「彼女が好きなものは」ふらっと入った街の洋食屋さんのオムライスが思いの外美味かった。みたいな体験 馴染めないなら環境変えた方がいいよね。

ひらいて」を褒めてる人は、概ね褒めているので観ることにしました。
予想を超えてよかった。公開終了間際、ギリ間に合ってよかった。
ふらっと入った街の洋食屋さんのオムライスが思いの外、美味かった。
そんな体験でした。
 
それと、 
この世は適者生存だから、環境を選ぶことは何より大切なこと。良い着地ですね。
宿題を解いてる今の自分にも当てはまることで、後味の良いラストでした。
 
 
草野翔吾監督の手腕に驚きました。
完成度高く、良くまとめてた。堪能しました。
想像以上でした。
 
ひらいて」が、こだわりシェフの創作料理なら、
「彼女が好きなものは」は街の洋食屋さんのウェルメイドなオムライス。
普通だけど、職人さんが丁寧に真面目に作っている。サラリーマン仕事ではない。 
 
今働いてみて、
寿司屋のカウンターで寿司を握る修行した職人さんと、
機械が握った寿司をスーパーに出荷するのが仕事な店員さん、
その違いをようやく認識できるようになりました。
 
そこまで、
機械的な処理で仕事したことに代価してしまうと、
品質の維持は難しいけど、その品質の維持が必要かというと、
それほど真面目に取り組む程じゃない。
職人のゲームのルールとは違う。
 
かといって、
生産性を上げて、収益を追求するのかというと、
それはまたビジネスの視点。彼らはサラリーで報酬を貰う。
個人の成果がダイレクトに反映されるのは構造上もう無理。
コストを払って、売上を上げて、税金払って、最後に自分の利益が残る訳じゃない。
経営のゲームでもない。
 
個人の能力は、生産性より組織のバランスを取ることに多くの労力が支払われる。
悪しき先例を覆すことは、安定性を脅かす。成長と安定はそもそも二律背反。
一人ひとりがどれだけ良心的でも、現状維持が精一杯で、
リコール隠しくらいまで堕ちて、外からGHQがやって来ないと変われない。
 
敗戦で平等と明確な幸せのゴールが降ってきた時期には、
強みを発揮する資質で、成長が終われば、
ガラパゴス化しながら、ゆっくりと衰退していく。
何事も物事には、理由があるものだと、納得した。
 
安定化した社会の構成員達のゲームのルールは、
私がかつて求めたものとは違うものだった。
もちろん今望むものとも違う。
 
  
そんな世界とようやく、私は和解した。
長くいるのは無理だけど、私にとても良くしてくれた。
感謝している。
私が生きたいと思う環境を、私に用意してあげるのは私のしごと。
君たちの役じゃない。
 
昔は、
お前も同じ奴隷になれと強要する悪いオトナもいたけど、
今は自分で選べるんだし、
いつまでも自分や社会や他の誰かを憎む必要はない。  
  
 
ようやく、職場で働くということ。 の総括ができそうです。
戦後の成長をピークアウトした後の日本で、
体験したことを、随分と遠回りして理解出来たようです。
 
 
回転寿司の競争ともちょっと違って、
昔、こんな経験をした。
 4000円で食べ放題の寿司屋に知り合いと行った。
 オーダーシートに鉛筆でチェックして注文を出す。
うーん、シャリがなぁ。化学調味料の味。
だから、喉が渇く。しょっぱくはないがナトリウム化合物だ。
本来は、
 塩、砂糖、酢のトライアングルのバランスと、
 お米本来の味と昆布などの旨味若干をプラス。
そこに、シャリを切った職人さんの個性が出るものだが、
 
ネタ以前に、こういう寿司握ってて、良心が咎めないものだろうか、
知り合いは何枚もオーダーシート切って、後で水飲んでいたが、
ちょっと無理。
 
しばらく前まで、宇多丸さんが酷評するような日本映画もよく撮られていた。
今でも、作り手の志の低さにがっかりする映画もあるだろうけど、
 テクノロジーの進歩による撮影コストの低下と、
 配信の時代で、面白さの競争とリターンが見込めるマーケット。
によって、状況はそれでもだいぶ変わった。

日本映画でも、 
気軽に、良心的な職人さんの味が楽しめる時代になったのかな。
 
 
役者さんは皆好演。もちろん山田杏奈も。
いろんな感想では、演技がダメだったと言う人もいます。
いや、リアリティラインが統一されてて、丁度いいまとめ方をしてる。
テーマ性にも、マッチしている。
 
同じく同性愛の生きづらさを描く「パワー・オブ・ザ・ドッグ」と比較したら、
そりゃ、ベネディクト・カンバーバッチとは違うかもしれない。
でも、あそこまで突出したネタでなくてもね。
  
NHK朝の連ドラとか、今期のアニメだと「王様ランキング」とか、
の大衆娯楽的なわかりやすさ、記号的から、ステップアップして、
娯楽映画として、ときには社会派として丁度いい演出。
すきやばし次郎に期待するものとは、そもそもちょっと違う。
むしろ、等身大さを失わないリアリティが描けていたと私は鑑賞しましたよ。
 
 ジェーン・カンピオンのように底意地悪く、英国趣味っぽく、
 多様性とかポリコレの浅さ揶揄するのありだし、
 
 本作のように、カズ・ジュニオールの青臭い正論で、
 リベラルの薄っぺらさ看破するのもありじゃん。
 
ネタバレだけど、
全校集会で演説とは、荒唐無稽だと。クソリアリズムは批判するだろうけどさ、
ホームルームの発言を遮る発言を大声で遮る自己矛盾劇場を、
こういうやり方で回収するのも楽しい。
そして、高校生の生きづらさのリアルもあったよ。
 
