいて、
あとは、謎は謎として扱う態度の問題だと思うのです。
本作品、”大人になりましょう”もテーマですものね。
引き続き、書こうと思い立ちました。
分からないと話題にはなってますが、エヴァ程のように考察は多くないのですね。
ストーリー展開をフォローする、ライトなのは幾つかあるのですが、
ガッツリ考察してるもの見つけられませんでした。
そこで、整理しようと試みます。
まずは、解らなさを拡大する3要素について。
・SF設定として、量子論や相対論などの物理学の理論の引用
主人公の長良は観測者。彼が観測した時点で可能性が確定する。という能力を持つ。
↑がわかり易かった気がする。
ググると↓とか頑張ってると思う。
量子力学の観測問題をわかりやすく解説します
どうやら漂流後の世界は、オリジナルとは別の可能性が確定した世界らしい。
時間は存在しない相対論。過去は変えられず未来は未確定な量子論。
時間は実在するか?
漂流したときに、どの時点に飛ぶのかランダム。
やまびこ先輩や、二つ星その他、
現実世界の年度と漂流先は時間的に一致しない。
時間が伸び縮みしてるのは、
ラジダニの過ごす時間の速度が異なる。
長良と希で2週間ずれる。
瑞穂の静止能力も多分、
時間の矢的なパラドックスを、敢えて入れたのだと思う。
などが相対論ですかね。
が、主人公達はそれでも、古典的立場を取る。
それが希望というもの。
重力と時間
ジョジョ第6部のプッチ神父でお馴染みですね。
重力と「時間と空間」—リンゴはなぜ落下するのか
わかり易い説明は難しいか、↑これとか。
朝風が重力操作出来るので、時間操作も出来る。
戦争君も希ちゃんも、時間操作で能力遺物にした。
漂流後の世界では、
人はいずれ精神的な死を迎え、
さらにその後能力遺物に状態変化する。
ただし、それには気の遠くなる時間が必要。
朝風君は局所的に時間を加速させ、能力遺物に変えたんですね。
何故そうしたのかは、無意識。
さよならなので、葬ってしまった。
など漂流後の世界で働く物理法則の設定を、
説明せずに断片的に描いてるようです。
あとは、内面世界が能力で外界に発現するのは何度か出てきますか。
文学的表現としては、特殊ではないかな。
これは、コピー可能なら質量保存は無視なので、無限に出来るってことですね。
で、
ゲームマスターの校長がどこまでコントロールしていて、
どこまでが各人物の能力の影響なのかは、
私は確定までは出来てません。それは謎は謎でいいと観てます。
・寓話、メタファーで社会や関係性を表現
はじめは無法でも、秩序が形成されてしまうのが人間というもの。
法と独裁が最初に描かれて、猿野球でルールと尊厳が描かれます。
人間の脳は公平性を要求するので、上級国民でも実刑を望む如く。
ジャッキー・ロビンソンやハンク・アーロン的差別もある猿野球。
実は能力は差別を隠蔽というのはサンデル教授でしたか。
岡田斗司夫が解説してます。
さらに、能力主義は公平に見えて、遺伝ガチャでないかと。
漂流後の世界では、能力の獲得は完全に運。
この国では短距離走に強い人がりっぱな人、優秀な人と考え考えられるようになりました。
年に1回、18歳になった国中の男、女は競技場に集まり、「かけっこ」で勝負します。
ルールは極めてシンプルです。「よーい、どん」でスタートして100メートル走り、そのタイムによって順位が決まります。
かけっこが速い人ほど、その後の進路を自由に選ぶことができます。
それから、社会から外れる引きこもりを青春らしく描いた後、
宗教や群集心理などの依存。
現実世界での卒業式で、漂流後の世界でも卒業。
進路をそれぞれ決めてゆきます。
方舟で新天地を探す。
ブートキャンプに参加し新兵として戦地に赴く。
独自に現実世界への帰還を目指す。
この世界の探索を続ける。
アキ先生はまんま教官でしたね。校長と通じてるらしい。
新人の漂流者を勧誘して、兵隊に育て、戦地に送り込む。
兵隊が戦地で何をするのかは謎は謎のままですが、
集団就職の上野駅っぽい。
私も、社会に出たのは最初はサラリーマンから。
まあ何の訓練も受けてないし、戦力には成らなかったな。
そんなこと、思い出しました。
バベルの塔は、観たまんま現実世界でしたね。
個人的には一番好きなエピソードです。
ピラミッドも雇用確保の公共投資だって言いますし。
学生さんだと、共感できないかな。
そこから、一歩踏み出しての成長。
子供は成長してるのに子離れできない毒親も描かれ、
コピーの話ですから、アイデンティティの話もそりゃします。
だからUNOなんでしょうね。
ま、寓意は自由に受け取れと、作り手は言ってるでしょうけど、
”想像力の無い”視聴者に喧嘩売ってて痛快です。
・ストレートな青春モノだが、既視のフォーマットを裏切る
マザコンのままの朝風と、
無気力から意志を持ち成長してゆく長良は対象的。
自己肯定感高い希。
猫のように自由で、性格は良い瑞穂。
常に科学者的態度で悟るラジダニ。
あと、
やまびこ先輩とこだまちゃんの自分の殻を破る勇気も、
設定が異世界なだけで、ありがちな純愛ものとも読めます。
見返すと、
青い炎で犬の顔インサートされ、
能力遺物Mの匂い嗅いだり、”万物のちから”と言ったり、
伏線張ってたんですね。
それぞれのキャラに合わせた展開は、背景が特殊なSFなだけで、
ストレートに描かれてます。
始まりは「漂流教室」×「ビューティフルドリーマー」ですが、
”わかり易く示さないと理解できない”層は、
既存のフォーマットに嵌めて理解しようとします。(ここは断言)
そして不思議なのは、
「ビューティフルドリーマー」的な要素、
トリッキーな時間の扱いについては意識せず、
”漂流モノはこうあるべし”とおっしゃる。ようです。
青春モノとしては、SF設定気にしなくてもいいと思うんですよね。
成長したりしなかったり、嬉しかったり悲しかったりしながら、
人生選択してゆくのですから、
それはそれで、素直にストーリー追えば充分でしょう。
逆に、
「渡る世間」みたいに全部心情セリフで説明されて、
さらにナレーションで追い説明が被さるのはキツくないかな。
作り手が客層を最初から明言してるんだし、
その意志前提で、演出を楽しむもんでしょ。
ただ、校長ないしホッシーについては、
もうちょっと最終回で描かれる気がすんだけど。
謎のままで、タンポポ派の成長物語で終わっても、私は充分です。
最終回は、
漂流後の世界で経過した時間分だけ未来の現実世界に、
二人は戻るみたいですけど。
説明されなきゃ気が済まないヤツは最初から観るなよって、
思いますけど、
何処まで謎のままなのか、やっぱ気にはなります。
でも、
この作品自体が、置かれた場所で咲かない。
それだけで充分です。
春は「オッドタクシー」、
夏は「Sonny Boy」と、
2021年のアニメはいいもの観せてもらいました。感謝します。
自殺率ようやくNo2の日本に生まれて良かったとは、思うこと少ないのですが、
優れた表現、ネイティブで観れて良かった。