 
同性愛でなくても、
高度成長の終わった日本という、
生きづらさを体験するには理想的な環境で、高校生だものなぁ。
 
もって生まれた特徴はどうすることも出来ない。
縄文人の気質強く生まれると、
弥生人の集団稲作社会に溶け込むの下手になるらしい。

幼年期は無力でどうすることも出来ない。
経済的に自立できれば、自分の選択肢も増える。
高校生あたりがちょうど端境期。
爆発してしまうよね。苦悩するよね。
 
自分にみんな良くしてくれたとしても。
それじゃ、解決にはならないんだよなあ。
やっぱ住む世界が違う。別れが辛くても、そこは受け入れていかなきゃ。
学校という社会も、家庭も環境が変わるのはとてもいいこと。
 
私も小学生のときに、越境で転校出来て、社会も家庭の別だったら、
違う世界線を生きていたと思う。
ま、そんな配慮得られず、同じ奴隷になれと諭すオトナばかりで、
色川武大に救われたのだけど、それはさておき、 
この世は適者生存と学ぶのに時間掛かった。スマートにはいかない。
 
 
それと、 
草野翔吾監督の資質についても、語られなさ過ぎ。
実は昔、劇場で「世界でいちばん長い写真」を観ている。
(武田梨奈目当てでしたが、アクションシーンはありません。)
内容は、キラキラ青春ムービーというジャンルものなので、特に触れないけど、
当時から、
 ロケーション(地元の協力含めて)がとても上手。
 写真部とか美術部とか、フレームを巧みに使う。
 同様にパノラマの活かし方も神経が届く人。
 基本的にはウェルメイドにまとめる。ほっこり。
 
このあたりの資質は、本作でもよく活かされていた。
映像で説明しすぎに感じるかもしれないけど、
このバランスが監督の取捨選択と観てた。  
自由に映像でやりたいことやれてて、
昔の友人の成長を観るみたいに嬉しかったです。良かったね。
 
  
そしてなにより、
松本穂香が普通の高校生としてとても魅力的に撮れていた。
もっと美人をキャスティング可能だったと思うけど、そうじゃない。
ちょうどいい普通で、とってもかわいい。
 
本作の山田杏奈もしかり。
普通でかわいい。
「ひらいて」と違って、ガンギマリのバキバキはやらない。
観てる者に、普通のリアルを実感させてくれつつ。
やっぱかわいい。
これは監督の特質だと観ていました。

次回作も期待してます。公開時に日本に居たら映画館で観ます。
 
 
あとは、
思い浮かんだくだらないこと、つれづれに書きます。
”そんなのと一緒にすんな!”と美少年の神尾くんに怒られそうだけど、
 実はちょっと前、
 「無慈悲の光」劇場で観て、
 もうちょっとAV女優さんの境遇と、
 
 モルモットを重ねて描くのかと期待して空振った。
 峰なゆかの描く関西黒ギャルは、映画にも出てたAIKAかなと想像してる。
  顔もキレイで、スタイルバツグンなだけでなく、
  明るくサービス精神旺盛で人柄も良さそう、一緒にお酒飲んだら楽しそう。
  実はファーストサマーウイカのように賢いから、
  マーケティング的に黒ギャルやってる。

 タンザニアのも含め数本お金払って観てみたのだけど、、、
 まったく立たない。

 ああ、エロと健全は真逆だ、山田五郎の言うとおり。

 私はロリは苦手で、だからこそアニメファンとは一線を画すけど、
 I like AIKA but … 
 体は反応しない。
 他の出演してたAV女優さんのは普通に反応するし、いける。のに。
 
 
神尾くんと同じだ。と思ってしまいました。
でも、怒られなさそうな例も思い浮かんで、
 
私は、増田セバスチャン派の、家系図カッター主義者
地獄な家庭はもう嫌だし、
この遺伝子継がせるものうーん。苦労耐えないと思う。
少なくとも、アスペ系かカサンドラ系かのどちらかの、
生きづらさは覚悟する人生だろう。
 
普通に結婚して、子供残すチャンスは無い訳では無かった。
劇中の神尾くんより罪深いことしたと思う。
葛藤はあった。でも最後は主義が常に勝った。そんな意思決定をした。
 
 
ただ、
 人類はまだまだ人口増やしてるし、
 日本の少子化は歴史の必定だし、
責任を感じる必要はない。
あくまで、個としての本能の問題としての種の保存。
 
劇中タチの今井翼は目が本物っぱいが、妻子持ち。
神尾くんはネコだから、行為が違うと難しいのかな。
あるいはオトナになれば、もっと割り切れるのか、
少なくとも、母親の期待に応える必要は無いよ。
 
それは、さらなる成長を選ばなかった日本のいいところ。
既得権を貪る年寄りに対して、遠慮する必要はまったくない。
  
だからなおさら、”みんななかよし”の予定調和せず、
この同調社会でも、環境を変えるって選択が。良かったね。
生まれたとこで、咲かないよ。タンポポ派だから。
 
ホント次回作に期待してます。
 
 
今年は青春モノ多めに見たかな。
白眉は「Sonny Boy」で自宅で観ましたが、
劇場でも良作多かったと、日本の生活に満足してます。
コロナ明けるまでは、日本を楽しもう。

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